歩くたびに太ももが擦れてヒリヒリ痛い…そんなつらい「股ずれ」に悩んでいませんか?特に汗をかく季節や、たくさん歩いた日には悪化しやすく、本当に憂鬱ですよね。この記事では、そんな股ずれの悩みを解決するため、ドラッグストアで手軽に買える市販の塗り薬を、症状別に詳しく解説します。自分に合った薬を見つけて、不快な痛みから解放されましょう!
そもそも股ずれ(摩擦性皮膚炎)とは?主な原因

股ずれは、医学的には「摩擦性皮膚炎」や「間擦疹(かんさつしん)」とも呼ばれ、皮膚がこすれ合うことで起こる炎症です。 まずは、なぜ股ずれが起きてしまうのか、その原因を正しく理解することから始めましょう。
本章では、股ずれの主な原因について詳しく解説します。
- 股ずれが起こるメカニズム
- 股ずれを引き起こす主な原因
股ずれが起こるメカニズム
股ずれの直接的な原因は、歩行時の太もも内側の摩擦です。 人は1日に数千歩から一万歩ほど歩くと言われており、そのたびに太ももの皮膚がこすれ合います。 この繰り返される摩擦が、皮膚のバリア機能を低下させ、炎症を引き起こしてしまうのです。
特に、汗をかくと皮膚がふやけて、さらに傷つきやすい状態になります。 汗に含まれる塩分やアンモニアなどの成分が刺激となり、ヒリヒリとした痛みやかゆみを引き起こすこともあります。症状が悪化すると、皮膚が赤く腫れたり、皮がむけたり、ひどい場合には水ぶくれやじゅくじゅくとした状態(びらん)になることもあります。
股ずれを引き起こす主な原因
股ずれは、誰にでも起こる可能性がありますが、特になりやすい人の特徴や生活習慣があります。主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。
- 体型: 太ももがふっくらしている方や筋肉質な方は、歩くときに太もも同士が接触しやすいため、股ずれを起こしやすい傾向があります。
- 汗: 汗をかきやすい夏場や、スポーツをする際は特に注意が必要です。汗で皮膚が蒸れると摩擦が大きくなり、炎症が起きやすくなります。
- 衣類: 通気性の悪い素材や、体にぴったりとフィットしすぎる下着やズボンは、湿気を閉じ込めて摩擦を助長します。 また、硬い生地の衣類も皮膚への刺激となります。
- 歩き方: 内股歩きやX脚の方は、構造的に太ももの内側が擦れやすいため、体型に関わらず股ずれになることがあります。
- 乾燥: 意外に思われるかもしれませんが、肌の乾燥も股ずれの一因です。乾燥した肌はバリア機能が低下しており、わずかな摩擦でもダメージを受けやすくなっています。
これらの原因が複数重なることで、股ずれのリスクはさらに高まります。自分の生活習慣や体型の特徴を把握し、適切な対策をとることが大切です。
【症状別】股ずれに効く市販の塗り薬の選び方

股ずれの薬と一言でいっても、症状によって選ぶべき薬は異なります。 ドラッグストアには様々な種類の塗り薬が並んでいますが、自分の症状に合わないものを選んでしまうと、効果がなかったり、かえって悪化させてしまったりすることも。ここでは、症状別に最適な市販薬の選び方を詳しく解説します。
本章で解説する症状別の薬の選び方は以下の通りです。
- 軽い赤み・ヒリヒリ感がある場合(初期症状)
- かゆみが強い場合
- じゅくじゅく・化膿している場合
- 炎症がひどい・赤みが強い場合
軽い赤み・ヒリヒリ感がある場合(初期症状)
股ずれの初期段階で、皮膚が少し赤みを帯びてヒリヒリする程度の軽い症状の場合は、肌を保護し、穏やかに炎症を抑える成分が配合された薬がおすすめです。この段階では、強い薬は必要なく、まずは皮膚のバリア機能を助け、外部からの刺激を防ぐことが重要です。
具体的には、以下のような成分が含まれているかチェックしてみましょう。
- ワセリン: 皮膚の表面に油分の膜を作り、衣類との摩擦や汗の刺激から肌を守ります。保湿効果も高く、乾燥を防ぎます。
- 酸化亜鉛: 患部を乾燥させ、炎症を和らげる収れん作用があります。比較的マイルドな作用で、あせもやただれの薬にもよく使われます。
- グリチルリチン酸、グリチルレチン酸: 甘草(カンゾウ)由来の成分で、穏やかな抗炎症作用があります。
- ビタミンA、ビタミンE: 皮膚の新陳代謝を促し、荒れた肌の修復を助ける働きがあります。
これらの成分が配合された、刺激の少ない軟膏やクリームを選びましょう。特にワセリンは、治療だけでなく予防にも使えるので、一つ持っておくと便利です。
かゆみが強い場合
股ずれに伴って強いかゆみを感じる場合は、我慢できずに掻きむしってしまいがちです。しかし、掻くことで皮膚のバリア機能がさらに破壊され、炎症が悪化したり、細菌感染(とびひ)の原因になったりすることも。そのため、かゆみを素早く鎮める成分が配合された薬を選ぶことが大切です。
かゆみに有効な成分には、以下のようなものがあります。
- 抗ヒスタミン成分(ジフェンヒドラミンなど): かゆみの原因となるヒスタミンの働きをブロックし、アレルギー性のかゆみを抑えます。
- 局所麻酔成分(リドカイン、ジブカインなど): 患部の知覚神経を麻痺させることで、かゆみや痛みを一時的に和らげます。即効性が期待できます。
- 鎮痒成分(クロタミトン): 温感神経に働きかけることで、かゆみを脳に伝わりにくくします。
- 清涼感成分(l-メントール、dl-カンフル): スーッとした使用感で、かゆみの感覚を紛らわします。 ただし、傷になっているとしみることがあるので注意が必要です。
これらの成分が配合されたクリームや液体タイプの薬がおすすめです。かゆみが強いと夜も眠れなくなるなど、生活の質を大きく下げる原因になります。我慢せずに薬の力を借りて、つらいかゆみを抑えましょう。
じゅくじゅく・化膿している場合
掻き壊してしまったり、汗で蒸れた状態が続いたりすると、傷口から細菌が侵入して化膿してしまうことがあります。患部が黄色い汁でじゅくじゅくしたり、膿を持ったりしている場合は、細菌の増殖を抑える「抗生物質」が配合された塗り薬が必要です。
市販薬では、以下のような抗生物質が配合されています。
- フラジオマイシン硫酸塩
- バシトラシン
- コリスチン硫酸塩
- クロラムフェニコール
これらの抗生物質に、炎症を抑えるステロイド成分が一緒に配合された薬(例:ベトネベートN軟膏AS、クロマイ-P軟膏ASなど)も市販されています。化膿と炎症の両方が起きている場合に効果的です。
ただし、じゅくじゅくした状態や化膿が広範囲に及ぶ場合、または市販薬を数日間使用しても改善が見られない場合は、セルフケアの限界です。速やかに皮膚科を受診してください。
炎症がひどい・赤みが強い場合
赤みや腫れが強く、痛みを伴うようなひどい炎症が起きている場合は、その炎症を強力に抑える必要があります。このようなケースでは、「ステロイド」が配合された塗り薬が最も効果的です。
ステロイドと聞くと「強くて怖い薬」というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、短期間、患部にのみ使用するのであれば、非常に有効で安全性の高い薬です。市販のステロイド外用薬は、強さに応じてランク分けされています。
- ストロング: ベタメタゾン吉草酸エステルなど
- ミディアム: プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステルなど
- ウィーク: プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン酢酸エステルなど
股ずれのようなデリケートな部分には、まずはミディアム以下のランクから試すのが一般的です。ただし、顔や陰部など、特に皮膚の薄い部分への使用は注意が必要なので、薬剤師に相談するか、添付文書をよく読んでから使用しましょう。ステロイドは炎症を抑える力は強いですが、細菌や真菌(カビ)の増殖を促してしまう可能性があるため、化膿している部分への単独での使用は避けるべきです。
【2025年最新】ドラッグストアで買える!股ずれにおすすめの市販塗り薬10選

数ある市販薬の中から、どの薬を選べば良いのか迷ってしまいますよね。そこで、薬剤師の視点も参考にしつつ、症状や特徴に合わせて、ドラッグストアで手軽に購入できるおすすめの塗り薬を10種類厳選しました。 ぜひ、あなたの薬選びの参考にしてください。
本章では、おすすめの市販薬を一覧表で比較し、それぞれの特徴を詳しく解説します。
- 股ずれにおすすめの市販薬 比較一覧表
- 【かゆみ・かぶれに】デリケアM’s(池田模範堂)
- 【女性のデリケートな悩みに】フェミニーナ軟膏S(小林製薬)
- 【化膿してしまった時に】クロマイ-N軟膏(第一三共ヘルスケア)
- 【強い炎症・赤みに】ベトネベートN軟膏AS(第一三共ヘルスケア)
- 【非ステロイドで炎症を抑える】トレンタムGクリーム(佐藤製薬)
- 【赤ちゃんにも使える優しさ】ポリベビー(佐藤製薬)
- 【保護と保湿の基本】プロペト ピュアワセリン(第一三共ヘルスケア)
- 【かゆみと炎症をダブルで鎮める】オイラックスDX軟膏(第一三共ヘルスケア)
- 【スーッとしないかゆみ止め】新レスタミンコーワ軟膏(興和)
- 【傷の治りを助ける】ハイオロベリン軟膏(高市製薬)
股ずれにおすすめの市販薬 比較一覧表
商品名 | 主な有効成分 | 特徴 | こんな人におすすめ |
---|---|---|---|
デリケアM’s | ジフェンヒドラミン塩酸塩、グリチルレチン酸、l-メントール | 男性向け。スーッとした清涼感でかゆみを鎮める。 | 汗による蒸れやかゆみが気になる男性 |
フェミニーナ軟膏S | リドカイン、ジフェンヒドラミン塩酸塩、イソプロピルメチルフェノール | 女性向け。局所麻酔成分で素早くかゆみを抑える。 | デリケートゾーンのかゆみにも悩む女性 |
クロマイ-N軟膏 | クロラムフェニコール、フラジオマイシン硫酸塩、ナイスタチン | 2種類の抗生物質と抗真菌成分を配合。化膿した患部に。 | じゅくじゅくしたり、化膿してしまった人 |
ベトネベートN軟膏AS | ベタメタゾン吉草酸エステル(ステロイド)、フラジオマイシン硫酸塩(抗生物質) | 優れた抗炎症作用を持つステロイドを配合。 | 赤みや腫れ、痛みがひどい人 |
トレンタムGクリーム | ウフェナマート、グリチルリチン酸二カリウム | 非ステロイド性の抗炎症成分。赤ちゃんにも使える。 | ステロイドに抵抗がある人、軽い炎症の人 |
ポリベビー | 酸化亜鉛、ビタミンA、D2、ジフェンヒドラミン塩酸塩 | 酸化亜鉛が患部を保護・乾燥させる。おむつかぶれにも。 | 肌が弱い人、赤ちゃん、軽い症状の人 |
プロペト ピュアワセリン | 白色ワセリン | 添加物を含まない高純度のワセリン。保護・保湿に特化。 | 予防に使いたい人、敏感肌の人 |
オイラックスDX軟膏 | デキサメタゾン酢酸エステル(ステロイド)、グリチルレチン酸、クロタミトン | ステロイドとかゆみ止め成分を配合。しつこいかゆみと炎症に。 | 強いかゆみと炎症を伴う人 |
新レスタミンコーワ軟膏 | ジフェンヒドラミン塩酸塩 | かゆみ止め成分のみのシンプルな処方。 | 清涼感が苦手な人、かゆみだけを抑えたい人 |
ハイオロベリン軟膏 | 酸化亜鉛、アクリノール、dl-カンフル | 殺菌消毒成分と収れん成分を配合。切り傷やすり傷にも。 | 擦りむいて軽い傷になっている人 |
【かゆみ・かぶれに】デリケアM’s(池田模範堂)
「デリケアM’s」は、特に男性のデリケートエリアのかゆみや蒸れを考えて作られた製品ですが、股ずれにも効果的です。かゆみを抑えるジフェンヒドラミン塩酸塩と、炎症を鎮めるグリチルレチン酸を配合。さらに、l-メントールによるスーッとした清涼感が、不快なかゆみを素早く和らげてくれます。汗で蒸れやすい男性の股間周りのトラブルに適しており、べたつかないクリームタイプで使い心地も爽快です。
【女性のデリケートな悩みに】フェミニーナ軟膏S(小林製薬)
「フェミニーナ軟膏S」は、女性のデリケートゾーンのかゆみ・かぶれ用の薬として有名ですが、股ずれにも使用できます。局所麻酔成分のリドカインと抗ヒスタミン成分のジフェンヒドラミン塩酸塩が、しつこいかゆみを素早く鎮めます。また、殺菌成分のイソプロピルメチルフェノールが雑菌の繁殖を抑え、清潔な状態を保ちます。低刺激性で肌に優しく、べたつかないクリームタイプなので、下着が汚れにくいのも嬉しいポイントです。
【化膿してしまった時に】クロマイ-N軟膏(第一三共ヘルスケア)
掻き壊してじゅくじゅくしたり、黄色い膿が出たりするなど、化膿してしまった場合には「クロマイ-N軟膏」がおすすめです。2種類の抗生物質(クロラムフェニコール、フラジオマイシン硫酸塩)が細菌の増殖を抑え、化膿を防ぎます。さらに、抗真菌成分のナイスタチンも配合されており、カビの一種であるカンジダ菌による感染にも効果が期待できます。伸びが良く、患部をしっかり保護する軟膏タイプです。
【強い炎症・赤みに】ベトネベートN軟膏AS(第一三共ヘLSケア)
赤みや腫れがひどく、痛みを伴うような強い炎症には、ステロイド配合の「ベトネベートN軟膏AS」が適しています。優れた抗炎症作用を持つステロイド成分(ベタメタゾン吉草酸エステル)が、つらい炎症をしっかり鎮めます。 また、抗生物質のフラジオマイシン硫酸塩も配合されているため、化膿を伴う湿疹・皮膚炎にも効果的です。ただし、ステロイド薬なので、漫然と長期間使用するのは避け、症状が改善したら使用を中止しましょう。
【非ステロイドで炎症を抑える】トレンタムGクリーム(佐藤製薬)
「ステロイドを使うのは少し抵抗がある」という方には、「トレンタムGクリーム」がおすすめです。非ステロイド性の抗炎症成分であるウフェナマートとグリチルリチン酸二カリウムが、患部の炎症や痛みを穏やかに鎮めます。 刺激が少なく、赤ちゃんやデリケートな肌の方でも使いやすいのが特徴です。さらっとした使用感のクリームで、べたつかずに広範囲に塗り広げられます。
【赤ちゃんにも使える優しさ】ポリベビー(佐藤製薬)
「ポリベビー」は、おむつかぶれやあせもなど、赤ちゃんの肌トラブルに使われる軟膏ですが、大人の股ずれにも有効です。収れん作用のある酸化亜鉛が患部を保護し、乾燥させることで治りを助けます。また、かゆみを抑えるジフェンヒドラミン塩酸塩や、肌の修復を助けるビタミンA、D2も配合。ステロイドは含まれておらず、非常にマイルドな効き目なので、敏感肌の方やごく軽い症状の場合に適しています。
【保護と保湿の基本】プロペト ピュアワセリン(第一三共ヘルスケア)
「プロペト ピュアワセリン」は、治療薬というよりは皮膚保護剤です。高純度に精製された白色ワセリンのみで作られており、添加物や香料は一切含まれていません。皮膚の表面に膜を作って、衣類との摩擦や汗などの外部刺激から肌をしっかりと守ります。 股ずれが起きてしまった後の保護はもちろん、予防として事前に塗っておくのが非常に効果的です。 敏感肌の方や赤ちゃんでも安心して使えます。
【かゆみと炎症をダブルで鎮める】オイラックスDX軟膏(第一三共ヘルスケア)
強いかゆみと炎症の両方に悩まされているなら、「オイラックスDX軟膏」が頼りになります。鎮痒成分のクロタミトンと、抗炎症成分のステロイド(デキサメタゾン酢酸エステル)が、しつこいかゆみと赤みをダブルでブロックします。 殺菌成分や血行促進成分も配合されており、複合的な症状にアプローチします。軟膏タイプで患部にしっかり留まり、効果が持続しやすいのも特徴です。
【スーッとしないかゆみ止め】新レスタミンコーワ軟膏(興和)
「新レスタミンコーワ軟膏」は、かゆみの原因となるヒスタミンの働きを抑える抗ヒスタミン成分(ジフェンヒドラミン塩酸塩)のみを配合した、シンプルな処方の塗り薬です。 l-メントールなどの清涼感成分が含まれていないため、スーッとする刺激が苦手な方や、傷にしみるのが心配な方におすすめです。乳剤性の軟膏で、べたつかずにしっとりとした使用感です。
【傷の治りを助ける】ハイオロベリン軟膏(高市製薬)
股ずれが擦り傷のようになってしまった場合には、「ハイオロベリン軟膏」のような殺菌消毒薬が適しています。殺菌成分のアクリノールと、患部を乾燥させる酸化亜鉛が、傷口を保護し、化膿を防ぎます。 股ずれだけでなく、切り傷やすり傷など、家庭の常備薬としても役立ちます。dl-カンフルによる軽い清涼感があります。
効果を高める!股ずれの薬の正しい塗り方と注意点

せっかく自分に合った薬を選んでも、使い方が間違っていては十分な効果が得られません。ここでは、薬の効果を最大限に引き出すための正しい塗り方と、使用する上での注意点を解説します。簡単なポイントを押さえるだけで、治りの速さが変わってきますよ。
本章では、薬の効果的な使い方について、以下のポイントを解説します。
- 塗る前には患部を清潔に
- 優しく、擦り込まずに塗るのが基本
- 使用回数と期間を守る
塗る前には患部を清潔に
薬を塗る前の最も大切な準備は、患部を清潔にすることです。 汗や皮脂、汚れが付着したままだと、薬の浸透を妨げるだけでなく、雑菌が繁殖して症状を悪化させる原因にもなります。
入浴時に、低刺激性の石鹸やボディソープをよく泡立て、手で優しく洗うのが理想的です。ナイロンタオルなどでゴシゴシ擦るのは、皮膚を傷つけるので絶対にやめましょう。入浴後は、清潔で柔らかいタオルを使い、押さえるようにして水分を優しく拭き取ります。このときも、擦らないように注意してください。患部が清潔で乾いた状態になってから、薬を塗り始めましょう。
優しく、擦り込まずに塗るのが基本
薬を塗る際は、「擦り込まない」ことが鉄則です。 炎症を起こしている皮膚は非常にデリケートなため、強い力で擦り込むと刺激になってしまいます。清潔な指先に適量(チューブから5mm程度出した量が、手のひら2枚分の面積の目安)を取り、患部に優しく置くように乗せ、薄く均一に伸ばします。
軟膏やクリームが少しテカって見えるくらいが適量です。量が少なすぎると十分な効果が得られず、多すぎてもべたつきの原因になるだけです。特に、広範囲に塗る場合は、一度にたくさん取らず、数回に分けて塗るとムラなくきれいに塗布できます。
使用回数と期間を守る
市販薬を使用する際は、必ず添付文書に記載されている用法・用量を守りましょう。通常、1日に1〜数回塗布するのが一般的です。早く治したいからといって、指定された回数以上に塗っても効果が高まるわけではありません。むしろ、副作用のリスクを高める可能性があります。
また、使用期間の目安も重要です。特にステロイド配合の薬は、長期間の使用は避けるべきです。市販薬を5〜6日間使用しても症状が全く改善しない、あるいは悪化するような場合は、セルフケアでは対応できない別の原因(例えば、真菌感染症など)が隠れている可能性も考えられます。その際は、ためらわずに使用を中止し、皮膚科を受診してください。
薬だけじゃない!今日からできる股ずれ予防・対策法

股ずれは、一度治っても再発しやすい厄介な皮膚トラブルです。塗り薬で症状を抑える対症療法も大切ですが、それと同時に、股ずれが起きにくい環境を整える「予防」が何よりも重要です。ここでは、日常生活の中で簡単に取り入れられる予防・対策法をご紹介します。
本章では、股ずれを繰り返さないための具体的な方法を解説します。
- 通気性と肌触りの良い下着を選ぶ
- 汗をかいたら、こまめにケア
- ワセリンや専用クリームで肌を保護する
- インナー(スパッツなど)を活用する
通気性と肌触りの良い下着を選ぶ
肌に直接触れる下着や衣類の選び方は、股ずれ予防の基本中の基本です。化学繊維よりも、吸湿性・通気性に優れた綿(コットン)やシルクなどの天然素材を選びましょう。 これらの素材は汗をよく吸い取り、湿気を外に逃がしてくれるため、蒸れを防ぎます。
また、デザインも重要です。体にぴったりフィットしすぎるスキニーパンツや、縫い目が太ももに当たるようなデザインのショーツは摩擦の原因になります。 少しゆとりのあるサイズ感のものや、縫い目のないシームレスタイプの下着がおすすめです。男性の場合は、トランクスよりも、太ももを適度にホールドしてくれるロング丈のボクサーパンツが、肌同士の直接の摩擦を防いでくれる場合があります。
汗をかいたら、こまめにケア
汗は股ずれの大きな原因の一つです。 特に夏場やスポーツ後など、大量に汗をかいたときは、そのまま放置しないことが大切です。濡れたタオルや汗拭きシートで、こまめに汗を拭き取りましょう。このときも、ゴシゴシ擦らずに、優しく押さえるように拭くのがポイントです。
外出先で着替えるのが難しい場合は、下着の替えを持参するのも良い方法です。また、ベビーパウダー(パウダータイプのあせも薬)を軽くはたいておくと、肌がサラサラの状態に保たれ、摩擦を軽減する効果が期待できます。 ただし、つけすぎると毛穴を詰まらせる原因にもなるので、薄くつける程度にしましょう。
ワセリンや専用クリームで肌を保護する
股ずれが起きやすいと分かっている日は、出かける前に予防策を講じておくのが最も効果的です。ワセリンや皮膚保護クリームを、太ももの内側の擦れやすい部分にあらかじめ塗っておきましょう。 これにより、皮膚の表面に滑らかな保護膜が作られ、摩擦そのものを大幅に減らすことができます。
最近では、スポーツ選手向けに開発された、汗や水に強い「股ずれ防止クリーム」も市販されています。 これらの製品は、長時間効果が持続するように作られているため、マラソンや長時間のウォーキングなどを行う際には特に頼りになります。ベタつきの少ないジェルタイプなど、使用感の良いものも増えています。
インナー(スパッツなど)を活用する
物理的に肌同士が接触しないようにするのも、非常に有効な対策です。スカートやワンピースを着る際には、下に三分丈や五分丈のスパッツ(レギンス)やペチパンツを履くことで、太もも同士が直接擦れるのを防げます。 最近では、夏でも快適に履ける接触冷感素材や、吸湿速乾性に優れた素材のものが多く販売されています。
ズボンを履く場合でも、下に薄手のインナーを一枚履くことで、ズボンの生地との摩擦を軽減できます。男性用のステテコやロングボクサーパンツも同様の効果が期待できます。 自分に合ったインナーを見つけて、ファッションを楽しみながら股ずれを予防しましょう。
こんな症状は病院へ!皮膚科を受診する目安

ほとんどの股ずれは市販薬とセルフケアで改善しますが、中には専門的な治療が必要なケースもあります。自己判断で悪化させてしまう前に、適切なタイミングで皮膚科を受診することが大切です。ここでは、病院に行くべき症状の目安について解説します。
本章では、セルフケアの限界と、専門医に相談すべきサインについて説明します。
- 市販薬を1週間使っても改善しない、または悪化する場合
- 痛みが強い、水ぶくれや膿がひどい場合
- 範囲が広い、または繰り返す場合
市販薬を1週間使っても改善しない、または悪化する場合
市販の塗り薬を使ってみて、5〜6日経っても症状が良くならない、あるいはかえって赤みやかゆみが広がったり、痛みが増したりする場合は、使用を中止して皮膚科を受診しましょう。 選んだ薬が症状に合っていない可能性や、股ずれではなく別の皮膚疾患の可能性があります。
例えば、股部の皮膚トラブルには、カビの一種である白癬菌が原因の「いんきんたむし(股部白癬)」など、股ずれと似た症状を示す病気があります。いんきんたむしにステロイド薬を使うと、症状を悪化させてしまうため、専門医による正確な診断が必要です。
痛みが強い、水ぶくれや膿がひどい場合
ヒリヒリする程度ではなく、歩くのもつらいほどの強い痛みがある場合や、患部に大きな水ぶくれができたり、黄色い膿が出たりしている場合は、重度の炎症や細菌感染が起きているサインです。 このような状態を放置すると、炎症が皮膚の奥深くまで進行したり、感染が全身に広がったりするリスクもあります。
特に、じゅくじゅくした状態(びらん)が広範囲に及んでいる場合は、市販薬では対応が困難です。皮膚科では、より強力な抗生物質や抗炎症薬の処方、適切な処置を行ってくれますので、早めに相談してください。
範囲が広い、または繰り返す場合
股ずれの範囲が手のひらサイズ以上に広がっている場合や、適切な予防策を講じているにもかかわらず、頻繁に股ずれを繰り返してしまう場合も、一度皮膚科で相談することをおすすめします。体質的に皮膚が弱い、アトピー性皮膚炎などの基礎疾患がある、あるいは糖尿病などの内科的な病気が背景に隠れている可能性も考えられます。
また、股ずれによって皮膚の色素沈着(黒ずみ)が起きてしまい、見た目が気になるという場合も、皮膚科で相談すれば、ハイドロキノンなどの美白外用薬や、ビタミンCなどの内服薬を処方してもらえることがあります。
股ずれの塗り薬に関するよくある質問

ここでは、股ずれの塗り薬やケアに関して、多くの方が疑問に思う点についてお答えします。
ワセリンは股ずれに効きますか?
はい、ワセリンは股ずれの治療と予防の両方に非常に有効です。 ワセリンは皮膚の表面に保護膜を作り、摩擦や汗などの外部刺激から肌を守る効果があります。 炎症を直接抑える作用はありませんが、肌を保護することで自然治癒を助け、悪化を防ぎます。特に、股ずれの予防として、運動前や長時間歩く前に塗っておくのがおすすめです。 不純物の少ない高純度の白色ワセリンは、敏感肌の方や赤ちゃんにも安心して使えます。
オロナインH軟膏は股ずれに使えますか?
オロナインH軟膏の効能・効果には「すりきず」や「きず」が含まれているため、軽い擦り傷のようになった股ずれに使用すること自体は可能です。主成分のクロルヘキシジングルコン酸塩液には殺菌・消毒作用があります。しかし、オロナインH軟膏には炎症を抑える成分は含まれていないため、赤みや腫れが強い場合には、抗炎症成分が配合された薬の方が適しています。また、じゅくじゅくした湿潤性の高い患部への使用は適していません。
ニベアクリームは予防になりますか?
ニベアクリームのような保湿クリームも、肌の滑りを良くし、乾燥を防ぐことで、ある程度の摩擦軽減効果は期待できます。 そのため、股ずれの「予防」として、日常的なスキンケアに取り入れるのは良いでしょう。しかし、ニベアクリームは医薬品ではないため、すでに起きてしまった炎症を鎮める効果はありません。赤みや痛み、かゆみなどの症状がある場合は、医薬品の塗り薬を使用してください。
ステロイドは使っても大丈夫ですか?
ステロイド外用薬は、医師や薬剤師の指示、または添付文書の用法・用量を守って正しく使用すれば、非常に効果的で安全性の高い薬です。 特に炎症が強い場合には、優れた抗炎症作用でつらい症状を迅速に和らげてくれます。ただし、「長期間漫然と使用しない」「化膿している部分には単独で使わない」「症状が改善したら使用を中止する」といった注意点を守ることが重要です。不安な場合は、購入時に薬剤師に相談しましょう。
陰部のかゆみにも使えますか?
股ずれの薬の中には、フェミニーナ軟膏のようにデリケートゾーンのかゆみにも使用できる製品があります。しかし、製品によっては刺激が強かったり、粘膜への使用が適さなかったりする場合があります。特に陰部は皮膚が薄くデリケートなため、自己判断での使用は慎重に行うべきです。陰部のかゆみには、カンジダ症やトリコモナス症など、専門的な治療が必要な病気の可能性もあります。長引く場合や、おりものに異常がある場合は、婦人科や泌尿器科を受診してください。
まとめ

- 股ずれは太もも内側の摩擦と汗が主な原因です。
- 初期の軽い赤みにはワセリンなどで肌を保護しましょう。
- 強いかゆみには抗ヒスタミン成分配合の薬が有効です。
- じゅくじゅく化膿した場合は抗生物質入りの薬を選びます。
- 炎症や赤みがひどい時はステロイド薬が効果的です。
- 薬を塗る前は患部を清潔にすることが大切です。
- 薬は擦り込まず、優しく薄く伸ばして塗りましょう。
- 市販薬は5〜6日使用しても改善しなければ受診を検討します。
- 予防には通気性の良い綿素材の下着がおすすめです。
- 汗をかいたらこまめに拭き取ることが重要です。
- 出かける前にワセリンや専用クリームを塗ると効果的です。
- スパッツやペチパンツの着用で物理的に摩擦を防げます。
- 痛みが強い、水ぶくれや膿がある場合はすぐに皮膚科へ。
- 頻繁に繰り返す場合も一度専門医に相談しましょう。
- 症状に合った薬を選び、予防を心がけることが解決の鍵です。