大切に育てているミカンの葉の裏に、びっしりと付いた白い粒々…。それはもしかしたら、ミカンの生育を脅かす害虫「コナジラミ」の卵かもしれません。放置してしまうと、あっという間に増殖し、ミカンの木を弱らせるだけでなく、見た目を損なう「すす病」の原因にもなってしまいます。でも、ご安心ください。この記事を読めば、コナジラミの卵の見分け方から、農薬を使わない安全な駆除方法、そして二度と発生させないための予防策まで、すべて分かります。大切なミカンを守るために、今すぐ対策を始めましょう。
これってコナジラミの卵?見分け方と生態

まずは敵を知ることから始めましょう。ミカンの葉に付いている白いものが本当にコナジラミの卵なのか、その特徴と生態を詳しく解説します。早期発見が、被害を最小限に食い止めるための最初のステップです。
この章では、以下の内容について詳しく見ていきます。
- 葉の裏にびっしり!コナジラミの卵の特徴
- 卵から成虫までのライフサイクル
- コナジラミが発生しやすい時期と環境
葉の裏にびっしり!コナジラミの卵の特徴
コナジラミの卵は、ミカンの葉の裏側に産み付けられることがほとんどです。大きさは長径0.2mmほどと非常に小さく、肉眼では点のようにしか見えないかもしれません。 色は産み付けられた直後は乳白色や淡い黄色ですが、孵化が近づくと褐色に変化します。 ルーペなどでよく観察すると、少し細長い楕円形や勾玉のような形をしています。
特に、ミカンに寄生する代表的なコナジラミは「ミカンコナジラミ」や「ミカントゲコナジラミ」です。 ミカンコナジラミの成虫は体長約1.2mmで白い翅を持ち、枝を揺らすと一斉に飛び立つのが特徴です。 一方、ミカントゲコナジラミの成虫は前翅が黒色で白い紋があり、幼虫は黒く、周りが白いロウ物質で縁取られています。 これらの成虫を見かけたら、葉の裏に卵が産み付けられていないか注意深く確認しましょう。
卵から成虫までのライフサイクル
コナジラミは繁殖力が非常に強く、あっという間に増えてしまう厄介な害虫です。そのライフサイクルを知ることで、効果的な駆除のタイミングを見極めることができます。 気温が25℃程度の環境では、卵から約23〜28日で成虫になります。 卵は数日で孵化し、幼虫になります。幼虫は1齢幼虫のうちは歩行して移動しますが、定着するとほとんど動かなくなります。 その後、数回の脱皮を経て蛹になり、やがて成虫となって飛び立ちます。成虫はまたすぐに葉の裏に産卵し、このサイクルを繰り返すことで爆発的に増殖していくのです。 卵や蛹の段階では薬剤が効きにくいこともあるため、成虫や幼虫の段階でいかに駆除するかが重要になります。
コナジラミが発生しやすい時期と環境
コナジラミは、春から秋にかけての暖かい時期に特に活発になります。 具体的には、5月から10月頃が発生しやすい時期と言えるでしょう。 特に、オンシツコナジラミは20~25℃、タバココナジラミは25~30℃といった高温を好みます。 また、コナジラミは乾燥した環境を好むため、雨が少なく乾燥した日が続くと発生しやすくなります。 ビニールハウスなどの施設栽培では、温度や湿度が保たれるため、冬でも発生することがあります。
風通しが悪く、葉が密集している場所もコナジラミにとっては絶好の隠れ家であり、繁殖場所となります。 大切なミカンの木が、コナジラミにとって快適な環境になっていないか、日頃からチェックすることが大切です。
【緊急対策】ミカンのコナジラミの卵を今すぐ駆除する方法

葉の裏にコナジラミの卵や幼虫を見つけたら、一刻も早く駆除に取り掛かりましょう。数が少ないうちに対処することが、被害を広げないための最大のコツです。ここでは、ご家庭でできる簡単な方法から、農薬を使った確実な方法まで、状況に応じた駆除方法を具体的に紹介します。
この章で紹介する駆除方法は以下の通りです。
- まずは物理的に除去!水や歯ブラシで洗い流す
- 農薬を使いたくない人向け!安全な駆除方法
- どうしても駆除できない場合に!効果的な農薬の選び方と使い方
まずは物理的に除去!水や歯ブラシで洗い流す
コナジラミの卵や幼虫、成虫の数がまだ少ない初期段階であれば、物理的に取り除いてしまうのが最も手軽で安全な方法です。葉の裏に付いている卵や幼虫は、歯ブラシや布などで優しくこすり落としましょう。
また、勢いの良い水流を葉の裏に直接当てるのも効果的です。ホースのシャワー機能などを使い、洗い流してしまいましょう。ただし、水の勢いが強すぎると葉を傷つけてしまう可能性があるので、力加減には注意してください。この方法は、薬剤を使わないのでミカンの木にも環境にも優しいですが、完全に駆除するのは難しいため、他の方法と組み合わせることをおすすめします。
農薬を使いたくない人向け!安全な駆除方法
「食べるものだから、できるだけ農薬は使いたくない」そう考える方も多いでしょう。幸い、コナジラミは身近なものを使っても駆除することが可能です。ここでは、環境にも優しく、安心して試せる駆除方法をいくつかご紹介します。
牛乳スプレーで窒息させる
意外に思われるかもしれませんが、牛乳はコナジラミ駆除に効果があります。 牛乳と水を1:1の割合で混ぜたものをスプレーボトルに入れ、コナジラミが発生している葉の裏を中心に、株全体にまんべんなく吹きかけます。 牛乳が乾く際に膜を作り、コナジラミの気門(呼吸するための穴)を塞いで窒息させるという仕組みです。
この方法は、晴れた日に行うのが効果的です。ただし、牛乳をかけたまま放置すると、腐敗して悪臭の原因になったり、カビが発生したりすることがあります。 散布してから1〜2日後には、必ず水でしっかりと洗い流すようにしてください。
黄色い粘着シートで成虫を捕獲する
コナジラミには、黄色に集まる習性があります。 この習性を利用して、黄色の粘着シートをミカンの木の近くに設置することで、成虫を物理的に捕獲することができます。ハエ取り紙のようなもので、農薬を使わずに成虫の数を減らすことができる有効な手段です。
粘着シートは、ホームセンターや園芸店、インターネット通販などで手軽に購入できます。シートに付着したコナジラミの数を見ることで、発生状況を把握するモニタリングツールとしても活用できます。 これにより、薬剤散布などの次の対策を立てる目安にもなります。
天敵に食べてもらう(テントウムシなど)
自然の力を借りる「生物的防除」も有効な手段の一つです。コナジラミには、テントウムシやツヤコバチといった天敵がいます。 これらの天敵を畑や庭に放すことで、コナジラミの数を抑制することができます。天敵となる昆虫は、農薬を扱う専門店などで販売されていることがあります。
ただし、天敵を利用する場合は、殺虫剤の散布は控えなければなりません。天敵も殺虫剤の影響を受けてしまうためです。農薬に頼らない栽培を目指す方にとっては、非常に有効な選択肢となるでしょう。
どうしても駆除できない場合に!効果的な農薬の選び方と使い方
コナジラミが大量発生してしまい、手作業や自然な方法だけでは追いつかない場合は、農薬の使用も検討しましょう。正しく使えば、効果的にコナジラミを駆除することができます。ここでは、農薬の選び方と使い方のポイントを解説します。
卵にも効く農薬の選び方
コナジラミは世代交代が早く、薬剤への抵抗性が発達しやすい害虫です。 そのため、同じ系統の農薬を続けて使うのは避け、作用性の異なる複数の薬剤をローテーションで散布することが重要です。 また、農薬によっては成虫にしか効かなかったり、卵には効果が薄かったりするものもあります。 卵から成虫まで、すべてのステージに効果がある薬剤を選ぶと、より効率的に駆除できます。 例えば、「ダブルシューターSE」のような天然物由来成分を含み、全発育ステージに効果のある殺虫剤も販売されています。
おすすめの農薬と販売会社
ミカンコナジラミに効果のある農薬は、様々な会社から販売されています。代表的なものには以下のような系統の薬剤があります。
- 有機リン系: スミチオン乳剤(住友化学)など
- ネオニコチノイド系: アドマイヤー、スタークル、ダントツ、アルバリンなど
- 合成ピレスロイド系: シラフルオフェン水和剤、ビフェントリン水和剤など
- その他: コルト顆粒水和剤(日本農薬)、アプロード水和剤(日本農薬)など
これらの農薬は、ホームセンターやJA、農薬販売店などで購入できます。使用する際は、必ずラベルをよく読み、対象作物(みかん)と対象害虫(コナジラミ類)に登録があることを確認してください。
農薬を使う際の注意点
農薬を散布する際は、いくつかの注意点があります。まず、コナジラミは葉の裏に潜んでいるため、葉の裏側まで薬剤がしっかりかかるように丁寧に散布してください。 また、薬剤抵抗性の発達を防ぐため、前述の通り作用性の異なる薬剤を順番に使うローテーション散布を心掛けましょう。 散布する時間帯は、風のない早朝や夕方がおすすめです。使用する際は、マスクや手袋、保護メガネなどを着用し、薬剤を吸い込んだり皮膚に付着したりしないよう、安全対策を徹底してください。
コナジラミを放置する恐怖!ミカンに及ぼす3つの被害

「少しぐらいなら大丈夫だろう」とコナジラミを放置すると、取り返しのつかない事態を招くことがあります。コナジラミがミカンに及ぼす被害は、単に見た目が悪くなるだけではありません。ここでは、コナジラミが引き起こす深刻な3つの被害について解説します。
コナジラミがもたらす主な被害は以下の通りです。
- 栄養を吸われてミカンが弱る(直接被害)
- 葉や果実が真っ黒に!「すす病」の発生(間接被害)
- ウイルス病を媒介する危険性
栄養を吸われてミカンが弱る(直接被害)
コナジラミの成虫と幼虫は、ミカンの葉の裏に寄生し、口針を突き刺して汁を吸います。 これが直接的な被害です。栄養分を吸われた葉は、葉緑素が抜けて白いカスリ状の斑点ができます。 被害が広がると、光合成が十分にできなくなり、ミカンの木の生育が阻害され、樹勢が低下してしまいます。 新芽や若い葉が狙われやすく、ひどい場合には葉が巻いたり、枯れてしまったりすることもあります。 結果として、美味しい実が育たなくなってしまうのです。
葉や果実が真っ黒に!「すす病」の発生(間接被害)
コナジラミの被害で特に厄介なのが、間接的な被害である「すす病」です。コナジラミは、吸汁した際に出る糖分を含んだ甘い排泄物(甘露)を出します。 この甘露を栄養源として、空気中のカビ(糸状菌)が繁殖し、葉や果実の表面が黒いすすで覆われたようになってしまうのが「すす病」です。
すす病が発生すると、見た目が悪くなるだけでなく、葉の表面が黒く覆われることで光合成が妨げられ、ミカンの生育がさらに悪化します。 果実が黒くなれば商品価値は大きく下がり、家庭で楽しむ場合でも食べる気が失せてしまいます。 このすす病は、コナジラミだけでなく、アブラムシやカイガラムシの排泄物でも発生します。
ウイルス病を媒介する危険性
コナジラミの最も恐ろしい被害の一つが、植物のウイルス病を媒介することです。 特にタバココナジラミは、「トマト黄化葉巻病」など、様々な深刻なウイルス病を運ぶことが知られています。 ウイルスに感染した植物の汁を吸ったコナジラミが、次に健康なミカンの木の汁を吸うことで、ウイルスが伝染してしまうのです。一度ウイルス病に感染してしまうと、治療法はなく、最悪の場合、木を伐採しなければならなくなることもあります。たかが小さな虫と侮っていると、大切なミカンの木を失うことにもなりかねません。
もうコナジラミに悩まない!明日からできる徹底予防策

コナジラミは一度発生すると駆除が大変です。だからこそ、最も重要なのは「発生させない」こと、つまり予防です。日頃のちょっとした心がけで、コナジラミが寄り付きにくい環境を作ることができます。ここでは、誰でも簡単に始められる徹底的な予防策をご紹介します。
この章で紹介する予防策はこちらです。
- 物理的に侵入を防ぐ
- コナジラミが嫌う環境を作る
- 苗の持ち込みに注意する
物理的に侵入を防ぐ
コナジラミの成虫は外から飛んできて卵を産み付けます。そのため、物理的に侵入させない対策が非常に効果的です。
防虫ネットをかける
特に若い木や鉢植えのミカンには、目の細かい防虫ネットをかけるのがおすすめです。 コナジラミは体が小さいため、0.4mm以下の細かい目合いのネットを選ぶと侵入を効果的に防ぐことができます。 ただし、目合いが細かすぎると風通しが悪くなり、かえって病害虫が発生しやすい環境になることもあるため、注意が必要です。 特に春の新芽が出る時期に合わせて設置すると、アゲハチョウの産卵防止にもなり一石二鳥です。
シルバーマルチで光を反射させる
コナジラミは、キラキラと反射する光を嫌う性質があります。 この性質を利用し、ミカンの木の株元にシルバーマルチ(銀色の反射シート)を敷くことで、コナジラミが寄り付きにくくなります。 地面からの光の反射が、コナジラミの飛来や産卵活動を妨げる効果が期待できます。 これはアブラムシなど他の害虫対策にもなるため、ぜひ試してみてください。
コナジラミが嫌う環境を作る
コナジラミにとって住み心地の悪い環境を作ってしまえば、自然と発生を抑えることができます。日々の管理の中で実践できるポイントをご紹介します。
風通しを良くするための剪定
葉や枝が密集して風通しが悪い場所は、コナジラミにとって格好の住処となります。 定期的に剪定を行い、枝葉が混み合っている部分を整理して、風通しと日当たりを良くしましょう。 これにより、湿気がこもるのを防ぎ、コナジラミだけでなく他の病害虫の発生も予防できます。 特に、内側に向かって伸びている不要な枝などを切り落とす「間引き剪定」が効果的です。
定期的な葉水で乾燥を防ぐ
コナジラミは乾燥した環境を好みます。 そのため、定期的に霧吹きなどで葉に水をかける「葉水」を行うことで、葉の周りの湿度を保ち、コナジラミの発生を抑制することができます。 特に、葉の裏側にもしっかりと水をかけるのがポイントです。乾燥しやすい夏場は、毎日行うとより効果的でしょう。
周辺の雑草をこまめに除去する
ミカンの木の周りに雑草が生い茂っていると、それがコナジラミの発生源や隠れ家になることがあります。 雑草はこまめに取り除き、常に清潔な状態を保つように心掛けましょう。 これだけでも、コナジラミが飛来するリスクを減らすことができます。
苗の持ち込みに注意する
新しくミカンの苗を購入する際には、注意が必要です。購入した苗に、すでにコナジラミの卵や幼虫が付着しているケースが少なくありません。 庭やベランダに持ち込む前に、葉の裏まで念入りにチェックし、害虫がいないことを確認しましょう。もし付着していた場合は、持ち込む前にきれいに取り除くか、販売店に相談してください。せっかく予防していても、外から持ち込んでしまっては元も子もありません。
よくある質問

ここでは、ミカンのコナジラミに関して、皆さんからよく寄せられる質問にお答えします。
コナジラミの卵と他の虫の卵の見分け方は?
ミカンの葉の裏には、コナジラミ以外にも様々な虫が卵を産み付けます。例えば、アブラムシの卵は黒くて光沢があることが多いです。ハダニの卵は非常に小さく、球形で透明感があります。コナジラミの卵は、前述の通り乳白色から褐色の小さな楕円形で、葉の裏に密集して産み付けられるのが特徴です。見分けるのが難しい場合は、成虫の姿を確認すると確実です。白い小さな虫が飛び立つようであれば、コナジラミの可能性が高いでしょう。
牛乳スプレーの作り方と注意点は?
牛乳スプレーは、牛乳と水を1対1の割合で混ぜるだけで簡単に作れます。 スプレーボトルに入れてよく振り、葉の裏を中心にたっぷり散布してください。注意点として、必ず晴れた日の午前中に散布し、乾いた後に効果を発揮させます。そして最も重要なのが、散布後1〜2日経ったら必ず水で洗い流すことです。 放置すると牛乳が腐敗し、悪臭やカビの原因となり、かえって植物を傷めることになります。
すす病になってしまったらどうすればいいですか?
すす病は、原因となるコナジラミやアブラムシなどの害虫を駆除することが根本的な解決策です。 原因の害虫を駆除すれば、すす病はそれ以上広がらなくなります。葉や果実に付着した黒いすすは、雨風によって自然に洗い流されることもありますが、気になる場合は濡らした布などで優しく拭き取ってあげましょう。ただし、強くこすって葉や果実を傷つけないように注意してください。
コナジラミの天敵にはどんな虫がいますか?
コナジラミの天敵として有名なのは、テントウムシ、ヒメハナカメムシ、クサカゲロウの幼虫などです。また、寄生蜂であるオンシツツヤコバチやチチュウカイツヤコバチなども有力な天敵として知られています。 これらの天敵は、農薬を使わない環境であれば自然に集まってくることもあります。天敵を保護するためにも、安易な殺虫剤の使用は避けるのが望ましいです。
農薬はどのくらいの頻度で散布すればいいですか?
農薬を散布する頻度は、使用する薬剤の種類や発生状況によって異なります。一般的に、コナジラミは繁殖サイクルが早いため、一度の散布で全滅させるのは困難です。7〜10日間隔で2〜3回、作用性の異なる薬剤をローテーションで散布すると効果的です。ただし、必ず使用する農薬のラベルに記載されている使用方法、使用回数、希釈倍率などを厳守してください。 過剰な使用は、薬害や薬剤抵抗性の原因となります。
まとめ

- コナジラミの卵はミカンの葉裏に産み付けられる。
- 卵は非常に小さく、乳白色から褐色をしている。
- コナジラミは繁殖力が強く、放置すると大発生する。
- 吸汁被害によりミカンの生育が阻害される。
- 排泄物が原因で「すす病」が発生し、葉や果実が黒くなる。
- ウイルス病を媒介する危険な害虫である。
- 初期段階なら水や歯ブラシでの物理的除去が有効。
- 農薬を使わない駆除法として牛乳スプレーが効果的。
- 黄色い粘着シートで成虫を捕獲できる。
- 天敵のテントウムシなどを利用する方法もある。
- 大量発生時は農薬の使用も検討する。
- 農薬は作用性の異なるものをローテーション散布する。
- 予防策として防虫ネットやシルバーマルチが有効。
- 剪定で風通しを良くし、葉水で乾燥を防ぐ。
- 新しい苗を導入する際は害虫がいないか確認する。