「病院でプレドニゾロンという塗り薬を処方されたけど、これってどんな薬?」「ステロイドって聞くと、副作用がなんだか怖い…」。そんな不安を抱えていませんか?
急な湿疹やかゆみで処方されることの多いプレドニゾロン塗り薬。効果がある一方で、使い方や副作用について正しく理解しておくことがとても大切です。
本記事では、プレドニゾロン塗り薬の基本的な情報から、気になる強さのランク、副作用、そして正しい使い方まで、あなたの疑問や不安に寄り添いながら、分かりやすく解説していきます。
プレドニゾロン塗り薬とは?湿疹・かぶれに効くステロイド

つらい皮膚の症状を和らげるために処方されるプレドニゾロン塗り薬。まずは、この薬がどのようなものなのか、基本的な特徴から見ていきましょう。正しく知ることで、薬への不安もきっと軽くなるはずです。
本章では、以下の内容を解説します。
- 皮膚の炎症を抑える「ステロイド外用薬」
- プレドニゾロンが効果を発揮する症状
皮膚の炎症を抑える「ステロイド外用薬」
プレドニゾロン塗り薬は、「ステロイド外用薬」に分類される医療用の医薬品です。 ステロイドと聞くと、少し身構えてしまう方もいるかもしれませんが、もともとは私たちの体の中にある副腎という臓器で作られるホルモンの一種です。 このホルモンには、体の炎症を強力に抑える働きがあります。
この働きを薬として応用したのがステロイド薬です。塗り薬(外用薬)として使うことで、炎症が起きている皮膚に直接作用し、つらい赤み、腫れ、かゆみなどの症状を効率的に和らげることができます。 全身への影響が少なく、皮膚のトラブル治療には欠かせない薬の一つとして、広く使われています。
プレドニゾロンが効果を発揮する症状
プレドニゾロン塗り薬は、その優れた抗炎症作用から、さまざまな皮膚の病気や症状の治療に用いられます。具体的には、以下のような症状に効果が期待できます。
- 湿疹・皮膚炎群(アトピー性皮膚炎、かぶれ、手湿疹など)
- 皮膚そう痒症(ひふそうようしょう:強いかゆみを伴う皮膚の病気)
- 虫刺され
- あせも
- じんましん
- 薬疹・中毒疹
このように、日常的によく起こる皮膚トラブルから、専門的な治療が必要な皮膚疾患まで、幅広く対応できるのが特徴です。ただし、細菌やウイルスなどが原因で起こる感染症には使用できませんので、自己判断での使用は絶対にやめましょう。
【一覧表】プレドニゾロン塗り薬の強さはどのランク?

「この薬、強さはどのくらいなんだろう?」ステロイド塗り薬を使う上で、多くの方が気になるのがその「強さ」のランクです。薬の強さを知ることは、安心して治療を進めるための第一歩。ここでは、ステロイド外用薬全体のランク分けと、その中でのプレドニゾロンの位置づけを分かりやすく解説します。
本章で解説する内容は以下の通りです。
- ステロイド外用薬の5段階ランク分け
- プレドニゾロンは「マイルド(弱い)」に分類
ステロイド外用薬の5段階ランク分け
ステロイド塗り薬は、その効果の強さによって、最も強い「Strongest(ストロンゲスト)」から最もおだやかな「Weak(ウィーク)」までの5段階に分類されています。 医師は、患者さんの症状の重さ、年齢、そして塗る体の部位などを総合的に判断して、最適なランクの薬を選択します。
例えば、皮膚が厚い手のひらや足の裏には強めのランクが、皮膚が薄くデリケートな顔や首には弱めのランクが処方されるのが一般的です。 このランク分けを理解しておくことで、自分が使っている薬がどの程度の強さなのかを客観的に把握できます。
| ランク | 強さ | 主な成分名 | 代表的な医薬品例 |
|---|---|---|---|
| I群 | 最も強い (Strongest) | クロベタゾールプロピオン酸エステル | デルモベート、ダイアコート |
| II群 | とても強い (Very Strong) | ベタメタゾンジプロピオン酸エステル | リンデロンDP、マイザー |
| III群 | 強い (Strong) | ベタメタゾン吉草酸エステル | リンデロンV、フルコート |
| IV群 | おだやか (Medium/Mild) | プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル | リドメックス、ロコイド |
| V群 | 弱い (Weak) | プレドニゾロン | プレドニゾロン軟膏/クリーム |
※上記は一例です。ジェネリック医薬品など、多くの製品があります。
プレドニゾロンは「マイルド(弱い)」に分類
上の表を見ていただくと分かる通り、医療用医薬品の「プレドニゾロン」は、5段階中最も作用がおだやかな「V群:弱い(Weak)」に分類されます。
作用がマイルドであるため、比較的副作用のリスクが低く、皮膚が薄くてデリケートな顔や、子どもの皮膚トラブルにも処方されやすいステロイドです。 「ステロイド」と聞くと強い薬というイメージがあるかもしれませんが、プレドニゾロンはその中でも最もおだやかなランクに位置づけられる薬であると覚えておきましょう。
ただし、市販薬で「プレドニゾロン」と名前がつくものの中には、「プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル」という成分が含まれている場合があります。 この成分は「IV群:おだやか(Medium/Mild)」に分類され、プレドニゾロンよりも一段階強い作用を持つため、混同しないように注意が必要です。
気になる副作用は?正しく使えば怖くないプレドニゾロン

「ステロイド」と聞いて、多くの方が真っ先に心配するのが副作用ではないでしょうか。しかし、プレドニゾロンのような外用薬は、医師の指示通りに正しく使用すれば、過度に怖がる必要はありません。 ここでは、起こりうる副作用と、そのリスクを減らすためのコツについて詳しく解説します。
この章で解説する内容は以下の通りです。
- 主な局所的副作用(皮膚が薄くなるなど)
- 全身性の副作用は起こりにくい
- 副作用のリスクを減らすための3つのコツ
主な局所的副作用(皮膚が薄くなるなど)
ステロイド塗り薬の副作用は、主に薬を塗った場所に起こる「局所的副作用」です。プレドニゾロンは作用がおだやかなため頻度は低いですが、長期間にわたって同じ場所に使い続けると、以下のような症状が現れることがあります。
- 皮膚の萎縮(いしゅく): 皮膚が薄くなり、血管が透けて見えるようになる。
- 毛細血管の拡張: 顔などで、血管が浮き出て赤ら顔のように見えることがある。
- ステロイドざ瘡(ざそう): ニキビのようなブツブツができることがある。
- 多毛: 塗った場所のうぶ毛が濃くなることがある。
- 皮膚感染症の誘発: 皮膚の抵抗力が落ち、細菌やカビ(真菌)に感染しやすくなる。
これらの副作用は、特に皮膚の薄い顔や首などで起こりやすいとされています。 しかし、これらの多くは薬の使用を中止すれば徐々に回復するものです。 異変を感じたら、自己判断で使い続けず、すぐに医師や薬剤師に相談することが重要です。
全身性の副作用は起こりにくい
ステロイドの副作用としてよく知られている「ムーンフェイス(顔が丸くなる)」「高血圧」「糖尿病」といった全身性の副作用は、主に長期間にわたる飲み薬や注射薬の使用によって起こるものです。
プレドニゾロンのような塗り薬は、体内に吸収される量がごくわずかなため、医師の指示通りの通常の量と期間で使用している限り、全身性の副作用が起こる心配はほとんどありません。
ただし、非常に広範囲に、長期間、大量に使用したり、ラップで覆って密閉したりするような特殊な使い方(ODT療法)をすると、全身性の副作用のリスクが高まる可能性があるので注意が必要です。
副作用のリスクを減らすための3つのコツ
副作用を過度に心配する必要はありませんが、リスクを最小限に抑えるために、以下の3つの点を心がけましょう。
- 医師の指示通りの期間と回数を守る
自己判断で長期間ダラダラと使い続けるのはやめましょう。症状が良くなったら、医師の指示に従って徐々に回数を減らしたり、使用を中止したりすることが大切です。 - 症状のない場所には塗らない
薬は、炎症が起きている患部にのみ塗り、健康な皮膚にまで広げて塗らないようにしましょう。予防のために塗ることはできません。 - 異変を感じたらすぐに相談する
塗った場所に赤みやかゆみが増したり、ニキビのようなものができたりした場合は、副作用の可能性があります。使用を中止し、速やかに医師や薬剤師に相談してください。
これらのコツを守ることで、プレドニゾロン塗り薬をより安全に、そして効果的に使用することができます。
効果を引き出す!プレドニゾロン塗り薬の正しい使い方・やめ方

せっかく薬を使うなら、その効果を最大限に引き出したいですよね。プレドニゾロン塗り薬の効果を高めるためには、正しい「量」「塗り方」「やめ方」を知ることが非常に重要です。ここでは、意外と知らない塗り薬の基本を、分かりやすく解説していきます。
この章で解説する内容は以下の通りです。
- 適量の目安「フィンガーチップユニット」とは?
- 塗り方の基本と注意点
- いつまで塗る?やめどきのサイン
適量の目安「フィンガーチップユニット」とは?
「薬はどのくらい塗ればいいの?」という疑問に答えるのが、「フィンガーチップユニット(FTU)」という量の目安です。これは、大人の人差し指の第一関節までチューブから薬を絞り出した量(約0.5g)を指します。
この1FTUの量で、大人の手のひら2枚分の面積に塗るのが適量とされています。 意外とたっぷり塗るんだな、と感じるかもしれません。量が少なすぎると十分な効果が得られず、逆に治療が長引いてしまうこともあります。ベタつくのが嫌だからと薄く塗り広げるのではなく、ティッシュが軽く付くくらいの量を、患部にしっかり乗せるように塗りましょう。

塗り方の基本と注意点
薬を塗る際の基本的な手順と、効果を高めるための注意点を確認しましょう。
- 手を清潔にする
薬を塗る前と後には、必ず石鹸で手を洗いましょう。 - 患部を清潔にする
入浴後など、皮膚が清潔で少し潤っている状態で塗るのが最も効果的です。汗や汚れが付いている場合は、優しく拭き取ってから塗りましょう。 - 優しく乗せるように塗る
薬を強く擦り込む必要はありません。患部より少し広めに、優しく置くように塗り広げます。 - 保湿剤との併用
保湿剤も処方されている場合は、どちらを先に塗るか医師の指示に従ってください。一般的には、塗る面積が広い保湿剤を先に塗り、その上からステロイドを患部に重ねて塗ることが多いです。
また、塗る回数は通常1日1〜2回が基本です。 医師の指示を守り、塗りすぎたり、塗り忘れたりしないようにしましょう。
いつまで塗る?やめどきのサイン
症状が良くなってきたときに自己判断で急に薬をやめてしまうと、皮膚の下に残っていた炎症が再燃し、症状がぶり返してしまうことがあります。 これを「リバウンド」と呼ぶことがありますが、正しくは治療が不十分なことによる悪化です。
やめどきのサインは、見た目に赤みやブツブツがなくなり、触ってみてザラザラ感がなく、つるっとした健康な皮膚の状態に戻ったときです。 しかし、見た目が良くなっても、皮膚の内部ではまだ炎症がくすぶっている可能性があります。
そのため、医師は症状の改善具合を見ながら、
- 1日2回 → 1日1回 → 2日に1回… と徐々に塗る回数を減らしていく(漸減療法)
- より弱いランクのステロイドや、非ステロイドの薬に切り替える
といった指示を出すことが一般的です。自己判断で中断せず、必ず医師の指示に従って治療を完了させることが、ぶり返しを防ぐための最も重要なコツです。
【部位別】プレドニゾロン塗り薬を使ってはいけない場所

プレドニゾロンは作用がおだやかなステロイドですが、体の部位によっては使用に特に注意が必要です。皮膚の薄さや性質によって薬の吸収率が異なり、副作用のリスクも変わってくるためです。ここでは、特に注意すべき部位とその理由について解説します。
この章で解説する内容は以下の通りです。
- 顔・まぶたへの使用は特に慎重に
- 陰部など皮膚の薄いデリケートな部分
- 広範囲への長期使用は避けるべき
顔・まぶたへの使用は特に慎重に
顔の皮膚は、腕の内側を1とした場合、薬の吸収率が13倍にもなると言われています。 非常に薄くデリケートなため、ステロイドの作用が出やすく、同時に副作用のリスクも高まります。
特に、まぶたの皮膚は体の中で最も薄い部分の一つです。まぶたや目の周りに長期間使用すると、眼圧が上昇して緑内障を引き起こしたり、白内障を悪化させたりする危険性があります。 そのため、眼科用の軟膏以外は、目の周りには使用しないのが原則です。
プレドニゾロンは顔にも処方されることがありますが、その際は医師が指定した期間と範囲を厳密に守ることが非常に重要です。 化粧下地やひげそり後に使用することも避けてください。
陰部など皮膚の薄いデリケートな部分
陰部も顔と同様に皮膚が薄く、薬の吸収率が高い部位です。 腕の吸収率を1とすると、陰嚢(いんのう)は42倍と、体の中で最も吸収率が高いとされています。
また、下着で蒸れやすいため、薬の吸収がさらに促進されやすい環境にあります。そのため、自己判断で強いステロイドを使用すると、皮膚が薄くなるなどの副作用が出やすくなります。
さらに、陰部はカンジダ症などの真菌(カビ)感染が起こりやすい場所でもあります。ステロイドは感染症を悪化させるため、かゆみの原因が感染症だった場合、使用すると逆効果になります。陰部のかゆみやただれには、自己判断でプレドニゾロンを使わず、必ず医師の診察を受けましょう。
広範囲への長期使用は避けるべき
特定の部位だけでなく、全身の広範囲にわたって長期間プレドニゾロン塗り薬を使用することも避けるべきです。
塗る面積が広ければ広いほど、体内に吸収される薬の総量が増えることになります。作用がおだやかなプレドニゾロンでも、大量に長期間使い続けると、ごくまれに全身性の副作用(副腎機能の抑制など)につながる可能性がゼロではありません。
アトピー性皮膚炎などで広範囲の治療が必要な場合は、医師が体の部位ごとに薬のランクを使い分けたり、定期的に皮膚の状態をチェックしたりしながら、安全に治療を進めていきます。医師の指示なく、広範囲に漫然と塗り続けることは絶対にやめましょう。
プレドニゾロン塗り薬は市販で買える?代表的な薬と選び方

「病院に行く時間がないけど、同じような薬は市販で買えないの?」そう考える方もいるでしょう。実際に、ドラッグストアではプレドニゾロン系の成分を含む市販薬が販売されています。しかし、医療用とは少し違いがあり、選ぶ際には注意が必要です。ここでは、市販薬と医療用の違いや、選び方のポイントを解説します。
この章で解説する内容は以下の通りです。
- 医療用と市販薬で成分が違う?
- 市販のプレドニゾロン系塗り薬の例
- 薬剤師に相談して自分に合う薬を選ぼう
医療用と市販薬で成分が違う?
まず知っておきたいのは、医療用で処方される「プレドニゾロン軟膏/クリーム」と、市販薬に含まれる「プレドニゾロン」系の成分は、厳密には異なる場合が多いということです。
- 医療用プレドニゾロン: 成分名は「プレドニゾロン」。ステロイドランクは「弱い(Weak)」。
- 多くの市販薬: 成分名は「プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル(PVA)」。ステロイドランクは「おだやか(Medium/Mild)」。
つまり、多くの市販薬は、医療用のプレドニゾロンよりも一段階強いステロイド成分を含んでいることになります。これは、アンテドラッグ・ステロイドと呼ばれ、患部で効果を発揮したあと、体内に吸収されると分解されて作用が弱まるように設計されており、安全性が高められています。
また、赤ちゃん向けなどのごく一部の市販薬には、医療用と同じ「プレドニゾロン」成分(Weakランク)を含むものもあります。
市販のプレドニゾロン系塗り薬の例
ドラッグストアなどで購入できる、プレドニゾロン系の成分を含む代表的な市販薬をいくつかご紹介します。
| 商品名(例) | ステロイド成分 | 強さランク | 特徴 |
|---|---|---|---|
| コートf AT軟膏/クリーム | プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル | Medium (おだやか) | かゆみ止め成分なども配合。 |
| リビメックスコーワ軟膏/クリーム | プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル | Medium (おだやか) | アンテドラッグステロイド。 |
| コートf MD軟膏 | プレドニゾロン | Weak (弱い) | 赤ちゃんにも使えるおだやかなタイプ。 |
※上記は一例です。購入の際は必ずパッケージの成分表示をご確認ください。
薬剤師に相談して自分に合う薬を選ぼう
市販薬は手軽に購入できて便利ですが、自己判断で選ぶのは禁物です。ステロイド外用薬は、症状や部位、年齢によって適切な強さが異なります。
特に、以下の場合は市販薬の使用を避け、医療機関を受診すべきです。
- 症状の範囲が広い、または症状が重い
- 顔や陰部などデリケートな部位に使いたい
- 5〜6日間使用しても症状が改善しない、または悪化する
- 原因がはっきりしない(感染症の可能性がある)
- 乳幼児や妊婦の方
市販薬を購入する際は、必ずドラッグストアの薬剤師または登録販売者に相談しましょう。 症状を詳しく伝え、自分の状態に最も合った薬を選ぶ手助けをしてもらうことが、安全で効果的なセルフケアにつながります。
これはNG!プレドニゾロンが効かない・悪化するケース

プレドニゾロンは多くの湿疹・皮膚炎に効果的な薬ですが、万能ではありません。間違った使い方をすると、効果がないばかりか、かえって症状を悪化させてしまうことがあります。ここでは、プレドニゾロンを使ってはいけない代表的なケースについて解説します。
この章で解説する内容は以下の通りです。
- ニキビやとびひ等の細菌感染症
- ヘルペスや水虫等のウイルス・真菌感染症
- 症状が改善しない・悪化する場合
ニキビやとびひ等の細菌感染症
プレドニゾロンをはじめとするステロイド薬には、免疫を抑える作用があります。そのため、細菌が原因で起こる皮膚の感染症に使うと、細菌の増殖を助長してしまい、症状を悪化させる危険性があります。
- ニキビ(尋常性ざ瘡): ニキビはアクネ菌という細菌の増殖が関わっています。 ステロイドを塗ると一時的に赤みが引くことがあっても、根本的な解決にはならず、かえってニキビを悪化させる「ステロイドざ瘡」を誘発することがあります。
- とびひ(伝染性膿痂疹): 黄色ブドウ球菌などが原因の細菌感染症です。ステロイドを塗ると、感染がさらに広がる恐れがあります。
- 毛のう炎(毛包炎): 毛穴の奥に細菌が感染して起こる炎症です。
これらの症状には、ステロイドではなく、抗菌薬(抗生物質)による治療が必要です。
ヘルペスや水虫等のウイルス・真菌感染症
細菌だけでなく、ウイルスや真菌(カビ)が原因の皮膚疾患にも、ステロイドの使用は原則として禁忌(きんき:使ってはいけないこと)とされています。
- 単純疱疹(ヘルペス): 口唇ヘルペスや性器ヘルペスなど、ウイルスが原因です。ステロイドを塗るとウイルスの活動を活発にし、症状を重症化させる可能性があります。
- 水虫(足白癬)・カンジダ症: 白癬菌やカンジダ菌といった真菌(カビ)が原因です。 かゆみがあるため湿疹と間違えやすいですが、ステロイドを塗ると菌の温床となり、症状がみるみる悪化します。
- 水ぼうそう(水痘)・帯状疱疹: これらもウイルス感染症であり、ステロイドは使用できません。
これらの感染症には、それぞれ抗ウイルス薬や抗真菌薬が必要です。「ただのかぶれだろう」と安易に自己判断せず、治りにくい、あるいは特徴的な症状がある場合は、必ず皮膚科を受診してください。
症状が改善しない・悪化する場合
医師から処方されたプレドニゾロンを指示通りに使っているにもかかわらず、数日間たっても症状が全く改善しない、あるいは逆に赤みやかゆみがひどくなるといった場合は、使用を中止して速やかに医師に相談しましょう。
考えられる原因としては、
- 診断が間違っており、実は感染症だった。
- 薬の強さが症状に対して弱すぎる。
- 薬の成分や基剤(軟膏やクリームのベース)に対するアレルギー(接触皮膚炎)を起こしている。
などがあります。そのまま使い続けても良い結果にはつながりません。治療方針を見直す必要があるため、自己判断はせずに、必ず専門家の診察を受け直してください。
プレドニゾロン塗り薬のよくある質問

Q. 赤ちゃんや子供にも使えますか?
はい、使えます。プレドニゾロンは作用がおだやかな「弱い(Weak)」ランクのステロイドなので、皮膚がデリケートな赤ちゃんや子供の湿疹、あせも、おむつかぶれなどにも処方されることがあります。
ただし、大人に比べて子供の皮膚は薄く、薬の影響を受けやすいです。 そのため、長期間の使用や広範囲への使用は特に注意が必要です。おむつは薬の吸収を高める密封法と同じような作用があるので、おむつが当たる範囲に塗る際は特に医師の指示をよく守りましょう。 自己判断で市販薬を使わず、まずは小児科や皮膚科を受診することをおすすめします。
Q. 妊娠中や授乳中に使用しても大丈夫?
通常の用法・用量でプレドニゾロン塗り薬を使用する場合、体内に吸収される量はごくわずかなので、お腹の赤ちゃんや母乳に影響する可能性は極めて低いと考えられています。 塗り薬を使わずに症状を悪化させてしまうストレスの方が、かえって良くない場合もあります。
ただし、妊娠中は万全を期すため、必要最小限の使用にとどめるのが原則です。 大量または長期間にわたる広範囲の使用は避けるべきとされています。 必ず医師に妊娠中・授乳中であることを伝え、その指示のもとで使用するようにしてください。
Q. どのくらいで効果が出ますか?
症状の重さや部位にもよりますが、プレドニゾロン塗り薬を正しく使用すれば、通常は数日で赤みやかゆみなどの炎症が和らいでくることが多いです。
もし、5〜6日程度使用しても全く改善の兆しが見られない、あるいは悪化するような場合は、薬が合っていないか、診断が異なる可能性があります。 その際は使用を中止し、再度医師の診察を受けてください。
Q. プレドニゾロンとリンデロンの違いは何ですか?
プレドニゾロンとリンデロンは、どちらもステロイド塗り薬ですが、主な違いは「強さのランク」です。
- プレドニゾロン: 「弱い(Weak)」ランクに分類されます。
- リンデロン-V (VG): 「強い(Strong)」ランクに分類されます。
- リンデロン-DP: 「とても強い(Very Strong)」ランクに分類されます。
このように、リンデロンはプレドニゾロンよりも作用が強いステロイドです。医師は症状の重さや部位によってこれらを使い分けます。例えば、顔にはプレドニゾロン、手足の頑固な湿疹にはリンデロン-Vといった具合です。全く別の強さの薬なので、自己判断で他人の薬を使ったり、昔の薬を使ったりするのは絶対にやめましょう。
Q. 薬をやめるとリバウンドしますか?
「ステロイドをやめるとリバウンドが怖い」という声をよく聞きますが、これは少し誤解が含まれています。医師の指示通りに治療を進め、症状がしっかり治まってから徐々に薬を減らしていけば、急激に悪化するような「リバウンド」は起こりません。
一般的にリバウンドと言われる現象の多くは、炎症がまだ残っている状態で自己判断で急に薬を中止したために、症状が再燃・悪化している状態です。 治療が不十分だったために、もとの症状に戻ってしまうのです。これを防ぐためには、症状が良くなっても自己判断でやめず、医師の指示に従って、塗る回数を徐々に減らしていくことが大切です。
Q. プレドニゾロンが効かないときはどうすればいい?
指示通りに使ってもプレドニゾロンが効かない場合、いくつかの原因が考えられます。
- 薬のランクが弱い: 炎症が強い場合、プレドニゾロンの「弱い」ランクでは力不足のことがあります。
- 感染症を合併している: 細菌や真菌(カビ)の感染が起きていると、ステロイドだけでは治りません。
- 薬が合っていない: 薬の基剤(軟膏やクリーム)にかぶれている可能性があります。
- 使い方が間違っている: 塗る量や回数が不十分な場合も効果が出にくいです。
いずれにせよ、効かないまま使い続けるのは良くありません。速やかに処方した医師に再度相談し、原因を突き止めて、治療法を見直してもらう必要があります。
まとめ

- プレドニゾロンは「ステロイド外用薬」の一種です。
- 皮膚の炎症を抑え、湿疹やかぶれに効果があります。
- ステロイドの強さランクでは最もおだやかな「弱い」に分類されます。
- 市販薬の多くは一段階強い「おだやか」ランクの成分です。
- 正しい使い方をすれば副作用の心配は少ないです。
- 主な副作用は塗った場所に起こる局所的なものです。
- 皮膚が薄くなる、ニキビができるなどの可能性があります。
- 全身性の副作用は通常の使用では起こりにくいです。
- 塗る量の目安は「フィンガーチップユニット」です。
- 顔やまぶた、陰部への使用は特に注意が必要です。
- ニキビやヘルペスなどの感染症には使用できません。
- 自己判断で急にやめると症状がぶり返すことがあります。
- 症状が改善したら医師の指示で徐々に減らします。
- 市販薬を選ぶ際は薬剤師に相談することが大切です。
- 数日使っても効かない、悪化する場合は受診が必要です。
