朝起きたらパジャマがぐっしょり濡れていて、不快な思いをした経験はありませんか?朝方の寝汗は、誰にでも起こりうる生理現象ですが、あまりにもひどい場合は、睡眠の質を低下させるだけでなく、何らかの体のサインである可能性も考えられます。本記事では、朝方寝汗をかく主な原因から、ご自身でできる対策、そして医療機関を受診すべき目安まで、詳しく解説します。
朝方寝汗をかくのはなぜ?考えられる主な原因

朝方寝汗をかく原因は多岐にわたります。大きく分けて、生理的なものと、病気が隠れている可能性のあるものがあります。まずは、ご自身の寝汗がどちらに当てはまるのか、考えられる要因を見ていきましょう。
生理的な寝汗の背景にある要因
人は睡眠中に体温を下げて深い眠りに入ろうとします。この体温調節のためにかく汗が「寝汗」であり、健康な大人でも一晩にコップ1杯程度の汗をかくのは自然なことです。しかし、その量が過剰になる場合は、いくつかの生理的な要因が考えられます。
寝室の温度や湿度、寝具の不適切さ
室温が高すぎる、湿度がこもっている、あるいは厚すぎる掛け布団や通気性の悪いパジャマを使用していると、体温調節のために体が過剰に汗をかきます。特に季節の変わり目は、寝具の調整が追いつかず、寝汗が増えることがあります。理想的な寝室の温度は18〜23℃程度、湿度は50〜60%とされています。
寝る前の飲食や生活習慣
就寝前のアルコール摂取は血管を拡張させ、体温を上昇させるため、寝汗をかきやすくなります。 また、カフェインも交感神経を刺激し、寝つきを悪くしたり発汗を促進したりする可能性があります。辛い食べ物も体温を上げる要因となるため、寝る前の摂取は控えるのがおすすめです。
ストレスや自律神経の乱れ
日中のストレスや緊張が蓄積すると、交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかなくなり、自律神経の乱れが生じます。これにより、睡眠中の体温調整機能が正常に働かなくなり、大量の寝汗をかく原因となることがあります。 特に長期的なストレスや過労は、自律神経失調症を引き起こし、寝汗以外にも動悸や不眠などの症状を伴う場合があります。
病気が隠れている可能性も?注意すべき疾患
生理的な要因だけでなく、ひどい寝汗の背景には、何らかの病気が隠れている可能性もあります。特に、寝汗以外にも気になる症状がある場合は、注意が必要です。
甲状腺機能亢進症や糖尿病
甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで代謝が活発になり、体温が上昇しやすくなります。その結果、異常に汗をかきやすくなり、全身にわたって汗をかくことがあります。 動悸や手の震え、体重減少などの症状を伴う場合は、甲状腺機能亢進症の可能性が高いでしょう。
糖尿病も寝汗の原因となることがあります。血糖値の変動が激しい場合や、糖尿病性神経障害によって自律神経が障害されることで、発汗異常が起こることがあります。 特に夜間低血糖は、寝汗を引き起こす要因の一つです。
更年期障害と寝汗
女性の更年期には、エストロゲンの減少によりホルモンバランスが乱れ、のぼせやほてり、夜間に大量の汗をかくことがあります。 これは「ホットフラッシュ」と呼ばれる症状の一つで、男性にも男性更年期障害として同様の症状が現れることがあります。
感染症や特定の薬剤の影響
風邪やインフルエンザなどの感染症による発熱は、体温調節の一環として寝汗をかくことがあります。 熱が上がり切った後に汗をかいて熱を下げようとするため、寝汗がひどくなるのです。 また、結核やHIVなどの感染症が原因で寝汗が見られる場合もあります。
抗うつ薬、解熱鎮痛薬、ホルモン剤など、一部の薬剤は副作用として発汗を促すことがあります。 薬を飲み始めてから寝汗が増えたと感じる場合は、医師に相談することが大切です。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が一時的に止まることを繰り返す病気です。呼吸が止まることで体が酸欠状態となり、脳が覚醒反応を起こすたびに大量の汗をかくことがあります。 寝汗とともに大きないびきや日中の強い眠気がある場合は、睡眠時無呼吸症候群の検査を検討すべきでしょう。
朝方寝汗を改善するための具体的な対策とコツ

朝方の寝汗に悩まされている場合、まずはご自身の生活習慣や睡眠環境を見直すことから始めてみましょう。ちょっとした工夫で、寝汗の改善につながることも少なくありません。
快適な睡眠環境を整える方法
寝室の環境は、寝汗の量に大きく影響します。快適な睡眠環境を整えることで、寝汗を減らすことが期待できます。
室温と湿度の適切な管理
寝室の温度は18〜23℃、湿度は50〜60%が理想的とされています。 エアコンや除湿器などを活用し、寝ている間に快適な状態を保つように心がけましょう。寝る前に換気をするのも良い方法です。
寝具やパジャマの選び方
通気性と吸湿性に優れた寝具を選ぶことが重要です。 綿や麻などの天然素材のシーツやパジャマは、汗をしっかり吸収し、蒸れにくいのでおすすめです。 敷きパッドや枕カバーも吸湿性の高いものを選び、こまめに洗濯して清潔に保つようにしましょう。
日常生活の習慣を見直す
日々の生活習慣も、寝汗の量に影響を与えます。健康的な生活を送ることで、寝汗の改善につながります。
食事内容と水分補給
寝る前のアルコールやカフェイン、辛い食べ物の摂取は控えましょう。 また、寝汗で失われる水分を補給するために、日中は意識して水分を摂るように心がけてください。ただし、寝る直前の大量の水分摂取は、夜間のトイレ回数を増やし、睡眠を妨げる可能性があるので注意が必要です。
適度な運動とストレス解消
適度な運動は、自律神経のバランスを整え、質の良い睡眠につながります。ただし、就寝直前の激しい運動は避け、寝る数時間前までに済ませるようにしましょう。 ストレスは寝汗の大きな原因となるため、自分に合ったストレス解消法を見つけることが大切です。リラックスできる時間を作り、心身の緊張を和らげましょう。
入浴方法の工夫
就寝の1〜2時間前に、ぬるめのお湯にゆっくり浸かることで、体の深部体温が一時的に上がり、その後下がることで自然な眠気を誘います。これにより、スムーズな入眠と質の良い睡眠につながり、寝汗の改善にも役立つでしょう。
こんな朝方寝汗は要注意!病院を受診する目安と診療科

通常の生理的な寝汗であれば、上記の対策で改善が見られることが多いです。しかし、中には病気が原因で寝汗をかいているケースもあります。以下のような症状が見られる場合は、医療機関の受診を検討しましょう。
医療機関への受診を検討すべき症状
単なる寝汗と異なり、以下のような症状を伴う場合は、何らかの病気が隠れている可能性があります。放置せずに、早めに医師に相談することが大切です。
- パジャマやシーツがぐっしょりと濡れるほどの大量の寝汗が続く
- 室内の温度や湿度、寝具などを調整しても寝汗が改善しない
- 寝汗以外に、発熱、体重減少、強い倦怠感、動悸、手の震えなどの症状がある
- 夜中に何度も寝汗で目が覚め、睡眠の質が著しく低下している
- いびきや無呼吸を家族から指摘されている、または日中に強い眠気がある
- 特定の薬剤を飲み始めてから寝汗が増えたと感じる
これらの症状は、甲状腺機能亢進症、糖尿病、更年期障害、感染症、睡眠時無呼吸症候群、悪性腫瘍など、様々な病気のサインである可能性があります。
寝汗で悩んだ時に受診すべき診療科
寝汗の原因によって、受診すべき診療科は異なります。迷った場合は、まずはかかりつけ医や内科を受診し、相談してみるのが良いでしょう。
- 内科: 一般的な体調不良や、甲状腺機能亢進症、糖尿病、感染症などの内科的疾患が疑われる場合。
- 婦人科: 女性で更年期障害や月経前症候群(PMS)による寝汗が疑われる場合。
- 心療内科・精神科: ストレスや自律神経の乱れ、不安障害、うつ病などが原因で寝汗をかいている可能性がある場合。
- 睡眠外来・耳鼻咽喉科: 睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合。
- 皮膚科: 多汗症の可能性や、寝汗による肌トラブルが気になる場合。
医師は問診や血液検査などを行い、寝汗の原因を特定し、適切な治療法を提案してくれます。
よくある質問

- 寝汗と多汗症の違いは何ですか?
- 子供の寝汗は心配いりませんか?
- 寝汗をかきやすい体質は改善できますか?
- 寝汗をかくと体臭が気になります。どうすればいいですか?
- 寝汗で脱水症状になることはありますか?
- 朝方だけでなく、夜中に何度も寝汗で目が覚めます。これは異常ですか?
寝汗と多汗症の違いは何ですか?
寝汗は睡眠中に体温調節のためにかく生理現象ですが、多汗症は体温調節に必要な量以上の大量の汗を昼夜関係なくかく病気です。 多汗症の汗は粘度が高く、ベタベタ・ねばねばしていることが特徴で、日常生活に支障をきたすことがあります。 全身に汗が増える「全身性多汗症」と、体の一部に汗が増える「局所多汗症」があります。
子供の寝汗は心配いりませんか?
子供は大人よりも汗腺の密度が高く、体温調節機能が未熟なため、寝汗をかきやすい傾向にあります。 寝汗がひどくても、起きているときに機嫌が良く、水分が摂れていれば、基本的に心配はいりません。 ただし、発熱や咳、嘔吐などの他の症状を伴う場合や、寝汗で体が冷えて風邪をひきやすい場合は、対策を検討したり、医療機関を受診したりすることをおすすめします。
寝汗をかきやすい体質は改善できますか?
寝汗をかきやすい体質は、生活習慣の改善や睡眠環境の見直しによって改善できる可能性があります。 ストレスの軽減、バランスの取れた食事、適度な運動、快適な寝室環境を整えることが大切です。 また、特定の病気が原因の場合は、その病気を治療することで寝汗も改善されることがあります。
寝汗をかくと体臭が気になります。どうすればいいですか?
寝汗による体臭が気になる場合は、まず寝具やパジャマをこまめに洗濯し、清潔に保つことが大切です。 吸湿性・速乾性の高いパジャマを選ぶのも良いでしょう。寝る前にシャワーを浴びて体を清潔にする、制汗剤を使用するなどの対策も有効です。また、食生活を見直し、脂っこいものや香辛料の多いものを控えることも体臭の軽減につながります。
寝汗で脱水症状になることはありますか?
大量の寝汗が毎晩続く場合、軽度の脱水状態になることがあります。 特に高齢者は喉の渇きを感じにくいため注意が必要です。起床時にコップ一杯の水を飲む習慣をつけるなど、意識的な水分補給を心がけましょう。 子供の場合も、寝汗で脱水症状にならないよう、授乳や水分補給のタイミングを考慮することが大切です。
朝方だけでなく、夜中に何度も寝汗で目が覚めます。これは異常ですか?
夜中に何度も寝汗で目が覚める場合、睡眠の質が低下している可能性があります。生理的な要因(室温、寝具など)だけでなく、ストレスや自律神経の乱れ、更年期障害、睡眠時無呼吸症候群などの病気が原因となっていることも考えられます。 頻繁に目が覚めることで日中の疲労感や集中力低下につながる場合は、医療機関への相談を検討することをおすすめします。
まとめ
- 朝方寝汗は、体温調節のための生理現象ですが、過剰な場合は原因を探ることが大切です。
- 寝室の温度や湿度、寝具の素材が不適切だと寝汗が増えることがあります。
- 寝る前のアルコールやカフェイン、辛い食べ物の摂取は控えましょう。
- ストレスや自律神経の乱れも寝汗の大きな原因となります。
- 甲状腺機能亢進症や糖尿病、更年期障害、感染症、睡眠時無呼吸症候群などの病気が隠れている可能性もあります。
- 特定の薬剤の副作用で寝汗が増えることもあります。
- 快適な室温・湿度管理、吸湿性の高い寝具やパジャマの使用が有効です。
- 規則正しい生活習慣、適度な運動、ストレス解消を心がけましょう。
- 発熱、体重減少、倦怠感など他の症状を伴う場合は医療機関を受診しましょう。
- 寝汗がひどく、日常生活に支障がある場合は、内科やかかりつけ医に相談するのが良いでしょう。
- 子供の寝汗は生理的なものが多いですが、他の症状があれば受診を検討しましょう。
- 寝汗と多汗症は異なるもので、多汗症は病気として治療が必要です。
- 寝汗による体臭対策には、清潔を保つことと食生活の見直しが有効です。
- 大量の寝汗は脱水症状につながることもあるため、水分補給を意識しましょう。
- 夜中に何度も寝汗で目が覚める場合は、睡眠の質低下や病気のサインかもしれません。
