愛車のマフラー音、車検に通るか不安ではありませんか？近接排気騒音の測定は、一見難しそうに思えますが、正しい方法とポイントを押さえれば誰でも正確に測れます。本記事では、近接排気騒音の基本的な知識から、必要な機材、具体的な測定手順、そして車検基準まで、あなたが知りたい情報を分かりやすく徹底解説します。これで、安心して愛車の排気音をチェックできるようになります。
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近接排気騒音とは？測定の重要性と基礎知識
近接排気騒音とは、車両が停止した状態でマフラーから出る音量を計測する方法です。これは車検の際にも用いられる重要な測定方法であり、車両の年式や種類によって細かく規定音量が設定されています。この測定は、自動車やバイクが公道を走行する上で、周囲の環境に過度な騒音をまき散らさないようにするための規制の一環として行われます。
もし基準値を超えていれば、車検に通らないだけでなく、整備不良として罰則の対象となる可能性もあります。そのため、愛車の排気音が基準値内であるかを知ることは、安全で快適なカーライフを送る上で非常に大切です。
近接排気騒音の定義と測定の目的
近接排気騒音とは、車両が停車している状態で、マフラーの排気口から一定の距離と角度で測定される排気音の最大値のことです。この測定は、主に車検（継続検査）の際に実施され、車両が国の定める騒音規制基準を満たしているかを確認する目的があります。 騒音規制は、自動車やバイクの排気音が周囲の生活環境に与える影響を最小限に抑えるために設けられています。
特に、社外マフラーに交換している場合や、経年劣化によってマフラー内部の消音機能が低下している場合などには、基準値を超えてしまう可能性があるので注意が必要です。測定を通じて、自分の車両が法的な基準に適合しているかを確認し、必要であれば適切な対策を講じることが求められます。
なぜ近接排気騒音の測定が必要なのか
近接排気騒音の測定が必要な理由は、主に以下の3点に集約されます。
- 車検合格のため: 継続検査（車検）の必須項目であり、基準値を超えていると車検に合格できません。
- 法的規制の遵守: 道路運送車両法に基づく保安基準で定められた騒音規制を遵守するためです。違反すると罰則の対象となることがあります。
- 環境への配慮: 過度な排気音は、近隣住民への騒音迷惑となり、環境問題に発展する可能性があります。社会的なマナーとして、適切な音量に保つことが重要です。
特に、近年は騒音規制が年々厳しくなる傾向にあり、以前は問題なかったマフラーでも、現在の基準では不適合となるケースも少なくありません。 自分で測定方法を理解し、定期的にチェックすることは、予期せぬトラブルを避けるための重要なコツと言えるでしょう。
測定に必要な機材と環境の準備
近接排気騒音を正確に測定するためには、適切な機材と測定環境の準備が欠かせません。特に、騒音計の選定や測定場所の確保は、測定結果の信頼性に大きく影響します。準備を怠ると、せっかく測定しても正確な数値が得られず、二度手間になってしまうこともあります。ここでは、測定に必要なものを具体的に解説し、スムーズに測定を進めるための準備の進め方をお伝えします。
騒音計の選び方と準備
近接排気騒音の測定には、JIS C 1509-1-2005 クラス1または同等の性能を有する騒音計（精密騒音計）を用いることが一般的です。 クラス2の騒音計でも測定は可能ですが、より正確な測定を求める場合はクラス1が推奨されます。騒音計を選ぶ際には、以下の点に注目しましょう。
- 周波数補正特性: A特性に設定できるものを選びます。これは人間の耳の感度に近い特性で音を評価するためです。
- 動特性（時間重み）: 「速い動特性（FAST）」に設定できるものを選びます。これは音の急激な変化を捉えるために必要です。
- ウインドスクリーン: マイクロホンに装着し、風によるノイズの影響を軽減します。
- 校正機能: 使用前に校正を行うことで、測定の精度を保てます。騒音計メーカーが推奨する校正機器を用いるのが望ましいです。
また、騒音計以外にも、エンジン回転数を正確に把握するための外部回転計（自動車に備えられたもの以外）や、騒音計を安定して設置するためのマイクスタンドなどがあると便利です。 スマートフォンアプリでも簡易的な測定は可能ですが、車検などの公式な測定には適さないため、専用の騒音計を用意しましょう。
測定に適した場所と環境
正確な測定結果を得るためには、測定場所と環境も非常に重要です。以下の条件を満たす場所を選びましょう。
- 周囲に反射物がない平坦な場所: 2m程度の範囲内に壁やガードレールなどの反射物がない、開けた場所が理想です。屋内での測定は反響により音量が増減する可能性があるため避けるべきです。
- 風の影響を受けない状況: 風速5m以下の乾燥した平坦舗装地が推奨されます。風が強い場合は、ウインドスクリーンを装着していても測定値に影響が出る可能性があります。
- 周囲の雑音が少ない場所: 他の車両の走行音や工事の音など、測定対象以外の音が少ない静かな環境を選びましょう。暗騒音（測定対象以外の騒音）と測定値の差が小さいと、測定が無効になることがあります。
これらの条件を全て満たす場所を見つけるのは難しいかもしれませんが、できる限り理想に近い環境を整えることが、正確な測定への第一歩となります。
その他の準備物と確認事項
騒音計と測定場所の他に、以下の準備物と確認事項があります。
- 原動機回転計: 車両に備え付けのタコメーターではなく、外部の回転計を使用することが推奨されます。
- 記録用紙と筆記用具: 測定結果を正確に記録するために必要です。複数回測定し、平均値を出すためにも記録は欠かせません。
- 車両の暖機: 測定前に車両を適当な速度で走行させ、エンジンとマフラーを十分に暖機しておきます。冷えた状態では正確な排気音が出ない可能性があります。
- 車両の状態確認: 変速機はニュートラルに入れ、エアコンなどのエンジンに負荷をかける機器類はオフにして測定します。
- 消音器の確認: 2010年4月1日以降に生産された車両の場合、容易に除去できる構造の消音器は認められません。検査の際は取り外して測定が必要となる場合があります。
これらの準備をしっかり行うことで、測定時のトラブルを減らし、スムーズかつ正確な近接排気騒音の測定が可能になります。
正しい近接排気騒音の測定手順
近接排気騒音の測定は、定められた手順に沿って行うことが非常に重要です。少しでも手順が異なると、正確な測定値が得られず、車検で不合格になる原因にもなりかねません。ここでは、車両の準備から騒音計の設置、エンジン回転数の調整、そして実際の測定と記録の取り方まで、具体的な進め方を順を追って解説します。
測定前の車両準備と確認
測定を始める前に、車両を最適な状態に整えることが大切です。以下の項目を確認し、準備を進めましょう。
- 車両の暖機: 測定前に、車両を適当な速度で走行させるなどして、エンジンとマフラーを十分に暖機します。これにより、実際の走行に近い排気音を測定できます。
- ギアポジション: 停車状態で、変速機は必ずニュートラルに入れます。
- 電装品のオフ: エアコン、ライト、オーディオなど、エンジンに負荷をかける可能性のある電装品は全てオフにします。これにより、エンジンの回転数を安定させ、正確な測定を促します。
- 消音器の確認: 2010年4月1日以降に生産された車両の場合、容易に取り外せる構造の消音器（テールサイレンサー等）は消音器として認められません。検査の際は取り外して測定が必要となる場合があります。
これらの準備を怠ると、測定値にばらつきが出たり、実際の基準値と異なる結果になったりする可能性があるので、丁寧な確認を心がけましょう。
騒音計の設置位置と角度
騒音計のマイクロホンは、以下の厳密な位置と角度で設置する必要があります。
- 距離: マフラーの排気出口の中心から、斜め後方45°の方向に0.5m（50cm）離した位置に設置します。
- 高さ: マフラーの排気出口の中心と同じ高さにマイクロホンを設置します。ただし、排気出口の中心の高さが地上0.2m未満の場合は、地上0.2mの高さに設置します。
- 角度: 排気流の方向を含む鉛直面と、車両外側後方45°に交わる位置にマイクロホンを向けます。
- 複数マフラーの場合: マフラーの出口が複数あり、その中心間隔が0.3mを超える場合は、それぞれの出口を測定します。間隔が0.3m以下の場合は、最も後方となる方、または同等の長さの場合は外側となる方を測定します。
- 設置方法: マイクロホンは、マイクスタンドなどを使用し、反響などの影響が起きないように安定して設置します。人が手で持って測定することは、音の反響が生じるため不可とされています。
これらの設置条件を正確に守ることが、信頼性の高い測定結果を得るための絶対条件です。
エンジン回転数の調整方法
近接排気騒音の測定では、特定のエンジン回転数で音量を測定します。この回転数は、車両の最高出力発生時の回転数に基づいて計算されます。
- 最高出力回転数が5,000回転を超える場合: 最高出力時の回転数の50%の回転数で測定します。
- 最高出力回転数が5,000回転以下の場合（またはその他の二輪車）: 最高出力時の回転数の75%の回転数で測定します。
例えば、最高出力が6,500rpmで発生する車両の場合、その75%である4,875rpmに回転数を合わせます。 外部回転計を使用して、この指定された回転数を正確に維持することが重要です。アクセルペダルをゆっくり踏み込み、指定回転数で安定させた後、測定を開始します。過回転防止装置が作動する車両の場合は、その装置が作動する回転数に合わせて測定することもあります。
実際の測定と記録の取り方
準備と調整が完了したら、いよいよ実際の測定です。以下の手順で慎重に進めましょう。
- 騒音計の設定確認: 周波数補正特性がA特性、動特性がFASTになっていることを再度確認します。
- エンジン回転数の維持: 指定されたエンジン回転数を5秒間程度保持します。
- アクセルオフと最大値の記録: 5秒間保持した後、急激にアクセルペダルを放し、アイドル回転数まで回転数が下がる間の最大音量値を測定値として記録します。
- 複数回の測定: 測定は3回行い、その平均値を騒音値とします。 3回の測定値の差が2dBを超える場合は、測定を無効とする場合があります。 また、測定値と暗騒音（周囲の騒音）の差が3dB未満の場合も測定が無効となることがあるため、静かな環境での測定が重要です。
測定中は、エンジンに急激な負荷をかけすぎないよう注意し、車両の損傷を防ぐことも大切です。これらの手順を正確に実行することで、信頼できる測定結果が得られます。
測定結果の判断と車検基準値
近接排気騒音の測定が終わったら、その結果が車検基準を満たしているかを確認する必要があります。基準値は車両の年式や種類によって異なり、また近年は規制が厳しくなっているため、自分の車両に適用される正確な基準を知ることが不可欠です。ここでは、車種別の基準値と、もし測定値が基準を超えてしまった場合の対処法について解説します。
車種別の近接排気騒音基準値
近接排気騒音の基準値は、車両の製造年や排気量によって細かく定められています。以下に一般的な基準値の例を挙げますが、正確な数値は国土交通省の告示や自動車検査独立行政法人の情報を確認することが最も確実です。
乗用車（普通・小型・軽自動車）の例
- 平成10年規制車（1998年10月以降生産）: 96dB以下（後部エンジン車は100dB以下）
- 平成元年規制車（1989年以降生産）: 103dB以下
バイクの例
- 50cc以下の原付一種: 79dB以下
- 51ccから125ccまでの原付二種: 85dB以下
- 126cc以上（250cc以上）: 89dB以下（2001年以降製造車は94dB以下）
また、2010年4月1日以降に生産された車両に装着される交換用マフラーには、新車時の近接排気騒音に5dBを加えた値が基準値となる「相対値規制」が適用される場合があります。 これは、新車時のマフラー音よりも騒音が大きいマフラーへの交換を禁止するものです。 自分の車両の年式と排気量を確認し、正確な基準値を把握することが重要です。
測定値が基準を超えた場合の対処法
もし測定した近接排気騒音値が基準を超えてしまった場合でも、諦める必要はありません。いくつかの対処法があります。
- バッフル（消音器）の装着: マフラーの排気口に取り付けることで、音量を下げられます。ただし、取り外しが容易なものは認められない場合があるので注意が必要です。
- マフラー内部の点検・修理: マフラー内部の消音材（グラスウールなど）が劣化していると、音量が大きくなることがあります。専門業者に相談し、修理や交換を検討しましょう。
- JMCA認定マフラーへの交換: JMCA（全国二輪車用品連合会）認定マフラーは、日本の騒音規制基準に適合していることが保証されています。車検対応品を選ぶことで、安心して使用できます。
- 純正マフラーへの戻し: 最も確実な方法として、純正マフラーに戻すことが挙げられます。特に古い車両や社外マフラーの場合、純正品が最も基準値を満たしやすいでしょう。
- 専門業者への相談: 自分で対処が難しい場合は、自動車整備工場やバイクショップなどの専門業者に相談しましょう。適切なアドバイスや修理、交換の提案をしてくれます。
基準値を超えたまま公道を走行すると、整備不良として取り締まりの対象となるだけでなく、周囲に迷惑をかけることにもなります。 早めの対処を心がけ、安全で快適なカーライフを送りましょう。
よくある質問
騒音計はどのようなものを選べば良いですか？
近接排気騒音の測定には、JIS C 1509-1-2005 クラス1または同等の性能を持つ精密騒音計が推奨されます。 周波数補正特性はA特性、動特性はFAST（速い動特性）に設定できるものを選びましょう。 ウインドスクリーン（防風スクリーン）が付属しているか、または別途購入できるかも確認すると良いでしょう。
スマートフォンアプリは簡易測定には使えますが、車検などの公式な測定には精度が不足するため、専用の騒音計を用意することをおすすめします。
自分で測定するのは難しいですか？
正しい測定方法と必要な機材を理解し、手順通りに進めれば、自分でも測定は可能です。 しかし、測定場所の選定、騒音計の正確な設置、エンジン回転数の維持など、細かな注意点が多く、慣れないうちは難しく感じるかもしれません。特に、周囲の騒音や風の影響を受けやすい環境では、正確な測定が困難になることがあります。 不安な場合は、一度専門業者に依頼して測定してもらうか、測定方法についてアドバイスをもらうのも良いでしょう。
測定時に風の影響はありますか？
はい、測定時に風の影響は大きくあります。風が強いと、騒音計のマイクロホンが風切り音を拾ってしまい、実際の排気音よりも高い数値が出てしまう可能性があります。 そのため、測定は風速5m以下の穏やかな日に行うことが推奨されています。 また、マイクロホンには必ずウインドスクリーン（防風スクリーン）を装着し、風によるノイズを軽減する対策を取りましょう。
測定場所はどこが良いですか？
測定場所は、周囲に音を反射する壁やガードレールなどの障害物がなく、平坦で開けた場所が理想です。 具体的には、2m程度の範囲内に反射物がない場所を選びましょう。 屋内での測定は、反響によって音量が増減する可能性があるため避けるべきです。 また、他の車両の走行音や工事の音など、測定対象以外の雑音が少ない静かな環境を選ぶことも重要です。
暗騒音（周囲の騒音）と測定値の差が小さいと、測定が無効になることがあります。
測定値が毎回違うのですが、なぜですか？
測定値が毎回異なる場合、いくつかの原因が考えられます。
- 騒音計の設置位置や角度のずれ: マイクロホンの位置や角度が少しでもずれると、測定値に影響が出ます。
- エンジン回転数の不安定さ: 指定されたエンジン回転数を正確に維持できていない場合、測定値が変動します。
- 周囲の環境変化: 風の強さや向き、周囲の雑音の有無などが測定中に変化すると、結果にばらつきが生じます。
- 車両の暖機不足: エンジンやマフラーが十分に暖まっていないと、安定した排気音が出ません。
- 騒音計の校正不足: 騒音計の校正が適切に行われていないと、正確な数値が得られません。
これらの要因を一つずつ確認し、可能な限り条件を統一して複数回測定することで、より信頼性の高い結果が得られます。
まとめ
- 近接排気騒音は車検の必須項目であり、車両が停止した状態で測定される。
- 測定は周囲の環境に配慮し、法的規制を遵守するために必要。
- 騒音計はJIS C 1509-1-2005 クラス1相当の精密騒音計が推奨される。
- 騒音計はA特性、FAST（速い動特性）に設定する。
- マイクロホンにはウインドスクリーンを装着し、風の影響を軽減する。
- 測定場所は周囲に反射物がなく、風速5m以下の平坦な場所を選ぶ。
- 測定前にエンジンとマフラーを十分に暖機する。
- 変速機はニュートラルに入れ、電装品は全てオフにする。
- 騒音計はマフラー出口から斜め後方45°、0.5m離れた位置に設置する。
- マイクロホンはマフラー出口と同じ高さに設置する。
- エンジン回転数は最高出力回転数の50%または75%に調整する。
- 測定は3回行い、最大音量値を記録し平均値を出す。
- 測定値が基準を超えた場合は、バッフル装着やマフラー交換を検討する。
- JMCA認定マフラーは日本の騒音規制基準に適合している。
- 不安な場合は専門業者に相談し、正確な測定と対策を依頼する。
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