お庭や公園でふと見かけた木、「これってネズミモチかな?でも、なんだかちょっと違うような…」と感じた経験はありませんか?ネズミモチには見た目がそっくりな木がいくつか存在し、見分けるのが難しいこともしばしば。特に、生垣などによく利用されるため、気になっている方も多いのではないでしょうか。本記事では、プロの視点からネズミモチに似た木の種類と、それぞれの特徴、そして誰でも簡単にできる見分け方のコツを詳しく解説していきます。庭木選びで後悔しないためのポイントもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
まずは結論!ネズミモチに一番似ているのはトウネズミモチ

数ある樹木の中でも、ネズミモチと最も見分けがつきにくいのがトウネズミモチです。 名前も見た目もそっくりなため、混同されることが非常に多いこの2つの木。しかし、実は簡単な見分け方のポイントがあるのです。この章では、その決定的な違いについて解説します。
本章で解説する内容は以下の通りです。
- 最大の違いは「葉」!光に透かして見分けよう
最大の違いは「葉」!光に透かして見分けよう
ネズミモチとトウネズミモチを見分ける最も確実で簡単な方法は、葉を光に透かしてみることです。 葉を一枚摘んで、太陽や明るい照明にかざしてみてください。
葉脈(葉にある筋)がはっきりと透けて見えるのがトウネズミモチです。 一方で、葉が厚く、光に透かしても葉脈がほとんど見えないのがネズミモチの特徴です。
これは、トウネズミモチの葉がネズミモチに比べてやや薄い革質であるために起こる違いです。 庭木や公園の木がどちらか気になったら、まずはこの方法を試してみてください。道具も何もいらないので、誰でもすぐに確認できますよ。
他にも、トウネズミモチの方が全体的に大きく、葉のサイズも一回り大きい、果実が球形に近いなどの違いもありますが、最も分かりやすいのはこの「葉脈」の違いでしょう。
まだある!ネズミモチと間違えやすい木々

トウネズミモチ以外にも、ネズミモチと雰囲気が似ていて間違われやすい木がいくつかあります。特に生垣や庭木として人気のある樹種に多いため、知っておくと木を見分けるのがもっと楽しくなりますよ。ここでは、代表的な似ている木をいくつかご紹介します。
本章で紹介する木は以下の通りです。
- プリペット(コミノネズミモチ)
- サンゴジュ
- ヒイラギモクセイ
- イヌツゲ
プリペット(コミノネズミモチ)
洋風の庭の生垣などでよく見かけるプリペットも、ネズミモチの仲間です。 特に、白い斑入りの葉が美しい「シルバープリペット」は人気があります。プリペットは、正式にはコミノネズミモチ(学名: Ligustrum sinense)という種類で、ネズミモチと同じモクセイ科イボタノキ属に分類されます。
ネズミモチに比べて葉が小さく、花付きが良いのが特徴です。初夏に白い小花をたくさん咲かせ、甘い香りを漂わせます。成長が早く、刈り込みにも強いため、生垣として非常に優秀な樹木です。
サンゴジュ
厚く光沢のある葉が特徴のサンゴジュも、全体の雰囲気がネズミモチに似ています。 サンゴジュは、葉に水分を多く含んでいるため燃えにくく、防火樹として生垣などに利用されてきた歴史があります。
ネズミモチとの違いは、秋になる赤い実です。名前の通り、サンゴのように真っ赤な実がたわわに実る姿は非常に美しく、庭を彩ってくれます。 葉の大きさもサンゴジュの方が一回り大きい傾向にあります。
ヒイラギモクセイ
秋に良い香りを放つキンモクセイと同じ、モクセイ科のヒイラギモクセイも、葉の形が似ていることがあります。 ヒイラギモクセイは、ヒイラギとギンモクセイの雑種とされ、葉の縁にヒイラギのような鋭いトゲがあるのが最大の特徴です。
ただし、老木になると葉のトゲが丸くなることがあるため、注意が必要です。生垣にすると、そのトゲが防犯対策にもなると言われています。10月~11月頃に咲く白い花は、キンモクセイに似た甘い香りを放ちます。
イヌツゲ
和風庭園の玉仕立てや生垣でおなじみのイヌツゲも、遠目に見るとネズミモチと似た雰囲気を持つ常緑樹です。 しかし、近づいてよく見ると違いは明らかです。
イヌツゲの葉は、ネズミモチに比べて非常に小さく、丸みを帯びているのが特徴です。葉が密に茂るため、刈り込んで様々な形に仕立てやすいというメリットがあります。 ネズミモチの葉は比較的大きい楕円形なので、葉のサイズに注目すれば簡単に見分けることができます。
【特徴別】ネズミモチに似た木の見分け方一覧表

これまで紹介してきたネズミモチに似た木々の特徴を、見分けやすいように一覧表にまとめました。散歩中や庭木選びの際に、「この木は何だろう?」と思ったら、ぜひこの表を参考にしてみてください。
| 種類 | 葉の特徴 | 花の特徴 | 実の特徴 | 見分ける最大のポイント |
|---|---|---|---|---|
| ネズミモチ | 光沢のある楕円形。厚く、光に透かしても葉脈は見えにくい。 | 5~6月頃、白い小花が咲く。特有の香りがある。 | 黒紫色の楕円形の実。ネズミの糞に似ていることが名前の由来。 | 葉を光に透かしても葉脈が見えない。 |
| トウネズミモチ | ネズミモチより一回り大きく、やや薄い。光に透かすと葉脈が見える。 | 6~7月頃、白い小花が咲く。ネズミモチより開花が遅い。 | 黒紫色の球形に近い実。白い粉を吹くことがある。 | 葉を光に透かすと葉脈がはっきり見える。 |
| プリペット | ネズミモチより葉が小さい。斑入りの園芸品種(シルバープリペットなど)が人気。 | 初夏に白い小花が咲き、香りが良い。 | 黒紫色の小さな実がなる。 | 洋風の生垣によく使われる。斑入りの葉ならプリペットの可能性大。 |
| サンゴジュ | 厚く、光沢が強い大きな葉。 | 6月頃、白い小花が集まって咲く。 | 秋に真っ赤な実がサンゴのように実る。 | 秋になる赤い実と、燃えにくい厚い葉。 |
| ヒイラギモクセイ | 葉の縁に鋭いトゲがある(老木では丸くなることも)。 | 10~11月頃、白い小花が咲き、甘い香りが強い。 | 日本ではほとんど結実しない。 | 葉のトゲと、秋に香る花の匂い。 |
| イヌツゲ | 小さく丸い葉が密生する。 | 初夏に目立たない黄緑色の花が咲く。 | 黒い小さな実がなる。 | 他の木に比べて葉が圧倒的に小さい。和風の庭によく合う。 |
庭木にするならどれ?ネズミモチに似た木それぞれの特徴と育て方

「自宅の生垣やシンボルツリーに、どの木を選べばいいの?」そんなお悩みを抱えている方のために、ここではネズミモチに似た木々を庭木として利用する際のメリット・デメリットや育て方のポイントを解説します。それぞれの特徴を理解して、ご自身のライフスタイルやお庭のイメージに合った木を選びましょう。
本章で解説する内容は以下の通りです。
- 【洋風の生垣に】プリペット(シルバープリペット)
- 【丈夫で育てやすい】トウネズミモチ
- 【防火樹としても活躍】サンゴジュ
- 【花の香りと防犯性】ヒイラギモクセイ
- 【和風庭園の定番】イヌツゲ
【洋風の生垣に】プリペット(シルバープリペット)
プリペット、特にシルバープリペットは、その明るい葉色から洋風の庭によくマッチし、生垣として絶大な人気を誇ります。
メリットは、なんといってもその成長の早さです。早く目隠しを作りたい場合には最適でしょう。刈り込みにも非常に強く、頻繁に剪定しても元気に芽吹きます。
一方で、そのデメリットも成長の早さにあります。美しい樹形を保つためには、年に2〜3回の剪定が必要になることもあり、管理の手間がかかる点は覚悟しておきましょう。また、やや寒さに弱い面があるため、寒冷地での植栽には注意が必要です。
育て方のポイントは、日当たりの良い場所を選ぶこと。土質はあまり選びませんが、水はけの良い場所を好みます。定期的な剪定で風通しを良くしてあげると、病害虫の予防にも繋がります。
【丈夫で育てやすい】トウネズミモチ
トウネズミモチは、ネズミモチよりもさらに強健で、育てやすい木です。 大気汚染や潮風にも強いため、都市部や沿岸部でも問題なく育ちます。
メリットは、その丈夫さと成長の早さです。日陰にも比較的強く、土質も選ばないため、あまり手間をかけずに緑を増やしたい場合に適しています。
しかし、デメリットとして、その繁殖力の強さが挙げられます。鳥が実を食べて種を運び、意図しない場所から芽を出すことがよくあります。日本では「要注意外来生物」に指定されており、生態系への影響が懸念される側面も持っています。 庭に植える際は、増えすぎないように管理することが重要です。
育て方は非常に簡単で、水やりや施肥もほとんど必要ありません。 ただし、大きくなりやすいため、スペースに余裕のある場所に植えるか、定期的な剪定で大きさをコントロールする必要があります。
【防火樹としても活躍】サンゴジュ
サンゴジュは、美しい光沢のある葉と、秋の赤い実が魅力的な庭木です。
最大のメリットは、その防火性の高さです。 葉に水分が多く燃えにくいため、昔から家の周りの生垣に植えられ、延焼を防ぐ役割を担ってきました。また、潮風や大気汚染にも強く、丈夫で育てやすいのも魅力です。
デメリットとしては、成長が早く、放っておくと10m以上の高木になることもあるため、定期的な剪定が欠かせない点です。 また、サンゴジュハムシという害虫がつきやすく、葉が食害にあうことがあります。春先の消毒や、虫を見つけ次第駆除するなどの対策が必要です。
日当たりの良い場所を好みますが、半日陰でも育ちます。 剪定は、花が終わった直後か、冬に行うのが一般的です。
【花の香りと防犯性】ヒイラギモクセイ
ヒイラギモクセイは、実用性と観賞性を兼ね備えた優れた庭木です。
メリットは、秋に咲く花の甘い香りと、葉のトゲによる防犯効果です。 窓の下や敷地の境界に植えることで、侵入者を防ぐ効果が期待できます。刈り込みにも強く、密な生垣を作ることができます。
デメリットは、やはりその葉のトゲです。剪定作業の際には、厚手の手袋をするなど、ケガをしないように注意が必要です。 また、日当たりが悪いと花付きが悪くなることがあります。
育て方のポイントは、日当たりと風通しの良い場所を選ぶことです。 剪定は花が終わった後か、春の新芽が伸びる前に行います。強く刈り込みすぎると翌年の花が咲かなくなることがあるので、少しずつ形を整えるようにしましょう。
【和風庭園の定番】イヌツゲ
イヌツゲは、日本の庭には欠かせない、古くから愛されてきた庭木です。
メリットは、刈り込みに非常に強く、玉仕立てや生垣など、様々な形にデザインできることです。 小さな葉が密に茂るため、きめ細やかで美しい仕上がりになります。和風の庭はもちろん、モダンな庭にも合わせやすいでしょう。
デメリットとしては、成長が比較的ゆっくりな点が挙げられます。早く大きな生垣を作りたい場合には、少し時間がかかるかもしれません。また、ハマキムシなどの害虫が発生することがあるため、定期的に枝葉の状態をチェックし、風通しを良くするための透かし剪定を行うことが大切です。
剪定は、新芽が伸びる春から秋にかけて、年に2〜3回行うのが理想です。 日当たりを好みますが、ある程度の耐陰性もあります。
ご注意!ネズミモチや似ている木の毒性について

庭木を選ぶ上で、特に小さなお子様やペットがいるご家庭では、植物の安全性も気になるところですよね。ネズミモチやそれに似た木々の中には、注意が必要なものもあります。ここでは、それぞれの木の毒性について解説します。
ネズミモチおよびトウネズミモチの果実には、わずかながら毒性があるとされています。 人間が誤って口にした場合、量によっては腹痛や吐き気などの症状を引き起こす可能性があります。
特に注意したいのが、犬などのペットです。犬がネズミモチの実を食べてしまうと、消化器系の不調などを起こす危険性があります。 散歩中などに、落ちている実を食べてしまわないように注意してあげてください。
一方で、ネズミモチの果実は「女貞子(じょていし)」という生薬として、古くから漢方で滋養強壮などに用いられてきた歴史もあります。 しかし、これは適切な処理を施した場合の話であり、安易に口にするのは絶対にやめましょう。
プリペットやサンゴジュ、ヒイラギモクセイ、イヌツゲについては、強い毒性があるという報告はあまりありませんが、どの植物であっても、食用でない部分を大量に摂取するのは危険です。庭に植える際は、お子様やペットがむやみに口にしないように、日頃から言い聞かせておくことが大切です。
よくある質問

ネズミモチとトウネズミモチの一番簡単な見分け方は?
一番簡単で確実な見分け方は、葉を光に透かしてみることです。葉脈がはっきりと透けて見えるのがトウネズミモチ、葉が厚くて葉脈がほとんど見えないのがネズミモチです。
プリペットはネズミモチの仲間ですか?
はい、プリペットはネズミモチと同じモクセイ科イボタノキ属の植物です。 プリペットの和名は「コミノネズミモチ」といい、ネズミモチの近縁種にあたります。
生垣におすすめなのはどの木ですか?
目的によって異なります。
- 洋風の庭で早く目隠しを作りたい場合:プリペット
- 和風の庭できっちりした形の生垣にしたい場合:イヌツゲ
- 防火性や防犯性を重視する場合:サンゴジュやヒイラギモクセイ
それぞれの木の成長速度や手入れの手間、お庭の雰囲気に合わせて選ぶのがおすすめです。
ネズミモチの実は食べられますか?
いいえ、食べられません。ネズミモチの実にはわずかに毒性があり、食べると腹痛などを起こす可能性があります。 漢方薬として利用されることもありますが、素人が安易に口にするのは非常に危険ですので絶対にやめてください。
害虫がつきにくいのはどの木ですか?
今回紹介した中では、トウネズミモチが比較的病害虫に強く、丈夫で育てやすいと言えます。 ただし、どの植物も絶対に害虫がつかないわけではありません。剪定で風通しを良くし、日頃から植物の状態を観察することが、病害虫の予防につながります。
まとめ

- ネズミモチに最も似ているのはトウネズミモチである。
- 見分け方は葉を光に透かし、葉脈が見えるか確認すること。
- 葉脈が見えればトウネズミモチ、見えなければネズミモチ。
- プリペットもネズミモチの仲間で、洋風の生垣に人気。
- サンゴジュは防火樹として知られ、秋に赤い実がなる。
- ヒイラギモクセイは葉にトゲがあり、花の香りが良い。
- イヌツゲは葉が小さく、和風庭園の刈り込みによく使われる。
- ネズミモチとトウネズミモチの実にはわずかな毒性がある。
- 特にペットが食べないように注意が必要である。
- 庭木選びは、デザイン性だけでなく、成長速度や手入れの手間を考慮する。
- プリペットは成長が早いが、剪定の手間がかかる。
- トウネズミモチは丈夫だが、繁殖力が強い点に注意。
- サンゴジュは害虫(サンゴジュハムシ)に注意が必要。
- ヒイラギモクセイは剪定時に葉のトゲでケガをしないようにする。
- 自分の庭の環境やライフスタイルに合った木を選ぶことが大切。
