ロックタイト243で固定されたネジを外す際、どのようにすれば安全かつスムーズに作業を進められるかお悩みではありませんか?本記事では、ロックタイト243の特性を理解し、適切な外し方を実践するための具体的な手順と役立つコツを詳しく解説します。大切な部品を傷つけずに作業を終えるための情報が満載です。
ロックタイト243とは?その特徴と外し方の基本

ロックタイト243は、ヘンケルジャパン株式会社が製造・販売する中強度のネジゆるみ止め用接着剤です。その最大の特徴は、振動や衝撃によるネジの緩みを効果的に防止しながらも、一般的な手工具で取り外しが可能である点にあります。
この接着剤は、金属イオンがある状態で酸素が遮断されると硬化する「嫌気性接着剤」に分類されます。 ネジとネジ穴の隙間で空気が遮断されることで固まり、ネジの緩みを防ぐ仕組みです。また、耐油性も高く、切削油や潤滑油などが付着した面でも使用できる汎用性の高さも持ち合わせています。
ロックタイト243は、自転車の部品、計測機器、キャブレターのネジなど、幅広い用途で利用されています。 そのため、多くの場面でその取り外し方法を知っておくことは非常に重要です。低強度の222と比べると強度は高いものの、高強度の263/271のように恒久的な固定を目的としたものではないため、取り外しが比較的容易に設計されています。
中強度ネジロック剤「ロックタイト243」の特性
ロックタイト243は、その名の通り「中強度」のネジロック剤です。 これは、ネジをしっかりと固定しつつも、必要に応じて手工具で分解できるバランスの取れた強度を意味します。振動や衝撃による緩みを防ぐ効果は高いですが、高強度タイプのように一度固定すると取り外しが極めて困難になるわけではありません。
また、耐油性に優れている点も大きな特性です。 エンジン周りや油が付着しやすい機械部品など、油分が存在する環境下でも性能を発揮するため、自動車整備や産業機械のメンテナンスで広く利用されています。 使用温度範囲の目安は-55℃から180℃とされており、幅広い環境下での使用が可能です。
この中強度と耐油性、そして手工具での取り外し可能性という特性が、ロックタイト243が多くの現場で選ばれる理由です。ネジの緩み止めと取り外しやすさのバランスが求められる場面で、その真価を発揮します。
なぜロックタイト243は手工具で外せるのか
ロックタイト243が手工具で外せる主な理由は、その「中強度」という設計思想にあります。高強度タイプのネジロック剤が、事実上恒久的な固定を目的としているのに対し、243はメンテナンスや分解を前提とした強度に調整されています。
接着剤が硬化する際の結合力は、低強度、中強度、高強度と段階があり、243は中間に位置します。このため、適切なトルクをかければ、接着剤の結合力を破ってネジを緩めることが可能です。 特に、M6からM20程度のネジ径に適しており、これらのサイズのネジであれば、一般的なレンチやドライバーで十分に対応できます。
また、ロックタイト243は「チキソ性」を有しているため、塗布時に液だれしにくく、接着部周辺への付着を防ぎます。 これにより、必要以上に広範囲に接着剤が固着することを防ぎ、取り外し作業をよりスムーズにする効果も期待できます。 このように、製品の特性自体が取り外しを考慮して設計されているため、手工具での作業が可能となっているのです。
ロックタイト243外し方実践編!具体的な手順と注意点

ロックタイト243で固定されたネジを外す際、焦らず適切な手順を踏むことが重要です。ここでは、基本的な手工具での外し方から、固着が強い場合の対処法まで、具体的な手順と注意点を解説します。
手工具を使った基本的な外し方
ロックタイト243は中強度のため、多くの場合、特別な工具を使わずに手工具で取り外すことが可能です。 まずは、以下の手順で試してみましょう。
- 適切な工具の選定: ネジの頭に合ったサイズのドライバーやレンチを選びます。サイズが合っていないと、ネジ山をなめてしまう原因になります。
- ネジの清掃: ネジの頭や周囲に汚れや油分が付着している場合は、ブラシやパーツクリーナーで清掃し、工具がしっかりと噛み合うようにします。
- ゆっくりと力を加える: ネジを緩める方向に、ゆっくりと均等に力を加えます。急激な力はネジ山を損傷させる可能性があります。
- 「カツン」という感触: ロックタイトが固着している場合、最初は少し硬く感じるかもしれませんが、ある程度の力を加えると「カツン」という感触と共に接着が破れることがあります。 その後は通常のネジと同様に緩めることができます。
この基本的な方法で外れない場合は、無理に力を加え続けるとネジや部品を破損させる恐れがあるため、次の加熱する方法を検討してください。
固着が強い場合の対処法:熱を加える方法
手工具だけではロックタイト243が固着して外れない場合、熱を加えることが非常に有効な手段です。 ロックタイトの接着剤は熱によって軟化する性質があるため、加熱することで結合力が弱まり、取り外しやすくなります。
加熱する際は、ヒートガン、半田ごて、またはドライヤーなどを使用します。 ネジやその周辺に局所的に熱を加え、接着剤を軟化させることが目的です。ただし、加熱しすぎると部品を損傷させる可能性もあるため、温度管理には十分な注意が必要です。
加熱後、熱いうちに手工具でネジを緩めます。接着剤が冷えると再び固着する可能性があるため、温かいうちに作業を完了させることがコツです。 この方法で、頑固に固着したネジも比較的容易に緩めることができるでしょう。
加熱温度の目安と安全な加熱方法
ロックタイト243を加熱して取り外す際の温度目安は、約200℃から250℃です。 この温度範囲で接着剤が軟化し、手工具での取り外しが可能になります。ただし、部品の材質によっては耐熱温度が異なるため、事前に確認することが重要です。
安全な加熱方法としては、以下の点に注意してください。
- ヒートガンや半田ごてを使用する: ネジの頭や周囲にピンポイントで熱を加えられるため、効率的かつ安全に作業できます。
- ドライヤーも有効: 家庭用のドライヤーでも、時間をかければ効果が期待できます。ただし、熱量が低い分、より長い時間加熱する必要があります。
- 局所的な加熱を心がける: 周囲の部品に不要な熱を与えないよう、加熱範囲を最小限に留めます。
- 温度計で確認: 可能であれば非接触式の温度計を使用し、加熱温度が適切か確認するとより安全です。
- 軍手や保護メガネの着用: 高温になるため、やけどや飛散物から身を守るための保護具を必ず着用してください。
無理な加熱は部品の変形や劣化を招く恐れがあるため、慎重に作業を進めることが大切です。
加熱時の注意点と避けるべきこと
ロックタイト243を加熱して取り外す際には、いくつかの重要な注意点と避けるべきことがあります。
- プラスチック部品への直接加熱は避ける: ロックタイト243は金属ネジ専用であり、プラスチック部品に直接加熱すると変形や溶解、ひび割れの原因となります。 周囲にプラスチック部品がある場合は、熱が伝わらないように保護するか、加熱以外の方法を検討してください。
- 過度な加熱は厳禁: 必要以上に高温にしたり、長時間加熱し続けたりすると、ネジや部品の金属組織が変化し、強度が低下する可能性があります。 また、塗装やメッキが剥がれる原因にもなります。
- 可燃物の近くでの作業は避ける: ヒートガンや半田ごてを使用する際は、周囲にガソリン、オイル、溶剤などの可燃物がないことを確認し、火災の危険がない場所で作業してください。
- 換気を十分に行う: 加熱によって接着剤から煙やガスが発生する可能性があるため、換気の良い場所で作業するか、必要に応じて防毒マスクを着用しましょう。
- 急冷しない: 加熱した部品を急に水などで冷やすと、熱衝撃により金属が脆くなる可能性があります。自然冷却させるか、ゆっくりと温度を下げるようにしてください。
これらの注意点を守ることで、安全かつ効果的にロックタイト243で固着したネジを取り外すことができます。
ネジ山を傷つけずに外すためのコツ
ロックタイト243で固定されたネジを外す際に、最も避けたいのがネジ山を傷つけてしまうことです。ネジ山がなめると、その後の取り外しが非常に困難になるだけでなく、部品自体の交換が必要になる場合もあります。 ネジ山を傷つけずに外すためのコツをいくつかご紹介します。
- 適切なサイズの工具を使用する: これが最も基本的ながら、最も重要なポイントです。ネジの頭にぴったりとフィットするドライバーやレンチを選びましょう。ガタつきがある工具は、力を加えた際にネジ山をなめる原因となります。
- 垂直に力を加える: ドライバーを使用する際は、ネジに対して垂直に押し付けながら回すように意識してください。斜めに力を加えると、ネジ山が滑りやすくなります。
- ゆっくりと均等な力を加える: 急激な力や不均一な力は、ネジ山に過度な負担をかけます。じわじわと、しかし確実に力を加えていくことで、接着剤の結合を破りやすくなります。
- 衝撃ドライバーの活用: 固着が強い場合は、衝撃ドライバー(インパクトドライバー)が有効です。打撃と回転の力を同時に加えることで、ネジ山を傷つけずに緩めることができます。
- 潤滑剤の併用: ネジの固着が接着剤だけでなく、錆などによるものも考えられる場合、浸透性の高い潤滑剤を塗布してしばらく放置すると、よりスムーズに緩むことがあります。
- ネジ頭の溝を清掃する: ネジ頭の溝に汚れが詰まっていると、工具がしっかりと噛み合いません。事前にワイヤーブラシなどで清掃しておくことで、工具の食い込みが良くなります。
これらのコツを実践することで、大切なネジや部品を保護しながら、ロックタイト243で固着したネジを安全に取り外すことができるでしょう。
ロックタイト243除去後の処理と再利用の可否

ロックタイト243で固定されていたネジを無事に外した後も、適切な処理を行うことが重要です。特に、ネジや部品に残った接着剤の清掃、そしてネジの再利用については、いくつか知っておくべき点があります。
ネジや部品に残ったロックタイトの清掃方法
ネジを外した後、ネジ山やネジ穴には硬化したロックタイト243の残留物が付着していることがあります。これらの残留物を放置すると、新しいネジロック剤の性能を十分に発揮できなかったり、ネジの締結が不完全になったりする原因となります。
清掃方法としては、以下の手順が効果的です。
- ワイヤーブラシやスクレーパーで物理的に除去: 硬化した接着剤は、ワイヤーブラシや小型のスクレーパーを使って物理的に削り取ることができます。ネジ山を傷つけないよう、慎重に作業してください。
- パーツクリーナーやアセトンを使用する: 物理的な除去だけでは取りきれない細かな残留物には、パーツクリーナーやアセトンなどの溶剤が有効です。これらの溶剤は接着剤を軟化させたり、溶解させたりする効果があります。 ただし、使用する溶剤が部品の材質に影響を与えないか、事前に目立たない場所で試すことをおすすめします。
- エアブローで吹き飛ばす: 溶剤で軟化させた接着剤や、削り取ったカスは、エアブローで吹き飛ばすと効率的です。
- ネジ穴の清掃も忘れずに: ネジだけでなく、ネジ穴の内部にも接着剤の残留物が付着している可能性があります。細いブラシや綿棒に溶剤を含ませて清掃し、エアブローで乾燥させましょう。
完全に清掃することで、次にネジを締める際のトラブルを防ぎ、部品の性能を最大限に引き出すことができます。
一度ロックタイトを使用したネジの再利用について
一度ロックタイト243を使用して固定したネジは、取り外した後にそのまま再利用することは推奨されません。 その理由は、ネジ山に残った古い接着剤の残留物が、新しく塗布する接着剤の性能に影響を与える可能性があるためです。
もし再利用を検討する場合は、前述の清掃方法でネジ山とネジ穴の接着剤残留物を完全に除去することが絶対条件となります。残留物が残っていると、新しいロックタイトが均一に塗布されず、本来の緩み止め効果が十分に発揮されない恐れがあります。
しかし、ネジ自体の劣化(ネジ山の摩耗や変形など)も考慮する必要があります。特に、固着が強く、無理な力を加えて取り外したネジは、目に見えない損傷を受けている可能性も否定できません。安全性を最優先するなら、新しいネジと新しいロックタイトを使用することをおすすめします。 特に、重要な部品や高い安全性が求められる箇所では、新品への交換を検討するべきでしょう。
よくある質問

- ロックタイト243は熱で外れる?
- ロックタイト243は何℃で剥がれる?
- ロックタイト243は再利用できる?
- ロックタイト243はどんな時に使う?
- ロックタイト243はどれくらいの強度?
- ロックタイト243と263の違いは何?
ロックタイト243は熱で外れる?
はい、ロックタイト243は熱を加えることで外れやすくなります。ロックタイトの接着剤は熱によって軟化する性質があるため、固着が強い場合にはヒートガンや半田ごてなどでネジやその周辺を加熱すると、接着力が弱まり取り外しが容易になります。
ロックタイト243は何℃で剥がれる?
ロックタイト243が軟化し、取り外しが可能になる温度の目安は、約200℃から250℃とされています。 この温度まで加熱することで、接着剤の結合力が弱まり、手工具で緩められるようになります。ただし、部品の材質によっては耐熱温度が異なるため、注意が必要です。
ロックタイト243は再利用できる?
一度ロックタイト243を使用して固定したネジは、取り外した後にそのまま再利用することは推奨されません。ネジ山に残った古い接着剤の残留物が、新しく塗布する接着剤の性能に影響を与える可能性があるためです。再利用する場合は、ネジ山とネジ穴の接着剤残留物を完全に除去する必要がありますが、安全性を考慮すると新しいネジと新しいロックタイトを使用することをおすすめします。
ロックタイト243はどんな時に使う?
ロックタイト243は、振動や衝撃によるネジの緩みを防止したいが、将来的に分解・取り外しが必要になる可能性のある箇所に使用されます。具体的には、自動車やバイクのエンジン周り、自転車の部品、計測機器、キャブレターのネジなど、中程度の強度と耐油性が求められる汎用的な金属ネジの固定に適しています。
ロックタイト243はどれくらいの強度?
ロックタイト243は「中強度」のネジロック剤です。 これは、ネジをしっかりと固定し、振動や衝撃による緩みを防ぐ効果がある一方で、一般的な手工具を使って比較的容易に取り外しができる程度の強度を意味します。低強度の222よりは強く、高強度の263/271よりは弱い位置づけです。
ロックタイト243と263の違いは何?
ロックタイト243と263の主な違いは「強度」です。243は「中強度」であり、手工具での取り外しが可能です。一方、263は「高強度」であり、一度固定すると非常に強力に固着するため、取り外しには局所的な加熱が必要となる場合が多く、恒久的な固定を目的としています。 また、243は耐油性も持ち合わせています。
まとめ

- ロックタイト243はヘンケルジャパン製の中強度ネジロック剤。
- 振動や衝撃によるネジの緩みを効果的に防止する。
- 耐油性に優れ、油分のある環境でも使用可能。
- 一般的な手工具で取り外しができる設計。
- 固着が強い場合は熱を加えるのが有効な方法。
- 加熱温度の目安は200℃から250℃。
- ヒートガンや半田ごてで局所的に加熱する。
- プラスチック部品への直接加熱は避けるべき。
- 過度な加熱は部品損傷の原因となる。
- ネジ山を傷つけないよう適切な工具と垂直な力を。
- 取り外し後はネジ山とネジ穴の清掃が必須。
- 古い接着剤の残留物は性能低下を招く。
- 一度使用したネジの再利用は推奨されない。
- 安全性を考慮し、重要な箇所は新品ネジと接着剤を使用。
- ロックタイト243は分解が必要な箇所に最適。
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