大切に育てている家庭菜園の野菜や、ベランダの美しいお花。ふと見ると、新芽や葉の裏に緑や黒の小さな虫がびっしり…なんて経験はありませんか?その正体は、植物の汁を吸って弱らせてしまう厄介な害虫「アブラムシ」です。繁殖力が非常に高く、あっという間に増えてしまうため、見つけたらすぐに対策が必要です。
しかし、お子様やペットがいるご家庭、食べる野菜を育てている方にとっては、「強い農薬は使いたくない」というのが本音ではないでしょうか。
本記事では、そんなあなたのために、ご家庭にある「お酢」を使った安全なアブラムシ駆除スプレーの作り方から、効果的な使い方、さらにはアブラムシを寄せ付けないための予防策まで、詳しく解説していきます。
なぜ?大切に育てた植物にアブラムシが…発生原因と放置するリスク

アブラムシ対策を始める前に、まずは敵を知ることから始めましょう。なぜアブラムシが発生するのか、そして放置するとどのようなリスクがあるのかを理解することで、より効果的な対策が打てるようになります。
この章では、以下の点について解説します。
- アブラムシはどこから来るの?主な発生原因
- アブラムシを放置するとどうなる?植物への深刻な被害
アブラムシはどこから来るの?主な発生原因
「昨日までいなかったのに、どこからやってきたの?」と不思議に思うほど、アブラムシは突然現れます。アブラムシが発生しやすくなる主な原因は、以下の通りです。
窒素肥料の与えすぎ
植物の成長を促す窒素ですが、与えすぎると葉や茎に含まれるアミノ酸が増加します。実はこのアミノ酸がアブラムシの大好物。 美味しいご馳走がある場所に集まってくるのは、虫も同じなのです。良かれと思って与えた肥料が、逆に害虫を呼び寄せる原因になっているかもしれません。
風通しや日当たりの悪さ
植物が密集して葉が茂りすぎると、風通しが悪くなります。 湿気がこもりやすく、ジメジメした環境はアブラムシにとって絶好の隠れ家であり、繁殖場所。また、日当たりが悪い場所も好む傾向があります。
春と秋の過ごしやすい気候
アブラムシは、人間にとっても過ごしやすい春(4月~6月)と秋(9月~10月)に最も活発に活動し、繁殖します。 暑すぎる夏や寒い冬は活動が鈍りますが、卵の状態で越冬し、春になるとまた活動を始めるため、一年を通して注意が必要です。
飛来してくる有翅(ゆうし)型のアブラムシ
アブラムシは、普段は羽のない姿で単為生殖を繰り返して爆発的に増えます。しかし、数が増えすぎて密集したり、寄生している植物の栄養がなくなってきたりすると、羽の生えた「有翅型」のアブラムシが現れます。 この有翅型が風に乗って飛んできて、新しい住処となるあなたの植物に卵を産み付けるのです。
アブラムシを放置するとどうなる?植物への深刻な被害
「少しぐらいなら大丈夫だろう」とアブラムシを放置するのは大変危険です。その驚異的な繁殖力で、あっという間に植物に深刻なダメージを与えてしまいます。
吸汁による生育阻害
アブラムシは植物の茎や新芽、葉の裏などに口針を突き刺し、養分である汁を吸い取ります。 養分を奪われた植物は元気がなくなり、成長が妨げられます。被害が進むと、葉が縮れたり、花が咲かなくなったり、最悪の場合は枯れてしまうこともあります。
ウイルス病の媒介
アブラムシの被害で最も恐ろしいのが、ウイルス病を媒介することです。 アブラムシは、ウイルスに感染した植物の汁を吸った後、健康な植物に移動して汁を吸うことで、次々とウイルスをうつしていきます。一度ウイルス病にかかってしまうと治療法はなく、植物を処分するしかありません。
「すす病」の発生
アブラムシは、お尻から「甘露(かんろ)」と呼ばれる甘い排泄物を出します。この甘露が葉や茎に付着すると、それを栄養源にして黒いカビが発生することがあります。 これが「すす病」で、葉の表面が黒いすすで覆われたようになり、光合成を妨げて植物の生育をさらに悪化させます。
アリを呼び寄せる共存関係
アリはアブラムシが出す甘露が大好きです。そのため、アブラムシが発生するとアリが集まってきます。 アリは甘露をもらう代わりに、アブラムシの天敵であるテントウムシなどを追い払い、アブラムシを守るという共存関係にあります。アリがたくさんいる場所は、アブラムシがいるサインかもしれません。
【基本の作り方】アブラムシ駆除に効果的なお酢スプレー

アブラムシの恐ろしさが分かったところで、いよいよ駆除対策です。まずは、安全で手軽に作れる「お酢スプレー」の作り方からご紹介します。化学薬品を使わないので、家庭菜園の野菜やハーブにも安心して使えるのが嬉しいポイントです。
この章では、以下の内容を詳しく解説します。
- 準備するものリスト
- 簡単3ステップ!お酢スプレーの作り方
- 効果的な使い方と散布のコツ
- お酢スプレーのメリットと注意点(デメリット)
準備するものリスト
ご家庭にあるもので、すぐに作ることができます。特別な材料は必要ありません。
- お酢:穀物酢や米酢がおすすめです。 果実酢など糖分の多いものは、逆に虫を寄せ付ける可能性があるので避けましょう。
- 水:水道水で構いません。
- スプレーボトル:100円ショップなどで手に入ります。よく洗って乾かしたものを使用してください。
- (あれば)食器用洗剤:1、2滴加えると、スプレー液が葉に付着しやすくなる「展着剤」の代わりになります。界面活性剤の入っていない、ヤシの実由来などのシンプルなものがおすすめです。
簡単3ステップ!お酢スプレーの作り方
作り方はとてもシンプル。誰でも簡単に作ることができます。ポイントは希釈倍率です。濃度が濃すぎると植物を傷めてしまう可能性があるので、必ず守るようにしてください。
- お酢を計量する
まず、目的別に希釈するためのお酢を計量します。 - 水で薄める
スプレーボトルに計量したお酢と水を入れ、よく振って混ぜ合わせます。この時、展着剤代わりに食器用洗剤を1、2滴加えるとより効果的です。
<希釈倍率の目安>- 駆除目的の場合:25倍~50倍 (例:水500mlに対し、お酢10ml~20ml)
- 予防目的の場合:100倍~500倍 (例:水500mlに対し、お酢1ml~5ml)
初めて使う場合や、デリケートな植物に使う場合は、薄めの濃度から試してみることをおすすめします。 - 完成!
これだけで、アブラムシ駆除スプレーの完成です。作ったスプレーは、その日のうちに使い切るようにしましょう。
効果的な使い方と散布のコツ
せっかく作ったお酢スプレーも、使い方が間違っていると効果が半減してしまいます。以下のコツを押さえて、効果的に散布しましょう。
- 散布のタイミング:散布は、日差しの強い日中を避け、早朝か夕方に行うのが基本です。日中に散布すると、水分がレンズの役割をして葉が焼けてしまう「葉焼け」の原因になることがあります。また、雨の日は効果が流れてしまうので、晴れた日を選びましょう。
- 散布場所:アブラムシは、葉の裏や新芽、茎など、柔らかくて見えにくい場所に隠れていることが多いです。 葉の表だけでなく、葉をめくって裏側にもたっぷりと、アブラムシが濡れるくらいスプレーするのがポイントです。
- 散布頻度:駆除が目的なら、アブラムシがいなくなるまで1〜2日おきに散布します。予防が目的なら、週に1〜2回のペースで定期的に散布すると効果的です。
お酢スプレーのメリットと注意点(デメリット)
手軽で安全なお酢スプレーですが、メリットだけでなく知っておくべき注意点もあります。
メリット
- 安全性が高い:食品であるお酢から作るので、小さなお子様やペットがいるご家庭でも安心して使えます。収穫間近の野菜にかかっても心配ありません。
- 手軽で安価:家にあるもので簡単に作れ、コストもほとんどかかりません。
- 病気の予防効果も:お酢には殺菌効果も期待できるため、うどんこ病などの病気予防にも役立ちます。
注意点(デメリット)
- 効果が穏やか:化学農薬に比べると、殺虫効果は穏やかです。即効性はあまり期待できず、繰り返し散布する必要があります。
- 持続性が低い:雨が降ったり、時間が経ったりすると効果が薄れてしまいます。そのため、こまめな散布が必要です。
- 濃度を間違えると植物を傷める:前述の通り、濃度が濃すぎると葉焼けを起こしたり、植物の生育を阻害したりする可能性があります。 必ず希釈倍率を守り、心配な場合は目立たない部分で試してから全体に散布しましょう。
- 酸性を嫌う植物には注意:ほとんどの植物には問題ありませんが、ブルーベリーなど酸性の土壌を好む植物以外には、土に直接大量にかからないように注意しましょう。
【応用編】効果アップ!お酢スプレーの強化レシピ

基本のお酢スプレーでも効果はありますが、「もっと強力なものが欲しい!」という方のために、効果をアップさせる応用レシピをご紹介します。アブラムシが嫌がる成分をプラスして、撃退効果を高めましょう。
この章では、以下のレシピを解説します。
- 唐辛子&ニンニクで撃退効果を高める
- 木酢液・竹酢液スプレーの作り方と効果
唐辛子&ニンニクで撃退効果を高める
唐辛子の辛み成分「カプサイシン」と、ニンニクの匂い成分「アリシン」は、多くの虫が嫌う成分です。これらをお酢に漬け込むことで、忌避効果が格段にアップした強力なスプレーを作ることができます。
【材料】
- 米酢:500ml
- 唐辛子:5~10本(種は取り除く)
- ニンニク:1片(軽く潰す)
- 密閉できるガラス容器
【作り方】
- 密閉できるガラス容器に、種を取り除いた唐辛子と、軽く潰したニンニクを入れます。
- そこへ米酢を注ぎ入れ、蓋をして冷暗所で1ヶ月ほど漬け込みます。
- 出来上がった原液を、水で300倍程度に薄めてスプレーボトルに入れ、よく振ってから使用します。
この強化スプレーは刺激が強いため、使用する際は必ず目立たない場所で試してからにしましょう。 また、手や目に入らないように注意してください。週に1回程度の散布で、アブラムシを寄せ付けない予防効果が期待できます。
木酢液・竹酢液スプレーの作り方と効果
「木酢液(もくさくえき)」や「竹酢液(ちくさくえき)」も、アブラムシ対策としてよく利用されます。これらは木炭や竹炭を焼くときに出る煙を冷やして液体にしたもので、独特の燻製のような香りが特徴です。
この燻製の香りをアブラムシが嫌うため、直接的な殺虫効果というよりは、忌避(きひ)効果、つまり虫を寄せ付けなくする効果がメインとなります。
【作り方と使い方】
市販の木酢液や竹酢液を、製品の表示に従って水で希釈して使います。一般的な希釈倍率は以下の通りです。
- 予防目的の場合:300~500倍
- 駆除目的の場合:100~200倍
お酢スプレーと同様に、葉の裏表にまんべんなく散布します。木酢液には土壌の微生物を活性化させる効果もあるため、植物の生育を助ける副次的な効果も期待できます。 ただし、こちらも原液は酸性が強いため、必ず薄めて使用してください。
お酢だけじゃない!家庭にあるもので作る無農薬駆除スプレー

お酢スプレー以外にも、家庭にある身近なものでアブラムシを駆除する方法があります。「お酢を切らしてしまった」「他の方法も試してみたい」という時に役立ちます。ここでは代表的な3つの手作りスプレーをご紹介します。
この章で紹介するのはこちらです。
- 牛乳スプレー|膜で窒息させる
- 重曹スプレー|安全性が高く予防にも
- 石鹸水・油石鹸水スプレー|強力な窒息効果
牛乳スプレー|膜で窒息させる
牛乳をアブラムシに吹きかけると、乾燥する過程でできる牛乳の膜がアブラムシの体表にある呼吸するための穴(気門)を塞ぎ、窒息させて駆除する方法です。
【作り方と使い方】
- スプレーボトルに成分無調整の牛乳をそのまま、もしくは水と1:1で割って入れます。
- アブラムシに直接かかるように、たっぷりと吹きかけます。
- 牛乳が乾くまで、日当たりの良い場所でしばらく放置します。
- 牛乳が乾いたら、必ず水でしっかりと洗い流してください。
牛乳を洗い流さずに放置すると、腐敗して悪臭を放ったり、カビや他の病気の原因になったりします。 この「洗い流す」という手間が必要な点が、牛乳スプレーの最大の注意点です。
重曹スプレー|安全性が高く予防にも
掃除や料理でおなじみの重曹も、アブラムシ駆除に活用できます。安全性が非常に高く、うどんこ病の予防にも効果が期待できる優れものです。
【作り方と使い方】
- 水500mlに対して、重曹小さじ1をよく溶かします。
- (より効果を高める場合)食用油を少量(数滴〜小さじ1程度)加えると、葉への付着力が高まります。油を入れる場合は、混ざりやすくするために食器用洗剤を1〜2滴加えます。
- スプレーボトルに入れ、よく振ってからアブラムシに吹きかけます。
重曹スプレーも、高濃度で使用すると植物に影響が出る可能性があります。まずは薄めの濃度から試してみるのが安心です。散布後、白い粉が残ることがありますが、気になる場合は水で洗い流しましょう。
石鹸水・油石鹸水スプレー|強力な窒息効果
牛乳スプレーと同様に、石鹸の膜でアブラムシを窒息させる方法です。油を加えることで、さらに効果と付着力を高めることができます。
【作り方と使い方】
<シンプルな石鹸水>
水1リットルに対し、無添加の液体石鹸やカリ石鹸を1g程度(数滴)溶かして作ります。
<強力な油石鹸水>
- ペットボトルに水1リットル、食器用洗剤(ヤシの実由来など)をペットボトルのキャップ1杯分、サラダ油をキャップ2杯分入れます。
- 蓋を閉めて、白く濁るまでよくシェイクします。
- 残りの水(1リットル弱)を加えて、再度シェイクしたら完成です。
このスプレーは効果が高い反面、植物への負担も大きくなる可能性があります。散布後、10分〜15分程度経ったら必ず水で洗い流してください。 特に油石鹸水は、油膜が葉を覆って呼吸を妨げる可能性があるため、洗い流しは必須です。
そもそもアブラムシを寄せ付けない!今日からできる予防策

アブラムシは、発生してから駆除するよりも、そもそも寄せ付けない環境を作ることが最も重要です。日々のちょっとした工夫で、アブラムシの被害を大幅に減らすことができます。駆除と並行して、ぜひ予防策も実践してみてください。
この章では、効果的な予防策をご紹介します。
- 天敵を味方につける(テントウムシ、ヒラタアブなど)
- キラキラ光るものを嫌う習性を利用する(アルミホイルなど)
- 黄色い粘着シートで捕獲する
- コンパニオンプランツを植える(ミント、マリーゴールドなど)
- 防虫ネットで物理的にガードする
- 適切な栽培管理(風通し、肥料管理)
天敵を味方につける(テントウムシ、ヒラタアブなど)
自然界には、アブラムシを食べてくれる頼もしい味方がたくさんいます。その代表格がテントウムシです。ナナホシテントウやナミテントウの成虫は、1日に100匹以上のアブラムシを食べるとも言われています。 幼虫も大食漢で、アブラムシをどんどん捕食してくれます。
その他にも、カゲロウやヒラタアブの幼虫、アブラムシの体に卵を産み付けるアブラバチなども強力な天敵です。 殺虫剤をむやみに使うと、これらの益虫(えきちゅう)まで殺してしまいます。天敵を見かけたら、大切に見守ってあげましょう。
キラキラ光るものを嫌う習性を利用する(アルミホイルなど)
アブラムシは、キラキラと乱反射する光を嫌う習性があります。 この習性を利用して、植物の株元にアルミホイルやシルバーマルチ(銀色の農業用シート)を敷いておくと、アブラムシが寄り付きにくくなります。 簡単でコストもかからない、非常に効果的な予防策です。
黄色い粘着シートで捕獲する
アブラムシは黄色に誘引される習性があります。 この習性を逆手にとって、黄色の粘着シートを植物の近くに設置しておくと、飛来した有翅アブラムシを捕獲することができます。 物理的に捕まえるので、薬剤抵抗性のあるアブラムシにも有効です。
コンパニオンプランツを植える
一緒に植えることで、互いによい影響を与え合う植物のことを「コンパニオンプランツ」と呼びます。アブラムシが嫌う香りを放つハーブなどを近くに植えることで、アブラムシを遠ざける効果が期待できます。
【アブラムシ除けにおすすめのコンパニオンプランツ】
- ハーブ類:ミント、ローズマリー、セージ、バジルなど、香りの強いもの
- キク科植物:マリーゴールド、カモミール
- その他:ニンニク、チャイブ(おとり植物としてアブラムシを集める効果も)
防虫ネットで物理的にガードする
特に野菜などをプランターで育てている場合、目の細かい防虫ネットで全体を覆ってしまうのが最も確実な方法の一つです。 外部からのアブラムシの飛来を物理的にシャットアウトできるため、卵を産み付けられる心配がありません。
適切な栽培管理(風通し、肥料管理)
最初の章で触れた発生原因をなくすことが、根本的な予防につながります。
- 肥料は適量を守る:特に窒素成分の多い肥料の与えすぎに注意しましょう。
- 風通しを良くする:葉が密集している場所は、適度に剪定(せんてい)や間引きをして、風と光が通り抜けるようにしましょう。
日々の観察を怠らず、植物を健康に保つことが、何よりの病害虫対策になります。
どうしてもダメな時に…市販の駆除剤(農薬)を使う選択肢

手作りのスプレーや予防策を試しても、アブラムシが大量発生して手に負えなくなってしまうこともあります。そんな時は、無理せず市販の駆除剤(農薬)に頼るのも一つの方法です。最近は、安全面に配慮した製品も多く販売されています。
この章では、市販薬のメリット・デメリットと、初心者でも安心して使える製品をご紹介します。
市販薬を使うメリット・デメリット
メリット
- 効果が高い:手作りのスプレーに比べて、効果が確実で即効性が期待できます。
- 持続性がある:製品によっては、効果が1ヶ月程度持続するものもあります。
- 手間がかからない:作る手間がなく、購入してすぐに使えます。
デメリット
- コストがかかる:手作りに比べて費用がかかります。
- 安全性への懸念:化学合成成分を含むものは、人やペット、環境への影響が気になります。
- 益虫にも影響:アブラムシだけでなく、天敵となるテントウムシなどにも影響を与えてしまう可能性があります。
- 薬剤抵抗性:同じ薬剤を使い続けると、その薬が効かない「抵抗性」を持ったアブラムシが現れることがあります。
初心者でも安心!安全性の高いおすすめ駆除剤
「農薬は不安」という方でも使いやすい、食品成分や天然由来成分を主原料とした製品を選びましょう。
- 食酢100%タイプ(例:アース製薬 やさお酢)
お酢スプレーと同じ原理で、食品である食酢を100%使用した製品です。 収穫直前の野菜にも安心して使え、病気の予防効果もあります。 - 食品由来成分タイプ(例:住友化学園芸 ベニカマイルドスプレー)
水あめやヤシ油など、食品由来の成分でアブラムシを物理的に窒息させて駆除します。 化学殺虫成分を含んでいないため、有機JAS規格(オーガニック栽培)でも使用が認められています。 - 土にまく粒剤タイプ(例:住友化学園芸 オルトラン粒剤)
土にまくだけで、有効成分が根から吸収されて植物全体に行き渡り、汁を吸ったアブラムシを駆除します。 効果の持続期間が長いのが特徴ですが、使用できる植物や収穫までの期間に制限があるため、使用前には必ず説明書をよく読んでください。
どの薬剤を使う場合でも、必ず製品のラベルに記載されている使用方法、適用植物、使用回数などを守って正しく使用することが大切です。
よくある質問(Q&A)

ここでは、アブラムシ駆除に関するよくある疑問にお答えします。
お酢スプレーはどんな植物にも使えますか?
基本的には多くの植物に使用できますが、植物によっては酸に弱いものもあります。特に、葉が柔らかい新芽や花びら、ハーブ類などに使用する際は注意が必要です。初めて使用する際は、必ず目立たない葉で少量試してみて、数日様子を見てから全体に散布するようにしてください。葉焼けなどの異常が見られた場合は、使用を中止しましょう。
散布後、野菜はすぐに食べられますか?
お酢や重曹、牛乳など食品由来の成分で作ったスプレーの場合、基本的には散布後すぐに食べても問題ありません。ただし、お酢の匂いや重曹の粉っぽさが気になる場合や、衛生面を考慮して、食べる前には軽く水で洗い流すことをおすすめします。市販の薬剤を使用した場合は、製品に記載されている収穫前日数を必ず守ってください。
お酢スプレーの効果はどのくらい続きますか?
お酢スプレーの忌避効果は、残念ながらあまり長くは続きません。雨が降れば流れてしまいますし、晴天が続いても数日で効果は薄れていきます。そのため、予防目的で使う場合は、週に1〜2回など、定期的に散布を続けることが大切です。アブラムシの活動が活発な春と秋は、特にこまめなチェックと散布を心がけましょう。
木酢液と食酢の違いは何ですか?
主成分はどちらも「酢酸」ですが、作られ方と含まれる成分が異なります。食酢は穀物や果実を発酵させて作られる食品です。一方、木酢液は木炭を焼く際に出る煙を液体にしたもので、酢酸以外にも200種類以上の有機成分が含まれており、独特の燻製臭があります。 アブラムシ対策としては、食酢は殺菌や直接的な駆除、木酢液は燻製臭による忌避(予防)効果が主な目的とされています。
アブラムシはなぜ黄色に集まるのですか?
アブラムシが黄色に集まる正確な理由は完全には解明されていませんが、一説には、若くて栄養豊富な新しい葉の色を黄色として認識しているためではないかと言われています。この習性を利用したのが、黄色い粘着シートによる捕獲方法です。
牛乳スプレーを洗い流さないとどうなりますか?
牛乳スプレーを洗い流さずに放置すると、牛乳が腐敗して強い悪臭を放つ原因になります。 また、腐敗した牛乳はカビや雑菌の温床となり、すす病など別の病気を引き起こす可能性もあります。牛乳スプレーを使った後は、必ずしっかりと水で洗い流すことを徹底してください。
まとめ
- アブラムシは窒素肥料の多い場所や風通しの悪い場所を好む。
- 放置すると吸汁被害のほか、ウイルス病やすす病の原因になる。
- お酢スプレーは「水+お酢」で簡単に作れる安全な駆除剤。
- 駆除目的なら25〜50倍、予防目的なら100倍以上に薄めて使う。
- 散布は早朝か夕方、葉の裏までしっかりかけるのがコツ。
- 唐辛子やニンニクを漬け込むと、より強力なスプレーになる。
- 木酢液は燻製の香りでアブラムシを寄せ付けない予防効果がある。
- 牛乳スプレーは窒息効果があるが、使用後に洗い流しが必要。
- 重曹スプレーも安全性が高く、うどんこ病予防にもなる。
- 石鹸水スプレーは効果が高いが、植物への負担も考慮する。
- 天敵のテントウムシはアブラムシを食べる大切な益虫。
- 株元にアルミホイルを敷くと、光の反射でアブラムシを遠ざける。
- 黄色い粘着シートで飛来するアブラムシを捕獲できる。
- コンパニオンプランツや防虫ネットも有効な予防策。
- 手に負えない場合は、食品成分由来の市販薬も選択肢の一つ。
