ある日突然、鏡を見ると白目が真っ赤になっていることに気づき、驚いた経験はありませんか?痛みや違和感がほとんどないため、一体何が起こったのかと不安になる方も多いでしょう。これは「結膜下出血」と呼ばれる症状で、目の白目部分の血管が破れて出血した状態です。見た目のインパクトは大きいものの、多くの場合、深刻な病気ではありません。
「この赤い目を早く治したい」「市販の目薬でどうにかできないか」と考える方もいるかもしれません。本記事では、結膜下出血の基本的な知識から、市販の目薬を選ぶ際のコツ、そして眼科を受診すべきケースまで、詳しく解説します。適切な対処法を知り、安心して過ごすための参考にしてください。
結膜下出血とは?症状と原因、治るまでの期間

結膜下出血は、目の白目部分が突然赤くなる症状で、多くの人が一度は経験する可能性があります。見た目は衝撃的ですが、その実態を正しく理解することが大切です。
結膜下出血の主な症状と見た目
結膜下出血の最も特徴的な症状は、目の白目部分が鮮やかな赤色や暗い赤色に染まることです。これは、白目を覆う透明な膜である結膜の下にある細い血管が破れ、血液が溜まることで起こります。皮膚にできる青あざと同じような状態と考えると分かりやすいでしょう。出血の程度は様々で、小さな点状のものから、白目全体を覆う広範囲なものまであります。
多くの場合、痛みやかゆみ、目やになどの自覚症状はほとんどありません。視力に影響が出ることも通常はありませんが、出血量が多いと、目がゴロゴロするような異物感や、軽い圧迫感を覚えることがあります。
結膜下出血が起こる主な原因
結膜下出血の原因は多岐にわたり、特定できないことも少なくありません。主な原因としては、くしゃみや咳、いきみなど、急激に目に圧力がかかる行為が挙げられます。また、目を強くこする、外傷、コンタクトレンズの不適切な使用も原因となることがあります。 その他、高血圧や糖尿病、血液をサラサラにする薬の服用、月経、過度の飲酒、睡眠不足といった全身性の要因が関与している場合もあります。
まれに、ウイルス性結膜炎や白血病などの血液疾患が原因で起こるケースもあるため、繰り返す場合や他の症状を伴う場合は注意が必要です。
結膜下出血が治るまでの一般的な期間
結膜下出血は、ほとんどの場合、特別な治療をしなくても自然に吸収されて治癒します。出血の量や範囲にもよりますが、一般的には1〜2週間程度で赤みが引き、元の白い目に戻ることが多いです。 出血量が多い場合は、完全に吸収されるまでに1ヶ月から2〜3ヶ月かかることもあります。 時間はかかりますが、必ず出血は吸収されるため、過度な心配は不要です。
ただし、治癒期間中に新たな出血が起こると、さらに時間がかかる可能性もあります。
結膜下出血に市販目薬は使える?その効果と注意点

結膜下出血の見た目に驚き、すぐにでも治したいと考える方は多いでしょう。市販の目薬が使えるのか、どのような効果が期待できるのかを理解しておくことが大切です。
市販目薬で結膜下出血は治るのか
残念ながら、市販の目薬で結膜下出血そのものを直接的に治す効果があるものはありません。 結膜下出血は、目の血管が破れて血液が溜まった状態であり、この血液が自然に吸収されるのを待つのが基本的な対処法です。市販の目薬は、出血を止める作用や、溜まった血液を早く吸収させる作用を持つものではないのです。しかし、市販の目薬が全く無意味というわけではありません。
目の乾燥や異物感といった不快な症状を和らげたり、目の健康をサポートしたりする目的で補助的に使用することは可能です。
市販目薬を使用する際の注意すべき成分
結膜下出血の際に市販目薬を選ぶ際には、特に注意すべき成分があります。それは「血管収縮剤」です。血管収縮剤は、目の充血を一時的に抑える効果がありますが、結膜下出血の場合は、すでに血管が破れている状態です。血管収縮剤を使用すると、かえって血管に負担をかけたり、症状を悪化させたりする可能性があります。 また、血管収縮剤の長期的な使用は、目薬をやめたときにリバウンドで充血がひどくなる「薬剤性結膜炎」を引き起こすこともあります。
そのため、結膜下出血の際には、血管収縮剤を含まない目薬を選ぶようにしましょう。成分表示をよく確認し、「塩酸テトラヒドロゾリン」「塩酸ナファゾリン」などの記載がないものを選ぶことが重要です。
結膜下出血におすすめの市販目薬の選び方

結膜下出血そのものを治す市販目薬はありませんが、目の不快感を和らげ、回復をサポートする目薬を選ぶことはできます。ここでは、目薬を選ぶ際の具体的なコツを紹介します。
血管収縮剤を含まない目薬を選ぶ
最も重要なコツは、血管収縮剤を含まない目薬を選ぶことです。血管収縮剤は、目の充血を一時的に抑える効果がありますが、結膜下出血の場合は、血管が破れて出血している状態です。血管収縮剤を使用すると、血管に余計な負担をかけ、症状の悪化や治癒の遅れにつながる可能性があります。 成分表示を確認し、「塩酸テトラヒドロゾリン」「塩酸ナファゾリン」などの血管収縮剤が含まれていないか、必ずチェックしましょう。
人工涙液や防腐剤フリーの目薬は、血管収縮剤を含まないものが多く、安心して使用できる選択肢となります。
目の炎症を抑える成分配合の目薬
結膜下出血は、通常、炎症を伴わないことが多いですが、目をこすったり、外部からの刺激を受けたりすることで、軽い炎症が起こる可能性もあります。このような場合に備えて、抗炎症成分が配合された目薬を選ぶのも一つの方法です。例えば、グリチルリチン酸二カリウムやアズレンスルホン酸ナトリウムといった成分は、目の炎症を鎮める効果が期待できます。
炎症を抑えることで、目の不快感を軽減し、より快適に過ごせるようになるでしょう。ただし、炎症がひどい場合や、目やに、かゆみなどの症状が強い場合は、結膜下出血以外の目の病気の可能性もあるため、眼科を受診することが大切です。
血行促進をサポートする成分配合の目薬
結膜下出血の治癒は、溜まった血液が自然に吸収されることによって進みます。この血液の吸収を間接的にサポートする目的で、血行促進成分が配合された目薬を選ぶことも考えられます。ビタミンE(酢酸d-α-トコフェロール)やビタミンB12(シアノコバラミン)などは、血行を促進し、目の新陳代謝を高める効果が期待される成分です。
これらの成分が、出血の吸収を早める直接的な効果があるわけではありませんが、目の健康維持に役立つ可能性があります。ただし、あくまで補助的な役割であることを理解し、過度な期待はしないようにしましょう。
防腐剤フリーや保湿成分で目に優しい目薬
結膜下出血で目が敏感になっている時期には、目に優しい成分の目薬を選ぶことが重要です。特に、防腐剤フリーの目薬は、目の刺激を最小限に抑えることができるためおすすめです。防腐剤は、目薬の品質を保つために配合されていますが、敏感な目には刺激となることがあります。また、ヒアルロン酸ナトリウムなどの保湿成分が配合された目薬は、目の乾燥を防ぎ、ゴロゴロとした異物感を和らげる効果が期待できます。
目の潤いを保つことで、目の表面の摩擦を減らし、快適な状態を維持する助けとなるでしょう。
【症状別】結膜下出血におすすめの市販目薬

結膜下出血の症状は、見た目の赤みが主ですが、人によっては目の不快感や疲れを伴うこともあります。それぞれの症状に合わせた市販目薬の選び方を見ていきましょう。
目の不快感を和らげたい場合
結膜下出血によって、目がゴロゴロする、異物感がある、乾燥するといった不快感を覚えることがあります。このような場合は、人工涙液や保湿成分が豊富に配合された目薬がおすすめです。人工涙液は、涙に近い成分でできており、目の表面を潤し、乾燥による不快感を和らげます。 ヒアルロン酸ナトリウムなどの保湿成分は、目の潤いを長時間保ち、摩擦を軽減する効果が期待できます。
防腐剤フリーのものを選べば、さらに目に優しく、刺激を避けることができるでしょう。目の不快感が軽減されることで、無意識に目をこするのを防ぎ、症状の悪化を防ぐことにもつながります。
目の疲れも気になる場合
結膜下出血と同時に、パソコンやスマートフォンの使用による目の疲れを感じる方もいるかもしれません。このような場合は、目の疲れを和らげる成分が配合された目薬を選ぶと良いでしょう。例えば、ビタミンB12(シアノコバラミン)は、目のピント調節機能を改善し、目の疲れを軽減する効果が期待できます。また、ネオスチグミンメチル硫酸塩も、目の調節機能をサポートする成分として知られています。
これらの成分は、直接的に結膜下出血を治すものではありませんが、目の全体的な健康をサポートし、不快感を総合的に和らげる助けとなります。ただし、血管収縮剤が含まれていないか、必ず確認するようにしてください。
刺激を避けたい敏感な目に
もともと目が敏感な方や、コンタクトレンズを使用している方は、目薬の成分による刺激を特に避けたいと考えるでしょう。このような場合は、防腐剤フリーの目薬を第一に選ぶことをおすすめします。防腐剤は、目薬の容器内で細菌の繁殖を防ぐために配合されていますが、敏感な目には刺激となることがあります。また、pH値が涙に近いものや、浸透圧が涙液に近い「等張性」の目薬を選ぶと、より目に優しく、刺激を感じにくいでしょう。
成分がシンプルで、余計な添加物が少ない製品を選ぶことも、敏感な目への負担を減らすコツです。眼科医に相談して、自分に合った目薬を選ぶのも良い方法です。
結膜下出血で眼科を受診すべきケース

結膜下出血は多くの場合、自然治癒する心配の少ない症状ですが、中には眼科医の診察が必要なケースもあります。自己判断せずに、以下の症状が見られる場合は速やかに眼科を受診しましょう。
痛みや視力低下を伴う場合
結膜下出血は、通常、痛みやかゆみ、視力低下を伴いません。もし、目の痛みや異物感が強い、視界がかすむ、物が二重に見える、視野が狭くなるといった視力に関する異常を感じる場合は、結膜下出血以外の重篤な目の病気が隠れている可能性があります。 例えば、急性緑内障発作やぶどう膜炎、網膜剥離など、早期の治療が必要な病気のサインであることも考えられます。
これらの症状が見られた場合は、迷わず眼科を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
出血が広がる、頻繁に再発する場合
結膜下出血は、通常1〜2週間で自然に吸収されていきますが、出血が止まらずに広がり続ける場合や、一度治ったと思っても頻繁に繰り返して出血する場合は注意が必要です。 これは、高血圧や糖尿病、血液凝固異常などの全身性の病気が背景にある可能性を示唆しています。 特に、全身に青あざができやすい、鼻血が出やすいなど、他の部位でも出血傾向が見られる場合は、血液検査などによる詳しい検査が必要となることがあります。
繰り返す出血は、目の健康だけでなく、全身の健康状態を見直すきっかけとなるため、必ず眼科を受診しましょう。
高血圧や糖尿病などの持病がある場合
高血圧や糖尿病、動脈硬化などの持病がある方は、結膜下出血のリスクが高まることが知られています。これらの病気は、血管を脆くしたり、血液の凝固機能に影響を与えたりするため、目の血管が破れやすくなることがあります。 持病がある方が結膜下出血を起こした場合は、単なる目の問題だけでなく、全身の病状が悪化しているサインである可能性も考えられます。
そのため、必ず眼科を受診し、必要に応じて内科の主治医とも連携して、全身の病気の管理を徹底することが重要です。 目の状態だけでなく、全身の健康状態を総合的に評価してもらうことで、より適切な対処法が見つかるでしょう。
結膜下出血の再発を防ぐための生活習慣

結膜下出血は一度治っても、生活習慣によっては再発する可能性があります。再発を防ぎ、目の健康を保つためのコツを理解しましょう。
目をこすらない、いきまない
目を強くこする行為は、結膜の細い血管に負担をかけ、出血の原因となることがあります。 目がかゆい時でも、できるだけこすらず、目薬で対処したり、清潔なタオルで優しく拭いたりするように心がけましょう。また、排便時や重いものを持ち上げる際など、強く「いきむ」行為も、一時的に目の血管に圧力をかけ、出血を誘発する可能性があります。
可能な範囲でいきみを避け、スムーズな排便を促すために食物繊維を摂るなど、生活習慣を見直すことも大切です。
血圧管理と生活習慣の見直し
高血圧は、結膜下出血の重要なリスク要因の一つです。 血圧が高い状態が続くと、血管が脆くなり、破れやすくなります。日頃から血圧を適切に管理することが、結膜下出血の再発予防には欠かせません。定期的な血圧測定に加え、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけ、ストレスを溜めない生活を送ることが重要です。
また、過度の飲酒や喫煙も血管に悪影響を与えるため、控えるようにしましょう。
十分な睡眠と栄養バランスの取れた食事
疲労や睡眠不足は、体の抵抗力を低下させ、血管を弱くする原因となることがあります。 十分な睡眠をとることで、目の疲労回復を促し、血管の健康を保つことができます。また、ビタミンCやビタミンEなど、血管を強くする働きのある栄養素を積極的に摂ることもおすすめです。野菜や果物を多く取り入れた、栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。
これらの生活習慣の改善は、結膜下出血の再発予防だけでなく、全身の健康維持にもつながります。
よくある質問

結膜下出血は人にうつりますか?
結膜下出血は、目の血管が破れて出血したものであり、感染症ではないため、人にうつることはありません。 ただし、ウイルス性結膜炎など、感染性の目の病気が原因で結膜下出血が起こるケースもあります。その場合は、原因となっている結膜炎がうつる可能性があるため、注意が必要です。
結膜下出血中にコンタクトレンズは使えますか?
結膜下出血中は、基本的にコンタクトレンズの使用を控えるのが望ましいとされています。 コンタクトレンズの装用による摩擦や乾燥、異物感が目の刺激となり、治癒を妨げる可能性があるためです。 目の状態が完全に回復するまでは、メガネを使用することをおすすめします。
結膜下出血は放置しても大丈夫ですか?
多くの場合、結膜下出血は痛みや視力低下を伴わず、1〜2週間程度で自然に吸収されるため、放置しても問題ないことが多いです。 しかし、痛みや視力低下がある場合、出血が広がる、頻繁に繰り返す場合、または持病がある場合は、他の病気が隠れている可能性もあるため、眼科を受診することが重要です。
結膜下出血に温湿布や冷湿布は効果がありますか?
結膜下出血の症状が出てから数日経ってから、蒸しタオルなどで目を温める「温罨法」は、血行を促進し、出血の吸収を早める効果が期待できると言われています。 ただし、症状が出てすぐの急性期には、冷やす方が良いという意見もありますが、一般的には温めることが推奨されることが多いです。使用する際は、温度に注意し、やけどしないように気をつけましょう。
結膜下出血と充血の違いは何ですか?
結膜下出血は、結膜の下の血管が破れて血液が溜まったもので、白目がべったりと赤く染まり、血管の走行は見えません。 一方、充血は、目の表面の血管が拡張して赤く見える状態で、細い血管の走行が確認できます。 充血は炎症などが原因で起こることが多く、痛みやかゆみを伴うことがあります。 自己判断が難しい場合もあるため、心配な場合は眼科を受診しましょう。
まとめ
- 結膜下出血は白目の血管が破れて出血する症状です。
- 見た目は派手ですが、痛みや視力低下はほとんどありません。
- 多くの場合、1〜2週間で自然に吸収され治癒します。
- 市販目薬で出血そのものを治す効果はありません。
- 市販目薬を選ぶ際は血管収縮剤を含まないものを選びましょう。
- 目の不快感緩和には人工涙液や保湿成分がおすすめです。
- 目の疲れにはビタミンB12配合の目薬が良いでしょう。
- 敏感な目には防腐剤フリーの目薬が適しています。
- 痛みや視力低下を伴う場合は眼科受診が必要です。
- 出血が広がる、頻繁に再発する場合も眼科を受診しましょう。
- 高血圧や糖尿病などの持病がある方も眼科受診が大切です。
- 目をこすったり、いきんだりする行為は避けましょう。
- 血圧管理や生活習慣の見直しが再発予防につながります。
- 十分な睡眠と栄養バランスの取れた食事が目の健康を保ちます。
- 結膜下出血は人にうつることはありません。
- コンタクトレンズの使用は治癒まで控えるのが望ましいです。
- 症状が出て数日後からの温湿布は血行促進に役立つことがあります。
- 結膜下出血と充血は異なる症状です。
