地震や台風などの自然災害は、いつどこで起こるかわかりません。特にマンションにお住まいの場合、戸建てとは異なる特有のリスクも存在します。エレベーターが停止したり、ライフラインが寸断されたり…。そんな「もしも」の時に備え、適切な防災備品を準備しておくことは、ご自身とご家族の安全を守るために不可欠です。本記事では、マンション生活に特化した防災備品のリストを、最低限必要なものから家族構成別のアイテム、さらには賢い保管方法まで、網羅的にご紹介します。
なぜマンションで防災備品の準備が重要なのか?
マンションでの防災対策は、戸建てとは少し異なる視点が必要です。なぜマンションで防災備品の準備が特に重要なのでしょうか。その理由を具体的に見ていきましょう。災害発生時、マンション特有の状況を理解しておくことが、適切な備えにつながります。
マンション生活における防災の重要性を理解するために、以下の点を考慮する必要があります。
- 戸建てとの違い(避難経路、共助の重要性)
- 高層階特有のリスク
- ライフライン停止時の深刻な影響
- 在宅避難の可能性とその備え
これらの点を踏まえ、マンションならではの防災備品の必要性を解説します。
戸建てとの違い(避難経路、共助の重要性)
マンションと戸建ての最も大きな違いの一つは、避難経路の制約です。多くの住民が同じ階段や通路を利用するため、災害時には混雑や避難の遅れが生じる可能性があります。特に高層階では、エレベーターが停止すると階段での避難が必須となり、時間と体力を要します。また、マンションは多くの世帯が共同で生活する場であるため、「共助」の精神が非常に重要になります。安否確認や救助活動、情報共有など、住民同士の協力が不可欠です。日頃からご近所付き合いを意識し、防災訓練などに参加しておくことも、いざという時の助け合いにつながるでしょう。戸建てに比べて、個々の備えと同時に、コミュニティとしての備えも求められるのがマンションの特徴です。
高層階特有のリスク
マンションの中でも、特に高層階にお住まいの方は特有のリスクに備える必要があります。最も大きな問題は、エレベーターの停止です。地震や停電でエレベーターが使えなくなると、階段での移動を余儀なくされます。食料や水の運搬はもちろん、高齢者や小さなお子さん、体調の悪い方がいる場合は、避難や日常生活そのものが困難になる可能性があります。さらに、断水時の給水も深刻な問題です。低層階であれば給水車から直接水を受け取れる場合もありますが、高層階まで水を運ぶのは大変な労力となります。そのため、高層階の方は特に、飲料水だけでなく生活用水も含めて、十分な量の水を備蓄しておくことが重要になります。揺れの影響も低層階より大きくなる可能性があるため、家具の固定などもより一層徹底する必要があります。
ライフライン停止時の深刻な影響
地震や台風などの大規模災害が発生すると、電気、ガス、水道といったライフラインが停止する可能性があります。マンションでは、このライフライン停止の影響がより深刻になる場合があります。例えば、電気が止まると、エレベーターだけでなく、オートロック、照明、給水ポンプなども停止します。多くのマンションでは、水道水を高架水槽やポンプで各戸に供給しているため、停電は断水に直結することが多いのです。ガスが止まれば、お湯を沸かしたり、調理したりすることができなくなります。水道が止まれば、飲料水はもちろん、トイレやお風呂、洗濯など、日常生活のあらゆる場面で支障が出ます。特にトイレ問題は深刻で、衛生環境の悪化にもつながりかねません。このように、ライフラインの停止はマンション生活の根幹を揺るがすため、それぞれの停止に備えた対策(水、食料、簡易トイレ、カセットコンロ、モバイルバッテリーなど)が不可欠となります。
在宅避難の可能性とその備え
災害が発生した場合、必ずしも避難所へ行くとは限りません。建物の倒壊や火災の危険がなく、自宅での生活が継続できる場合は、「在宅避難」を選択することも考えられます。特にマンションは、比較的新しい建物であれば耐震性が高く、在宅避難の可能性が戸建てよりも高い場合があります。しかし、在宅避難を選択する場合でも、ライフラインが停止している可能性を考慮しなければなりません。電気、ガス、水道が使えない状況で、自宅で数日間、あるいはそれ以上生活するための備えが必要です。具体的には、十分な水と食料の備蓄、簡易トイレ、カセットコンロ、情報収集手段、寒さや暑さ対策などが求められます。また、余震に備えて家具をしっかりと固定しておくことも重要です。プライバシーが確保できるというメリットがある一方、支援物資が届きにくい可能性もあるため、自助努力による備えがより一層重要になります。
【基本編】最低限揃えたい!マンション防災備品リスト(3日~1週間分目安)
災害発生後、支援が本格化するまでには時間がかかると言われています。まずは最低3日間、できれば1週間程度、自力で生活できるための備えをしておくことが推奨されます。ここでは、マンション生活において最低限揃えておきたい基本的な防災備品を、「非常用持ち出し袋に入れるもの」と「自宅に備蓄しておくもの」に分けてリストアップします。
最低限必要な防災備品は、以下の2つのカテゴリーに分けて準備しましょう。
- 非常用持ち出し袋に入れるもの(避難時にすぐ持ち出すもの)
- 自宅に備蓄しておくもの(在宅避難や避難後の生活を支えるもの)
それぞれの具体的なアイテムとポイントを見ていきます。
非常用持ち出し袋に入れるもの
非常用持ち出し袋は、避難が必要になった際に、最低限必要なものをすぐに持ち出せるようにまとめたものです。重すぎると避難の妨げになるため、厳選することが大切です。リュックサックなど、両手が空くタイプの袋に入れ、玄関や寝室など、すぐに持ち出せる場所に保管しておきましょう。
以下は、持ち出し袋に入れておきたい基本的なアイテムです。
- 飲料水: 500mlペットボトル1~2本程度。
- 食料: 栄養補助食品、飴、チョコレートなど、すぐにエネルギーになるもの。
- 貴重品: 現金(小銭も)、預金通帳コピー、保険証コピー、身分証明書コピー、印鑑など。
- 衛生用品: マスク、携帯用アルコール消毒液、ウェットティッシュ、ポケットティッシュ、携帯トイレ(最低3回分程度)。
- 情報収集ツール: 携帯ラジオ(AM/FM、できれば手回し充電式)、モバイルバッテリー、充電ケーブル。
- 照明: 小型LED懐中電灯(予備電池も)。ヘッドライトも両手が使えて便利。
- 医薬品: 常備薬、絆創膏、消毒液、痛み止めなど。お薬手帳も忘れずに。
- その他: ホイッスル(救助要請用)、軍手、タオル、筆記用具、連絡先メモ、防災マップ・ハザードマップ、少額の現金、使い捨てカイロ、雨具(軽量なもの)。
これらのアイテムは、定期的に中身を確認し、使用期限などをチェックすることが重要です。
自宅に備蓄しておくもの
自宅備蓄は、ライフラインが停止した場合や、避難所に行かずに自宅で避難生活を送る(在宅避難)場合に備えるものです。最低3日分、できれば1週間分を目安に、家族の人数に合わせて量を調整しましょう。ローリングストック法などを活用し、無理なく備蓄を進めるのがおすすめです。
自宅に備蓄しておきたい主なアイテムは以下の通りです。
【水】
- 飲料水: 1人1日3リットルを目安に、3日~1週間分。長期保存水が便利。
- 生活用水: ポリタンクなどに水道水を汲み置き(定期的に入れ替え)、またはお風呂の残り湯をためておく習慣をつける。
【食料】
- 主食: アルファ米、パックご飯、乾麺(パスタ、うどん等)、餅、シリアルなど。
- 主菜・副菜: レトルト食品(カレー、丼もの、おかず)、缶詰(魚、肉、野菜、果物)、フリーズドライ食品(スープ、味噌汁)。
- その他: 野菜ジュース、栄養補助食品、お菓子、調味料(塩、砂糖、醤油など)。
- カセットコンロ・カセットボンベ: 調理や湯沸かしに必須。ボンベは多めに(1人1週間で6本程度が目安)。
【トイレ・衛生用品】
- 簡易トイレ・携帯トイレ: マンションでは特に重要。最低でも1人1日5回分×3日~1週間分。凝固剤と処理袋のセットが便利。
- トイレットペーパー・ティッシュペーパー: 多めに備蓄。
- ウェットティッシュ・からだ拭きシート: 断水時のお風呂代わりに。
- 歯磨きシート・マウスウォッシュ: 口腔ケア用品。
- マスク、消毒液、石鹸: 感染症対策。
- 生理用品、紙おむつ: 必要な方がいる場合。
- ゴミ袋(大・小): 汚物処理やゴミの保管に。防臭袋もあると良い。
【その他】
- 照明器具: LEDランタン(電池式または充電式)、懐中電灯、予備電池。
- 防寒具・暑さ対策: 毛布、寝袋、アルミブランケット、使い捨てカイロ、冷却シート、うちわ、携帯扇風機。
- 救急セット: 持ち出し袋とは別に、より充実したものを。包帯、ガーゼ、三角巾、体温計など。
- 多用途ツール: ラップ(食器に敷く、止血、防寒など)、ポリ袋(給水、ゴミ袋、防寒)、新聞紙(防寒、燃料)、ガムテープ、ロープ、軍手。
- 情報収集手段: 予備のラジオ、電池。
これらの備蓄品は、分散して保管し、定期的に点検・入れ替えを行いましょう。
【応用編】家族構成・状況別で追加したい防災備品
基本的な防災備品に加えて、ご自身の家族構成や状況に合わせて必要なものを追加することで、より安心して災害に備えることができます。一人暮らしの方、小さなお子様がいるご家庭、高齢者やペットと暮らすご家庭など、それぞれのニーズに合わせた備品を準備しましょう。
ここでは、いくつかのケース別に、追加で備えておくと役立つアイテムをご紹介します。
- 一人暮らしの場合
- 夫婦・カップルの場合
- 赤ちゃん・小さな子供がいる場合
- 高齢者がいる場合
- ペットがいる場合
ご自身の状況に合わせて、必要なものをリストに加えてみてください。
一人暮らしの場合
一人暮らしの場合、すべて自分で対応しなければならないため、備えは特に重要です。基本の備品に加えて、以下の点を意識しましょう。
- コンパクトさと軽量性: 避難時に一人で持ち運べるよう、持ち出し袋は軽量かつコンパクトにまとめる。
- 安否確認手段の確保: 家族や友人との連絡手段を複数確保しておく(SNS、災害用伝言ダイヤルなど)。連絡先リストを作成し、持ち出し袋に入れておく。
- 情報収集の強化: スマートフォンが使えない場合に備え、携帯ラジオは必須。予備電池やモバイルバッテリーも多めに。
- 防犯対策: 避難時や在宅避難時の防犯対策として、ホイッスルや防犯ブザーも有効。
- 食料の工夫: 調理の手間が少ないレトルト食品や缶詰、栄養補助食品を多めに。
- 精神的な支え: 不安を和らげるための本や音楽プレーヤー、好きなものなどもあると良い。
また、日頃から近隣住民とのコミュニケーションを心がけ、いざという時に助け合える関係を築いておくことも大切です。
夫婦・カップルの場合
夫婦やカップルの場合、協力して防災対策を進められるのが強みです。役割分担を決め、効率的に備えを進めましょう。
- 役割分担の明確化: 誰が何を持ち出すか、備蓄品の管理は誰がするかなどを事前に話し合っておく。
- それぞれの必需品の確認: 常備薬や衛生用品など、お互いに必要なものを確認し、各自の持ち出し袋や備蓄に加える。
- 連絡方法の確認: はぐれた場合の集合場所や連絡方法を複数決めておく。
- 備蓄量の調整: 二人分の水や食料、生活用品を確保する。特にトイレの備えは多めに準備しておくと安心。
- 力仕事への備え: 水の運搬や家具の固定など、力が必要な作業も協力して行えるように、軍手やロープなども準備しておく。
定期的に二人で備蓄品をチェックし、防災訓練に参加するなど、防災意識を共有することが大切です。
赤ちゃん・小さな子供がいる場合
赤ちゃんや小さなお子さんがいるご家庭では、大人だけの備えに加えて、子供特有の必需品を準備する必要があります。アレルギー対応なども考慮しましょう。
- ミルク・哺乳瓶: 粉ミルク(長期保存可能なもの)、液体ミルク、使い捨て哺乳瓶、哺乳瓶消毒グッズ。
- おむつ・おしりふき: 多めに備蓄。サイズアウトも考慮し、少し大きめのサイズも用意しておくと良い。防臭袋も必須。
- 離乳食・ベビーフード: 子供の月齢に合わせたもの。アレルギー対応食も確認。
- 子供用の薬・体温計: 常備薬、解熱剤、絆創膏など。
- 着替え・防寒具: 子供用の衣類、下着、靴下、おくるみ、ブランケットなど。
- 抱っこ紐・ベビーカー: 避難時に両手を空けるために重要。
- おもちゃ・絵本: 不安な状況下で子供の気を紛らわせるもの。音の出ないものが望ましい場合も。
- 母子手帳のコピー: 持ち出し袋に入れておく。
子供の成長に合わせて、定期的に備蓄品を見直すことが重要です。
高齢者がいる場合
高齢者の方がいるご家庭では、健康状態や身体状況に合わせた特別な配慮が必要です。普段から使っているものを中心に、多めに備えましょう。
- 常備薬・お薬手帳: 最低1週間分、できればそれ以上。かかりつけ医の連絡先も一緒に。お薬手帳のコピーも持ち出し袋へ。
- 介護用品: 入れ歯、補聴器(予備電池も)、杖、歩行器、大人用紙おむつ、尿取りパッド、清拭用品など、日常的に使用しているもの。
- 食事: 柔らかく調理されたレトルト食品(おかゆなど)、栄養補助食品、刻み食やミキサー食が必要な場合はその備えも。
- メガネ・老眼鏡: 予備を用意しておく。
- 防寒・暑さ対策: 体温調節が難しい場合があるので、カイロ、毛布、冷却グッズなどを多めに。
- 連絡手段: 操作しやすい携帯電話や連絡先を書いたメモ。
- 持病に関する情報: 持病名、緊急連絡先、かかりつけ医などを記載したカード。
避難経路や避難方法についても、本人の身体能力を考慮して事前に検討しておくことが大切です。
ペットがいる場合
ペットも大切な家族の一員です。災害時にもペットと一緒に安全に過ごせるよう、ペット用の防災備品もしっかり準備しておきましょう。避難所によってはペット同伴ができない場合もあるため、事前に確認しておくことが重要です。
- ペットフード・水: 最低5日分、できれば1週間分以上。療法食の場合は特に多めに。
- 常備薬: 必要な場合は忘れずに。
- トイレ用品: ペットシーツ、猫砂、排泄物処理袋など。
- 食器: 普段使っているもの、または折りたたみ式のもの。
- ケージ・キャリーバッグ: 避難時や避難所での生活に必要。
- リード・首輪(迷子札付き): 予備も用意。迷子札には連絡先を明記。
- ペットの写真・情報: はぐれた場合に備え、特徴がわかる写真やワクチン接種証明書などのコピー。
- タオル・ブラシ: 体を清潔に保つため。
- おもちゃ・おやつ: ストレス軽減のため。
ペットの種類や大きさに合わせて必要なものをリストアップし、人間の備蓄品と一緒に保管しておきましょう。
マンション特有の防災対策と備品のポイント
マンションでの防災対策を考える上で、その構造や共同生活といった特有の事情を踏まえることが重要です。高層階ならではの注意点や、管理組合との連携、そして在宅避難をより安全・快適にするためのポイントについて解説します。
マンションならではの防災対策として、以下の点を押さえておきましょう。
- 高層階の注意点と備え
- 共用部分の備蓄と管理組合との連携
- 在宅避難を想定した備え
これらのポイントを理解し、備品選びや対策に活かしましょう。
高層階の注意点と備え
前述の通り、高層階ではエレベーター停止と断水が大きなリスクとなります。エレベーターが停止した場合、階段での移動が必須となるため、非常用持ち出し袋は背負えるリュックタイプにし、重すぎないように注意が必要です。また、食料や水などの備蓄品を自宅まで運ぶのが困難になるため、備蓄量は低層階よりも多めに確保しておくことが推奨されます。特に水は、飲料水だけでなく、トイレを流したり体を拭いたりするための生活用水の確保も重要です。ポリタンクや折りたたみ式の給水袋を用意しておくと、給水活動が再開された際に役立ちます。さらに、高層階は揺れが大きくなる傾向があるため、家具の固定は必須です。背の高い家具はL字金具などで壁に固定し、ガラスには飛散防止フィルムを貼るなどの対策を徹底しましょう。
共用部分の備蓄と管理組合との連携
多くのマンションでは、管理組合が主体となって、共用部分(倉庫など)に防災備品を備蓄しています。どのようなものが、どれくらいの量備蓄されているのかを事前に確認しておくことが大切です。管理組合が備蓄しているものを把握することで、自宅での備蓄内容を調整でき、無駄をなくすことができます。例えば、共用部分に簡易トイレや発電機、大型のポリタンクなどがあれば、個人での備えを少し軽減できるかもしれません。ただし、共用備蓄は全住民で分け合うことになるため、それだけに頼るのではなく、あくまで個人の備えを補完するものと考えるべきです。また、管理組合が主催する防災訓練には積極的に参加し、安否確認の方法や避難経路、共用備品の保管場所や使い方などを確認しておきましょう。住民同士の顔が見える関係を築いておくことも、いざという時の「共助」につながります。
在宅避難を想定した備え
マンションは耐震性の高い建物が多く、倒壊の危険性が低い場合は自宅で避難生活を送る「在宅避難」が基本となることがあります。在宅避難をより安全かつ快適に行うためには、事前の備えが重要です。まず、家具の転倒・落下防止対策は必須です。特に寝室や子供部屋など、就寝中に地震が発生した場合を想定し、安全な空間を確保しましょう。次に、ライフライン停止に備えた備蓄品の確保です。水、食料、簡易トイレ、カセットコンロ、照明などは、在宅避難が長期化することも想定し、1週間分以上を目安に準備しておくと安心です。また、避難生活が続くとプライバシーの確保も課題になります。簡易的な間仕切りやテント、目隠しになるようなものがあると役立ちます。さらに、断水・停電時でも情報収集ができるよう、ラジオやモバイルバッテリーの準備も忘れずに行いましょう。窓ガラスの飛散防止フィルムや、ドアが開かなくなるのを防ぐためのバールなども、状況によっては有効な備えとなります。
防災備品の賢い選び方と保管方法
せっかく防災備品を揃えても、いざという時に使えなかったり、どこにあるか分からなかったりしては意味がありません。備品の選び方から、無理なく続けられる備蓄方法、そして適切な保管場所まで、実践的なノウハウをご紹介します。
防災備品を効果的に活用するためには、以下のポイントを押さえることが大切です。
- ローリングストック法で無理なく備蓄
- おすすめの保管場所と収納のコツ
- 防災グッズセットの選び方
これらの方法を取り入れて、日頃から防災意識を高めていきましょう。
ローリングストック法で無理なく備蓄
防災備蓄というと、「特別なものを大量に買い込む」というイメージがあるかもしれませんが、「ローリングストック法」を取り入れれば、普段の生活の中で無理なく備蓄を進めることができます。ローリングストック法とは、普段から使っている食料品や日用品を少し多めに買い置きしておき、使った分だけ買い足していく方法です。例えば、缶詰やレトルト食品、パスタ、トイレットペーパーなどを、常に一定量ストックしておくようにします。古いものから順番に使っていくことで、賞味期限切れや使用期限切れを防ぎ、食品ロスも減らせます。特別な防災食だけでなく、普段食べ慣れているものを備蓄できるため、災害時にも普段に近い食生活を送ることができ、精神的な安心感にもつながります。この方法なら、特別な保管場所を確保する必要も少なく、家計への負担も分散できます。「少し多めに買って、使ったら買い足す」を習慣にしてみましょう。
おすすめの保管場所と収納のコツ
防災備品は、いざという時にすぐに取り出せる場所に保管しておくことが重要です。しかし、マンションでは収納スペースが限られている場合も多いでしょう。おすすめの保管場所は、玄関、リビング、寝室、クローゼット、押し入れなど、複数箇所に分散させることです。一箇所にまとめて保管すると、その場所が被災して取り出せなくなるリスクがあります。非常用持ち出し袋は、玄関や枕元など、避難時にすぐに手に取れる場所に置くのが基本です。自宅備蓄品は、取り出しやすさを考慮しつつ、分散して保管しましょう。例えば、水や食料はキッチンやパントリー、簡易トイレはトイレの近く、寝袋や毛布は押し入れやクローゼットの上段などが考えられます。収納のコツとしては、中身がわかるようにラベルを貼ったり、透明なケースを使ったりすると良いでしょう。また、水害のリスクがある地域では、床に近い場所ではなく、少し高い場所に保管することも検討してください。定期的に保管場所を確認し、家族全員がどこに何があるか把握しておくことも大切です。
防災グッズセットの選び方
防災グッズを一つ一つ揃えるのが大変だと感じる方には、市販の「防災グッズセット」を利用するのも一つの方法です。セットには、非常用持ち出し袋に必要な基本的なアイテムが一通り揃っていることが多く、手軽に最低限の備えを始めることができます。しかし、セットを選ぶ際には注意が必要です。まず、セット内容をよく確認しましょう。自分や家族にとって本当に必要なものが含まれているか、不要なものはないかを確認します。特に、食料や水の量、アレルギー対応、医薬品などは、個々のニーズに合わせて追加や入れ替えが必要になる場合が多いです。また、リュック自体の品質や容量、背負いやすさもチェックポイントです。安価なセットの中には、品質が低いものや、実際には使えないようなアイテムが含まれている可能性もあります。レビューなどを参考に、信頼できるメーカーの製品を選ぶようにしましょう。防災グッズセットはあくまで「基本セット」と考え、購入後に必ず中身を確認し、自分仕様にカスタマイズすることが重要です。
よくある質問 (FAQ)
マンションの防災備品に関して、多くの方が疑問に思う点をまとめました。
防災グッズは何日分必要ですか?
一般的に、最低でも3日分、可能であれば1週間分の備蓄が推奨されています。大規模な災害が発生した場合、支援物資が届くまで時間がかかることや、ライフラインの復旧に1週間以上かかるケースも想定されるためです。特にマンションでの在宅避難を考慮すると、少し多めに備えておくと安心です。家族の人数や状況に合わせて調整しましょう。
マンションの防災で一番大切なことは何ですか?
マンションの防災で最も大切なことは、「自助」と「共助」の両方を意識することです。まずは自分自身と家族の安全を守るための備え(自助)をしっかりと行うこと。これには、本記事で紹介したような備品の準備や家具の固定などが含まれます。それに加えて、マンションは共同生活の場であるため、隣近所との協力(共助)も非常に重要になります。安否確認、救助活動、情報共有など、住民同士で助け合う体制を日頃から意識し、防災訓練などを通じて連携を確認しておくことが大切です。
防災セットに入れておくべきものは何ですか?
防災セット(非常用持ち出し袋)に入れておくべきものは、避難時に最低限必要なものです。具体的には、飲料水、非常食、携帯トイレ、マスク、消毒液、懐中電灯、携帯ラジオ、モバイルバッテリー、貴重品(現金、身分証コピー等)、常備薬、ホイッスル、軍手などが挙げられます。重くなりすぎないよう、厳選することが重要です。家族構成に合わせて、子供用やお年寄り用、ペット用のアイテムも追加しましょう。
防災リュックの中身は何を入れるべきですか?
防災リュック(非常用持ち出し袋)の中身は、基本的に上記の「防災セットに入れておくべきもの」と同様です。命を守るための最低限のアイテムを優先的に入れます。具体的には、水、食料、衛生用品(特に携帯トイレ)、情報収集手段(ラジオ、バッテリー)、照明、医薬品、貴重品、防寒具(アルミブランケットなど)、軍手、ホイッスルです。これらを、リュックの中で整理し、すぐに取り出せるようにパッキングすることが大切です。重さも考慮し、10kg~15kg程度(女性や高齢者はそれ以下)を目安にしましょう。
マンションの防災備蓄は何が必要ですか?
マンションの防災備蓄としては、非常用持ち出し袋とは別に、在宅避難を想定したアイテムが必要です。具体的には、飲料水(1人1日3L×7日分)、生活用水(ポリタンク等)、長期保存可能な食料(1週間分)、カセットコンロとボンベ、簡易トイレ(多めに)、トイレットペーパー、ウェットティッシュ、ランタン、電池、防寒具、救急セットなどが挙げられます。マンション特有の備えとして、エレベーター停止に備えた水の運搬手段(給水袋など)や、断水時のトイレ対策を重視すると良いでしょう。
防災グッズ リスト 女性に必要なものは?
基本的な防災グッズに加えて、女性が特に備えておくと安心なアイテムがあります。生理用品は必需品です。普段使っているものを多めにストックしておきましょう。おりものシートもあると便利です。また、防犯ブザーやホイッスルは、避難所や夜間の移動時の安全確保に役立ちます。衛生面では、ウェットティッシュやからだ拭きシート、ドライシャンプー、スキンケア用品(試供品など)、リップクリームなどがあると快適に過ごせます。下着や靴下などの着替えも多めに用意しておくと良いでしょう。目隠しになるようなポンチョや大判ストールもあると、着替えや授乳時に役立ちます。
防災グッズ 100均で揃えられるものは?
100円ショップでも、防災に役立つアイテムを多く揃えることができます。例えば、軍手、ロープ、ホイッスル、LEDライト(小型のもの)、ライター、ろうそく、ウェットティッシュ、マスク、ゴミ袋、ポリ袋、アルミブランケット、簡易レインコート、携帯トイレ(種類による)、乾電池、小分け容器、油性ペン、ノートなどが挙げられます。ただし、品質や耐久性にはばらつきがあるため、特にライトや電池などは信頼性を確認することが重要です。あくまで補助的なものとして活用し、重要なアイテムは防災用品専門店のものなどを選ぶとより安心です。
マンションの管理組合で備えている防災備品は?
マンションの管理組合が備えている防災備品は、マンションによって異なります。一般的には、共用部分で使用する発電機、照明器具、簡易トイレ、救助用工具(バール、ジャッキなど)、大型の給水タンク、毛布、食料・飲料水などが考えられます。どのようなものが、どこに、どれくらいの量備蓄されているかは、管理組合や管理会社に確認する必要があります。総会資料や掲示板などで情報提供されている場合もあります。共用備蓄の内容を把握し、自宅での備えと合わせて考えましょう。
防災備品の点検頻度は?
防災備品は、少なくとも年に1~2回は点検することが推奨されます。特に、食料や飲料水の賞味期限、医薬品の使用期限、乾電池の使用推奨期限は必ず確認しましょう。期限が近いものは、ローリングストック法で消費・交換します。懐中電灯やラジオが正常に作動するか、モバイルバッテリーが充電できるかなどもチェックが必要です。家族構成の変化(子供の成長など)に合わせて、中身を見直すことも大切です。防災の日(9月1日)や、年末の大掃除の時期など、点検する日を決めておくと忘れにくいでしょう。
まとめ
- マンションでは戸建てと異なる防災リスク(エレベーター停止、断水等)がある。
- 防災備品は「非常用持ち出し袋」と「自宅備蓄」に分けて準備する。
- 最低3日分、推奨1週間分の水・食料・簡易トイレを備蓄する。
- 非常用持ち出し袋には、水、食料、衛生用品、情報ツール、照明などを入れる。
- 自宅備蓄には、水、食料、カセットコンロ、簡易トイレ、衛生用品などを充実させる。
- 高層階はエレベーター停止と断水に備え、水や食料を多めに備蓄する。
- 家具の固定はマンション防災の基本。
- 一人暮らし、子供、高齢者、ペットなど、家族構成に合わせた備品を追加する。
- ローリングストック法で無理なく備蓄を継続する。
- 備品は玄関、リビング、寝室などに分散して保管する。
- 防災グッズセットは中身を確認し、自分仕様にカスタマイズする。
- 管理組合の共用備蓄を確認し、自宅の備えと連携させる。
- 防災訓練に参加し、共助の意識を高める。
- 防災備品は年に1~2回定期的に点検・見直しを行う。
- 「自助」と「共助」の両輪でマンション防災に取り組むことが重要。