中国への出張は、ビジネスチャンスに繋がる一方、特有の注意点やリスクも存在します。特に近年、「反スパイ法」の改正により、日本人出張者もスパイ容疑で拘束されるリスクが懸念されています。本記事では、中国出張における具体的な注意点と、スパイ容疑をかけられるリスクを回避するための対策を徹底解説します。安全で実りある出張を実現するために、ぜひ最後までお読みください。
中国出張でスパイ容疑をかけられないための最重要注意点
中国への出張が増える中、特に注意すべきは「反スパイ法」の存在です。この法律は、スパイ行為の定義が広く、意図せずとも疑われる可能性があるため、出張者は細心の注意を払う必要があります。ここでは、スパイ容疑をかけられるリスクを最小限に抑えるための重要なポイントを解説します。
具体的には以下の点に注意しましょう。
- 機密情報の取り扱い
- 写真撮影の注意点
- 現地での言動
- 情報収集活動とみなされる行為の回避
改正「反スパイ法」の概要と出張者への影響
2023年7月に改正された中国の「反スパイ法」は、スパイ行為の定義が拡大され、国家安全機関の権限が強化されました。 これまで「国家の秘密や情報」とされていた対象が、「国家の安全と利益に関わる文書やデータ、資料や物品」にまで広がり、産業スパイやサイバースパイ行為も取り締まりの対象となっています。
この改正により、出張者が日常業務で行う情報収集や市場調査なども、状況によってはスパイ行為と見なされるリスクが生じました。 特に、政府関連のデータや機密情報に関わる可能性のある業務に従事する際は、より一層の注意が必要です。 また、過去の行為についても調査対象となる可能性があるため、過去の中国での活動内容にも留意する必要があります。
企業としては、出張者に対して反スパイ法に関する教育を徹底し、どのような行為がリスクに繋がりうるのかを具体的に周知することが不可欠です。 万が一、当局から調査や聴取を受けた場合には、安易に書類に署名せず、速やかに日本大使館や総領事館に連絡し、指示を仰ぐことが重要です。
スパイと疑われる可能性のある行動とは?
中国出張中にスパイと疑われる可能性のある行動には、細心の注意が必要です。不用意な行動が大きなトラブルに発展するケースも少なくありません。以下に具体的な例を挙げます。
まず、軍事施設や政府関連施設、その他立ち入り禁止区域への接近や写真撮影は絶対に避けましょう。 地図や測量機器の所持も疑いの対象となることがあります。 特に、手書きの地図を持っているだけでスパイ行為と見なされる可能性も指摘されています。
次に、政治的に敏感な話題や政府批判と受け取られかねない言動は、公の場はもちろん、SNSなどプライベートな空間でも慎むべきです。 ホテル室内での会話も盗聴されている可能性があることを念頭に置きましょう。 他人の噂話であっても、内容によっては問題視されることがあります。
また、詳細な地形調査や地質調査、社会調査など、情報収集活動と見なされる可能性のある行為も注意が必要です。 特に、GPS機能付きの機器を使用して詳細な位置情報を記録する行為や、無許可でのドローン飛行などは避けるべきです。これらの行為は、国家の安全に関わる情報を収集していると疑われる可能性があります。
さらに、不審な人物からの接触や、不自然な依頼にも警戒が必要です。安易に金銭や物品を受け取ったり、見返りを期待して情報を提供したりする行為は、スパイ活動への関与を疑われる原因となり得ます。
これらの点に留意し、常に慎重な行動を心がけることが、スパイ容疑を回避するために不可欠です。
持ち込み禁止・注意すべき物品
中国への出張時には、持ち込む物品にも注意が必要です。特に電子機器や情報媒体は、反スパイ法との関連で慎重な取り扱いが求められます。
まず、会社の機密情報や大量の業務データが含まれるパソコンやスマートフォン、USBメモリなどの持ち込みは最小限にしましょう。 業務上どうしても必要なデータは、事前に暗号化し、パスワードを複雑にするなどの対策を講じることが推奨されます。 可能であれば、出張専用のクリーンな端末を用意し、帰国後にはデータの完全消去や初期化を行うのが理想的です。
また、GPS機能付きの機器や高性能なカメラ、録音機材なども、使用目的や場所によっては誤解を招く可能性があります。特に、地図や測量に関する専門的な機材の持ち込みは、事前に許可が必要かどうかを確認すべきです。
政治的に敏感な内容の書籍や資料、宗教関連の物品なども、持ち込みが制限されたり、問題視されたりする場合があります。 個人的な趣味の範囲であっても、誤解を招きそうなものは避けるのが無難です。
さらに、2024年7月から施行された新規定により、国家安全機関が個人の電子機器を検査する権限が明記されました。 全ての渡航者が無差別に検査されるわけではないとされていますが、特定の状況下では検査が行われる可能性があるため、機密情報の取り扱いには最大限の注意が必要です。
持ち物検査で疑念を抱かれないよう、シンプルかつ実用的な荷造りを心がけ、不要なものは極力持ち込まないようにしましょう。
万が一の事態への備え:緊急連絡先と対処法
中国出張中に万が一、スパイ容疑をかけられたり、何らかのトラブルに巻き込まれたりした場合に備えて、事前に準備しておくことが重要です。
まず、日本の外務省が提供する「たびレジ」に必ず登録しましょう。 これにより、渡航先の安全情報を受け取れるほか、緊急事態発生時には安否確認や支援を受けることができます。 3ヶ月以上滞在する場合は「在留届」の提出が必要です。
次に、所属企業や団体の緊急連絡先、現地の日本国大使館・総領事館の連絡先を事前に確認し、すぐに取り出せるようにしておきましょう。 スマートフォンだけでなく、紙にも控えておくことをお勧めします。万が一、当局による聴取や拘束を受けた場合は、落ち着いて、まずは大使館・総領事館に連絡を取りたい旨を伝えることが重要です。 中国当局が提示する書類には、内容を十分に理解できない限り、安易にサインしないようにしましょう。
また、海外旅行保険への加入は必須です。 病気やケガだけでなく、盗難や不測の事態による損害をカバーできるものを選びましょう。クレジットカード付帯の保険もありますが、補償内容や適用条件を事前に確認しておくことが大切です。
企業側としては、出張者に対して、拘束された場合の具体的な対応フローを事前に教育しておく必要があります。 誰に連絡し、どのような情報を伝えるべきか、弁護士の手配はどうするかなど、具体的な手順を明確にしておくことで、万が一の際に迅速かつ適切な対応が可能になります。
これらの準備を怠らず、常に冷静に対応できるよう心がけることが、安全な出張に繋がります。
出張前に確認必須!中国のインターネット・通信環境
中国のインターネット環境は日本と大きく異なり、事前の対策が不可欠です。特に「グレートファイアウォール」と呼ばれる情報検閲システムにより、多くの海外ウェブサイトやSNSが利用できません。ここでは、中国出張におけるインターネット・通信環境の注意点と対策について解説します。
具体的には以下の点に注意しましょう。
- インターネット規制(グレートファイアウォール)
- VPNの利用と注意点
- SIMカード・Wi-Fiレンタルの選び方
- 情報セキュリティ対策
インターネット規制(グレートファイアウォール)の実態
中国のインターネット環境で最も特徴的なのは、「グレートファイアウォール(金盾)」と呼ばれる大規模な情報検閲システムです。 これにより、Google(Gmail、Google検索、Googleマップなど)、YouTube、LINE、X(旧Twitter)、Facebook、Instagramといった、日本では日常的に利用されている多くのウェブサイトやSNSへのアクセスがブロックされています。
これらのサービスが利用できないことは、ビジネス上のコミュニケーションや情報収集に大きな支障をきたす可能性があります。例えば、Gmailで重要なメールを確認したり、Googleマップで目的地を検索したりすることができません。代わりに、中国国内ではBaidu(百度)が検索エンジンとして、WeChat(微信)がメッセージングアプリとして広く利用されています。
このインターネット規制は、単に不便というだけでなく、情報統制の一環であり、政府にとって不都合と判断される情報へのアクセスを制限する目的があります。 そのため、規制の内容は常に変動し、以前はアクセスできていたサイトが突然ブロックされることもあります。出張者は、このような特殊なインターネット環境であることを十分に理解し、代替手段を準備しておく必要があります。
VPNの利用と注意点:本当に安全か?
中国のインターネット規制を回避する手段として、VPN(仮想プライベートネットワーク)の利用を検討する方も多いでしょう。 VPNは、IPアドレスを偽装することで、あたかも中国国外からアクセスしているかのように見せかけ、規制されているサイトやサービスを利用可能にする技術です。
しかし、中国政府はVPNの利用に対しても厳しい姿勢を取っており、多くの一般的なVPNサービスがブロックされています。 中国国内で政府に承認されていないVPNの利用や提供は規制の対象となる可能性があります。 そのため、全てのVPNが中国で確実に機能するわけではないことを理解しておく必要があります。
VPNを選ぶ際には、中国での接続実績があり、安定して利用できると評判のサービスを選ぶことが重要です。無料のVPNはセキュリティリスクが高く、通信速度も遅い場合が多いため、ビジネスでの利用には不向きです。また、VPNアプリのインストールや契約は、必ず中国へ出発する前に日本国内で済ませておく必要があります。 中国国内ではVPNサービスのウェブサイト自体がブロックされている可能性があるためです。
さらに、VPNを利用しているからといって、完全に匿名性が保証されるわけではありません。中国当局はVPNの通信も監視している可能性があり、違法なコンテンツへのアクセスや政府批判などを行えば、たとえVPN経由であっても追跡されるリスクがあることを忘れてはいけません。VPNはあくまで規制を回避するための一時的な手段と捉え、利用する際には細心の注意を払いましょう。
SIMカード・Wi-Fiレンタルの選び方
中国出張中のインターネット接続手段として、現地SIMカードの利用やWi-Fiルーターのレンタルが考えられます。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自身の利用スタイルに合ったものを選びましょう。
現地SIMカードは、比較的安価にデータ通信を利用できる可能性があります。しかし、購入手続きや設定が中国語になる場合があり、また、中国の電話番号が必要なアプリ(WeChat PayやAlipayなど)を利用する際に便利ですが、インターネット規制の対象となるため、VPNなしでは日本と同じようにSNSやGoogle系サービスは利用できません。 事前に日本で購入できる中国向けのSIMカードもありますが、利用できるデータ量や期間、対応機種などをよく確認する必要があります。
一方、Wi-Fiルーターのレンタルは、複数のデバイスを同時に接続でき、設定も比較的簡単なため、短期出張者には便利な選択肢です。 日本国内で事前にレンタル手続きを済ませておけば、中国到着後すぐにインターネットを利用開始できます。 特に、VPN機能が内蔵されているWi-Fiルーターを選べば、別途VPNアプリを設定する手間が省け、比較的安全に日本のサービスにアクセスできる可能性があります。 ただし、レンタル料金はSIMカードに比べて高くなる傾向があり、バッテリーの持ちやルーター本体の携帯性も考慮する必要があります。
どちらを選ぶにしても、信頼できる業者から提供されるサービスを選ぶことが重要です。 口コミや評判を参考に、自分の滞在期間やデータ使用量、利用目的に合ったプランを選びましょう。
情報セキュリティ対策:盗聴・ハッキングのリスク
中国出張においては、情報セキュリティ対策が極めて重要です。反スパイ法のリスクだけでなく、盗聴やハッキングによる情報漏洩のリスクも常に意識する必要があります。
まず、持ち込む電子機器は最小限にし、業務に不要なデータは極力削除しておきましょう。 特に機密情報や個人情報が含まれるファイルは、事前に強力なパスワードで暗号化する、あるいは日本国内の安全なサーバーにバックアップしておくなどの対策が不可欠です。 出張専用のクリーンなPCやスマートフォンを用意することも有効な手段です。
ホテルや公共のWi-Fiはセキュリティが脆弱な場合が多く、安易に接続するのは避けるべきです。どうしても利用する場合は、VPNを使用するなどして通信を暗号化しましょう。 また、ホテルの客室内であっても、パソコンやスマートフォンを放置しないように心がけてください。 短時間であっても、物理的に侵入されマルウェアを仕込まれるといった事例も報告されています。
電子メールやチャットでのやり取りも注意が必要です。機密性の高い情報は、暗号化された通信手段を利用し、内容も慎重に吟味しましょう。不審なメールの添付ファイルを開いたり、見慣れないリンクをクリックしたりしないことは基本中の基本です。
さらに、USBメモリなどの外部記憶媒体の取り扱いにも注意が必要です。安易に他人から渡されたUSBメモリを自分のPCに接続したり、逆に自分のUSBメモリを他人のPCに接続したりすることは避けましょう。マルウェア感染のリスクがあります。
これらの対策を徹底し、常に情報セキュリティ意識を高く持つことが、中国出張におけるリスクを軽減するために不可欠です。
その他中国出張で注意すべきこと
反スパイ法やインターネット環境以外にも、中国出張で注意すべき点はいくつかあります。文化や習慣の違い、支払い方法、健康管理など、事前に知っておくことでスムーズな出張に繋がります。ここでは、その他の重要な注意点を解説します。
具体的には以下の点に注意しましょう。
- 支払い方法:キャッシュレス決済と現金
- ビザ・入国手続き
- 文化・習慣の違いとビジネスマナー
- 健康管理と医療事情
- 治安と防犯対策
支払い方法:キャッシュレス決済と現金
中国ではキャッシュレス決済が非常に普及しており、Alipay(支付宝)やWeChat Pay(微信支付)が主流です。 都市部では、露店やタクシーなどでもこれらのスマホ決済が一般的なため、現金が使えない、あるいは嫌がられる場面も少なくありません。
しかし、これらの決済アプリを利用するには、中国の銀行口座や電話番号が必要となる場合が多く、短期出張者がすぐに利用を開始するのは難しいのが現状です。 一部のサービスでは、国際クレジットカードを紐付けて利用できる場合もありますが、事前に確認が必要です。
クレジットカードについては、VISAやMastercardなどの国際ブランドであっても、全ての店舗で利用できるわけではありません。 特にローカルな飲食店や小規模な店舗では使えないことが多いです。銀聯カード(UnionPay)は比較的広く利用できます。
そのため、ある程度の中国人民元の現金も用意しておくことをお勧めします。 空港や現地の銀行、ATMで両替やキャッシングが可能ですが、偽札のリスクも考慮し、信頼できる場所で両替しましょう。 高額紙幣は受け取りを拒否されることもあるため、少額紙幣も持っておくと便利です。
出張前に、利用可能な支払い方法について訪問先企業に確認したり、同行する現地スタッフに協力を依頼したりするのも良いでしょう。
ビザ・入国手続き
中国へ出張する際には、適切なビザの取得が必須です。 ビジネス目的の場合、通常はMビザ(商用ビザ)が必要となります。 ビザ申請には、招聘状や訪問先企業からの情報提供が求められる場合がありますので、早めに準備を始めましょう。
パスポートの残存有効期間は、滞在予定期間に加えて最低でも6ヶ月以上必要です。 これを満たしていないと、ビザ申請が受理されなかったり、入国を拒否されたりする可能性がありますので、必ず確認してください。
入国審査時には、パスポート、ビザ、航空券の他に、滞在先や目的などを質問されることがあります。スムーズな入国のため、ホテルの予約確認書や招聘状のコピーなどを携帯しておくと安心です。
また、税関手続きに関しても注意が必要です。持ち込みが禁止・制限されている物品(特定の食品、植物、動物製品など)や、高額な現金、業務用の機材などを持ち込む場合は、事前に申告が必要かどうかを確認しましょう。
新型コロナウイルス感染症に関する入国制限は、2023年以降緩和され、PCR検査の陰性証明書やワクチン接種証明書の提出は不要となっています。 ただし、発熱などの症状がある場合は税関に申告する必要があるため、体調管理には十分注意しましょう。 最新の情報は、在中国日本国大使館や総領事館のウェブサイトで確認することをお勧めします。
文化・習慣の違いとビジネスマナー
中国でのビジネスを円滑に進めるためには、現地の文化や習慣、ビジネスマナーを理解し、尊重することが重要です。日本とは異なる点も多いため、事前に知識を深めておきましょう。
まず、挨拶や名刺交換は日本と似ていますが、役職や年齢を重視する傾向があります。相手の役職を正確に把握し、敬意を払った対応を心がけましょう。名刺は両手で受け渡し、受け取った名刺はすぐにしまわず、テーブルの上に並べて相手を確認しながら商談を進めるのが一般的です。
ビジネスの場では、メンツ(面子)を非常に大切にする文化があります。相手の立場を尊重し、人前で恥をかかせたり、直接的な批判をしたりするような言動は避けるべきです。意見を述べる際も、相手のメンツを潰さないよう、婉曲的な表現を心がけると良いでしょう。
食事の席も重要なコミュニケーションの場となります。乾杯の習慣があり、何度も乾杯を繰り返すことがあります。お酒が飲めない場合は、無理強いされることは少ないですが、正直に伝えることが大切です。また、料理は基本的に大皿で提供され、取り分けて食べます。出された料理を残すのは失礼にあたる場合もあるため、食べられる量を考えて取りましょう。
服装については、ビジネスシーンではスーツが無難ですが、業種や企業の雰囲気によっては、よりカジュアルな服装が許容されることもあります。訪問先の企業文化に合わせて調整しましょう。
また、時間に対する考え方も日本と異なる場合があります。約束の時間に遅れることは避けるべきですが、相手が多少遅れてくることに対して寛容な姿勢も必要かもしれません。交通渋滞なども考慮し、時間に余裕を持った行動を心がけましょう。
簡単な中国語の挨拶(ニーハオなど)を覚えておくと、相手に好印象を与え、コミュニケーションのきっかけになることもあります。
健康管理と医療事情
中国出張中の健康管理は非常に重要です。慣れない環境や食事、気候の変化などで体調を崩す可能性も考慮し、事前の準備と現地での注意を怠らないようにしましょう。
まず、海外旅行保険への加入は必須です。 中国の医療費は高額になる場合があり、特に外国人向けの私立病院では日本の数倍以上の費用がかかることもあります。 万が一の入院や手術、日本への緊急移送が必要になった場合に備え、十分な補償内容の保険を選びましょう。
常備薬は必ず日本から持参しましょう。 現地でも薬局はありますが、言葉の問題や、日本で使っている薬と同じものが手に入るとは限りません。普段から服用している薬がある場合は、医師に相談の上、英文の処方箋や薬剤証明書を用意しておくと安心です。
食事に関しては、生水や水道水の飲用は避け、ミネラルウォーターを利用しましょう。屋台や衛生状態の不明な飲食店での食事は、食中毒のリスクがあるため注意が必要です。火の通ったものを中心に、清潔なレストランを選ぶように心がけてください。
大気汚染も都市によっては深刻な問題です。 特に呼吸器系が弱い方は、マスクを持参するなどの対策を検討しましょう。現地の天気予報や大気汚染指数を確認し、汚染がひどい日は長時間の外出を控えるなどの対応も必要です。
トイレ事情も日本とは異なります。 公衆トイレではトイレットペーパーが備え付けられていない場合が多いため、ポケットティッシュを常に携帯しておくと良いでしょう。
万が一、現地で体調が悪くなった場合は、無理をせず早めに医療機関を受診しましょう。日本語が通じる病院や、海外旅行保険のキャッシュレスサービスに対応している病院を事前に調べておくと安心です。
治安と防犯対策
中国の治安は比較的良いとされていますが、スリや置き引き、ぼったくりなどの軽犯罪には注意が必要です。 特に観光地や人混み、空港、駅などでは貴重品の管理を徹底しましょう。
パスポートや多額の現金、クレジットカードなどの貴重品は、ホテルのセーフティボックスに保管するか、分散して身につけるなど工夫しましょう。 外出時は、カバンを体の前に持つ、ズボンの後ろポケットに財布を入れないなど、基本的な防犯対策を怠らないようにしてください。
タクシーを利用する際は、正規のタクシー乗り場から乗車し、メーターを使用しているか確認しましょう。 白タク(無許可タクシー)の利用はトラブルの原因となるため避けるべきです。降車時には必ず領収書を受け取り、忘れ物がないか確認しましょう。 配車アプリも普及していますが、利用する際は安全なアプリを選び、乗車前に車両情報や運転手情報を確認することが大切です。
夜間の一人歩きや、治安の悪いとされるエリアへの立ち入りは避けるのが賢明です。繁華街では、客引きや見知らぬ人からの不審な誘いには乗らないようにしましょう。
また、反日感情が高まる可能性のある特定の記念日や時期には、言動に注意し、デモなどが行われている場所には近づかないようにしましょう。 最新の治安情報は、外務省の海外安全ホームページや在中国日本国大使館・総領事館の情報を確認することをお勧めします。
万が一、犯罪被害に遭った場合は、速やかに現地の警察に届け出るとともに、日本大使館や総領事館にも連絡しましょう。
よくある質問
中国出張に関するよくある質問とその回答をまとめました。出張準備の参考にしてください。
中国出張でVPNは必須ですか?
中国ではインターネット規制(グレートファイアウォール)により、Google、Facebook、X(旧Twitter)、LINEなど多くの海外ウェブサイトやSNSが利用できません。 そのため、これらのサービスを利用したい場合や、日本と同じようにインターネットを使いたい場合には、VPNの利用が推奨されます。 VPNを利用することで、中国のインターネット規制を回避し、日本や他の国のサーバーを経由してインターネットに接続することができます。
ただし、中国政府はVPNの利用に対しても規制を強化しており、全てのVPNが中国で安定して利用できるわけではありません。 無料のVPNや信頼性の低いVPNは、接続が不安定だったり、セキュリティ上のリスクがあったりするため、ビジネスでの利用には適していません。有料であっても、中国での利用実績があり、評判の良いVPNサービスを選ぶことが重要です。また、VPNアプリのインストールや契約は、必ず中国へ出発する前に日本国内で済ませておく必要があります。
中国でスパイと疑われないためにはどうすれば良いですか?
中国でスパイと疑われないためには、慎重な行動と情報管理が不可欠です。まず、軍事施設や政府関連施設、立ち入り禁止区域への接近や写真撮影は絶対に避けましょう。 地図や測量機器の所持も誤解を招く可能性があります。 政治的に敏感な話題や政府批判と受け取られかねない言動は、公の場だけでなくSNSなどでも慎むべきです。
持ち物に関しても、機密情報や大量の業務データが入った電子機器の持ち込みは最小限にし、必要な場合は暗号化などの対策を講じましょう。 GPS機能付きの機器や高性能カメラの使用にも注意が必要です。不審な人物からの接触や依頼には応じず、安易に情報を提供したり、金銭を受け取ったりしないようにしましょう。
改正「反スパイ法」ではスパイ行為の定義が拡大されているため、通常の業務範囲内であっても、情報収集活動と見なされる可能性のある行為には注意が必要です。 事前に自社のコンプライアンス部門や専門家と相談し、問題となりうる行為を避けるようにしましょう。
中国出張で気をつけるべき法律はありますか?
中国出張で特に注意すべき法律は、「反スパイ法」です。 2023年に改正され、スパイ行為の定義が拡大し、取り締まりが強化されています。 これにより、意図せずともスパイ行為と見なされるリスクがあるため、言動や持ち物、情報収集活動には細心の注意が必要です。
その他にも、「サイバーセキュリティ法」も重要です。 これは、インターネット上の情報管理やデータ保護に関するもので、企業活動にも影響を与えます。また、「出入国管理法」により、外国人はパスポートの携帯が義務付けられています。
これらの法律に違反した場合、罰金だけでなく、拘束や国外退去、さらには刑事罰に処される可能性もあります。事前に在中国日本国大使館や外務省のウェブサイトなどで関連情報を確認し、現地の法律を遵守することが重要です。
中国のホテルで盗聴される可能性はありますか?
中国のホテルで盗聴される可能性はゼロではありません。 特に、政府関係者や重要な技術情報を持つビジネスパーソンなどがターゲットとされるリスクが指摘されています。過去には、ホテルの客室に侵入され、パソコンにマルウェアを仕込まれたといった事例も報告されています。
そのため、ホテル室内であっても、機密性の高い会話は慎む、パソコンやスマートフォンを放置しない、重要な書類は施錠できるスーツケースに保管するなどの対策を心がけましょう。 また、不審な機器が設置されていないか、部屋に入った際に確認することも有効かもしれません。ただし、巧妙に隠されている場合もあるため、完全に見抜くことは困難です。
重要な会議や商談は、ホテルの客室ではなく、セキュリティ対策が施された会議室などで行うことを検討しましょう。情報漏洩のリスクを常に意識し、慎重に行動することが大切です。
中国出張中に体調が悪くなったらどうすれば良いですか?
中国出張中に体調が悪くなった場合は、無理をせず早めに医療機関を受診することが大切です。まずは、ホテルのフロントや現地の同僚、取引先などに相談し、近くの病院を紹介してもらいましょう。
外国人向けの私立病院や、日本語が通じる、あるいは日本語通訳サービスのある病院を選ぶとスムーズに受診できます。事前に、海外旅行保険の提携病院やキャッシュレスサービスが利用できる病院を調べておくと安心です。保険会社のサポートデスクに連絡すれば、適切な病院を紹介してくれる場合もあります。
受診の際には、パスポートと海外旅行保険証を必ず持参しましょう。症状を正確に伝えるために、翻訳アプリや事前に症状を中国語でメモしておくのも有効です。常備薬を持参している場合は、それも医師に見せると良いでしょう。
軽度の症状であれば、薬局で薬を購入することも可能ですが、薬剤師に相談し、用法・用量をよく確認してください。ただし、自己判断せずに、できる限り医師の診察を受けることをお勧めします。
まとめ
- 反スパイ法改正でスパイ行為の定義が拡大。
- 軍事施設等の撮影、政治的言動は避ける。
- 機密情報の持ち込みは最小限に、暗号化を。
- 緊急連絡先(大使館等)を事前に確認。
- 「たびレジ」登録と海外旅行保険加入は必須。
- グレートファイアウォールで多くの海外サイトが利用不可。
- VPN利用は政府非承認の場合リスクあり。
- VPNアプリは渡航前に日本でインストール。
- キャッシュレス決済主流、現金も一部必要。
- Mビザ取得、パスポート残存期間確認。
- メンツを重んじる文化、直接的批判は避ける。
- 生水飲用不可、衛生的な飲食店を選ぶ。
- スリ・置き引きに注意、貴重品管理を徹底。
- ホテルの盗聴リスクも考慮し慎重に行動。
- 体調不良時は無理せず医療機関を受診。