大切に育てているツツジの葉に、いつの間にか穴が開いていたり、白くカスリ状になっていたりしてお困りではありませんか?美しい花を咲かせるツツジが弱っていく姿を見るのは、とても辛いものですよね。その被害、もしかしたら害虫の仕業かもしれません。本記事では、ツツジの葉を食べる代表的な害虫の種類から、それぞれの駆除方法、さらには来年以降の被害を防ぐための予防策まで、詳しく解説します。あなたのツツジを害虫から守り、再び元気な姿を取り戻すためのお手伝いをさせてください。
まずは症状でチェック!あなたのツツジを食べている虫はどれ?

ツツジに被害を与える害虫は一種類ではありません。葉の被害状況によって、原因となっている害虫をある程度特定することができます。まずは、ご自宅のツツジの葉がどのような状態になっているか、じっくりと観察してみてください。以下の表を参考に、害虫の正体を突き止めましょう。
葉の症状 | 考えられる害虫 | 主な特徴 |
---|---|---|
葉の表面が白くカスリ状になり、裏に黒い点々がある | ツツジグンバイ | 葉の汁を吸う。葉裏にびっしりいることが多い。 |
葉が縁から食べられ、穴が開いたり、葉脈だけになったりする | ルリチュウレンジハバチ | 緑色に黒い斑点のあるイモムシ状の幼虫が集団で食害する。 |
新芽や花の蕾が茶色く枯れる、中に虫がいる | ベニモンアオリンガ | 「シンクイムシ」とも呼ばれ、新芽や花芽の内部に侵入する。 |
葉全体の色が薄くなり、元気がなくなる。葉裏にクモの巣のようなものがある | ハダニ | 非常に小さく肉眼では見えにくい。乾燥した環境で多発する。 |
いかがでしたでしょうか。害虫の目星がついたら、次はそれぞれの特徴と具体的な駆除方法について詳しく見ていきましょう。
ツツジの葉を食べる主な害虫4種と駆除方法

ここでは、ツツジに特に発生しやすい4種類の害虫について、その生態と効果的な駆除方法を解説します。それぞれの虫に合った対策を行うことが、被害を最小限に食い止めるコツです。
- 【吸汁系】葉が白くカスリ状になる「ツツジグンバイ」
- 【食害系】葉を丸ごと食べる「ルリチュウレンジハバチ」
- 【新芽・花芽キラー】蕾や新芽を枯らす「ベニモンアオリンガ(シンクイムシ)」
- 【微小な吸汁犯】葉色が悪くなる「ハダニ」
【吸汁系】葉が白くカスリ状になる「ツツジグンバイ」
葉の表面に白いカスリ状の斑点が広がり、美観を著しく損なうのがツツジグンバイの被害です。放置すると葉全体が真っ白になり、光合成ができなくなってツツジが弱ってしまいます。
特徴と被害
体長3~5mm程度の小さなカメムシの仲間で、翅の形が相撲の行司が持つ軍配に似ていることからこの名前がつきました。 幼虫・成虫ともに葉の裏にびっしりと寄生し、口針を刺して汁を吸います。 被害の最大の特徴は、葉の裏に排泄物による黒いヤニ状の斑点が無数に付着することです。 これがハダニの被害と見分ける重要なポイントになります。春から秋(4月~10月)にかけて、年に数回発生を繰り返します。
駆除方法
発生初期であれば、被害を受けた葉の裏を粘着テープなどで貼り付けて虫を取り除くか、手で潰すのが手軽です。しかし、数が多くなると手作業での駆除は困難になります。その場合は、薬剤散布が効果的です。
「オルトラン水和剤」や「スミチオン乳剤」といった殺虫剤を、葉の裏にまんべんなくかかるように散布してください。 ツツジグンバイは葉裏に隠れているため、表面にかけるだけでは効果が薄いので注意が必要です。一度の散布で駆除しきれない場合もあるため、10~15日後にもう一度散布するとより確実です。
【食害系】葉を丸ごと食べる「ルリチュウレンジハバチ」
ふと気づくと、ツツジの葉が縁からギザギザに食べられていたり、ひどい場合には葉脈だけを残して丸裸にされていたりしたら、それはルリチュウレンジハバチの幼虫の仕業です。
特徴と被害
成虫は黒く光沢のあるハチですが、直接的な害はありません。問題なのはその幼虫です。体長2cmほどの緑色の体に黒い斑点があるイモムシで、集団で発生し、驚くべき食欲でツツジの葉を食べ尽くします。 年に2~3回発生し、特に春から初夏にかけて被害が目立ちます。
駆除方法
幼虫は集団でいることが多いため、見つけ次第、枝ごと切り取って捕殺するのが最も確実で手っ取り早い方法です。虫が苦手でなければ、割り箸などで一匹ずつ捕まえてもよいでしょう。
広範囲に発生してしまった場合は、薬剤に頼るのが効率的です。「オルトラン水和剤」や「ベニカXファインスプレー」などが有効です。 幼虫が小さいうちに対処するほど効果が高いため、日頃から葉の裏などをよく観察し、早期発見に努めることが大切です。
【新芽・花芽キラー】蕾や新芽を枯らす「ベニモンアオリンガ(シンクイムシ)」
葉の被害は少ないのに、新しく出てきた芽や、楽しみにしていた花の蕾が茶色く枯れてしまう…。そんな症状が見られたら、ベニモンアオリンガの幼虫、通称「シンクイムシ」を疑いましょう。
特徴と被害
成虫は淡い緑色で赤い紋がある美しい蛾ですが、その幼虫はツツジにとって天敵です。 幼虫は新芽や花の蕾に小さな穴を開けて内部に侵入し、中を食い荒らしてしまいます。 被害を受けた芽や蕾は成長が止まり、やがて枯れてしまいます。特に夏以降に花芽が食べられると、翌年の花が咲かなくなってしまうという深刻な被害につながります。
駆除方法
この害虫は内部に潜んでいるため、外から薬剤をかけてもなかなか効果がありません。最も確実なのは、被害を受けて茶色く枯れた新芽や蕾を見つけ、内部にいる幼虫ごと摘み取って処分することです。
薬剤で対処する場合は、植物が成分を吸収し、内部の害虫にも効果を発揮する浸透移行性の殺虫剤がおすすめです。 「オルトラン粒剤」を株元に撒いたり、「オルトラン水和剤」を散布したりするのが効果的です。 花芽が形成される7月頃から秋にかけて、定期的に薬剤を使用することで被害を予防できます。
【微小な吸汁犯】葉色が悪くなる「ハダニ」
特定の食害痕はないのに、葉全体の色がなんとなく薄くなり、ツヤがなくなって元気がなさそうに見える場合、ハダニが発生している可能性があります。
特徴と被害
ハダニは体長0.5mm程度と非常に小さく、肉眼での確認は困難です。 昆虫ではなくクモの仲間で、高温で乾燥した環境を好むため、特に梅雨明けから夏にかけて被害が拡大します。 葉の裏に寄生して汁を吸い、被害が進むと葉緑素が抜けて白い斑点が無数に現れ、やがて葉全体が白っぽく変色します。 大量に発生すると、葉の裏に細かいクモの巣のような網を張ることもあります。
駆除方法
ハダニは水に弱いため、発生初期であれば、ホースなどで葉の裏に勢いよく水をかける「葉水」をこまめに行うことで、洗い流して数を減らすことができます。 これは乾燥を防ぐ効果もあり、予防にもつながります。
被害が広がってしまった場合は、薬剤が必要です。ハダニは殺虫剤への抵抗性がつきやすいため、一般的な殺虫剤が効きにくいことがあります。「コロマイト乳剤」や「ダニ太郎」といったハダニ専用の殺ダニ剤を使用するのが最も効果的です。薬剤を散布する際は、ハダニが潜む葉の裏にしっかりと薬液がかかるように丁寧に散布しましょう。
迷ったらコレ!ツツジの害虫駆除におすすめの殺虫剤3選

「どの薬剤を選べばいいか分からない」という方のために、様々な害虫に効果があり、家庭でも使いやすいおすすめの殺虫剤を3つご紹介します。それぞれの特徴を理解し、ご自身の状況に合わせて選んでみてください。
根から吸収して長く効く!「オルトラン粒剤」
住友化学園芸から販売されている「オルトラン粒剤」は、株元にパラパラと撒くだけで使える手軽さが魅力です。 この薬剤は「浸透移行性」といって、有効成分が根から吸収されて植物全体に行き渡ります。 そのため、葉の裏や新芽の中に隠れている害虫にも効果を発揮し、約1ヶ月間、予防効果が持続します。 ツツジグンバイやベニモンアオリンガなど、直接薬剤をかけにくい害虫の駆除・予防に最適です。
広範囲の害虫に速攻!「スミチオン乳剤」
「スミチオン乳剤」も住友化学園芸の製品で、古くから家庭園芸で愛用されている代表的な殺虫剤です。 水で薄めて噴霧器などで散布します。この薬剤の強みは、速効性と幅広い害虫への効果です。 ルリチュウレンジハバチの幼虫など、目に見える害虫をすぐに退治したい場合に非常に有効です。ただし、効果の持続性はオルトランほど長くないため、害虫の発生が見られた都度、散布する必要があります。
病気も一緒に防ぐスプレータイプ「ベニカXファインスプレー」
「虫だけでなく、病気も気になる」という方には、同じく住友化学園芸の「ベニカXファインスプレー」がおすすめです。 この製品は、殺虫成分と殺菌成分が両方含まれているため、ツツジに発生しやすい害虫(アブラムシ、グンバイムシ、ケムシなど)と、うどんこ病や黒星病といった病気を同時に防除できます。 スプレータイプなので、薄める手間なく、気になった時にすぐに使える手軽さも人気の理由です。
薬剤散布の基本と注意点
薬剤を使用する際は、必ず商品のラベルに記載されている使用方法、希釈倍率、使用回数を守ってください。散布は、風のない穏やかな日の早朝か夕方に行うのが基本です。日中の高温時に散布すると、薬害(植物が傷むこと)の原因になることがあります。また、薬剤が葉の裏までしっかりかかるように、下からも丁寧に散布することが効果を高めるコツです。
来年は被害に遭わない!害虫を寄せ付けないための予防管理術

一度害虫が発生すると、駆除には手間と時間がかかります。最も大切なのは、そもそも害虫を発生させない、増やさない環境を作ることです。日頃のちょっとした心がけで、ツツジを害虫から守ることができます。
最重要!剪定で風通しと日当たりを確保する
害虫の多くは、風通しが悪く、湿気がこもる場所を好みます。 枝や葉が密集していると、害虫にとって格好の隠れ家となり、繁殖しやすくなります。また、葉の裏にいる害虫を発見しにくくなるというデメリットもあります。
ツツジの剪定は、花が終わった直後(5月~6月頃)が適期です。 この時期に、混み合った枝や内側に向かって伸びる枝を切り落とし、株全体の風通しと日当たりを良くしてあげましょう。これだけで、害虫の発生を大幅に抑制することができます。
毎日の観察で早期発見・早期駆除
どんな対策をしても、害虫の発生を100%防ぐことは難しいものです。そこで重要になるのが、早期発見・早期駆除です。水やりのついでに、葉の表だけでなく、葉の裏もしっかりと観察する習慣をつけましょう。
「葉の色が少しおかしいな」「黒い点々があるな」といった小さな異変にいち早く気づくことができれば、被害が広がる前に手で取り除くなどの対処が可能です。数匹のうちに駆除できれば、大掛かりな薬剤散布も必要ありません。
予防消毒のベストタイミングは?
毎年のように特定の害虫に悩まされている場合は、発生時期の少し前に予防的に薬剤を散布するのが効果的です。 例えば、ツツジグンバイは春(3月~5月)から活動を始めるため、この時期にオルトラン粒剤を株元に撒いておくと、発生を抑えることができます。
害虫の種類によって活動時期は異なりますが、多くの害虫が活発になる春先(3月~5月)と、夏の間に増えた害虫が目立つ初秋(9月頃)の2回、殺虫剤を散布しておくと、年間の被害を大きく減らすことができるでしょう。
ツツジの害虫駆除に関するよくある質問

Q. 薬剤を使わずに虫を駆除する方法はありますか?
はい、あります。まず基本となるのは、虫を見つけ次第、手や割り箸で捕殺することです。ハダニに対しては、定期的に葉の裏に水をかける「葉水」が有効です。また、木酢液や牛乳を水で薄めたものをスプレーすると、害虫を寄せ付けにくくする効果が期待できると言われていますが、効果は薬剤ほど確実ではありません。被害が少ないうちの補助的な対策と考えるのが良いでしょう。
Q. ツツジの葉が黒いすすで汚れているのはなぜですか?
葉が黒いすすで覆われたようになるのは、「すす病」という病気の可能性が高いです。これは、カビの一種が原因ですが、直接ツツジに発生するわけではありません。アブラムシやカイガラムシ、ツツジグンバイなどの害虫が出す甘い排泄物を栄養源にして、カビが繁殖することで起こります。 つまり、すす病を見つけたら、その原因となっている害虫がどこかにいる証拠です。まずは原因害虫の駆除を行いましょう。
Q. 毒のある毛虫(チャドクガ)はツツジにも発生しますか?
チャドクガは主にツバキやサザンカに発生する害虫ですが、ツツジに発生することも稀にあります。 チャドクガの幼虫(毛虫)は毒針毛を持っており、触れると激しいかゆみや皮膚炎を引き起こすため、絶対に素手で触らないでください。もし見つけた場合は、枝ごと切り取って袋に入れて処分するか、専用の殺虫剤で駆除してください。
Q. 駆除した後のツツジの手入れはどうすればいいですか?
害虫を駆除した後は、まず被害を受けた葉や枝をきれいに取り除きましょう。その後は、ツツジが体力を回復できるように、適切な水やりと施肥を行います。特に、花が終わった後のお礼肥(おれいごえ)は、来年の花つきを良くするためにも重要です。風通しを良くするための剪定も忘れずに行い、再び害虫の被害に遭わないように管理を続けていきましょう。
まとめ

- ツツジの葉の被害は、症状から原因害虫を特定できる。
- 葉が白くカスリ状なら「ツツジグンバイ」の可能性大。
- 葉が食べられて穴が開くのは「ルリチュウレンジハバチ」。
- 新芽や蕾が枯れるのは「ベニモンアオリンガ」の仕業。
- 葉色が悪く元気がない場合は「ハダニ」を疑う。
- ツツジグンバイの駆除は葉裏への薬剤散布が重要。
- ルリチュウレンジハバチの幼虫は集団でいるので捕殺が効果的。
- ベニモンアオリンガには浸透移行性殺虫剤が有効。
- ハダニ対策は「葉水」と専用の殺ダニ剤が基本。
- おすすめの薬剤は「オルトラン」「スミチオン」「ベニカX」。
- 薬剤は使用方法を守り、風のない日に散布する。
- 害虫予防の基本は、剪定による風通しの確保。
- 花後の剪定は害虫の住処を減らすのに役立つ。
- 日々の観察で害虫を早期発見・早期駆除することが大切。
- 春と秋の予防的な薬剤散布も被害軽減に繋がる。