定年退職後の再雇用や専門スキルを活かす働き方として注目される嘱託社員。しかし、「給料はどのくらいになるのだろう?」「手取り額はどう計算されるの?」といったお金に関する疑問は尽きないものです。
本記事では、嘱託社員の給料水準や手取り額の計算方法、正社員との違い、そして社会保険や税金といった控除の仕組みまで、詳しく解説します。あなたの疑問を解消し、安心して嘱託社員として働くための具体的な情報をお届けします。
嘱託社員の基本的な知識

嘱託社員という働き方は、近年ますます多様化する雇用形態の中で重要な位置を占めています。まずは、その定義や他の雇用形態との違いを理解し、嘱託社員としての働き方の全体像を把握しましょう。
嘱託社員とは?定義と特徴
嘱託社員とは、企業が特定の業務や期間を限定して雇用する人材を指すのが一般的です。法律上の明確な定義はありませんが、実務上は「有期雇用契約」を結び、経験やスキルを活かして企業に貢献する働き方として位置づけられています。
特に、定年退職後の社員を再雇用するケースや、高度な専門知識を持つ人材を特定のプロジェクトのために雇用する場合に多く見られます。 嘱託社員は、正社員と比較して契約期間が定められており、特定の業務に特化して働くことが多いのが特徴です。
正社員・契約社員・パートとの違い
嘱託社員は、他の雇用形態といくつかの点で異なります。正社員との最も大きな違いは、雇用の安定性です。正社員が無期雇用契約であるのに対し、嘱託社員は契約期間が定められた有期雇用契約となります。
契約社員も有期雇用ですが、嘱託社員は定年後の再雇用や専門職としての雇用が多い傾向にあります。 パート・アルバイトは短時間勤務が主ですが、嘱託社員はフルタイム勤務(常勤嘱託)の場合もあれば、短時間勤務(非常勤嘱託)の場合もあります。 企業によっては、嘱託社員を正社員に近い働き方として位置づけることもあり、その扱いは多岐にわたります。
嘱託社員の給料と手取り額の仕組み

嘱託社員として働く上で、最も気になるのが給料と手取り額でしょう。ここでは、正社員との給与水準の違いや、手取り額を計算する上で重要な社会保険料や税金について詳しく見ていきます。
正社員と嘱託社員の給料水準の違い
一般的に、嘱託社員の給料は正社員よりも低い傾向にあります。 厚生労働省の調査によると、嘱託社員を含む正社員以外の平均給与は、正社員の平均給与と比較して大幅に低い結果が出ています。 これは、定年後の再雇用の場合、役職や責任範囲が変更されることや、正社員時代に支給されていた各種手当(役職手当、家族手当、住宅手当など)や賞与がなくなる、または減額されることが主な要因です。
ただし、全ての嘱託社員の給料が下がるわけではなく、企業や個人の持つ能力、技術によっては正社員と変わらない給料で働いている人もいます。 特に、高度な専門性を求められる嘱託社員の場合、高待遇で迎えられるケースも珍しくありません。
給料が下がる主な理由
嘱託社員の給料が正社員時代よりも下がる主な理由は、雇用形態の変更に伴う給与体系の見直しにあります。多くの場合、正社員から嘱託社員へと切り替わる際に、基本給が大幅に減少する傾向が見られます。
また、役職や職務内容が変わり、それに伴い責任範囲が限定されることも給料が下がる要因です。 賞与や退職金、各種手当の支給がなくなる、あるいは制限されることも、年収全体を押し下げる大きな理由となります。 定年後の再雇用では、労働時間や勤務日数を柔軟に調整できるメリットがある一方で、その分給料が減少するケースも多くあります。
手取り額の計算方法と控除されるもの(社会保険料・税金)
嘱託社員の手取り額は、総支給額(額面給料)から社会保険料と税金が控除された金額です。具体的には、以下のものが給料から差し引かれます。
- 社会保険料:健康保険、厚生年金保険、雇用保険、介護保険(40歳以上の場合)
- 税金:所得税、住民税
これらの控除額は、給料の額や扶養家族の有無、居住地などによって異なります。例えば、社会保険料は給料の額に応じて決まり、給料が減少すれば社会保険料も減少する可能性があります。 所得税は、課税所得に応じて計算され、住民税は前年の所得に基づいて計算されます。
手取り額を正確に把握するためには、自身の給料明細を確認し、各項目がどのように計算されているかを理解することが大切です。
賞与・退職金の扱いは?
嘱託社員の場合、賞与(ボーナス)や退職金は、正社員とは異なる扱いになることがほとんどです。多くの企業では、嘱託社員に対して賞与を支給しないか、支給するとしても正社員に比べて少額になる傾向があります。
退職金についても、法律で支給が義務付けられているわけではなく、企業の就業規則や雇用契約の内容によって支給の有無や金額が決まります。 定年退職時に一度退職金が支給され、再雇用後の嘱託社員としての期間には退職金が支給されないケースも多く見られます。契約内容をしっかりと確認し、不明な点があれば企業に問い合わせることが重要です。
同一労働同一賃金の影響
2020年4月に施行された「同一労働同一賃金」の原則は、嘱託社員にも適用されます。これは、正社員と非正規雇用労働者との間で、業務内容や責任の程度が同じであれば、不合理な待遇差を解消するというものです。
つまり、「嘱託社員だから」という理由だけで、正社員と同程度の業務を行っているにもかかわらず、給料や福利厚生を低く抑えることは認められません。 ただし、定年後に再雇用された嘱託社員の場合、正社員時代よりも責任範囲が狭まったり、業務内容が限定されたりすることが多いため、その変更に応じた賃金の差は合理的なものとして認められるケースが多くあります。
企業は、正社員と嘱託社員の間に待遇差がある場合、その理由を明確に説明する義務があります。
嘱託社員の労働条件

給料だけでなく、嘱託社員として働く上では労働条件も重要な要素です。契約期間、労働時間、有給休暇、社会保険など、具体的な労働条件について理解を深めましょう。
契約期間と更新
嘱託社員の雇用契約は、期間が定められた有期雇用契約です。労働基準法により、1回の契約期間の上限は原則3年と定められています。ただし、高度な専門知識が必要な業務に携わる場合や、満60歳以上の労働者を再雇用する場合は、最長5年まで契約期間を延ばすことが可能です。
多くの場合、嘱託社員の契約は1年ごとに更新されることが一般的です。特に定年退職後の再雇用では、65歳までの雇用が継続されるケースが多く見られます。 契約更新の有無や基準については、雇用契約書や労働条件通知書に明記されているため、契約を結ぶ前にしっかりと確認することが大切です。
労働時間と休日
嘱託社員の労働時間や休日は、企業との契約内容によって柔軟に設定されることが多いです。正社員と同様にフルタイム(週40時間程度)で勤務する「常勤嘱託」もいれば、週2〜3日勤務や短時間勤務といった「非常勤嘱託」として働く人もいます。
自身のライフスタイルや体力に合わせて、労働日数や労働時間を調整しやすい点が、嘱託社員として働くメリットの一つです。 契約時に、具体的な労働時間、休憩時間、休日について企業と十分に話し合い、書面で確認するようにしましょう。
有給休暇の取り扱い
嘱託社員も、労働基準法に基づいて年次有給休暇が付与されます。雇入れから6ヶ月経過し、全労働日の8割以上出勤した場合に有給休暇が発生し、勤務日数に応じた日数が付与されます。
特に、定年退職後に間を置かずに同じ企業で嘱託社員として再雇用された場合は、正社員時代の勤続年数が通算されるため、再雇用後すぐに有給休暇が付与されることになります。 また、再雇用前の未消化有給休暇がある場合も、2年間の時効で消滅するまで消化する権利があります。 有給休暇は労働者の権利ですので、計画的に取得し、心身のリフレッシュに役立てましょう。
社会保険・労働保険の加入
嘱託社員も、一定の条件を満たせば社会保険(健康保険、厚生年金保険、介護保険)と労働保険(雇用保険、労災保険)に加入する義務があります。
具体的には、週の所定労働時間や月間の所定労働日数が正社員の4分の3以上である場合や、短時間労働者の要件を満たす場合に加入対象となります。 定年後に再雇用された嘱託社員であっても、これらの条件を満たせば原則として社会保険に加入し続けることになります。 社会保険に加入することで、病気や怪我、失業、老後の生活など、万が一の事態に備えることができます。
嘱託社員として働くメリット・デメリット

嘱託社員という働き方には、魅力的な点もあれば、注意すべき点もあります。メリットとデメリットを理解し、自身のキャリアプランやライフスタイルに合った選択をするための参考にしてください。
嘱託社員として働くメリット
嘱託社員として働くことには、いくつかのメリットがあります。
- 経験・スキルを活かせる:定年後も長年培ってきた知識や技術を活かして、慣れ親しんだ職場で働き続けることが可能です。
- 柔軟な働き方:労働時間や勤務日数を調整しやすく、自身の体力やライフスタイルに合わせた働き方が実現しやすいです。
- 責任範囲の限定:正社員に比べて責任範囲が限定されることが多く、精神的な重圧が少ないと感じる人もいます。
- 安定した収入:定年後も収入を得られるため、生活の安定につながります。
- 社会とのつながり:仕事を通じて社会とのつながりを維持し、充実感を得られます。
これらのメリットは、特に定年後のセカンドキャリアを考える上で大きな魅力となるでしょう。
嘱託社員として働くデメリット
一方で、嘱託社員にはデメリットも存在します。
- 給料水準の低下:正社員と比較して給料が低くなる傾向があり、賞与や退職金が支給されない、または減額されることが多いです。
- 雇用の不安定さ:有期雇用契約であるため、契約期間が満了すれば更新されない可能性があります。
- 福利厚生の制限:正社員が受けられる住宅手当や家族手当などの福利厚生が、嘱託社員には適用されないケースがあります。
- モチベーションの維持:正社員との待遇差により、モチベーションの低下を感じる可能性もあります。
これらのデメリットを理解した上で、自身の状況と照らし合わせ、慎重に働き方を検討することが大切です。
嘱託社員に関するよくある質問

嘱託社員の給料や手取りについて、多くの方が抱える疑問にお答えします。
嘱託社員の給料はどのくらい下がりますか?
定年後の再雇用で嘱託社員になった場合、給料は正社員時代の50%~70%程度に下がるのが一般的です。 これは、役職手当や家族手当などの各種手当がなくなることや、賞与が減額されることが主な理由です。ただし、企業や個人の業務内容、責任範囲によって変動するため、一概には言えません。
嘱託社員の年収はいくらですか?
嘱託社員を含む正社員以外の平均年収は、国税庁の調査によると約198万円(2021年)とされています。 しかし、これはあくまで平均値であり、勤務形態(常勤か非常勤か)、業務内容、企業の規模、個人のスキルによって大きく異なります。特に専門性の高い嘱託社員であれば、より高額な年収を得ることも可能です。
嘱託社員はボーナスありますか?
嘱託社員にボーナス(賞与)が支給されるかどうかは、企業の就業規則や雇用契約によって異なります。一般的には、正社員に比べて支給されないか、支給されても少額であるケースが多いです。 契約時に賞与の有無や支給基準について確認することが重要です。
嘱託社員は社会保険に入れますか?
はい、嘱託社員も一定の条件を満たせば社会保険(健康保険、厚生年金保険、雇用保険、介護保険)に加入できます。 具体的には、週の所定労働時間や月間の所定労働日数が正社員の4分の3以上である場合などが該当します。 定年後の再雇用であっても、これらの条件を満たせば社会保険の適用対象となります。
嘱託社員の給料から引かれるものは何ですか?
嘱託社員の給料から引かれるものは、正社員と同様に社会保険料(健康保険、厚生年金保険、雇用保険、介護保険)と税金(所得税、住民税)です。これらの控除額は、給料の額や扶養家族の状況などによって計算されます。手取り額を把握するためには、これらの控除額を総支給額から差し引く必要があります。
まとめ
- 嘱託社員は有期雇用契約で、定年後の再雇用や専門職で多く見られます。
- 嘱託社員の給料は正社員より低い傾向にあります。
- 給料が下がる主な理由は、責任範囲の変更や手当・賞与の減額です。
- 手取り額は総支給額から社会保険料と税金が控除されます。
- 社会保険料は給料額に応じて決まり、給料減で保険料も減る可能性があります。
- 賞与や退職金は支給されないか、正社員より少ないケースが多いです。
- 同一労働同一賃金が適用されますが、業務内容や責任の差は考慮されます。
- 契約期間は原則3年、特例で5年まで延長可能です。
- 労働時間や休日は柔軟に設定できることが多いです。
- 有給休暇は労働基準法に基づき付与され、再雇用では勤続年数が通算されます。
- 一定条件を満たせば社会保険・労働保険に加入義務があります。
- 働くメリットは経験活用、柔軟な働き方、責任範囲の限定などです。
- デメリットは給料水準の低下、雇用の不安定さ、福利厚生の制限などです。
- 定年後の再雇用では給料が正社員時代の50~70%になるのが一般的です。
- 嘱託社員の平均年収は約198万円ですが、個人差が大きいです。
