家庭菜園で人気の小豆ですが、愛情を込めて育てている最中に害虫を見つけると、とてもがっかりしますよね。「せっかく育てた小豆が食べられてしまった…」「どうやって駆除すればいいの?」そんな悩みを抱えていませんか。本記事では、小豆栽培で発生しやすい害虫の種類から、具体的な駆除方法、そして最も重要な害虫を寄せ付けないための予防策まで、詳しく解説します。農薬を使わない方法も紹介しているので、安心して小豆栽培を楽しみたい方はぜひ参考にしてください。
小豆栽培で特に注意すべき害虫

小豆を安定して収穫するためには、害虫の早期発見と迅速な対応が不可欠です。ここでは、特に被害が大きく、注意が必要な害虫について、その特徴と対策を解説します。
アズキノメイガ
アズキノメイガは、小豆栽培における最も厄介な害虫の一つです。その幼虫が、小豆の茎や莢(さや)に侵入し、内部から食い荒らしてしまいます。被害に遭うと、茎が折れたり、収穫間近の豆がダメになったりするなど、収量に深刻な影響を及ぼします。
発生時期は主に7月下旬から8月中旬にかけてです。 成虫は夜行性で、葉の裏に卵を産み付けます。 孵化した幼虫が茎や莢に食入するため、食入口から出るフンが発見のサインです。 被害が拡大する前に、こまめに株を観察し、早期発見に努めることが重要です。
駆除としては、被害を受けた茎や莢を見つけ次第、切り取って処分するのが効果的です。 薬剤を使用する場合は、開花期から10日間隔で2~3回散布すると良いでしょう。
アズキゾウムシ
アズキゾウムシは、収穫後の小豆に発生する貯穀害虫として知られています。 しかし、被害は畑から始まっていることも少なくありません。成虫が莢の表面に産卵し、孵化した幼虫が豆の内部に侵入して食害します。
豆の表面に小さな穴が開いていたり、粉っぽいものが出ていたりしたら、アズキゾウムシの被害を疑いましょう。 豆の内部で幼虫が成長し、成虫になって外に出てくるため、収穫した豆を保管している間に大発生することもあります。
対策としては、収穫した豆を天日干しでよく乾燥させることが基本です。また、密閉容器に入れて冷蔵庫や冷凍庫で保管すると、虫の発生を防ぐことができます。 発生してしまった場合は、被害のあった豆を処分し、保管場所を清潔に保つことが大切です。
カメムシ類
カメムシ類は、小豆の莢から汁を吸う害虫です。 被害を受けると、豆が変形したり、変色したりして品質が著しく低下します。ひどい場合には、莢が全く膨らまなくなることもあります。
特に、莢が大きくなる時期に被害が集中するため、開花後から収穫までの期間は注意が必要です。様々な種類のカメムシが飛来するため、見つけ次第、捕殺するのが最も手軽な対策です。ペットボトルなどで作った捕獲器を利用するのも良いでしょう。
大量に発生してしまった場合は、農薬の散布も検討します。カメムシ類に効果のある薬剤を選び、適切な時期に散布してください。
アブラムシ類
アブラムシは、新芽や若い葉、茎に群がって汁を吸う小さな害虫です。繁殖力が非常に高く、あっという間に増殖します。
汁を吸われることで生育が悪くなるだけでなく、アブラムシの排泄物が原因ですす病を誘発し、葉が黒くなって光合成を妨げる二次被害も深刻です。 また、ウイルス病を媒介することもあります。
発生初期であれば、粘着テープで取り除いたり、牛乳や木酢液を薄めたスプレーを吹きかけたりする方法が有効です。天敵であるテントウムシを放つのも良い方法です。大量発生した場合は、アブラムシ向けの殺虫剤を使用します。
ハダニ類
ハダニは、葉の裏に寄生して汁を吸う、非常に小さな害虫です。肉眼では確認しにくいほどの大きさですが、被害が進むと葉にかすり状の白い斑点が現れ、やがて葉全体が白っぽくなって枯れてしまいます。
高温で乾燥した環境を好むため、梅雨明けから夏にかけて特に発生しやすくなります。 葉の裏に霧吹きで水をかける「葉水」は、乾燥を防ぎ、ハダニの発生を抑制するのに効果的です。
発生してしまった場合は、被害のひどい葉を取り除くほか、ハダニに有効な殺ダニ剤を散布します。薬剤に抵抗性がつきやすい害虫なので、同じ薬剤の連続使用は避けるようにしましょう。
ヨトウムシ
ヨトウムシは「夜盗虫」と書くように、昼間は土の中に隠れていて、夜になると活動を始めるガの幼虫です。 葉や新芽、時には莢まで食い荒らす大食漢で、気づいたときには株が丸裸にされていたということも少なくありません。
対策としては、株元を注意深く探し、昼間に潜んでいる幼虫を見つけて捕殺するのが確実です。米ぬかを使ったトラップを仕掛けるのも有効な手段です。薬剤を使用する場合は、夜間に活動するヨトウムシに合わせて、夕方に散布すると効果が高まります。
【状況別】小豆の害虫駆除方法

害虫を見つけたとき、どのように対処すればよいのでしょうか。ここでは、「手作業での駆除」「無農薬での対策」「農薬の使用」という3つのアプローチから、具体的な駆除方法を紹介します。ご自身の栽培スタイルや被害状況に合わせて、最適な方法を選んでください。
手作業で今すぐできる駆除方法
家庭菜園など、栽培規模が比較的小さい場合、手作業での駆除が最も手軽で確実な方法です。
アブラムシやハダニのように小さな虫は、ガムテープや粘着テープの粘着面を使ってペタペタと貼り付けて取り除くことができます。 葉を傷つけないように優しく行いましょう。
ヨトウムシやカメムシなど、比較的大きな虫は、見つけ次第、割り箸などでつまんで捕殺します。特にヨトウムシは夜行性なので、早朝や夕方に探すと見つけやすいです。
アズキノメイガの幼虫のように茎や莢に潜り込んでいる場合は、被害部分ごと切り取って処分するのが最も効果的です。 放置すると被害が広がるだけでなく、他の株への感染源にもなりかねません。早期発見、早期対応を心がけましょう。
農薬を使わない自然派の駆除・予防
「できるだけ農薬は使いたくない」と考える方も多いでしょう。化学農薬に頼らなくても、害虫の被害を抑える方法はあります。
コンパニオンプランツの活用
小豆の近くに特定の植物を植えることで、害虫を遠ざける効果が期待できます。例えば、強い香りを放つマリーゴールドやネギ類は、多くの害虫が嫌うため、混植におすすめです。
木酢液・竹酢液の利用
木酢液や竹酢液を水で薄めて散布すると、その独特の匂いで害虫を忌避する効果があります。また、土壌の微生物を活性化させ、植物を健康にする効果も期待できます。ただし、濃度が濃すぎると植物に害を与える可能性があるので、規定の希釈倍率を守って使用してください。
天敵の力を借りる
アブラムシの天敵であるテントウムシやヒラタアブは、益虫として知られています。 むやみに殺虫剤を使うと、こうした益虫まで殺してしまうことになります。畑の生態系を豊かに保つことが、結果的に害虫の異常発生を防ぐことに繋がります。
防虫ネットの設置
物理的に害虫の飛来を防ぐ防虫ネットは、非常に効果的な予防策です。 特に、アズキノメイガやカメムシなどの飛来してくる害虫に対して高い効果を発揮します。種まき後や植え付け後、早い段階でトンネル状に設置しましょう。
最終手段としての農薬(殺虫剤)利用
害虫が大量発生し、手作業や自然農薬では手に負えなくなった場合は、化学農薬の使用もやむを得ない選択肢となります。ただし、使用には十分な注意が必要です。
農薬の選び方
まず、対象となる「小豆」と、駆除したい「害虫名」の両方が記載されている農薬を選びましょう。 記載のない農薬の使用は、法律で禁止されています。 ホームセンターや農薬販売店で相談し、適切な薬剤を選ぶことが大切です。例えば、アブラムシには「ベストガード水溶剤」 、アズキノメイガには「フェニックス顆粒水和剤」 などが利用できます。
安全な使い方
農薬を使用する際は、必ず製品ラベルに記載されている使用方法(希釈倍率、使用時期、使用回数など)を厳守してください。 特に、収穫前日数(農薬を使用してから収穫できるまでの期間)は必ず守る必要があります。
散布する際は、マスクや手袋、保護メガネを着用し、風のない早朝や夕方に行うのが基本です。近隣の畑や住居に飛散しないよう、十分に配慮しましょう。
害虫を寄せ付けない!栽培管理でできる予防策

害虫対策で最も重要なのは、駆除することよりも「そもそも害虫を発生させない」ことです。日々の栽培管理を見直すことで、害虫が住み着きにくい環境を作ることができます。
風通しと日当たりを確保する
株間を適切にとり、密植を避けることで、風通しと日当たりが良くなります。 風通しが良いと、湿気がこもりにくくなり、病気やハダニなどの発生を抑制できます。また、日当たりが良いと株が丈夫に育ち、害虫に対する抵抗力も高まります。
生育に応じて、下のほうの古い葉や混み合った葉を取り除く「葉かき」を行うのも効果的です。株元まで光が当たるようになり、害虫が隠れる場所を減らすことができます。
連作を避ける
同じ場所で毎年マメ科の植物を栽培する「連作」は避けましょう。 連作をすると、土壌中の特定の栄養素が失われるだけでなく、その作物を好む病原菌や害虫(特に土壌中に潜むもの)の密度が高まり、連作障害が起こりやすくなります。
小豆を栽培した翌年は、イネ科やナス科など、科の異なる野菜を育てる「輪作」を心がけることが、病害虫のリスクを減らす上で非常に重要です。
適切な水やりと肥料
小豆は比較的乾燥に強い作物ですが、過湿には弱い性質があります。 水のやりすぎは根腐れの原因となり、株を弱らせてしまいます。土の表面が乾いたらたっぷりと与えるのが基本です。
また、肥料、特に窒素成分の与えすぎにも注意が必要です。 窒素が多すぎると、葉や茎ばかりが茂る「つるぼけ」状態になり、軟弱に育ってしまいます。このような株は、アブラムシなどの害虫にとって格好のターゲットとなります。 元肥を適切に施し、追肥は生育状況を見ながら控えめに行いましょう。
雑草管理を徹底する
畑やプランターの周りの雑草は、こまめに取り除きましょう。雑草は、害虫の隠れ家や発生源になることがあります。 特に、アズキノメイガなどは周辺の雑草地から飛来することが知られています。
また、雑草は土の養分や水分を奪い、小豆の生育を妨げる原因にもなります。株元をマルチング(敷きわらや黒いビニールシートで覆うこと)すると、雑草の発生を抑えるだけでなく、土の乾燥防止や地温の安定にも繋がり、一石二鳥です。
よくある質問

Q. 小豆の鞘に穴が開いているのは何の虫が原因ですか?
A. 小豆の鞘に穴が開いている場合、主に「アズキノメイガ」の幼虫や「アズキゾウムシ」の幼虫による食害が考えられます。 アズキノメイガは茎や莢に侵入し、アズキゾウムシは豆の内部を食害します。被害を見つけたら、被害部分を除去し、被害の拡大を防ぎましょう。
Q. 農薬はいつ散布するのが最も効果的ですか?
A. 農薬を散布するタイミングは、対象とする害虫の活動時間や天候によって異なります。一般的に、風のない穏やかな日の早朝や夕方が適しています。日中の高温時に散布すると、薬害が出やすくなることがあります。また、ヨトウムシのように夜行性の害虫には、活動を始める夕方の散布が効果的です。雨が降ると薬剤が流れてしまうため、天気予報を確認することも重要です。
Q. 収穫後の小豆に虫が湧かないようにするにはどうすればいいですか?
A. 収穫後の小豆に湧く虫の代表は「アズキゾウムシ」です。 対策としては、まず収穫した小豆をザルなどに広げ、数日間天日干しにして十分に乾燥させることが重要です。その後、密閉できる容器や袋に入れ、冷蔵庫や冷凍庫で保管すると、万が一卵が付着していても孵化や活動を抑えることができます。
Q. 無農薬で小豆を栽培するのは難しいですか?
A. 無農薬での小豆栽培は、慣行栽培に比べて手間がかかるのは事実ですが、不可能ではありません。 重要なのは、防虫ネットの利用、コンパニオンプランツの混植、連作を避ける、風通しを良くするなど、本記事で紹介した「予防策」を徹底することです。 害虫が発生しにくい環境を整え、こまめに畑の様子を観察して初期対応を心がければ、無農薬でも美味しい小豆を収穫することは十分に可能です。
まとめ

- 小豆の害虫は早期発見・早期駆除が基本。
- 代表的な害虫はアズキノメイガとアズキゾウムシ。
- アズキノメイガは茎や莢に潜りフンをする。
- アズキゾウムシは収穫後の豆にも発生する。
- カメムシは莢の汁を吸い品質を低下させる。
- アブラムシはすす病やウイルス病を媒介する。
- ハダニは高温乾燥時に葉裏で発生しやすい。
- ヨトウムシは夜間に葉を食い荒らす大食漢。
- 駆除方法は手作業、無農薬、農薬の3つ。
- 手作業での捕殺や被害部分の除去が手軽。
- 無農薬では防虫ネットやコンパニオンプランツが有効。
- 農薬は用法・用量を守って正しく使用する。
- 最も重要なのは害虫を寄せ付けない予防策。
- 風通しを良くし、連作を避けることが大切。
- 適切な栽培管理で、健康な株を育てよう。