大切に育てているクリの木に、黒い虫がびっしりと群がっていて驚いた経験はありませんか?その正体は、クリオオアブラムシかもしれません。放置するとクリの木を弱らせるだけでなく、見た目も黒く汚してしまう「すす病」の原因にもなり、非常に厄介な害虫です。でも、ご安心ください。適切な方法で対処すれば、必ず駆除できます。
本記事では、クリオオアブラムシの生態から、今すぐできる具体的な駆除方法、そして二度と発生させないための予防策まで、初心者の方にも分かりやすく徹底解説します。この記事を読めば、クリオオアブラムシの悩みから解放され、元気なクリの木を取り戻すことができるでしょう。
厄介な大群!クリオオアブラムシの正体と被害

まずは敵を知ることから始めましょう。クリオオアブラムシがどのような虫で、放置するとどのような被害があるのかを理解することが、効果的な駆除への第一歩です。
この章では、以下の内容について詳しく解説します。
- クリオオアブラムシとは?その生態に迫る
- 放置は危険!クリオオアブラムシが引き起こす2つの被害
クリオオアブラムシとは?その生態に迫る
クリオオアブラムシは、その名の通りクリの木に寄生するアブラムシの一種です。 体長は4〜5mmほどとアブラムシの中では大型で、黒光りしているのが特徴です。 主にクリやクヌギ、コナラなどのブナ科の樹木に発生します。 彼らは春から秋にかけて活動し、特に新梢や若い枝に集団で寄生して樹液を吸います。
クリオオアブラムシの生態で特筆すべきは、その驚異的な繁殖力です。春に越冬した卵から孵化した幼虫は、メスだけで子どもを産む「単為生殖」で爆発的に増えていきます。 夏には一時的に数が減るものの、秋になると再び数を増やし、幹や枝にびっしりと黒い卵を産み付け、越冬します。 この卵塊は数千個に及ぶこともあり、翌年の大発生の原因となるのです。
放置は危険!クリオオアブラムシが引き起こす2つの被害
「ただの虫でしょ?」と侮ってはいけません。クリオオアブラムシを放置すると、クリの木に深刻なダメージを与えてしまいます。主な被害は以下の2つです。
吸汁による樹勢の低下
クリオオアブラムシは、集団でクリの木の枝や幹に口針を突き刺し、樹液を吸います。 大量に発生すると、養分を奪われたクリの木は徐々に弱ってしまいます。 特に苗木や若い木の場合、被害が深刻になりやすく、新梢の伸びが悪くなったり、枝が枯れてしまったりすることもあります。 成木であっても、大量発生すれば樹勢が衰え、実の付きが悪くなるなど、収穫にも影響を及ぼす可能性があります。
すす病の誘発
クリオオアブラムシのもう一つの厄介な被害が「すす病」です。 アブラムシは、樹液から栄養を吸収した後、余分な糖分を「甘露(かんろ)」と呼ばれる甘くベタベタした排泄物として体外に出します。 この甘露を栄養源として、空気中に浮遊している黒いカビ(糸状菌)が繁殖したものが「すす病」です。
すす病が発生すると、葉や枝、幹が黒いすすで覆われたようになり、見た目が悪くなるだけではありません。 葉が黒く覆われると光合成が妨げられ、木の生育がさらに悪化するという悪循環に陥ってしまうのです。 また、この甘露はアリを誘引する原因にもなります。アリは甘露をもらう代わりに、天敵であるテントウムシなどからアブラムシを守ることがあり、結果的にアブラムシの繁殖を助長してしまうケースもあります。
今すぐできる!クリオオアブラムシの駆除方法【4選】

クリオオアブラムシの被害が分かったところで、いよいよ具体的な駆除方法を見ていきましょう。発生状況やご自身の考え方に合わせて、最適な方法を選んでください。農薬を使いたくない方向けの方法もご紹介します。
この章で紹介する駆除方法は以下の4つです。
- 【物理的に除去】ヘラやブラシでこすり落とす
- 【農薬を使わない】牛乳や石鹸水スプレー
- 【薬剤で一網打尽】効果的な殺虫剤の選び方と使い方
- 【冬の間に】越冬卵を駆除する方法
【物理的に除去】ヘラやブラシでこすり落とす
最も手軽で原始的な方法ですが、発生初期や数が少ない場合には非常に有効です。 使い古しの歯ブラシやヘラ、硬めのブラシなどを使って、幹や枝に付着しているクリオオアブラムシを物理的にこすり落とします。 潰すと茶色い液体が出るので、気になる方は手袋を着用しましょう。
この方法のメリットは、薬剤を使わないため環境や人体に優しく、コストもかからない点です。デメリットは、数が多くなると手間がかかることと、高所の駆除が難しい点です。こすり落としたアブラムシが再び木に登らないよう、地面に落ちたアブラムシもしっかり処理しましょう。
【農薬を使わない】牛乳や石鹸水スプレー
農薬に頼りたくない方におすすめなのが、牛乳や石鹸水を使った方法です。
牛乳スプレー:
牛乳を水で薄めずにスプレーボトルに入れ、アブラムシに直接噴霧します。 牛乳が乾燥する際に膜を作り、アブラムシの気門(呼吸するための穴)を塞いで窒息させる効果が期待できます。 ポイントは、よく晴れた日の午前中に散布すること。 散布後、牛乳が腐敗して臭いが出たり、カビの原因になったりする可能性があるため、乾いた後は水で洗い流すのがおすすめです。
石鹸水スプレー:
食器用洗剤を数滴水で薄めてスプレーする方法もあります。これも牛乳と同様に、アブラムシを窒息させる効果を狙ったものです。ただし、植物によっては葉を傷める可能性があるので、まずは目立たない部分で試してから全体に散布するようにしてください。
【薬剤で一網打尽】効果的な殺虫剤の選び方と使い方
大量に発生してしまい、物理的な駆除や自然由来のスプレーでは追いつかない場合は、殺虫剤の使用を検討しましょう。 アブラムシに効果のある殺虫剤は多数販売されています。
クリオオアブラムシは薬剤への抵抗性が強いという報告もあるため、適切な薬剤を選ぶことが重要です。 ホームセンターや園芸店で、クリに使用可能でアブラムシ類に適用がある殺虫剤を選びましょう。代表的なものに、オルトラン水和剤やスミチオン乳剤などがあります。
使用する際は、必ず製品のラベルに記載されている使用方法、希釈倍率、使用時期、使用回数を守ってください。 散布する際は、風のない天気の良い日を選び、マスクやゴーグル、手袋を着用して、薬剤が自分にかからないように注意しましょう。特に、アブラムシは葉の裏や枝の込み入った場所に潜んでいることが多いので、ムラなく散布することが大切です。
【冬の間に】越冬卵を駆除する方法
来シーズンの発生を抑えるために非常に重要なのが、冬の間の卵の駆除です。 クリオオアブラムシは、秋に幹や主枝の樹皮の割れ目などに黒くて光沢のある卵を塊で産み付けます。
落葉期である冬(11月~3月頃)に、木の幹をよく観察し、黒い卵の塊を見つけたら、ワイヤーブラシやヘラなどでかき落としてしまいましょう。 これだけで、春先の孵化数を大幅に減らすことができ、翌年の被害を軽減するのに絶大な効果があります。地道な作業ですが、最も効果的な予防策の一つと言えるでしょう。
駆除後の重要タスク!すす病の対処法

クリオオアブラムシの駆除に成功しても、まだ安心はできません。彼らが残した置き土産、「すす病」のケアも忘れずに行いましょう。黒くなった葉や枝を放置しておくと、光合成を妨げ、クリの木の健康を損ない続けます。
すす病とは?原因と症状
前述の通り、すす病はクリオオアブラムシなどの吸汁性害虫の排泄物「甘露」に、カビが繁殖して発生します。 植物自体が病気になるわけではなく、葉や枝の表面が黒いすすのようなカビで覆われる状態を指します。
症状としては、まず葉や枝がベタベタし始め、やがてその部分に黒い斑点が現れます。 放置すると斑点が広がり、最終的には葉や枝全体が真っ黒なすすで覆われたようになります。 このカビは植物に直接寄生するわけではありませんが、光合成を阻害し、生育不良を引き起こす原因となります。
見つけたらすぐ実践!すす病の落とし方
すす病は、原因となるアブラムシを駆除すれば、それ以上広がることはありません。 すでに発生してしまった黒いすすは、物理的に落とすのが最も効果的です。
水で洗い流しながら拭き取る:
範囲が狭い場合は、濡らした布やティッシュ、歯ブラシなどで優しくこすり落としましょう。 比較的簡単に剥がれ落ちます。 高圧洗浄機を使う方法もありますが、水圧が強すぎると樹皮を傷つけてしまう可能性があるので注意が必要です。
被害のひどい枝は剪定する:
すす病が広範囲に広がってしまった葉や枝は、思い切って剪定してしまうのも一つの手です。 これにより、見た目が改善されるだけでなく、木の風通しも良くなり、病害虫の再発防止にも繋がります。 切り取った枝葉は、他の場所へカビが移らないよう、ビニール袋などに入れて処分しましょう。
殺菌剤を散布する方法もありますが、これは新たなカビの発生を抑えるためのもので、付着したすすを消す効果はありません。 まずは物理的に汚れを落とすことを優先しましょう。
もう発生させない!クリオオアブラムシの予防策

一度駆除しても、環境が変わらなければクリオオアブラムシは再び発生する可能性があります。駆除と合わせて予防策を講じることで、大切なクリの木を害虫から守りましょう。
この章では、効果的な予防策を3つご紹介します。
- 剪定で風通しを良くする
- 天敵を味方につける(テントウムシなど)
- 窒素肥料の与えすぎに注意
剪定で風通しを良くする
クリオオアブラムシをはじめとする多くの害虫は、日当たりが悪く、湿気がこもりやすい場所を好みます。 枝葉が密集していると、彼らにとって絶好の隠れ家となってしまうのです。
そこで重要になるのが、適切な時期の剪定です。クリの木の剪定は、木の活動が緩やかになる休眠期、具体的には11月から3月頃に行うのが最適です。 重なり合った枝や内側に向かって伸びる枝、枯れ枝などを切り落とし、木全体の風通しと日当たりを良くしてあげましょう。 これにより、害虫が住み着きにくい環境を作ることができます。 また、剪定によって木の健康状態を良好に保つことは、病害虫への抵抗力を高めることにも繋がります。
天敵を味方につける(テントウムシなど)
自然界には、クリオオアブラムシを食べてくれる頼もしい味方が存在します。その代表格がテントウムシです。 テントウムシの成虫も幼虫も、アブラムシを大好物として捕食してくれます。 その他にも、ヒラタアブの幼虫やカゲロウの幼虫などもアブラムシの天敵として知られています。
これらの天敵を庭に呼び込むためには、安易に強力な殺虫剤を使わないことが大切です。 殺虫剤は害虫だけでなく、こうした益虫も殺してしまいます。 殺虫剤の使用は最小限にとどめ、天敵が活動しやすい環境を整えることで、自然の力で害虫の発生を抑制する「生物的防除」を目指しましょう。 庭に様々な種類の花を植えて、多様な虫が集まる環境を作ることも、天敵を呼び寄せるのに役立ちます。
窒素肥料の与えすぎに注意
植物の葉や茎を成長させるために必要な窒素ですが、与えすぎには注意が必要です。窒素分が多い肥料を過剰に与えると、植物の組織が柔らかくなり、アブラムシなどの吸汁性害虫にとって格好の餌食となってしまいます。
肥料を与える際は、製品に記載されている規定量を守り、バランスの取れた施肥を心がけましょう。特に、春先の新芽が伸びる時期に窒素過多になるとアブラムシが発生しやすくなるため、注意が必要です。木の健康状態をよく観察しながら、適切な量の肥料を与えることが、害虫に強い木を育てるコツです。
よくある質問

クリオオアブラムシの駆除に最適な時期はいつですか?
クリオオアブラムシの駆除は、見つけ次第すぐに行うのが基本ですが、特に効果的な時期が2つあります。1つ目は、越冬卵から孵化した幼虫が活動を始める春先(4月頃)です。 この時期に駆除することで、その後の爆発的な繁殖を防ぐことができます。2つ目は、冬の休眠期(11月~3月)です。 この時期に幹に産み付けられた越冬卵を物理的に除去することで、翌春の発生源を断つことができます。
クリオオアブラムシは人体に害はありますか?
クリオオアブラムシが人を刺したり、毒を持っていたりすることはなく、人体に直接的な害はありません。 同様に、彼らが原因で発生するすす病も、カビが付着しているだけなので人体への影響はないとされています。 ただし、見た目が不快であったり、アレルギーの原因になったりする可能性はゼロではありませんので、駆除作業の際は手袋を着用するなど、直接触れるのは避けた方が良いでしょう。
牛乳スプレーの作り方と注意点を教えてください。
牛乳スプレーは、牛乳を水で薄めずにそのままスプレーボトルに入れて使用します。 アブラムシ全体が白くなるように、たっぷりと吹きかけてください。注意点として、必ず晴れた日の午前中に行い、牛乳がしっかり乾くようにしてください。 散布後、そのまま放置すると牛乳が腐敗して悪臭の原因になったり、別のカビが発生したりする可能性があるため、乾いたのを確認したら水で軽く洗い流すことをおすすめします。
天敵のテントウムシはどうやって増やせますか?
テントウムシを増やすには、彼らが好む環境を作ることが大切です。まず、むやみに殺虫剤を使わないことが最も重要です。 また、テントウムシはアブラムシ以外にも、うどんこ病の菌なども食べます。 庭にキク科やセリ科の植物(カモミール、ディルなど)を植えると、テントウムシが集まりやすいと言われています。多様な植物を植え、生物が豊かな環境を維持することが、天敵を呼び込むことに繋がります。
すす病は他の植物にうつりますか?
すす病の原因となるカビの胞子は空気中に漂っているため、他の植物にうつる可能性はあります。 ただし、すす病が発生するためには、アブラムシなどの排泄物「甘露」が必要です。 したがって、隣の木にアブラムシが発生していなければ、すす病だけがうつって広がるということは考えにくいです。まずは、原因となっているアブラムシをしっかりと駆除することが、被害の拡大を防ぐ最も重要な対策となります。
まとめ

- クリオオアブラムシはクリに寄生する大型の黒いアブラムシです。
- 樹液を吸って木を弱らせ、すす病を誘発します。
- 駆除は発生初期の物理的除去が手軽で有効です。
- 農薬を使わない方法として牛乳スプレーがあります。
- 大量発生時は適切な殺虫剤を使用します。
- 冬の間に越冬卵をこすり落とすのが非常に効果的です。
- すす病は水とブラシで洗い流せます。
- 被害がひどい枝は剪定して処分しましょう。
- 予防には冬の剪定が欠かせません。
- 剪定で風通しと日当たりを改善します。
- 天敵のテントウムシはアブラムシの捕食者です。
- 殺虫剤の使いすぎは天敵を減らすので注意が必要です。
- 窒素肥料の過剰な施肥はアブラムシを呼び寄せます。
- 駆除の最適な時期は春先と冬です。
- クリオオアブラムシや、すす病は人体に直接的な害はありません。