大切に育てているシソやバジル、ミントなどのハーブの葉が、いつの間にか白い糸で綴られていたり、穴だらけになっていたり…。そんな悲しい経験はありませんか?もしかしたら、その犯人は「ベニフキノメイガ」という害虫かもしれません。この小さな幼虫は、特にシソ科の植物を好み、あっという間に被害を広げてしまいます。本記事では、そんな厄介なベニフキノメイガに効果的なスプレー剤から、農薬を使わない駆除・予防方法まで、あなたの悩みを解決するための情報を詳しく解説します。
ベニフキノメイガとは?まずは敵を知ろう

ベニフキノメイガの効果的な対策を行うためには、まず相手のことをよく知ることが重要です。ここでは、ベニフキノメイガの生態や特徴、発生しやすい時期や被害のサインについて詳しく見ていきましょう。
- ベニフキノメイガの生態と特徴
- 発生時期とサイクル
- 被害に遭いやすい植物
- 被害のサイン
ベニフキノメイガの生態と特徴
ベニフキノメイガは、ツトガ科ノメイガ亜科に分類される小さな蛾の一種です。 成虫は黄色い翅に赤褐色の帯模様があるのが特徴で、開張(翅を広げた大きさ)は約15mmほどです。 しかし、植物に直接的な被害を与えるのは、その幼虫です。
幼虫は、孵化したばかりの頃は非常に小さいですが、成長すると体長15mmほどのイモムシになります。 体色は黄緑色で、黒い斑点模様があるのが特徴的です。 老齢幼虫になると赤茶色っぽくなる個体もいます。 この幼虫が、白い糸を吐いて葉を綴り合わせ、その中で葉や新芽を食害するのです。
発生時期とサイクル
ベニフキノメイガの発生時期は、主に5月から10月頃です。 この期間中、年に3回から5回ほど発生を繰り返します。 特に気温が高く湿気の多い夏場に活動が活発になる傾向があります。 成虫は夜間に飛来し、植物の葉の裏などに卵を産み付けます。 卵は半透明で小さいため、孵化するまで気づかないことがほとんどです。 孵化した幼虫が葉を食べながら成長し、やがて蛹になり、成虫となってまた卵を産む、というサイクルを繰り返すため、一度発生すると次々と被害が拡大してしまうのです。
被害に遭いやすい植物
ベニフキノメイгаは、特にシソ科の植物を好んで食害します。 家庭菜園やベランダガーデニングで人気のハーブ類が標的になりやすいのが特徴です。
具体的には、以下のような植物が被害に遭いやすいので注意が必要です。
- シソ(大葉)
- エゴマ
- バジル
- ミント類(スペアミントなど)
- ローズマリー
- サルビア類
- レモンバーム
- タイム
特に、柔らかい新芽や斑入りの品種は狙われやすい傾向があります。 逆に、硬く丈夫に育った葉は被害が少ないようです。
被害のサイン
ベニフキノメイガの被害は、初期段階では気づきにくいことがあります。しかし、日々の観察でいくつかのサインに気付くことができれば、早期発見・早期対策が可能です。
以下のようなサインを見つけたら、ベニフキノメイガの発生を疑いましょう。
- 葉が内側に巻かれていたり、数枚の葉がくっついている
- 蜘蛛の巣のような白い糸が張られている
- 葉に穴が開いている、または葉が食べられている
- 葉の周りに細かい黒いフンが落ちている
- 植物全体は元気なのに、一部の枝先だけが萎れたり枯れたりしている
これらのサインは、幼虫が糸で巣を作り、その中で葉を食べている証拠です。 葉をそっと開いてみると、中に黄緑色の幼虫が隠れているのを確認できるはずです。
【即効性重視】ベニフキノメイガにおすすめのスプレー剤5選

ベニフキノメイガの被害が広がってしまった場合、手軽で即効性のある殺虫スプレー剤の使用が効果的です。ここでは、園芸店やホームセンターで入手しやすく、ベニフキノメイガに効果が期待できる代表的なスプレー剤を5つご紹介します。
- 住友化学園芸「ベニカXファインスプレー」
- 住友化学園芸「ベニカベジフルスプレー」
- アース製薬「アースガーデン いろいろな植物つよし」
- 住友化学園芸「GFオルトランC」
- 三井化学クロップ&ライフソリューション「トレボン乳剤」
それぞれの特徴を比較し、ご自身の状況に合った薬剤を選びましょう。
商品名 | 販売会社 | 特徴 | ポイント |
---|---|---|---|
ベニカXファインスプレー | 住友化学園芸 | 殺虫・殺菌効果。速効性と持続性(約1ヶ月)。病気の予防・治療にも。 | 害虫だけでなく、うどんこ病などの病気も同時に防除したい場合におすすめ。 |
ベニカベジフルスプレー | 住友化学園芸 | 野菜や果樹向け。速効性と持続性。収穫前日まで使える作物も多い。 | 食用ハーブや野菜に使いたい方に安心。 |
アースガーデン いろいろな植物つよし | アース製薬 | 幅広い植物に使える。効果が約1ヶ月持続。逆さスプレー対応。 | 葉裏に隠れた害虫にも散布しやすい。 |
GFオルトランC | 住友化学園芸 | 浸透移行性で、葉の裏や巻いた葉の中にいる害虫にも効果。 | すでに葉が巻かれてしまった状態でも効果が期待できる。 |
トレボン乳剤 | 三井化学クロップ&ライフソリューション | プロも使用する農薬。幅広い害虫に効果。速効性と残効性。 | 希釈して使用するタイプ。広範囲の防除や、他の害虫にも悩んでいる場合に。 |
住友化学園芸「ベニカXファインスプレー」
「ベニカXファインスプレー」は、害虫と病気にダブルで効く、家庭園芸の強い味方です。 ベニフキノメイガのような食害する害虫はもちろん、アブラムシなどにも効果を発揮します。速効性と持続性(アブラムシで約1カ月)を兼ね備えているのが大きな魅力です。
さらに、うどんこ病や黒星病といった植物がかかりやすい病気の予防・治療効果もあるため、一本で害虫と病気の両方に対処できます。 ツツジやバラなど、幅広い植物に使えるので、ガーデニング全般で活躍してくれるでしょう。

住友化学園芸「ベニカベジフルスプレー」
「ベニカベジフルスプレー」は、その名の通り野菜(ベジタブル)と果物(フルーツ)に使えることをコンセプトにした殺虫スプレーです。 シソやバジルなど、収穫して食べる予定のハーブに使うのに適しています。
速効性に優れており、薬剤がかかった害虫を素早く退治します。 また、成分が葉に浸透していくため、ある程度の持続効果も期待できます。 収穫前日まで使用できる作物も多く、安全面に配慮されている点も嬉しいポイントです。

アース製薬「アースガーデン いろいろな植物つよし」
アース製薬から販売されている「アースガーデン いろいろな植物つよし」は、さまざまな植物の害虫対策に使える便利なスプレーです。 ベニフキノメイガはもちろん、アブラムシ、ハダニ、ケムシなど幅広い害虫に効果があります。
この商品の特徴は、効果が約1ヶ月持続すること。 予防効果が高く、一度散布しておけば長期間にわたって害虫の発生を抑えることができます。また、容器が逆さまでもスプレーできるため、葉の裏に潜んでいるベニフキノメイガの幼虫にも薬剤をかけやすいというメリットがあります。

住友化学園芸「GFオルトランC」
「GFオルトランC」は、2種類の有効成分を配合したエアゾールタイプの殺虫剤です。 この薬剤の最大の特徴は、浸透移行性があることです。
浸透移行性とは、薬剤が葉や根から吸収され、植物体内を行き渡る性質のことです。これにより、スプレーが直接かからなかった葉の裏や、ベニフキノメイガの幼虫が隠れている巻かれた葉の内側にも効果が及びます。 すでに被害が進行し、幼虫が葉に潜んでしまっている場合に特に有効な選択肢と言えるでしょう。

三井化学クロップ&ライフソリューション「トレボン乳剤」
「トレボン乳剤」は、プロの農家も使用する殺虫剤で、幅広い害虫に優れた効果を発揮します。 速効性が非常に高く、害虫を素早くノックダウンさせることができます。また、残効性にも優れており、長期間害虫の発生を抑制します。
こちらは水で薄めて使用する希釈タイプなので、噴霧器などが必要になりますが、広範囲に散布したい場合や、ベニフキノメイガ以外のさまざまな害虫(アメリカシロヒトリ、チャドクガ、ツツジグンバイなど)にも同時に対応したい場合に非常に経済的で効果的です。

【食品成分・無農薬】安心して使えるベニフキノメイガ対策スプレー

「食べるために育てているハーブだから、化学農薬は使いたくない」そう考える方も多いのではないでしょうか。幸いなことに、ベニフキノメイガには食品成分や天然由来成分で作られた、環境や人に優しい対策アイテムも有効です。ここでは、安心して使えるナチュラルな選択肢をご紹介します。
- 住友化学園芸「ベニカナチュラルスプレー」
- 住友化学園芸「STゼンターリ顆粒水和剤」
- 木酢液やニームオイルなどの自然派資材
住友化学園芸「ベニカナチュラルスプレー」
「ベニカナチュラルスプレー」は、食品成分である「水あめ」や植物油など、3つの天然由来成分を配合した殺虫殺菌スプレーです。 化学合成農薬を使用していないため、オーガニック栽培を目指す方にもおすすめです。
水あめ成分がアブラムシなどを、有用菌(B.t.菌)がベニフキノメイガのようなチョウ目の幼虫を、植物油がハダニを、それぞれ効果的に退治します。 食べる直前まで何度でも使用できる手軽さと安全性が魅力です。
住友化学園芸「STゼンターリ顆粒水和剤」
「STゼンターリ顆粒水和剤」は、天然の土壌細菌であるB.t.菌(バチルス・チューリンゲンシス菌)を利用した生物農薬です。 このB.t.菌が作るタンパク質は、チョウやガの仲間の幼虫の消化液に触れると毒性を発揮し、食欲をなくさせて死に至らしめます。
ベニフキノメイガの幼虫に特異的に作用するため、カマキリやハチ、クモといった天敵や益虫には影響がありません。 環境への負荷が少なく、有機JAS規格(オーガニック栽培)でも使用が認められている安全性の高い殺虫剤です。水に溶かして使用するタイプで、効果はゆっくりですが、確実な防除が期待できます。
木酢液やニームオイルなどの自然派資材
市販の製品以外にも、自然由来の資材を活用する方法があります。
木酢液は、木炭を作る際に出る煙を冷却して液体にしたもので、独特の燻製のような香りがします。この香りを害虫が嫌うため、定期的に散布することで忌避効果が期待できます。土壌の有用な微生物を増やす効果もあるとされています。
ニームオイルは、「ニーム」というインド原産の樹木の種子から抽出されるオイルです。 害虫の食欲を減退させたり、成長を阻害したりする効果があります。こちらも水で希釈してスプレーとして使用します。
これらの自然派資材は、化学農薬に比べて効果は穏やかですが、予防的に繰り返し使用することで、害虫が寄り付きにくい環境を作ることができます。
スプレーだけじゃない!ベニフキノメイガの駆除と予防のコツ

ベニフキノメイガ対策は、スプレー剤を散布するだけではありません。日々のちょっとした心がけや物理的な対策を組み合わせることで、より効果的に被害を防ぐことができます。ここでは、薬剤以外の駆除方法と、最も重要な「予防」のコツについて解説します。
- 見つけ次第、捕殺するのが基本
- 被害にあった葉や枝は剪定する
- 発生を防ぐ!予防策が最も重要
見つけ次第、捕殺するのが基本
ベニフキノメイガの被害を最小限に抑えるための最も確実で基本的な方法は、幼虫を見つけ次第、手で取り除くことです。
葉が巻かれていたり、白い糸が張られていたりする場所を注意深く探し、葉をそっと開いて中にいる幼虫を捕殺します。幼虫は意外と素早く後ずさりして逃げることがあるので、ピンセットや割り箸を使うと捕まえやすいでしょう。
特に被害が広がる前の初期段階であれば、この物理的な駆除だけで十分に対応できる場合も少なくありません。農薬を使いたくない方にとっては、最も安全で確実な方法です。毎日の水やりのついでに、葉の表裏をチェックする習慣をつけましょう。
被害にあった葉や枝は剪定する
幼虫が潜んでいる葉や、すでに食害されてボロボロになった葉は、思い切って枝ごと剪定してしまうのも有効な手段です。
これにより、中に隠れている幼虫や、もしかしたら産み付けられているかもしれない卵も一緒に取り除くことができます。被害の拡大を防ぐだけでなく、株の風通しを良くする効果も期待できます。
切り取った枝葉は、そのまま放置するとそこから幼虫が移動したり、蛹になって成虫が羽化したりする可能性があるため、必ずビニール袋などに入れて口を縛り、ゴミとして処分してください。
発生を防ぐ!予防策が最も重要
どんな害虫対策でも同じですが、発生してしまってから駆除するよりも、そもそも発生させない「予防」が最も重要です。ベニフキノメイガを寄せ付けないための予防策をいくつかご紹介します。
防虫ネットで成虫の侵入を防ぐ
ベニフキノメイガは、成虫である蛾が飛んできて葉に卵を産み付けることから被害が始まります。 そこで、物理的に成虫の侵入を防ぐために、プランターや畑全体を目の細かい防虫ネットで覆う方法が非常に効果的です。
特に、苗を植え付けた初期の段階からネットをかけておくことで、産卵そのものを防ぐことができます。ベランダのプランター栽培でも、支柱を立ててネットをトンネル状にかけることで、簡単に対策が可能です。
風通しを良くして健康な株を育てる
日当たりや風通しが悪いと、植物は弱々しく育ち、病害虫の被害を受けやすくなります。 葉が密集していると、湿気がこもりやすくなり、ベニフキノメイガにとっても隠れやすい好都合な環境になってしまいます。
適度に剪定を行って、株全体の風通しと日当たりを良くしましょう。 また、水のやりすぎや肥料の与えすぎも、植物を軟弱に育てる原因になることがあります。 植物そのものを健康で丈夫に育てることが、最高の病害虫対策になります。
こまめな収穫と観察を習慣に
シソやバジルなどのハーブは、こまめに収穫することも予防に繋がります。 収穫することで葉の数が減り、株の風通しが良くなるだけでなく、葉の裏や茎の状態をチェックする良い機会にもなります。
毎日少しずつでも植物の様子を観察する習慣をつけることで、ベニフキノメイガの被害の初期サインにいち早く気づくことができます。 早期発見・早期対応が、被害を最小限に食い止める鍵です。
よくある質問

ベニフキノメイガの天敵は?
ベニフキノメイガの天敵としては、ハチ、クモ、カマキリなどが知られています。 これらの益虫は、ベニフキノメイガの幼虫を捕食してくれます。しかし、ベニフキノメイガの幼虫は糸で葉を綴った巣の中に隠れているため、天敵から身を守る力も比較的強いと考えられています。 庭にこれらの益虫が住み着くような、多様性のある環境を整えることも、間接的な害虫対策に繋がります。
スプレーを使うタイミングはいつが良い?
スプレー剤を使用する最適なタイミングは、幼虫が小さいうち(若齢幼虫)です。幼虫が成長するほど薬剤が効きにくくなる傾向があるため、被害を見つけたらなるべく早く散布するのが効果的です。散布する時間帯は、日中の高温時を避け、風のない早朝や夕方がおすすめです。また、雨が降ると薬剤が流れてしまうため、散布後しばらく雨が降らない日を選びましょう。
薬剤を使いたくない場合、どうすればいい?
化学農薬を使いたくない場合は、まず「見つけ次第、手で捕殺する」ことが基本です。 被害が広がらないうちに、こまめにチェックして取り除きましょう。予防策としては、防虫ネットで成虫の飛来を防ぐのが最も効果的です。 また、木酢液やニームオイルといった自然由来の資材を定期的に散布して、害虫が嫌う環境を作るのも良い方法です。
ローズマリーにもベニフキノメイガは付きますか?
はい、ローズマリーもシソ科の植物なので、ベニフキノメイガの被害に遭うことがあります。 特に、柔らかい新芽の部分が狙われやすいです。 ローズマリーの葉が糸で綴られていたり、先端が枯れたりしている場合は、ベニフキノメイガの発生を疑ってよく観察してみてください。
駆除した後の植物はどうすればいいですか?
ベニフキノメイガを駆除した後は、まず被害を受けた葉や枝をきれいに剪定しましょう。 その後、株の風通しを良くし、健康に育つように管理を続けます。一度被害にあったからといって、すぐに枯れてしまうわけではありません。 適切な手入れをすれば、また元気に新しい葉を伸ばしてくれます。再発を防ぐためにも、こまめな観察を続けることが大切です。
まとめ

- ベニフキノメイガはシソ科のハーブを好む害虫。
- 幼虫が糸で葉を綴り、中で食害する。
- 発生時期は5月~10月で、年に数回発生する。
- 被害のサインは巻かれた葉、白い糸、黒いフン。
- 即効性なら「ベニカXファインスプレー」などがおすすめ。
- 食用の植物には「ベニカベジフルスプレー」が安心。
- 葉の中に潜む害虫には浸透移行性の「オルトラン」が有効。
- 無農薬なら「ベニカナチュラルスプレー」や「ゼンターリ」。
- 木酢液やニームオイルも予防に効果的。
- 最も確実な駆除法は、見つけ次第の捕殺。
- 被害にあった葉や枝は剪定して処分する。
- 最強の予防策は防虫ネットで成虫の侵入を防ぐこと。
- 風通しを良くし、健康な株を育てることが大切。
- こまめな収穫と日々の観察が早期発見に繋がる。
- 天敵にはハチやクモ、カマキリがいる。