家庭菜園で人気のブロッコリー。しかし、丹精込めて育てていると、いつの間にか葉が穴だらけに…なんて経験はありませんか?その犯人の多くは「青虫」です。せっかくの収穫を台無しにされたくない、でも強い農薬は使いたくない。そんなお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。本記事では、ブロッコリーを悩ます青虫の正体から、無農薬でできる効果的な予防策、発生してしまった際の駆除方法、さらには収穫後の美味しい洗い方まで、あなたのブロッコリー栽培を成功に導くための対策を網羅的に解説します。
ブロッコリーを襲う青虫の正体とは?

「青虫」と一括りにされがちですが、実はブロッコリーに集まる害虫にはいくつかの種類がいます。敵を知ることが、対策の第一歩です。まずは、あなたのブロッコリーを食べている犯人が誰なのか、その正体を見極めましょう。
- モンシロチョウの幼虫「アオムシ」
- 小さな強敵「コナガ」の幼虫
- 夜行性の厄介者「ヨトウムシ」
- その他注意すべき害虫
モンシロチョウの幼虫「アオムシ」
家庭菜園で最もよく見かける緑色のイモムシ、それがモンシロチョウの幼虫、通称「アオムシ」です。 春から秋にかけてひらひらと飛ぶモンシロチョウが、ブロッコリーなどアブラナ科の植物の葉の裏に卵を産み付けます。 孵化した幼虫は、旺盛な食欲で葉をどんどん食べてしまいます。体長は大きいもので3cmほどになり、見つけやすいのが特徴ですが、その分食害のスピードも速いので注意が必要です。 幸いなことに、アオムシ自体に毒性はありません。
小さな強敵「コナガ」の幼虫
アオムシよりも小さい体長1cmほどの小さな幼虫が「コナガ」です。 この虫もアブラナ科の野菜を好み、葉の裏側から薄皮を残すように食べるのが特徴です。 そのため、葉が白っぽくレースのように透けて見えるようになったら、コナガの発生を疑いましょう。 コナガは世代交代が非常に早く、繁殖力も高いため、一度発生するとあっという間に数が増えてしまいます。さらに、多くの薬剤に対して抵抗性を持ちやすいという厄介な性質も持っています。
夜行性の厄介者「ヨトウムシ」
昼間は株元の土の中に隠れていて、夜になると活動を始めるのが「ヨトウムシ(夜盗虫)」です。 その名の通り、夜の間に葉や茎、時には花蕾(からい)まで食い荒らす厄介な害虫です。 昼間に姿が見えないため、被害だけが拡大していくことも少なくありません。葉に大きな穴が開いていたり、フンが落ちていたりしたら、株元の土を少し掘って探してみてください。ヨトウガという蛾の幼虫で、孵化直後は集団でいますが、成長すると分散して被害を広げます。
その他注意すべき害虫
ブロッコリーには青虫以外にも注意すべき害虫がいます。代表的なのが「アブラムシ」です。 体長1〜3mmほどの小さな虫で、新芽や葉の裏、茎などにびっしりと群生し、汁を吸って株を弱らせます。 アブラムシはウイル病を媒介することもあり、その排泄物が原因で「すす病」という病気を引き起こすこともあります。 また、芯の部分に潜り込んで食害する「ハイマダラノメイガ」や、植え付け直後の苗の根元を食いちぎる「ネキリムシ」なども、ブロッコリー栽培では注意が必要です。
【まずやるべき】ブロッコリーの青虫を寄せ付けない!最強の予防対策4選

害虫対策の基本は、なんといっても「予防」です。虫が発生してから駆除するのは大変ですが、最初から寄せ付けない環境を作れば、栽培の手間はぐっと楽になります。ここでは、農薬に頼らなくてもできる、効果的な4つの予防策をご紹介します。
- 最強の物理防御!防虫ネットの正しい使い方
- 植えるだけで効果あり!コンパニオンプランツを活用しよう
- 手軽にできる!無農薬スプレーでの予防
- 株を元気に育てる!日々の栽培管理のコツ
最強の物理防御!防虫ネットの正しい使い方
最も確実で効果的な予防策が、防虫ネットでブロッコリー全体を覆ってしまう方法です。 蝶や蛾などの成虫が飛来して卵を産み付けるのを物理的に防ぐため、青虫の発生を根本から断つことができます。 植え付け直後からすぐにネットをかけるのがポイントです。
ネットを選ぶ際は、網目が1mm以下、できれば0.4mm〜0.6mmの細かいものを選びましょう。 コナガのような小さな害虫もシャットアウトできます。設置する際は、支柱を使ってネットが葉に直接触れないように空間を作り、裾に土をかぶせるなどして隙間ができないようにきっちりと覆うことが重要です。 ブロッコリーの成長に合わせて、ネットが窮屈にならないように支柱の高さを調整してあげましょう。
植えるだけで効果あり!コンパニオンプランツを活用しよう
コンパニオンプランツとは、一緒に植えることでお互いに良い影響を与え合う植物のことです。 害虫対策として非常に有効で、無農薬栽培の強い味方になります。ブロッコリー(アブラナ科)の青虫対策には、キク科の植物が特に効果的です。
モンシロチョウやコナガは、キク科植物が放つ独特の香りを嫌う性質があります。 そのため、ブロッコリーの株間に以下のようなキク科の野菜を植えることで、害虫を遠ざける効果が期待できます。
- レタス(特にサニーレタス)
- 春菊
- サンチュ
これらのコンパニオンプランツは、害虫を遠ざけるだけでなく、収穫して食べることもできるので一石二鳥です。
手軽にできる!無農薬スプレーでの予防
防虫ネットをかけるのが難しい場合や、補助的な対策として、手作りの無農薬スプレーも有効です。定期的に散布することで、害虫を寄せ付けにくくする効果が期待できます。
代表的なものに、食酢スプレーがあります。 水で30倍~50倍程度に薄めた食酢をスプレーボトルに入れ、葉の表裏にまんべんなく散布します。お酢の殺菌効果や、害虫が嫌う匂いで忌避効果を発揮します。ただし、濃度が濃すぎると植物を傷める可能性があるので注意しましょう。また、雨が降ると流れてしまうため、こまめな散布が必要です。
株を元気に育てる!日々の栽培管理のコツ
害虫は、弱っている株を狙ってやってくる傾向があります。そのため、日々の栽培管理を適切に行い、ブロッコリーの株自体を健康に育てることが、結果的に害虫に強い株を作ることにつながります。
特に重要なのが、追肥と土寄せです。 植え付けから2週間後くらいを目安に1回目の追肥を行い、その後2〜3週間おきに追肥をすることで、葉や茎がしっかりと育ちます。 追肥と同時に株元に土を寄せる「土寄せ」を行うと、株が安定し、さらに元気に成長します。健康な株は病害虫への抵抗力も高まるため、丁寧な管理を心がけましょう。
発生してしまったら?ブロッコリーの青虫を駆除する方法

予防策を講じていても、わずかな隙間から侵入され、青虫が発生してしまうこともあります。発見したら、被害が広がる前に迅速に対処することが重要です。ここでは、発生してしまった青虫の駆除方法を、無農薬から農薬使用まで3つの段階に分けて解説します。
- 地道だが確実!手で取り除く方法
- 無農薬でも安心!BT剤(生物農薬)を使ってみよう
- どうしてもダメな時に!化学農薬(殺虫剤)の正しい使い方
地道だが確実!手で取り除く方法
最も原始的ですが、最も確実で安全な方法が、手や割り箸で一匹ずつ取り除くことです。 青虫の数がまだ少ない初期段階であれば、この方法が最も手っ取り早いでしょう。葉の裏側は特に念入りにチェックしてください。 見つけた青虫は、捕殺するか、畑から遠い場所に離します。ヨトウムシの場合は夜行性なので、早朝や夜間に懐中電灯で照らしながら探すと見つけやすいです。
無農薬でも安心!BT剤(生物農薬)を使ってみよう
「手で取るのは苦手」「数が増えてきて追いつかない」という方におすすめなのが、BT剤(ビーティーざい)です。 BT剤は、バチルス・チューリンゲンシスという自然界に存在する細菌を利用した生物農薬で、有機JAS栽培でも使用が認められている安全性の高い殺虫剤です。
この薬剤の最大の特徴は、アオムシやコナガ、ヨトウムシといったチョウ目の幼虫にしか効果がない点です。 人や鳥、ミツバチなどの益虫には影響がありません。 害虫がBT剤の付着した葉を食べると、その消化管の中で毒素が発生し、食欲をなくして死に至ります。 効果が現れるまでに1〜3日かかりますが、食べた直後から食害は止まるため、被害の拡大を防ぐことができます。 「ゼンターリ」や「トアロー」といった商品がホームセンターなどで入手可能です。
どうしてもダメな時に!化学農薬(殺虫剤)の正しい使い方
BT剤でも抑えきれないほど大量発生してしまった場合や、即効性を求める場合には、化学合成された農薬(殺虫剤)の使用も選択肢の一つとなります。 「オルトラン粒剤」を株元に撒くタイプや、「ベニカベジフルスプレー」のように直接散布するタイプなど様々な種類があります。
化学農薬を使用する際は、必ず商品のラベルに記載されている使用方法、希釈倍率、使用回数、収穫前の使用禁止期間などを厳守してください。 適用作物に「ブロッコリー」、適用害虫に「アオムシ」や「コナガ」などの記載があることを確認してから使用しましょう。 同じ薬を使い続けると害虫に抵抗性がつくことがあるため、異なる系統の薬剤をローテーションで使用するのも効果的です。
虫食いブロッコリーは食べられる?気になる疑問と美味しい洗い方

青虫との戦いを乗り越え、いよいよ収穫。しかし、少し虫に食われた跡があったり、蕾の中に虫がいないか心配になったりすることもあるでしょう。ここでは、収穫後のブロッコリーに関する疑問にお答えし、安心して美味しく食べるための洗い方をご紹介します。
- 結論:虫がいたブロッコリーは食べても大丈夫?
- 虫や汚れを完全除去!ブロッコリーの正しい洗い方
- 美味しく安全に食べるための調理法
結論:虫がいたブロッコリーは食べても大丈夫?
結論から言うと、ブロッコリーについているアオムシやコナガなどの虫、またその卵には毒性がないため、万が一誤って食べてしまっても健康上の問題はほとんどありません。 むしろ、虫がいるということは、強い農薬が使われていない安全な野菜である証拠と考えることもできます。
もちろん、気持ちの良いものではないので、調理前にしっかり取り除くことが大切です。虫食いの跡がある部分や、変色している部分を包丁で取り除けば、問題なく食べることができます。
虫や汚れを完全除去!ブロッコリーの正しい洗い方
ブロッコリーは蕾が密集しているため、上から水をかけただけでは内部の汚れや虫をきれいに洗い流すことができません。 ここでは、効果的に虫や汚れを取り除く洗い方をご紹介します。
基本のつけおき洗い
最も簡単で効果的なのが、つけおき洗いです。
- ボウルにたっぷりの水を張ります。
- ブロッコリーを小房に分け、蕾の部分を下にして水に沈めます。 丸ごと洗う場合は、逆さまにして沈めます。
- そのまま15分〜20分ほど放置します。 すると、中にいた虫や汚れが水面に浮いてきます。
- 最後に、水の中でブロッコリーを振るようにして洗い、きれいな水で洗い流せば完了です。
塩水・酢水を使った洗い方
つけおき洗いの際に、水に少量の塩やお酢、または食用の重曹を加えると、浸透圧の変化でさらに虫が外に出やすくなり、殺菌効果も期待できます。 水に溶かしてからブロッコリーをつけるようにしましょう。洗い終わった後は、塩気や酸味が残らないようにしっかりと流水ですすいでください。
美味しく安全に食べるための調理法
どうしても虫が気になるという方は、茹でる、蒸すなど加熱調理をすれば、万が一残っていた虫や卵も死滅するので、より安心して食べることができます。生のままサラダなどで食べる場合は、特に念入りに洗浄することをおすすめします。 小房に分ける際に、茎の部分も縦に半分にカットすると、中に虫が隠れていないか確認しやすくなります。
よくある質問

Q. スーパーのブロッコリーに虫がいないのはなぜですか?
A. 流通しているブロッコリーの多くは、生産段階で適切な農薬の使用や防虫ネットなどの害虫管理が行われているためです。 また、冬の寒い時期に収穫されるブロッコリーは、虫の活動が鈍いため、もともと害虫被害が少ない傾向にあります。 出荷前には選別や洗浄の工程もあり、虫がついていない状態で店頭に並びます。
Q. 青虫以外の害虫(アブラムシなど)の対策は?
A. アブラムシには、牛乳や石鹸水を薄めたスプレーが効果的です。また、天敵であるテントウムシを放つのも一つの手です。ヨトウムシやネキリムシは、米ぬかを撒いておびき寄せて捕殺する方法もあります。本記事で紹介した防虫ネットやコンパニオンプランツ、BT剤などは、これらの害虫の一部にも効果が期待できます。
Q. 防虫ネットはいつからいつまでかければいいですか?
A. 苗を植え付けた直後から収穫する直前まで、常にかけっぱなしにしておくのが最も効果的です。 追肥などで一時的にネットを外す際は、作業が終わったらすぐに元に戻し、害虫が侵入する隙を与えないようにしましょう。
Q. BT剤は本当に安全ですか?
A. はい、BT剤はチョウ目の幼虫の消化器官にのみ作用する特殊なタンパク質毒素を利用しているため、人間やペット、鳥、魚、そして蝶以外の昆虫(ミツバチやテントウムシなど)には全く害がありません。 有機JAS規格でも使用が認められている、環境にやさしい農薬です。
Q. ブロッコリーの茎に黒い点々があるのは虫ですか?
A. 茎にある黒い点々は、虫や病気ではなく、ポリフェノールによる変色や、低温にあたったことによる生理現象であることがほとんどです。 食味や品質に問題はなく、そのまま食べることができます。ただし、明らかに腐敗している場合や異臭がする場合は食べるのをやめましょう。
まとめ

- ブロッコリーの青虫は主にモンシロチョウの幼虫。
- コナガやヨトウムシも同様に葉を食害する。
- 最強の予防策は目の細かい防虫ネット。
- 植え付け直後から収穫まで隙間なく覆うのがコツ。
- コンパニオンプランツとしてキク科の野菜が有効。
- レタスや春菊を一緒に植えると害虫を遠ざける。
- 発生初期は手で取り除くのが確実。
- 数が増えたら無農薬のBT剤がおすすめ。
- BT剤はチョウ目の幼虫にしか効かず安全性が高い。
- 最終手段として化学農薬があるが用法用量を守る。
- 虫がいたブロッコリーも取り除けば食べられる。
- 虫の正体はアオムシなどで毒性はない。
- 洗い方はボウルでのつけおき洗いが効果的。
- 塩や酢を水に加えるとさらに虫が出やすい。
- 健康な株は害虫に強いので日々の管理も大切。