大切に育てているミモザの枝に、白いふわふわした綿のようなものや、茶色いブツブツがびっしり…。その光景に、ショックと不安を感じていませんか?その正体は、植物の汁を吸って弱らせてしまう害虫「カイガラムシ」かもしれません。放置すると、ミモザが枯れてしまうだけでなく、見た目も悪くなる「すす病」の原因にもなります。でも、安心してください。この記事を読めば、カイガラムシの正体から、今すぐできる駆除方法、そして二度と発生させないための予防策まで、全てを理解できます。あなたの大切なミモザを、害虫から守り抜きましょう。
ミモザを襲うカイガラムシの正体と被害

まず、敵の正体を知ることから始めましょう。カイガラムシは非常に種類が多く、見た目も様々です。ミモザに発生しやすいカイガラムシの特徴と、放置した場合に起こる恐ろしい被害について解説します。早期発見が、ミモザを守るための第一歩です。
- カイガラムシとはどんな虫?
- ミモザに発生しやすいカイガラムシの種類
- 放置は危険!カイガラムシが引き起こす被害
カイガラムシとはどんな虫?
カイガラムシは、カメムシやアブラムシの仲間で、植物の汁を吸って生きる小さな昆虫です。 その大きさは種類によって異なり、2mmから10mmほどのものが多く見られます。 名前の通り、成虫になると体からロウ物質などを分泌し、貝殻のように硬い殻や白い綿のようなもので体を覆うのが大きな特徴です。この殻が鎧の役割を果たし、多くの殺虫剤が効きにくくなるため、駆除が非常に厄介な害虫として知られています。
繁殖力が非常に高く、特に5月から8月にかけて活動が活発になります。 卵や幼虫は非常に小さく、風に乗って飛んできたり、購入した苗木に付着していたり、人の衣服について運ばれたりして、いつの間にか庭木に侵入していることが多いです。
ミモザに発生しやすいカイガラムシの種類
ミモザには、特に「イセリアカイガラムシ」という種類が発生しやすいことで知られています。 このカイガラムシは、白い綿で覆われたような見た目をしており、枝や幹にびっしりと群生することがあります。 見た目はふわふわしていますが、これも立派なカイガラムシの一種です。
他にも、茶色く丸い形をした「カタカイガラムシ類」なども発生することがあります。 いずれの種類も、ミモザの樹液を吸って生育に悪影響を及ぼす点では同じです。枝に白い綿や茶色い点々を見つけたら、カイガラムシの発生を疑いましょう。
放置は危険!カイガラムシが引き起こす被害
カイガラムシの被害は、単に樹液を吸われるだけではありません。放置すると、様々な二次被害を引き起こし、最悪の場合ミモザを枯らしてしまいます。
主な被害は「すす病」です。 カイガラムシの排泄物は糖分を多く含んでおり、これを栄養源として黒いカビ(すす病菌)が繁殖します。 葉や枝が黒いすすで覆われたようになり、光合成が妨げられて生育が悪くなるだけでなく、見た目も非常に悪くなります。
また、排泄物の甘い匂いに誘われてアリが集まってくることもあります。 アリはカイガラムシの天敵を追い払ってしまうため、さらにカイガラムシが繁殖しやすい環境を作ってしまうのです。被害が広がると、枝全体が弱り、花が咲かなくなったり、葉が落ちたりして、最終的には木全体が枯れてしまうこともあります。
【緊急対策】ミモザのカイガラムシ、今すぐできる駆除方法

カイガラムシを見つけたら、一刻も早い駆除が必要です。ここでは、発生状況に合わせて選べる3つの駆除方法を紹介します。数が少ないうちなら、薬剤を使わずに手軽に駆除することも可能です。あなたに合った方法で、すぐに対策を始めましょう。
- 物理的に駆除する原始的だけど確実な方法
- 薬剤を使わない!家庭で試せる自然派駆除
- 広範囲・大量発生に!殺虫剤を使った徹底駆除
物理的に駆除する原始的だけど確実な方法
カイガラムシの数がまだ少ない初期段階であれば、物理的に取り除くのが最も手軽で確実な方法です。特に、硬い殻で覆われた成虫は薬剤が効きにくいため、この方法が非常に有効です。
用意するものは、使い古しの歯ブラシやヘラ、布などです。 これらを使って、カイガラムシを優しくこすり落とします。この時、ミモザの樹皮を傷つけないように注意してください。柔らかい枝の場合は、綿棒を使うのも良いでしょう。
こすり落としたカイガラムシは、地面に放置すると再び木に登ってくる可能性があるため、必ずビニール袋などに入れて密閉し、ゴミとして処分しましょう。 被害がひどい枝葉は、思い切って剪定してしまうのも一つの手です。
薬剤を使わない!家庭で試せる自然派駆除
「小さな子供やペットがいるから、できるだけ薬剤は使いたくない」という方には、家庭にあるもので試せる自然派の駆除方法がおすすめです。
代表的なのが、牛乳を使った方法です。 牛乳を水で薄めずにスプレーボトルに入れ、カイガラムシに直接吹きかけます。 牛乳が乾く過程で膜を作り、カイガラムシを窒息させる効果が期待できます。 ただし、牛乳が腐敗すると臭いの原因になるため、散布後は数時間おいてから水で洗い流すようにしましょう。また、この方法はアブラムシにも効果があります。
その他、木酢液を薄めて散布する方法もあります。 木酢液は植物の成長を助ける効果も期待できますが、規定の濃度を守って使用することが大切です。
広範囲・大量発生に!殺虫剤を使った徹底駆除
カイガラムシが広範囲に大量発生してしまった場合は、殺虫剤の使用が最も効率的です。カイガラムシの駆除で重要なのは、薬剤が効きやすい幼虫の時期を狙うこと。
カイガラムシの幼虫は、主に5月~7月頃に発生します。 この時期に、月に2~3回程度、殺虫剤を散布するのが効果的です。 散布する際は、葉の裏や枝の付け根など、カイガラムシが隠れていそうな場所にもしっかりと薬剤がかかるように、丁寧に散布しましょう。
殺虫剤には、直接害虫にかけるスプレータイプと、根から薬剤を吸収させて木全体に効果を行き渡らせる浸透移行性の粒剤タイプがあります。 発生状況や使いやすさに合わせて選びましょう。
カイガラムシ駆除に効果的な薬剤おすすめ5選

いざ殺虫剤を使おうと思っても、園芸店にはたくさんの種類があってどれを選べば良いか迷ってしまいますよね。ここでは、ミモザのカイガラムシ駆除に特に効果的で、家庭でも使いやすい人気の薬剤を5つ厳選して紹介します。それぞれの特徴を理解し、最適な一本を見つけてください。
- 住友化学園芸 カイガラムシエアゾール
- 住友化学園芸 GFオルトラン粒剤
- 住友化学園芸 マシン油乳剤
- フマキラー カダンK
- 住友化学園芸 スミチオン乳剤
住友化学園芸 カイガラムシエアゾール
「カイガラムシエアゾール」は、その名の通りカイガラムシ専用のスプレータイプの殺虫剤です。ジェット噴射で高い所の枝にも薬剤が届きやすく、見つけたカイガラムシを直接狙い撃ちできます。
2つの有効成分が配合されており、速効性と持続性に優れています。 薬剤が枝に浸透し、約1ヶ月間効果が持続するため、散布後に発生する幼虫にも効果を発揮します。 夏の幼虫はもちろん、薬剤が効きにくい冬の成虫にも効果があるのが嬉しいポイントです。
住友化学園芸 GFオルトラン粒剤
「GFオルトラン粒剤」は、植物の株元に撒くだけで効果を発揮する浸透移行性の殺虫剤です。 薬剤が根から吸収され、ミモザの隅々まで行き渡るため、葉の裏や枝の隙間に隠れているカイガラムシにも効果があります。
直接スプレーをかけにくい場所や、散布し忘れた場所の害虫も退治できるのが最大のメリットです。 また、アブラムシなど他の害虫にも効果があり、予防的な使い方もできます。 効果が長期間持続するのも特徴です。
住友化学園芸 マシン油乳剤
「マシン油乳剤」は、冬の間に使用する特殊な薬剤です。 これは、カイガラムシを油の膜で覆い、窒息させて駆除するという物理的な作用を持ちます。
薬剤抵抗性がつきにくく、他の殺虫剤では駆除が難しい成虫や卵に対して非常に高い効果を発揮します。 主にミモザが休眠期に入る冬(12月~2月頃)に使用します。植物の活動が活発な時期に使うと薬害が出る可能性があるため、使用時期と希釈倍率は必ず守るようにしてください。
フマキラー カダンK
「カダンK」も、マシン油を主成分としたスプレータイプの殺虫剤です。 マシン油の力でカイガラムシを窒息させるため、薬剤抵抗性のあるカイガラムシにも効果的です。
冬場の成虫から夏場の幼虫まで、一年を通して使用できるのが特徴です。 ただし、マシン油乳剤と同様に、夏場の高温期に使用すると薬害のリスクがあるため、使用時の気温には注意が必要です。 ダブルノズルで薬剤の舞い散りが少ない設計になっているのも使いやすい点です。
住友化学園芸 スミチオン乳剤
「スミチオン乳剤」は、非常に幅広い害虫に効果がある、家庭園芸の代表的な殺虫剤です。 害虫が薬剤に触れたり、薬剤が付着した葉を食べたりすることで効果を発揮します。
浸透性があるため、植物の内部に侵入した害虫にも有効です。 カイガラムシだけでなく、様々な害虫を同時に防除したい場合に便利です。水で薄めて使用するタイプなので、コストパフォーマンスにも優れています。
なぜ発生?ミモザにカイガラムシがつく原因

カイガラムシを駆除しても、なぜか毎年発生してしまう…と悩んでいませんか?それは、カイガラムシが好む環境が、あなたのミモザにあるからかもしれません。発生原因を知ることで、効果的な予防策につながります。主な原因を3つ見ていきましょう。
- 風通しの悪さが最大の原因
- 窒素肥料の与えすぎ
- 外部からの侵入
風通しの悪さが最大の原因
カイガラムシが発生する最大の原因は、風通しの悪さです。 枝や葉が密集して内側まで日が当たらず、湿度が高いジメジメした環境は、カイガラムシにとって絶好の住処となります。
ミモザは生育旺盛で、剪定をしないと枝がどんどん茂ってきます。 内部の枝葉が混み合ってくると、風通しが悪化し、カイガラムシが隠れやすく、繁殖しやすい環境が生まれてしまうのです。 定期的な剪定で、風と光が通り抜けるようにしてあげることが、カイガラムシ予防の基本中の基本と言えるでしょう。
窒素肥料の与えすぎ
意外に思われるかもしれませんが、肥料の与えすぎ、特に窒素成分の過多もカイガラムシの発生を助長します。 窒素は葉や茎の成長を促す「葉肥(はごえ)」ですが、与えすぎると植物体が軟弱に育ってしまいます。
カイガラムシなどの吸汁性害虫は、このような柔らかい植物を好む傾向があります。 ミモザを元気に育てたいという思いから、良かれと思って与えた肥料が、かえって害虫を呼び寄せる原因になっている可能性があるのです。肥料は適量を守り、バランスの良いものを与えることが大切です。
外部からの侵入
どんなに庭を清潔に管理していても、カイガラムシは外部から侵入してきます。主な侵入経路は以下の通りです。
- 風に乗って飛来する: 卵や幼虫は非常に小さく軽いため、風に乗って遠くから運ばれてくることがあります。
- 人や物に付着して持ち込まれる: 外出時の衣服や持ち物、あるいは新しく購入した植物の苗に付着していて、意図せず庭に持ち込んでしまうケースです。
これらの侵入を完全に防ぐことは困難ですが、新しい植物を庭に植える前にはカイガラムシが付いていないかよく確認する、庭作業の後は衣服をはたくなどの対策で、リスクを減らすことは可能です。
もう悩まない!カイガラムシを徹底予防する方法

カイガラムシ対策で最も重要なのは、発生させない環境を作ること、つまり「予防」です。一度大量発生すると駆除が大変なカイガラムシも、日頃のちょっとした心がけで発生を大幅に抑えることができます。ここでは、誰でも実践できる効果的な予防法を解説します。
- 剪定で風通しを良くする
- 薬剤を散布して予防する
- 天敵の力を借りる
剪定で風通しを良くする
カイガラムシ予防の最も効果的で重要な対策は、定期的な剪定です。 前述の通り、カイガラムシは日当たりと風通しの悪い場所を好みます。
ミモザの花が終わった後(5月~6月頃)に、混み合った枝や内側に向かって伸びている枝などを切り落とし、株全体に風と光が通るようにしましょう。 これにより、カイガラムシが好む湿った環境が改善され、住み着きにくくなります。また、剪定することで木の健康状態も良くなり、病害虫への抵抗力も高まります。
薬剤を散布して予防する
毎年カイガラムシの発生に悩まされている場合は、予防的な薬剤散布が有効です。 特に効果的なのが、冬の間にマシン油乳剤を散布する方法です。
ミモザが休眠している冬の間にマシン油乳剤を散布することで、越冬している成虫や卵を駆除し、春先の発生を大幅に抑えることができます。 また、幼虫が発生し始める5月頃から、オルトラン粒剤などの浸透移行性殺虫剤を株元に撒いておくのも良いでしょう。 これにより、木全体が殺虫成分を持つようになり、幼虫が樹液を吸うのを防ぎます。
天敵の力を借りる
あまり知られていませんが、カイガラムシにも天敵がいます。その代表格がテントウムシです。特に「ベダリアテントウ」というテントウムシは、ミモザによくつくイセリアカイガラムシを専門に捕食してくれる益虫として知られています。
庭でテントウムシを見かけても、むやみに駆除しないようにしましょう。彼らがカイガラムシの発生を抑制してくれることがあります。殺虫剤を使用すると、こうした益虫も一緒に殺してしまう可能性があるため、薬剤の使用は必要最低限に留めるのが理想的です。
よくある質問

ミモザのカイガラムシ駆除に最適な時期はいつですか?
カイガラムシの駆除に最適な時期は、目的によって異なります。最も効果的に駆除できるのは、薬剤に弱い幼虫が発生する5月~7月です。 この時期に殺虫剤を散布すると、効率よく数を減らすことができます。一方、硬い殻を持つ成虫や卵を駆除するには、植物が休眠期に入る冬にマシン油乳剤を散布するのが効果的です。
歯ブラシでこする方法はミモザを傷つけませんか?
歯ブラシでこする方法は、カイガラムシの成虫に対して非常に有効ですが、力を入れすぎるとミモザの柔らかい樹皮を傷つけてしまう可能性があります。 優しく、表面をなでるようにこするのがコツです。 太い幹や硬い枝には歯ブラシを、新芽の近くや細い枝には柔らかい布や綿棒を使うなど、場所によって道具を使い分けると良いでしょう。
牛乳スプレーは本当に効果がありますか?注意点は?
牛乳スプレーは、カイガラムシを窒息させる効果が期待できる、農薬を使わない駆除方法の一つです。 特に、薬剤が効きにくい成虫に対してある程度の効果が見込めます。ただし、使用後そのまま放置すると、牛乳が腐敗して悪臭を放ったり、カビの原因になったりすることがあります。 散布後、牛乳が乾いてから数時間後には、必ず水でしっかりと洗い流してください。
駆除後の黒い汚れ(すす病)はどうすれば綺麗になりますか?
すす病は、カイガラムシの排泄物を栄養源とするカビが原因です。 そのため、まずは原因であるカイガラムシを完全に駆除することが先決です。カイガラムシがいなくなれば、すす病菌は栄養源を失い、自然と増えなくなります。付着してしまった黒いすすは、雨風によって徐々に洗い流されていきますが、気になる場合は水で濡らした布などで優しく拭き取ると良いでしょう。
ミモザの剪定とカイガラムシ駆除は同時にできますか?
はい、同時に行うことは非常に効率的です。カイガラムシの被害がひどい枝を剪定で取り除き、その上で残った部分に薬剤を散布したり、歯ブラシでこすり落としたりするのがおすすめです。 剪定によって風通しが良くなることで、薬剤が内部まで届きやすくなるというメリットもあります。ミモザの剪定適期である花後(5月~6月)は、カイガラムシの幼虫が発生する時期とも重なるため、一石二鳥の対策が可能です。
まとめ

- ミモザの白いふわふわはイセリアカイガラムシ。
- カイガラムシは樹液を吸い、すす病を誘発する。
- 少ないうちは歯ブラシでこすり落とすのが確実。
- 薬剤を使わないなら牛乳スプレーが有効。
- 大量発生には殺虫剤、幼虫の時期が狙い目。
- 駆除の基本は5月~7月の幼虫期を狙うこと。
- 冬の成虫にはマシン油乳剤が効果的。
- 発生の最大原因は風通しの悪さ。
- 定期的な剪定が最高の予防策になる。
- 窒素肥料の与えすぎは害虫を呼ぶ原因に。
- カイガラムシは風や人に付着して侵入する。
- オルトラン粒剤は予防にも使える浸透移行性剤。
- すす病はカイガラムシを駆除すれば自然と減る。
- 天敵のテントウムシは駆除しないで見守る。
- 新しい苗木はカイガラムシがいないか要確認。