「彼の情熱は並々ならぬものがある」のように、人の感情や努力が普通ではないレベルであることを表現したい時、「並々ならぬ」という言葉は非常に便利です。しかし、いつも同じ表現ばかりでは、芸がありませんよね。状況に応じて言葉を使い分けることで、あなたの表現力はさらに豊かになるでしょう。
本記事では、「並々ならぬ」の様々な類義語や言い換え表現を、具体的な例文とともに詳しく解説します。ビジネスシーンで役立つ表現から、日常会話で使える言葉まで幅広くご紹介。この記事を読めば、あなたの語彙力は格段にアップし、より的確に想いを伝えられるようになるはずです。
「並々ならぬ」の基本的な意味と使い方

「並々ならぬ」という言葉について、まずはその基本的な意味と使い方をしっかり押さえておきましょう。この言葉を正しく理解することが、類義語を効果的に使いこなすための第一歩となります。
本章では、以下の内容について解説します。
- 「並々ならぬ」の詳しい意味
- ビジネスや日常での具体的な使い方
「並々ならぬ」の詳しい意味
「並々ならぬ」は、「なみなみならぬ」と読み、「普通ではない」「並大抵ではない」「格別である」といった意味を持つ言葉です。 「並」という漢字は「普通」を意味し、それを重ねて強調した「並々」に、否定の助動詞「ぬ」が付くことで、「普通ではない」という強い意味合いが生まれます。
この言葉は、単に「普通ではない」というだけでなく、その程度が非常に大きい、あるいは深いことを示唆します。例えば、「並々ならぬ努力」と言った場合、それは単なる努力ではなく、想像を絶するような、大変な努力を指すのです。 ポジティブな文脈で使われることが多く、感心や称賛、深い感謝の気持ちを表す際に効果的な表現と言えるでしょう。
ビジネスや日常での具体的な使い方
「並々ならぬ」は、少し硬い表現であるため、日常会話よりもビジネスシーンやフォーマルな場面で使われることが多い言葉です。
ビジネスシーンでは、取引先や上司への感謝を伝える場面で頻繁に用いられます。「平素は並々ならぬご高配を賜り、厚く御礼申し上げます」といった挨拶文は、その典型例です。 これは、「いつも格別のご配慮をいただき、ありがとうございます」という深い感謝の気持ちを表しています。また、相手の多大な貢献や努力を称える際にも、「プロジェクト成功への並々ならぬご尽力に、心より感謝いたします」のように使うことができます。
一方、自分自身の強い意志や決意を示す際にも使用可能です。 例えば、「この事業には、並々ならぬ思いで取り組んでおります」と伝えることで、その仕事にかける並外れた情熱や覚悟を相手に印象付けることができるでしょう。
このように、「並々ならぬ」は、感謝、称賛、決意など、様々な場面で「普通ではない」レベルの感情や状態を表現するのに役立つ、非常に便利な言葉なのです。
【シーン別】「並々ならぬ」の類義語・言い換え表現集

「並々ならぬ」には、似た意味を持つ言葉が数多く存在します。状況や伝えたいニュアンスに合わせてこれらの言葉を使い分けることで、あなたの表現はより豊かで的確なものになるでしょう。ここでは、利用シーン別に類義語を紹介します。
本章では、以下のシーンに合わせた類義語を解説します。
- 努力や情熱の大きさを表す類義語
- 感謝の気持ちを強調する類義語
- 程度が甚だしいことを表す類義語
努力や情熱の大きさを表す類義語
目標達成に向けた強い意志や、物事に対する熱い想いを表現したい時、「並々ならぬ」の代わりに使える言葉はたくさんあります。これらの言葉は、人の行動や感情の「普通ではない」度合いを強調するのに役立ちます。
例えば、「尋常ではない」や「並大抵ではない」は、常識では考えられないほどの努力や苦労を表現するのに適しています。 「彼は尋常ではない集中力で、難問を解き明かした」のように使います。また、「並外れた」は、他と比較して突出した能力や才能を示す際に効果的です。 「彼女は並外れた記憶力の持ち主だ」といった具合です。
さらに、「ただならぬ」という言葉も、「普通ではない、何か特別なものを感じさせる」というニュアンスで使えます。 「彼の目には、ただならぬ決意が宿っていた」のように、内面の強い意志を表すのにぴったりです。これらの言葉を使い分けることで、努力や情熱の質や種類をより細かく表現することが可能になります。
以下に、努力や情熱の大きさを表す類義語の例と、その簡単な意味をまとめました。
類義語 | 意味とニュアンス |
---|---|
尋常ではない | 普通の状態ではなく、常識から外れている様子。 |
並大抵ではない | ごく普通のことではなく、簡単にはできない様子。 |
並外れた | 普通のレベルをはるかに超えていること。特に能力や才能について使う。 |
ただならぬ | 普通ではなく、何か特別な事情や雰囲気がある様子。 |
とてつもない | 想像もつかないほど、程度がはなはだしいこと。 |
卓越した | 他よりもはるかに優れていること。 |
感謝の気持ちを強調する類義語
ビジネスシーンなどで、相手からの支援や配慮に対して深い感謝の意を示したい場合、「並々ならぬ」は非常に有効な言葉です。しかし、毎回同じ表現では陳腐に聞こえてしまう可能性もあります。そこで、感謝の気持ちをより強く、そして丁寧に伝えるための類義語を知っておくと便利です。
特に覚えておきたいのが「ひとかたならぬ」という言葉です。「一方ならぬ」とも書き、意味は「並々ならぬ」とほぼ同じで、「普通ではない、格別な」という意味合いで使われます。 「ひとかたならぬご尽力を賜り、誠にありがとうございます」のように、相手への感謝を伝える際の定型句として頻繁に用いられます。 「並々ならぬ」が自分自身の努力や感情にも使えるのに対し、「ひとかたならぬ」は基本的に他人からの行為に対して使う、という違いがあります。
その他にも、「格別(かくべつ)の」や「多大(ただい)なる」といった表現も、感謝の場面で重宝します。 「平素は格別のご愛顧を賜り…」や「多大なるご支援をいただき…」といった形で使われ、いずれも「特別に大きな」というニュアンスで感謝の度合いを強調します。
以下に、感謝の気持ちを強調する類義語の例を挙げます。
- ひとかたならぬ: 普通の程度をはるかに超えているさま。特に感謝の気持ちを表す際に使う。
- 一方ならぬ(ひとかたならぬ): 「ひとかたならぬ」と同じ意味。
- 格別の: 他と比べて、特に優れている、特別なさま。
- 多大なる: 非常に大きい、量が多いさま。支援や尽力などに対して使う。
- 絶大なる: 極めて大きいさま。信頼や支持など、抽象的なものに対して使うことが多い。
程度が甚だしいことを表す類義語
「並々ならぬ」は、努力や感謝だけでなく、物事の程度が「普通ではない」ことを広く示すためにも使われます。この「程度が甚だしい」というニュアンスを表現する言葉は、日常会話からビジネス文書まで幅広く活用できます。
例えば、「甚だしい(はなはだしい)」は、程度が普通の状態を大きく超えていることを表す、やや硬い表現です。 「甚だしい思い違い」のように、ネガティブな文脈で使われることもあります。よりシンプルに「大変な」や「非常な」という言葉も、同じような意味で使うことができます。 「大変な苦労を乗り越えた」「非常なご厚情を賜り…」など、文脈に応じて使い分けましょう。
また、「著しい(いちじるしい)」は、変化や差異が誰の目にも明らかであるほど大きいことを示します。「著しい経済成長」のように、客観的な事実を述べる際に適しています。これらの言葉をストックしておくことで、表現の幅がぐっと広がり、より繊細なニュアンスを伝えられるようになります。
以下に、程度が甚だしいことを表す類義語の例をまとめました。
類義語 | 意味とニュアンス |
---|---|
甚だしい | 物事の程度が普通ではないさま。良い意味でも悪い意味でも使う。 |
大変な | 程度が普通でなく、重大であるさま。口語でも文語でも広く使われる。 |
非常な | 普通の状態とは違っているさま。程度が極めて大きいこと。 |
著しい | はっきりと目に見えるほど、程度が大きいさま。変化や差異を表すことが多い。 |
桁違いの | 比較にならないほど、レベルや規模が違うさま。 |
「並々ならぬ」の対義語は?

「並々ならぬ」という言葉の理解をさらに深めるためには、その反対の意味を持つ言葉、つまり対義語を知ることが有効です。「普通ではない」「特別だ」という意味の「並々ならぬ」の反対は、どのような言葉になるのでしょうか。
本章では、以下の内容について解説します。
- 「並々ならぬ」の直接的な対義語
- 文脈上で反対の意味になる言葉
直接的な対義語は存在しない?
実は、「並々ならぬ」には、一語でぴったりと対応するような直接的な対義語は存在しません。 これは、「並々ならぬ」が「並々(普通)」を「ならぬ(ではない)」と否定することで成り立っている言葉であるためです。その成り立ちから考えると、反対の言葉は「並々」つまり「普通」ということになりますが、これを一語の対義語として扱うのは少し不自然です。
辞書などで調べても、「並々ならぬ」の対義語として明確に示されている単語は見つからないのが一般的です。そのため、文脈に応じて反対の意味を表す言葉を選ぶ必要があります。
文脈上で反対の意味になる言葉
直接的な対義語はありませんが、文脈によっては「並々ならぬ」と反対の状況を示す言葉を挙げることができます。「並々ならぬ努力」の反対を表現したいのであれば、「ありきたりな努力」や「平凡な努力」といった言葉が使えるでしょう。
同様に、「並々ならぬ才能」に対しては「月並みな才能」や「普通の才能」などが反対のニュアンスを持ちます。このように、状況に応じて様々な言葉が対義語としての役割を果たします。
以下に、「並々ならぬ」の文脈上の対義語となりうる言葉の例を挙げます。
- 平凡(へいぼん): 特に優れた点がなく、ごく普通であること。
- 普通(ふつう): いつでもどこにでも見られるような、ありふれた状態。
- ありきたり: 珍しくなく、ありふれていること。
- 月並み(つきなみ): 平凡で、新鮮味がないこと。
- 尋常(じんじょう): 普通であること。当たり前であること。
これらの言葉は、「並々ならぬ」が持つ「特別感」や「非凡さ」とは対照的に、「ごくありふれた状態」や「平均的なレベル」を示します。どちらの言葉も知っておくことで、物事の程度をより正確に、そして豊かに表現できるようになるでしょう。
「並々ならぬ」を使った具体的な例文

言葉の意味や類義語を学んだら、次は実際にどのように使われるのかを具体的な例文で確認しましょう。使い方をマスターすることで、自信を持って文章や会話に取り入れることができます。ここでは、ビジネスシーンと日常的なシーンに分けて例文をご紹介します。
本章では、以下のシーン別の例文を紹介します。
- ビジネスシーンでの使用例
- 日常的なシーンでの使用例
ビジネスシーンでの使用例
ビジネスシーンでは、感謝、敬意、賞賛、そして強い意欲を示すために「並々ならぬ」が効果的に使われます。少し改まった、丁寧な印象を与えることができるため、特にメールやスピーチ、公式な文書で重宝します。
- 平素より並々ならぬご厚情を賜り、心より御礼申し上げます。 (感謝)
- このプロジェクトの成功は、皆様の並々ならぬご尽力の賜物です。 (賞賛・感謝)
- 〇〇部長がこの分野の発展に貢献されたご功績は、並々ならぬものがございます。 (敬意・賞賛)
- 新製品の開発には、並々ならぬ情熱を注いでまいりました。 (意欲・決意)
- 今回の困難な交渉をまとめ上げられたのは、貴社の並々ならぬご手腕によるものと拝察いたします。 (賞賛)
日常的なシーンでの使用例
日常会話で使うには少し堅苦しい印象を与えることもありますが、人の努力や才能、特定の物事への強い思い入れなどを表現する際に使うと、その気持ちの強さを効果的に伝えることができます。
- 彼が第一志望の大学に合格できたのは、並々ならぬ努力の結果だ。
- 彼女の作品からは、故郷に対する並々ならぬ愛情が感じられる。
- あの店の主人は、コーヒー豆に対して並々ならぬこだわりを持っている。
- 祖父は、この古い柱時計に並々ならぬ思い入れがあるようだ。
- その知らせを聞いた時の彼の表情は、並々ならぬものがあった。
これらの例文を参考に、「並々ならぬ」という言葉が持つ「普通ではない、特別な」というニュアンスを掴み、ぜひご自身の言葉として活用してみてください。
よくある質問

ここでは、「並々ならぬ」という言葉に関して、多くの人が疑問に思う点や、さらに知っておくと便利な知識をQ&A形式で解説します。
「並々ならぬ」と「ひとかたならぬ」の違いは何ですか?
「並々ならぬ」と「ひとかたならぬ」は、どちらも「普通ではない、格別な」という意味で使われ、特に感謝を表す文脈ではほぼ同じように使えます。 しかし、微妙なニュアンスの違いがあります。
最大の違いは、言葉を向ける対象です。
- 並々ならぬ: 他人からの行為だけでなく、自分自身の努力や感情にも使えます。 (例: 並々ならぬ努力をした)
- ひとかたならぬ: 基本的に、他人から受けた恩恵や支援に対して使います。 (例: ひとかたならぬご支援をいただいた)
したがって、「ひとかたならぬ努力をした」という言い方は不自然になります。感謝の気持ちを相手に伝える際はどちらも使えますが、「ひとかたならぬ」の方がより丁寧で、相手への敬意が強く示される傾向があります。
「並々ならぬ」は目上の人に使えますか?
はい、問題なく使えます。むしろ、「並々ならぬ」は敬意を表す場面で使われることが多い、改まった表現です。
上司や取引先など、目上の方の努力や貢献、配慮に対して感謝や敬意を示す際に、「並々ならぬご尽力」「並々ならぬご高配」といった形で使うのは非常に適切です。 相手の行為を「普通ではない、特別なもの」として高く評価していることを伝える、丁寧な言葉遣いと言えます。
「並々ならぬご尽力」の「ご尽力」とはどういう意味ですか?
「ご尽力(ごじんりょく)」とは、「ある目的のために、力を尽くすこと」を意味する「尽力」の尊敬語です。 相手が何かに対して努力してくれたり、骨を折ってくれたりした行為を敬って言う言葉です。
したがって、「並々ならぬご尽力」とは、「普通ではない、大変なご努力」「格別なお力添え」という意味になります。 相手の多大な貢献に対して、深い感謝と敬意を表す、非常に丁寧な表現です。ビジネスメールやスピーチなどで、感謝を伝える際の決まり文句としてもよく使われます。
「並々ならぬ」の英語表現は?
「並々ならぬ」を直訳する英単語は難しいですが、文脈に応じていくつかの表現でそのニュアンスを伝えることができます。
- extraordinary: 「並外れた」「異常な」という意味で、才能や努力が普通ではないことを表現できます。(例: extraordinary effort – 並々ならぬ努力)
- uncommon: 「珍しい」「非凡な」という意味で、他とは違う特別なものであることを示します。 (例: uncommon passion – 並々ならぬ情熱)
- remarkable: 「注目すべき」「驚くべき」という意味で、称賛に値するほどの素晴らしさを表現します。(例: a remarkable achievement – 並々ならぬ功績)
- great: シンプルですが、「多大な」「偉大な」という意味で、感謝や努力の大きさを表現できます。(例: with great effort – 並々ならぬ努力をもって)
どの単語を選ぶかは、何を「並々ならぬ」と表現したいのか(努力、才能、愛情など)によって変わってきます。
まとめ

- 「並々ならぬ」は「普通ではない、格別な」という意味。
- 努力、情熱、感謝など、程度が甚だしいことを表す。
- ビジネスでは感謝や敬意を示す際に頻繁に使われる。
- 類義語には「尋常ではない」「並外れた」などがある。
- 感謝を伝える類義語として「ひとかたならぬ」が重要。
- 「ひとかたならぬ」は主に他人からの行為に使う。
- 「並々ならぬ」は自分の行為にも使える点が異なる。
- 程度を表す類義語に「甚だしい」「大変な」がある。
- 明確な一語の対義語は存在しない。
- 文脈上の対義語は「平凡」「普通」「ありきたり」。
- 目上の人に対して問題なく使える丁寧な表現である。
- 「ご尽力」は相手の努力を敬う言葉。
- 「並々ならぬご尽力」は深い感謝を示す定型句。
- 英語では “extraordinary” や “uncommon” で表現可能。
- シーンに応じて類義語を使い分けることで表現力が豊かになる。