「最近、脈拍が気になる」「60代の脈拍って、どれくらいが正常なの？」と感じていませんか？年齢を重ねるとともに、体の変化は誰にでも訪れるものです。特に心臓の健康を示す脈拍は、日々の体調を知る大切なバロメーターとなります。本記事では、60代の方々が安心して毎日を過ごせるよう、脈拍の正常値から正しい測り方、そして異常を感じた際の対処法まで、詳しく解説します。ご自身の健康状態を把握し、より健やかな生活を送るための参考にしてください。
脈拍とは？健康のバロメーターとしての重要性
脈拍とは、心臓が血液を全身に送り出す際に、動脈に生じる拍動のことです。この拍動は、心臓の収縮運動によって血液が血管を通過する際に発生し、手首や首などの体表近くの動脈で感じることができます。1分間あたりの拍動回数を「脈拍数」と呼び、この数値は心臓の働きや全身の血液循環の状態を示す重要な指標となります。
脈拍数は、健康状態を把握する上で非常に重要な役割を果たします。脈拍の数やリズムに異常がある場合、心臓や血液循環に関連した病気が疑われることがあります。 例えば、脈拍が速すぎたり遅すぎたり、あるいは不規則なリズムを刻んだりすることは、心臓の病気のサインである可能性も考えられます。 日常的に自分の脈拍をチェックする習慣を持つことは、病気の早期発見や予防につながる大切な行動と言えるでしょう。
60代の脈拍正常値の目安と基準
脈拍の正常値は、年齢や個人の健康状態によって異なります。特に60代になると、心臓や血管の状態も変化しやすくなるため、ご自身の年齢に合った目安を知っておくことが大切です。
安静時脈拍数とは？その意味
安静時脈拍数とは、文字通り、体が安静な状態にあるときの1分間あたりの脈拍数のことです。具体的には、運動後や興奮状態ではなく、リラックスして座っているか横になっている状態で測定した値を指します。 この安静時脈拍数は、心臓の健康状態を評価する上で基本的な指標となります。一般的に、安静時の脈拍数が低いほど心臓の効率が良いとされ、運動習慣のある人やアスリートは安静時脈拍数が低い傾向にあります。
年齢別脈拍基準値の一般的な範囲
成人の一般的な脈拍正常値は、1分間に60～100回とされています。 しかし、年齢とともに脈拍数は変化する傾向があり、特に高齢者では低下することが一般的です。 60代の脈拍正常値の目安は、以下のようになります。
- 60代～70代：50～80回/分程度
別の情報源では、60代の平均脈拍数として男性で67回、女性で68回というデータも示されています。 また、高齢者（65歳以上）の脈拍正常値は50～70回/分とされることもあります。 これらの数値はあくまで一般的な目安であり、個人差が大きいことを理解しておくことが重要です。
個人差と変動要因について
脈拍数は、年齢だけでなく、さまざまな要因によって変動します。例えば、日常的に激しい運動をしている人は脈拍数が低い傾向にあり、逆に運動を全くしない人は脈拍数が高くなる傾向があります。 また、緊張や興奮、ストレス、発熱、感染症、貧血、甲状腺ホルモンの異常分泌（バセドウ病など）、服用している薬なども脈拍数に影響を与えることがあります。 さらに、睡眠時や入浴後など、環境によっても脈拍数は変化しやすい数値です。 したがって、ご自身の平常時の脈拍数を把握し、その変化に気づくことが大切です。
正確な脈拍の測り方と注意点
脈拍を正確に測ることは、日々の健康管理において非常に重要です。ここでは、ご自身で簡単にできる脈拍の測り方と、測定時のコツや注意点をご紹介します。
手首や首での測り方
脈拍を測る最も一般的な方法は、手首の親指側にある橈骨動脈（とうこつどうみゃく）に触れる方法です。 具体的な測り方は以下の通りです。
- 片方の手のひらを上に向けてください。
- 反対側の手の人差し指、中指、薬指の3本を、手首の親指側のくぼみ（骨と筋の間）に軽く当てます。
- 指先でドクドクという拍動を感じる場所を探し、軽く押し当てます。
- 秒針のある時計を見ながら、15秒間脈拍数を数えます。
- 数えた脈拍数を4倍すると、1分間あたりの脈拍数が算出できます。
首の頸動脈でも脈拍を測ることができますが、こちらは片側ずつ、優しく触れるようにしてください。両側同時に強く押すと、めまいなどを起こす可能性があるため注意が必要です。
測定に適した時間と環境
脈拍を正確に測るためには、測定に適した時間と環境を選ぶことが大切です。 最もおすすめなのは、朝の起床直後や夜の寝る直前など、体がリラックスして気持ちが安定しているときです。 運動後や入浴後、食後、緊張や興奮している時などは脈拍が変動しやすいため、正確な値を測ることができません。 測定時は、楽な姿勢で座るか横になり、深呼吸をしてリラックスすることを心がけましょう。
測定時のコツと注意すべきこと
脈拍測定の際は、以下のコツと注意点を意識してください。
- 指の当て方：親指は、自分自身の脈を感じてしまう可能性があるため、人差し指・中指・薬指の3本を使うのがおすすめです。
- 力の入れ具合：強く押しすぎると脈が感じにくくなることがあります。軽く触れる程度から、徐々に力を調整して拍動が最もはっきり感じられる場所を見つけましょう。
- 規則性の確認：脈拍数だけでなく、そのリズムが規則正しいかどうかも確認しましょう。「トットットッ」と一定のリズムであれば正常ですが、時々脈が飛んだり、リズムが不規則になったりする場合は注意が必要です。
- 継続的な測定：毎日同じ時間帯に測定し、記録することで、ご自身の平常値を把握しやすくなります。
脈拍は環境によって大きく変化するため、一度の測定で異常と判断せず、複数回測定して確認することが重要です。
60代で注意したい脈拍の異常とそのサイン
60代になると、心臓や血管の機能が変化しやすくなるため、脈拍の異常に注意が必要です。脈拍の異常には、主に「頻脈」「徐脈」「不整脈」の3種類があります。
脈が速すぎる場合（頻脈）
頻脈とは、安静時の脈拍数が異常に速い状態を指し、一般的には1分間に100回以上の場合を言います。 頻脈の症状としては、動悸、息切れ、めまい、胸の不快感などが挙げられます。 頻脈の原因は多岐にわたりますが、以下のようなものが考えられます。
- 生理的な反応：運動や緊張、興奮、ストレス、発熱などによる一時的な上昇。
- 心臓の病気：不整脈（心房細動、心室頻拍など）、心筋症、心臓弁膜症など。
- その他の病気：甲状腺機能亢進症（バセドウ病）、貧血、感染症、自律神経失調症など。
- 薬の副作用：降圧剤や抗うつ薬などの服用。
特に、安静時にも脈拍が常に100回を超える場合や、動悸や息切れなどの症状を伴う場合は、医療機関を受診することが大切です。
脈が遅すぎる場合（徐脈）
徐脈とは、安静時の脈拍数が異常に遅い状態を指し、一般的には1分間に60回未満の場合を言います。 高齢者の場合、50～70回/分が正常値とされることもあり、成人よりやや低い傾向があります。 徐脈の症状としては、めまい、ふらつき、倦怠感、息切れ、失神などが挙げられます。 徐脈の原因としては、以下のようなものが考えられます。
- 生理的な反応：日常的に激しい運動をしているスポーツ選手など。
- 加齢による変化：心臓の機能低下や電気信号の伝達異常。
- 心臓の病気：洞不全症候群、房室ブロックなどの不整脈。
- 薬の副作用：特定の降圧剤など。
安静時脈拍数が60回未満であっても、特に症状がなく日常生活に支障がない場合は問題ないこともあります。 しかし、めまいや失神などの症状を伴う場合は、治療が必要な不整脈が原因である可能性もあるため、医療機関を受診しましょう。
脈が不規則な場合（不整脈）
不整脈とは、脈拍のリズムが乱れる状態を指します。 脈が飛んだり、速くなったり遅くなったりするなど、さまざまな症状があります。 健康な人でも一時的に不整脈が起こることはありますが、心臓の病気のサインである場合もあります。 不整脈の症状としては、動悸、息切れ、めまい、ふらつき、胸の違和感、失神などが挙げられます。 不整脈の原因としては、以下のようなものが考えられます。
- 加齢による変化：60歳を超えると不整脈の症状が多く見られるようになります。
- 心臓の病気：心房細動、期外収縮、心不全、心臓弁膜症、心筋梗塞など。
- その他の病気：甲状腺機能亢進症、貧血、自律神経失調症など。
- ストレスや睡眠不足：自律神経の乱れ。
不整脈には経過観察で大丈夫なものもありますが、すぐに適切な治療が必要なケースもあります。 特に、動悸やめまい、息切れなどの症状が頻繁に現れる場合や、意識を失うような場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。
脈拍の異常を感じたら？医療機関を受診する目安
日々の脈拍チェックで異常を感じた場合、どのように対処すれば良いのでしょうか。ここでは、医療機関を受診する目安と、受診時に伝えるべき情報について解説します。
どのような症状があれば受診すべきか
脈拍の異常は、心配のない一時的なものも少なくありませんが、中には心臓の病気などが隠れていることがあります。 以下のような症状がある場合は、自己判断せずに医療機関を受診することをおすすめします。
- 動悸や息切れが頻繁に起こる、または悪化する
- めまいやふらつき、失神を伴う
- 胸の痛みや不快感がある
- 脈拍が常に100回以上、または60回未満の状態が続く
- 脈拍のリズムが不規則で、脈が飛ぶ感じが頻繁にある
- 疲れやすい、倦怠感が続く
- 吐き気や嘔吐を伴う
特に60代以降は、加齢によって心臓や血管に変化が起こりやすいため、症状が軽くても重大な病気のサインである可能性も考慮し、注意が必要です。 健康診断などで心電図検査を受け、心臓の動きを定期的にチェックすることも大切です。
受診時に伝えるべき情報
医療機関を受診する際は、医師に正確な情報を伝えることで、より適切な診断と治療につながります。以下の情報を整理して伝えられるように準備しておきましょう。
- 脈拍の数値：安静時の脈拍数、異常を感じたときの脈拍数（おおよそで構いません）。
- 症状の種類：動悸、息切れ、めまい、胸の痛みなど、具体的にどのような症状があるか。
- 症状の頻度と持続時間：いつから、どのくらいの頻度で、どのくらいの時間症状が続くか。
- 症状が現れる状況：安静時、運動時、食後、入浴後など、どのような状況で症状が現れるか。
- 既往歴：高血圧、糖尿病、心臓病など、現在治療中の病気や過去にかかった病気。
- 服用中の薬：現在服用しているすべての薬（市販薬やサプリメントも含む）。
- 生活習慣：喫煙、飲酒、運動習慣、ストレスの有無など。
日頃から脈拍を測定し、記録しておく習慣があると、医師に正確な情報を提供しやすくなります。
健康な脈拍を保つための生活習慣のコツ
健康な脈拍を維持するためには、日々の生活習慣が大きく影響します。60代からでも実践できる、心臓に優しい生活習慣のコツをご紹介します。
適度な運動習慣を取り入れる
適度な運動は、心臓の機能を高め、健康な脈拍を保つ上で非常に効果的です。 ウォーキングや軽いジョギング、水泳、サイクリングなど、無理なく続けられる有酸素運動を週に3～5回、1回30分程度行うことを目標にしましょう。運動によって心肺機能が向上すると、安静時の脈拍数が安定し、心臓への負担を減らすことができます。 ただし、急に激しい運動を始めるのは避け、体調と相談しながら徐々に運動量や強度を上げていくことが大切です。運動中に動悸や息切れ、胸の痛みを感じた場合は、すぐに中止して休息を取り、必要であれば医師に相談してください。
バランスの取れた食事を心がける
食生活は、心臓の健康に直接影響を与えます。 バランスの取れた食事を心がけ、特に以下の点に注意しましょう。
- 塩分を控える：高血圧は心臓に負担をかけるため、減塩を意識しましょう。
- 野菜や果物を積極的に摂る：ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富で、心臓病のリスクを低減します。
- 魚を食べる：DHAやEPAなどの不飽和脂肪酸は、血液をサラサラにし、動脈硬化の予防に役立ちます。
- 飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を控える：肉の脂身や加工食品に多く含まれ、コレステロール値を上昇させる可能性があります。
- 適量の水分補給：脱水は血液の粘度を高め、心臓に負担をかけることがあります。
健康的な食生活は、脈拍だけでなく、血圧やコレステロール値の改善にもつながります。
ストレスを管理し、十分な睡眠をとる
ストレスは、自律神経のバランスを乱し、脈拍を速くする原因となることがあります。 日常生活の中でストレスを上手に管理するコツを見つけることが大切です。趣味の時間を持つ、リラックスできる音楽を聴く、瞑想や深呼吸を取り入れるなど、ご自身に合った方法でストレスを解消しましょう。また、十分な睡眠も心臓の健康には欠かせません。 質の良い睡眠を7～8時間程度確保できるよう、寝室の環境を整えたり、就寝前のカフェイン摂取を控えたりするなどの工夫をしてみてください。
禁煙と節酒の重要性
喫煙は、血管を収縮させ、動脈硬化を促進するなど、心臓や血管に非常に大きな負担をかけます。 禁煙は、健康な脈拍を保つ上で最も重要な生活習慣の改善の一つです。また、過度な飲酒も心臓に負担をかける可能性があります。適量を守り、休肝日を設けるなど、節度ある飲酒を心がけましょう。
よくある質問
脈拍は年齢とともに変化しますか？
はい、脈拍は年齢とともに変化します。一般的に、乳幼児は脈拍数が高く、年を重ねるにつれて徐々に減少する傾向があります。 65歳以上になると、脈拍数は60～70回/分程度になることが多く、成人の基準値（60～100回/分）よりもやや低くなる傾向が見られます。 これは、加齢によって心臓の機能や活動量、代謝が低下し、体内の酸素消費量が減少するためと考えられています。 ただし、個人差が大きく、運動習慣や健康状態によっても変動します。
運動中の脈拍はどのくらいが適切ですか？
運動中の脈拍数は、運動強度や個人の体力によって大きく異なります。一般的に、運動強度の目安として「目標心拍数」が用いられます。目標心拍数は、「（220－年齢）×運動強度（％）」で簡易的に算出できます。例えば、60代の方（年齢60歳）が中等度の運動（運動強度50～70％）を行う場合、目標心拍数は「（220－60）×0.5～0.7」で、80～112回/分程度が目安となります。 運動中は脈拍が上昇するのが正常な反応ですが、動悸や息切れ、胸の痛みなどの症状がある場合は無理せず運動を中止し、休息を取ることが大切です。
脈拍計は必要ですか？
脈拍計は必須ではありませんが、日々の健康管理に役立つツールです。手首で脈拍を測る方法でも十分に正確な情報を得られますが、脈拍計（スマートウォッチや血圧計に付属しているものなど）を使用することで、より手軽に、かつ継続的に脈拍数を記録できます。 特に、脈拍の異常が気になる方や、運動中の脈拍を管理したい方にとっては、便利なツールとなるでしょう。ただし、脈拍計の数値はあくまで目安であり、異常を感じた場合は必ず医療機関を受診して医師の診断を受けるようにしてください。
60代で脈拍が50台は問題ありますか？
60代で脈拍が50台の場合、一概に問題があるとは限りません。高齢者の脈拍正常値は50～70回/分とされることもあり、特に運動習慣のある方や、特定の薬を服用している方では、安静時に脈拍が50回/分以下になることもあります。 また、睡眠中はさらに脈拍が低くなるのが一般的です。 しかし、めまい、ふらつき、倦怠感、息切れ、失神などの症状を伴う場合は、「徐脈」という不整脈の可能性があり、治療が必要な場合もあります。 症状がある場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、医師に相談することが重要です。
脈拍が90を超えるのは危険ですか？
安静時に脈拍が90を超える場合、注意が必要です。成人の脈拍正常値は60～100回/分とされていますが、90回を超える場合はやや高めと言えます。 運動や緊張、興奮、ストレス、発熱などによる一時的な上昇であれば問題ないことが多いですが、動悸や息切れなどの症状を伴う場合や、リラックスしている時にも頻繁に90を超える場合は、「頻脈」という不整脈や、甲状腺機能亢進症などの病気が原因である可能性があります。 脈拍が常に100回以上の場合や、症状を伴う場合は、早めに医療機関を受診して相談しましょう。
脈拍が飛ぶ感じがするのはなぜですか？
脈拍が飛ぶ感じがするのは、「不整脈」の一種である「期外収縮」の可能性があります。 期外収縮は、健康な人でもよく起こる一時的なもので、心配ない場合が多いです。 しかし、日常的に頻繁に脈が飛ぶ、リズムが不規則になる、動悸やめまい、息切れなどの症状を伴う場合は、心臓の病気が隠れている可能性も考えられます。 特に60代以降は、加齢によって不整脈が起こりやすくなるため、気になる症状がある場合は、一度医療機関を受診して検査を受けることをおすすめします。
まとめ
- 60代の脈拍正常値は安静時で50～80回/分が目安です。
- 成人全体の正常値は60～100回/分ですが、年齢で変動します。
- 脈拍は加齢とともに低下する傾向があります。
- 個人差や運動習慣、体調によって脈拍は大きく変わります。
- 手首の橈骨動脈で15秒間測り、4倍することで簡単に測定できます。
- 測定は朝の起床直後や夜の寝る前など、安静時に行いましょう。
- 脈拍が100回以上は頻脈、60回未満は徐脈とされます。
- 脈拍のリズムが不規則な場合は不整脈の可能性があります。
- 動悸、息切れ、めまい、胸の痛みなどの症状があれば受診を検討しましょう。
- 受診時には脈拍数、症状、既往歴、服用薬などを伝えましょう。
- 適度な運動は心臓機能を高め、脈拍安定に役立ちます。
- バランスの取れた食事で塩分を控え、野菜を摂りましょう。
- ストレス管理と十分な睡眠は心臓の健康に不可欠です。
- 禁煙と節酒は心臓への負担を減らす重要なコツです。
- 脈拍計は日々の健康管理に便利なツールです。
- 気になる症状があれば、自己判断せず医療機関に相談しましょう。
