大切に育てている野菜や花の葉が、ある日突然穴だらけに…そんな悲しい経験はありませんか?もしかしたら、その犯人は夜行性の食害虫「ヨトウムシ」かもしれません。本記事では、そんな厄介なヨトウムシ対策の定番農薬「オルトラン」に焦点を当て、その効果的な使い方から、万が一効かなかった場合の対処法まで、詳しく解説していきます。この記事を読めば、あなたもヨトウムシ対策の専門家になれるはずです。
神出鬼没の食害犯!まずはヨトウムシの正体を知ろう

敵を知ることが、勝利への第一歩です。まずは、私たちの家庭菜園やガーデンを脅かすヨトウムシが、一体どのような虫なのかを詳しく見ていきましょう。その生態や被害の特徴を理解することで、より効果的な対策を立てることができます。
この章では、以下の点について解説します。
- 夜に活動する厄介な害虫「ヨトウムシ」とは?
- ヨトウムシの被害事例と見つけ方
- ヨトウムシの種類と発生時期
夜に活動する厄介な害虫「ヨトウムシ」とは?
ヨトウムシ(夜盗虫)とは、その名の通り夜の間に活動し、植物の葉や茎、果実などを食い荒らす蛾の幼虫の総称です。昼間は土の中や株元に隠れているため、被害に気づいても犯人の姿が見当たらないことが多く、非常に厄介な存在として知られています。
成虫である「ヨトウガ」が植物の葉の裏などに卵を産み付け、そこから孵化した幼虫が食害を引き起こします。特に若い幼虫は集団で行動し、葉脈を残して葉を網目状に食い尽くすこともあります。成長するにつれて食欲は旺盛になり、分散して行動範囲を広げるため、被害はあっという間に拡大してしまうのです。
ヨトウムシの被害事例と見つけ方
ヨトウムシの被害は、葉に開いた不規則な形の穴が最も分かりやすいサインです。キャベツやハクサイなどの結球野菜では、外葉だけでなく内部にまで侵入して食害することもあり、収穫間近の野菜が台無しにされてしまうケースも少なくありません。また、トマトやナスの果実、トウモロコシの穂先なども好んで食害します。
昼間にヨトウムシを見つけるのは少し難しいですが、不可能ではありません。株元周辺の土を軽く掘り返してみると、丸まった幼虫が見つかることがあります。また、株の周りに黒いフン(糞)が落ちていないか確認するのも有効な方法です。フンがあれば、その近くにヨトウムシが潜んでいる可能性が非常に高いと言えるでしょう。夜間に懐中電灯を持って見回り、食事中のヨトウムシを直接捕殺するのも確実な方法の一つです。
ヨトウムシの種類と発生時期
一般的に「ヨトウムシ」と呼ばれていますが、実はいくつかの種類が存在します。代表的なのは「ヨトウガ」の幼虫ですが、他にも「ハスモンヨトウ」や「シロイチモジヨトウ」などが知られています。これらは食性や形態が似ていますが、発生時期や薬剤への感受性が若干異なる場合があります。
ヨトウムシの発生時期は、主に春(4月~6月)と秋(9月~11月)の年2回がピークです。特に気温が20℃前後になる過ごしやすい季節は、ヨトウムシにとっても活動しやすい環境となります。成虫の蛾は光に集まる習性があるため、夜間に明かりがついている場所に飛来し、近くの植物に産卵することが多いです。この発生時期を頭に入れておき、予防や早期発見に努めることが被害を最小限に抑えるコツです。
ヨトウムシ対策の定番!オルトランはなぜ効くのか?

数ある殺虫剤の中でも、なぜ「オルトラン」はヨトウムシ対策の定番として長年愛用されているのでしょうか。その秘密は、オルトランならではの有効成分と作用の仕組みにあります。ここでは、オルトランがヨトウムシに対して高い効果を発揮する理由を深掘りしていきます。
この章では、以下の点について解説します。
- オルトランの有効成分と作用の仕組み
- 浸透移行性で隠れたヨトウムシも逃さない
- オルトランの強みと弱み
オルトランの有効成分と作用の仕組み
オルトランの主な有効成分は「アセフェート」です。このアセフェートは、害虫の神経伝達を阻害する作用を持っています。具体的には、神経の興奮を伝えるアセチルコリンという物質の分解を妨げることで、神経を異常に興奮させ続けます。その結果、害虫は痙攣(けいれん)を起こし、最終的には麻痺して死に至るのです。
この作用は、害虫が薬剤に直接触れること(接触毒)でも、薬剤が付着した葉を食べること(食毒)でも効果を発揮します。そのため、薬剤散布時に虫に直接かからなくても、後からやってきて葉を食べたヨトウムシを駆除することが可能です。
浸透移行性で隠れたヨトウムシも逃さない
オルトランの最大の特徴であり、強みとも言えるのが「浸透移行性」です。浸透移行性とは、薬剤が植物の葉や根から吸収され、植物体内を巡る性質のことを指します。
これにより、薬剤が直接かからなかった葉の裏や、新しく展開してきた若い葉にも殺虫成分が行き渡ります。昼間は土の中に隠れ、夜間に活動するヨトウムシにとって、植物全体が毒を持つようになるこの性質は非常に効果的です。どこを食べても殺虫成分に当たってしまうため、隠れているヨトウムシも逃さず駆除することができるのです。特に、粒剤を株元にまく方法は、この浸透移行性を最大限に活かした使い方と言えるでしょう。
オルトランの強みと弱み
オルトランの強みをまとめると、以下のようになります。
- 浸透移行性による高い効果: 隠れた害虫や、散布後に発生した害虫にも効果がある。
- 効果の持続性: 特に粒剤は、土壌中でゆっくりと溶け出し、長期間効果が続く。
- 幅広い殺虫スペクトラム: ヨトウムシだけでなく、アブラムシやアオムシなど、多くの害虫に効果を示す。
一方で、弱みや注意点も存在します。
- 特有の匂い: アセフェートには独特の匂いがあり、気になる方もいます。住宅密集地での使用には配慮が必要です。
- 効果発現までの時間: 浸透移行性の薬剤は、植物が成分を吸収してから効果を発揮するため、即効性の高い接触剤に比べると効果が出るまでに少し時間がかかる場合があります。
- ミツバチなどへの影響: ミツバチなどの有益な昆虫にも影響を与える可能性があるため、開花時期の使用には注意が必要です。
これらの強みと弱みを理解した上で、適切な場面で正しく使用することが、オルトランを最大限に活用する鍵となります。
【写真で解説】ヨトウムシに効くオルトランの正しい使い方

オルトランの効果を最大限に引き出すためには、正しい使い方をマスターすることが不可欠です。オルトランには、手軽に使える「粒剤」と、水で薄めて使う「水和剤」の2種類があります。それぞれの特徴を理解し、状況に応じて使い分けることが大切です。
この章では、以下の点について解説します。
- 手軽で効果が長持ち!オルトラン粒剤の使い方
- 即効性が魅力!オルトラン水和剤の使い方
- どちらを選ぶ?粒剤と水和剤の使い分け
手軽で効果が長持ち!オルトラン粒剤の使い方
オルトラン粒剤は、土にまくだけで効果が持続するため、特に植え付け時や生育初期の予防に適しています。
- 準備するもの: オルトラン粒剤、手袋、計量スプーン(製品に付属している場合もあります)
- 使用量を確認: 製品のラベルに記載されている、対象作物ごとの使用量を必ず確認します。多すぎても少なすぎても適切な効果は得られません。
- 散布方法:
- 植え付け時: 植え穴の底に規定量をまき、土と軽く混ぜてから苗を植え付けます。根が直接薬剤に触れることで、効率よく成分が吸収されます。
- 生育途中: 株元に均一に散布します。薬剤が株の周りに円を描くようにまかれている状態が理想です。
- 散布後: 軽く土と混ぜ込むか、水やりをすることで、薬剤が土壌に馴染み、根から吸収されやすくなります。
粒剤の最大のメリットは、一度まけば効果が約3~4週間持続する点です。手間をかけずに長期間の予防効果を得たい場合に非常に便利です。
即効性が魅力!オルトラン水和剤の使い方
すでにヨトウムシが発生してしまい、すぐにでも駆除したい場合には、オルトラン水和剤がおすすめです。葉や茎に直接散布するため、粒剤よりも早く効果が現れます。
- 準備するもの: オルトラン水和剤、手袋、マスク、保護メガネ、計量スプーン、噴霧器(スプレーヤー)、水
- 希釈液を作る: 製品ラベルに記載された希釈倍率(例: 1000倍)に従い、正確に水で薄めます。まず少量の水で薬剤をよく溶かしてから、残りの水を加えるとダマになりにくいです。
- 散布方法:
- 風のない天気の良い日を選び、朝夕の涼しい時間帯に散布します。
- ヨトウムシが潜んでいる可能性が高い葉の裏や株元を中心に、植物全体がしっとりと濡れるくらいたっぷりと散布します。
- 散布後の注意: 散布後、少なくとも数時間は雨が降らない日を選びましょう。雨で薬剤が流されてしまうと効果が薄れてしまいます。
水和剤は、接触毒と食毒の両方の効果で、今いるヨトウムシを素早く退治したい場合に最適です。
どちらを選ぶ?粒剤と水和剤の使い分け
粒剤と水和剤、どちらを使えば良いか迷う方もいるかもしれません。以下に使い分けの目安をまとめました。
種類 | おすすめの場面 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
オルトラン粒剤 | 植え付け時、生育初期の予防 | 効果が長持ち、手間が少ない | 効果発現が遅め、すでにいる虫への即効性は低い |
オルトラン水和剤 | すでに害虫が発生している時 | 即効性が高い、ピンポイントで狙える | 希釈の手間がかかる、効果の持続期間が短い |
基本的には、「予防には粒剤、駆除には水和剤」と覚えておくと良いでしょう。植え付け時に粒剤をまいて予防し、それでもヨトウムシが発生してしまった場合には水和剤で対処する、という組み合わせが最も効果的です。
オルトランを安全に使うための重要ポイント

オルトランは非常に効果的な農薬ですが、その力を正しく、そして安全に利用するためには、守るべきいくつかの重要なポイントがあります。これらを怠ると、効果が十分に得られないだけでなく、作物や人体、環境に悪影響を及ぼす可能性も否定できません。
この章では、以下の点について解説します。
- 使用前に必ずラベルを確認!適用作物と使用回数
- 散布時の服装と注意点
- 収穫前使用日数(散布から収穫までの期間)を守ろう
使用前に必ずラベルを確認!適用作物と使用回数
オルトランを使用する上で、最も重要なのが製品ラベルの確認です。ラベルには、その薬剤が使用できる作物(適用作物)、希釈倍率、使用時期、そして総使用回数が明記されています。
例えば、トマトには使えてもキュウリには使えない、といったケースがあります。登録されていない作物に使用することは法律で禁止されています。また、「収穫7日前まで」「3回以内」といった使用時期や回数の制限も、安全な作物を収穫するために設けられた大切なルールです。自分の育てている作物が適用作物に含まれているか、そして使用回数の上限を超えていないかを、使用するたびに必ず確認する習慣をつけましょう。
散布時の服装と注意点
農薬を扱う際は、薬剤を吸い込んだり、皮膚に付着したりするのを防ぐために、適切な服装を心がけることが大切です。特に水和剤を散布する際には、以下の装備を推奨します。
- 農薬用マスク: 薬剤の粒子を吸い込むのを防ぎます。
- 保護メガネ: 薬剤が目に入るのを防ぎます。
- ゴム手袋: 薬剤が直接皮膚に触れるのを防ぎます。
- 長袖・長ズボン: 肌の露出をできるだけ少なくします。
また、散布作業は風上から風下に向かって行い、薬剤が自分にかからないように注意してください。風の強い日には散布を避けましょう。散布後は、手や顔を石鹸でよく洗い、うがいをすることも忘れないでください。
収穫前使用日数(散布から収穫までの期間)を守ろう
ラベルに記載されている「収穫前日数」は、安全性を確保するための非常に重要な項目です。これは、最後に農薬を散布してから、その作物を収穫して食べられるようになるまでに必要な最低限の期間を示しています。
オルトランのような浸透移行性の薬剤は、散布後に植物内に成分が残留します。この残留農薬が、時間の経過とともに分解され、人が食べても安全な基準値以下になるまでの期間が「収穫前日数」です。例えば「収穫7日前まで」と記載があれば、収穫予定日から逆算して、少なくとも7日間は散布を控える必要があります。このルールを破ると、基準値を超える農薬が残留した作物を収穫してしまう恐れがあります。安全で美味しい野菜を収穫するためにも、この日数は絶対に守りましょう。
「オルトランが効かない…」そんな時の原因と対処法

「説明通りにオルトランを使ったのに、ヨトウムシが全然減らない!」そんな経験をすると、がっかりしてしまいますよね。しかし、諦めるのはまだ早いです。オルトランが効かないのには、いくつかの原因が考えられます。原因を正しく突き止め、適切に対処しましょう。
この章では、以下の点について解説します。
- 原因1:ヨトウムシが大きくなりすぎている
- 原因2:薬剤抵抗性がついている
- 原因3:使い方が間違っている
- オルトラン以外の有効な殺虫剤
原因1:ヨトウムシが大きくなりすぎている
オルトランが効かない最も一般的な原因の一つが、ヨトウムシが成長しすぎていることです。一般的に、農薬は害虫の齢期(幼虫の成長段階)が若いほど効果が高く、大きく成長した老齢幼虫になるほど効きにくくなる傾向があります。
特に体長が3cmを超えるような大きなヨトウムシは、薬剤に対する抵抗力も強くなっています。もし大きなヨトウムシを多数見かける場合は、薬剤だけに頼るのではなく、夜間の捕殺と併用するのが効果的です。割り箸などで捕まえて駆除し、残った個体や若い幼虫に対してオルトランを使用することで、より確実な効果が期待できます。早期発見、早期防除がいかに重要かが分かります。
原因2:薬剤抵抗性がついている
同じ系統の薬剤を同じ場所で長年使い続けていると、その薬剤が効きにくい、あるいは全く効かない「薬剤抵抗性」を持った害虫が現れることがあります。これは、偶然生き残った抵抗性のある個体が子孫を増やし、世代を重ねるうちにその地域全体の個体が抵抗性を持ってしまう現象です。
もし、正しい使い方をしているにも関わらず、若い幼虫にさえ効果が見られない場合は、薬剤抵抗性を疑う必要があります。この場合の対策は、作用性の異なる他の薬剤に切り替えることです。オルトラン(有効成分: アセフェート)は「IRACコード 1B」に分類されます。これとは異なる系統の薬剤、例えばBT剤(微生物殺虫剤)や、合成ピレスロイド系、ジアミド系の殺虫剤などをローテーションで使用することで、抵抗性の発達を防ぎ、効果的な防除を続けることができます。
原因3:使い方が間違っている
意外と多いのが、使用方法の誤りです。効果が出ないと感じたら、もう一度基本に立ち返ってみましょう。
- 希釈倍率が間違っている: 水和剤を薄めすぎていませんか? 規定よりも薄いと、十分な効果が得られません。
- 散布量が足りない: 葉の裏や株元など、害虫が潜む場所に薬剤が届いていますか? 散布は「たっぷり、ムラなく」が基本です。
- 散布のタイミングが悪い: 散布直後に雨が降って、薬剤が流されていませんか?
- 粒剤が土に馴染んでいない: 粒剤をまいた後、水やりをしましたか? 根から吸収させるためには、水分が必要です。
製品ラベルをもう一度よく読み返し、自分の使い方が正しかったかを確認することが、解決への近道です。
オルトラン以外の有効な殺虫剤
薬剤抵抗性や、使用場面に応じてオルトラン以外の選択肢も持っておくことは重要です。ヨトウムシに効果のある代表的な殺虫剤をいくつか紹介します。
薬剤名(例) | 系統・有効成分 | 特徴 |
---|---|---|
ベニカXファインスプレー | 混合剤(クロチアニジン等) | 病気と害虫に同時に効く。速効性と持続性を両立。 |
プレバソンフロアブル5 | ジアミド系 | チョウ目害虫に高い効果。効果の持続期間が長い。 |
ゼンターリ顆粒水和剤 | BT剤(微生物殺虫剤) | チョウ目害虫に選択的に効く。環境への影響が少ない。 |
これらの薬剤をオルトランとローテーションで使用することで、薬剤抵抗性のリスクを低減させることができます。薬剤を選ぶ際は、必ず適用作物を確認してください。
もうヨトウムシに悩まない!発生させないための予防策

ヨトウムシの被害に遭ってから対処するのも大切ですが、それ以上に重要なのが「そもそも発生させない」ための予防策です。日頃のちょっとした工夫で、ヨトウムシが寄り付きにくい環境を作ることは十分に可能です。薬剤だけに頼らない、総合的な防除を目指しましょう。
この章では、以下の点について解説します。
- 物理的にシャットアウト!防虫ネットの活用
- 成虫を寄せ付けない!コンパニオンプランツ
- 土作りで健康な野菜を育てる
- 早期発見・早期駆除の徹底
物理的にシャットアウト!防虫ネットの活用
最も確実で、農薬を使わない予防法のひとつが防虫ネットの利用です。成虫であるヨトウガが飛来して葉に卵を産み付けるのを物理的に防ぐことができます。
ポイントは、ネットの目合いのサイズです。ヨトウガの侵入を防ぐには、1mm以下の目合いのネットを選ぶのがおすすめです。また、ネットをかける際は、支柱を使ってトンネル状にし、ネットが直接作物に触れないように注意しましょう。葉にネットが触れていると、その上から産卵されてしまうことがあります。さらに、ネットの裾に隙間ができないよう、土で埋めたり、専用のピンでしっかりと固定したりすることが重要です。植え付け直後から収穫まで、しっかりと覆っておくことで、ヨトウムシだけでなく、アオムシやコナガなどの被害も同時に防ぐことができます。
成虫を寄せ付けない!コンパニオンプランツ
コンパニオンプランツとは、一緒に植えることで互いに良い影響を与え合う植物のことです。中には、特定の害虫を遠ざける効果を持つものがあります。
ヨトウガが嫌う匂いを放つとされるキク科の植物(マリーゴールド、レタスなど)や、セリ科の植物(ニンジン、パセリ、セロリなど)を、守りたい野菜の近くに植えることで、産卵のために飛来する成虫を減らす効果が期待できます。例えば、キャベツの株間にレタスを植えたり、トマトの畝の端にマリーゴールドを植えたりするのが良いでしょう。ただし、これだけで完全に防げるわけではないため、他の予防策と組み合わせることが大切です。見た目も華やかになり、一石二鳥の方法です。
土作りで健康な野菜を育てる
ヨトウムシは、昼間は土の中に潜み、蛹(さなぎ)の状態で越冬することがあります。そのため、植え付け前の土作りが予防において非常に重要になります。
畑を深く耕す「天地返し」を行うことで、土の中にいる幼虫や蛹を地表にさらし、鳥に食べられたり、寒さや乾燥で死滅させたりする効果があります。また、堆肥などの有機物をしっかりと施し、水はけと水持ちの良いふかふかの土を作ることも大切です。健康な土で育った野菜は、病害虫に対する抵抗力も強くなります。丈夫な野菜を育てること自体が、最高の予防策と言えるでしょう。
早期発見・早期駆除の徹底
どんなに予防策を講じても、害虫の侵入を100%防ぐことは難しいものです。そこで重要になるのが、日々の観察による早期発見と早期駆除です。
毎日の水やりの際に、葉の裏や株元をチェックする習慣をつけましょう。葉に不審な穴が開いていないか、黒いフンが落ちていないか、卵の塊が産み付けられていないかなどを確認します。孵化したばかりの若い幼虫は集団でいることが多いため、この段階で葉ごと取り除いてしまえば、被害の拡大を最小限に食い止めることができます。見つけ次第、捕殺する。この地道な作業が、結果的に農薬の使用量を減らすことにも繋がるのです。
よくある質問

オルトランはどんな野菜や花に使えますか?
オルトランは多くの作物に登録がありますが、製品(粒剤、水和剤)や作物の種類によって使用できるかどうかが異なります。例えば、オルトラン粒剤はキャベツ、はくさい、きゅうり、なす、トマト、ピーマンなどの野菜や、きく、カーネーション、ばらなどの花き類に使用できます。一方で、オルトラン水和剤はさらに多くの作物に使用可能です。必ず使用前に製品のラベルに記載されている「適用作物名」を確認してください。登録のない作物への使用は法律で禁止されています。
オルトラン粒剤をまいた後、水やりは必要ですか?
はい、水やりをすることをおすすめします。オルトラン粒剤は、土壌の水分によって有効成分が溶け出し、根から吸収されることで効果を発揮する「浸透移行性」の薬剤です。そのため、散布後に水やりをすることで、薬剤が土によく馴染み、根からの吸収を助ける効果が期待できます。特に土が乾燥している場合は、散布後に軽く水やりを行うと良いでしょう。
オルトランの効果はどのくらい続きますか?
効果の持続期間は、製品の種類や環境条件によって異なります。一般的に、オルトラン粒剤は効果の持続性が高く、土にまいてから約3~4週間効果が続きます。一方、オルトラン水和剤は即効性に優れますが、持続期間は粒剤よりも短く、雨などによっても効果が薄れやすいため、害虫の発生状況を見ながら追加で散布が必要になる場合があります。
オルトランは雨に濡れても効果がありますか?
散布後の雨は、オルトランの効果に影響を与える可能性があります。オルトラン水和剤を散布した直後に雨が降ると、薬剤が葉や茎から洗い流されてしまい、効果が著しく低下します。そのため、散布は晴天が続きそうな日を選んで行うのが基本です。一方、オルトラン粒剤の場合は、土にまくタイプなので雨の影響は水和剤ほど大きくありません。むしろ、適度な雨は成分が土に溶け出すのを助ける側面もありますが、豪雨で土ごと流されてしまうと効果は期待できません。
ヨトウムシに木酢液は効果がありますか?
木酢液は、害虫忌避(きひ)効果や土壌改良効果が期待できる資材として知られています。木酢液の独特の燻製のような匂いを害虫が嫌い、寄り付きにくくする効果があるとされています。しかし、オルトランのような殺虫剤とは異なり、直接的な殺虫効果はほとんどありません。あくまで予防的な「忌避剤」としての使用が主となります。定期的に散布することでヨトウガが産卵しにくい環境を作る助けにはなるかもしれませんが、すでに発生してしまったヨトウムシを駆除する力は弱いため、殺虫剤との併用や、捕殺などの物理的防除と組み合わせるのが現実的です。
オルトランの匂いが気になるのですが…
オルトランの有効成分アセフェートには、特有のニンニクのような匂いがあります。この匂いが苦手な方や、住宅密集地で使用する際に気になる方もいるでしょう。匂いを軽減するための直接的な方法はありませんが、風向きを考えて散布する、早朝など近隣への影響が少ない時間帯を選ぶなどの配慮が大切です。また、どうしても匂いが気になる場合は、オルトランとは異なる系統の無臭または低臭性の殺虫剤(例えば、一部のネオニコチノイド系やジアミド系の薬剤)を選択するのも一つの方法です。
まとめ

- ヨトウムシは夜間に活動する蛾の幼虫。
- 葉や果実を食害し、被害を拡大させる。
- オルトランは浸透移行性で隠れた虫にも効く。
- 有効成分アセフェートが神経を麻痺させる。
- 予防には効果が長持ちする「粒剤」がおすすめ。
- 駆除には即効性のある「水和剤」が適している。
- 使用前には必ずラベルで適用作物を確認する。
- 使用回数や収穫前日数を厳守することが重要。
- 散布時はマスクや手袋で体を保護する。
- 大きな幼虫には薬が効きにくいことがある。
- 効かない場合は薬剤抵抗性の可能性も考慮する。
- 作用性の違う薬とのローテーションが有効。
- 防虫ネットは物理的防除の基本。
- コンパニオンプランツで成虫を遠ざける。
- 日々の観察で早期発見・早期駆除を心がける。