家庭菜園で大切に育てているナスやジャガイモの葉が、いつの間にかレースのようにスカスカに…。そんな悲しい経験はありませんか?もしかしたら、その犯人は「テントウムシダマシ」かもしれません。益虫として知られる可愛いテントウムシとは違い、植物を食い荒らす厄介な害虫です。でも、大切な野菜に農薬は使いたくない、と考える方も多いはず。
本記事では、そんなあなたのために、農薬を使わずにテントウムシダマシを駆除する方法を徹底解説します。益虫のテントウムシとの見分け方から、被害の特徴、そして二度と寄せ付けないための予防策まで、家庭菜園の平和を守るための知識を詰め込みました。この記事を読めば、あなたもテントウムシダマシ対策の専門家になれるはずです。
その虫、本当にテントウムシダマシ?益虫との見分け方

テントウムシダマシの駆除を始める前に、まずは敵の正体を正確に知ることが重要です。アブラムシなどを食べてくれる益虫のテントウムシを、間違って駆除してしまっては元も子もありません。ここでは、害虫の「テントウムシダマシ」と益虫の「テントウムシ」を見分けるための、3つの重要なポイントを解説します。
- 見た目の違いは「ツヤ」と「星の数」
- 食性の違い:草食性のテントウムシダマシ、肉食性のテントウムシ
- 幼虫の見た目も全く違う!
見た目の違いは「ツヤ」と「星の数」
成虫を見分ける一番分かりやすいポイントは、体の「ツヤ」です。アブラムシを食べてくれるナナホシテントウなどの益虫は、ボディがツヤツヤと光沢を放っています。 一方、害虫であるテントウムシダマシ(ニジュウヤホシテントウなど)の体は、光沢がなく、短い毛で覆われているためマットな質感に見えます。
次に注目すべきは、背中の「星(斑点)の数」です。益虫のナナホシテントウは名前の通り星が7つですが、テントウムシダマシは種類にもよりますが、20個以上の多くの星を持っています。 ただし、益虫のナミテントウは模様のバリエーションが非常に多く、星が多い個体もいるため、ツヤの有無と合わせて総合的に判断するのが確実です。
特徴 | テントウムシダマシ(害虫) | テントウムシ(益虫) |
---|---|---|
体の光沢 | 光沢がなく、細かい毛が生えている | 光沢があり、ツヤツヤしている |
星(斑点)の数 | 28個など、数が多い | 7個など、比較的少ない(例外あり) |
正式名称の例 | ニジュウヤホシテントウ、オオニジュウヤホシテントウ | ナナホシテントウ、ナミテントウ |
食性の違い:草食性のテントウムシダマシ、肉食性のテントウムシ
見た目以上に決定的な違いが、その食性です。テントウムシダマシは、その名の通り「騙し」ていますが、何を騙しているかというと、その食性です。テントウムシの多くはアブラムシやハダニなどを食べる肉食性で、農家や家庭菜園家にとってはありがたい益虫です。
しかし、テントウムシダマシは草食性で、ナスやジャガイモ、キュウリなどの葉や実を食べてしまいます。 そのため、私たち人間にとっては害虫に分類されるのです。テントウムシに擬態することで、鳥などの天敵から身を守っていると考えられています。
幼虫の見た目も全く違う!
成虫だけでなく、幼虫の姿も全く異なります。テントウムシダマシの幼虫は、黄色っぽい体にトゲトゲがたくさん生えていて、まるでタワシのような見た目をしています。
一方、益虫であるナナホシテントウなどの幼虫は、黒っぽい体にオレンジ色の模様があり、細長いワニのような形をしています。葉の裏などで見慣れない虫を見つけたら、この違いを思い出して、益虫を間違って駆除しないように注意しましょう。
農薬を使わない!テントウムシダマシの駆除方法5選

テントウムシダマシの正体がわかったら、いよいよ駆除です。ここでは、化学合成農薬に頼らない、環境にも野菜にも優しい駆除方法を5つご紹介します。どれも手軽に試せるものばかりなので、ぜひ実践してみてください。
- 1. 見つけ次第、手で捕殺する
- 2. 木酢液・竹酢液スプレーで寄せ付けない
- 3. 牛乳スプレーで窒息させる
- 4. 草木灰やタバスコスプレーも効果あり?
- 5. 天敵はいない?人間が最大の天敵
1. 見つけ次第、手で捕殺する
最も原始的で、しかし最も確実な方法が「手で捕まえて駆除する」ことです。 テントウムシダマシは、危険を察知すると死んだふりをしてポトッと下に落ちる習性があります。 この習性を利用し、下に袋やカップを構えておいて、葉や茎を揺すって落として捕獲するのが効率的です。
特に、卵や孵化したばかりの幼虫は一か所に固まっていることが多いので、葉ごと切り取ってしまったり、ガムテープなどで貼り付けて取り除いたりするのがおすすめです。 大量発生する前に、こまめに畑をチェックし、見つけ次第駆除することが被害を最小限に抑えるコツです。
2. 木酢液・竹酢液スプレーで寄せ付けない
「虫に直接触るのは苦手…」という方には、木酢液や竹酢液を使った方法がおすすめです。木酢液は、木炭を作る際に出る煙を冷却して液体にしたもので、独特の燻製のような香りがします。この香りを害虫が嫌うため、忌避剤としての効果が期待できます。
使い方は簡単で、木酢液を水で500倍〜1000倍程度に薄めて、スプレーボトルに入れて葉の裏表に散布します。 ただし、木酢液は農薬として登録されているものではないため、殺虫効果ではなく、あくまで害虫を寄せ付けにくくするための予防的な使い方になります。 雨が降ると流れてしまうので、定期的な散布が必要です。
3. 牛乳スプレーで窒息させる
意外なものでは、牛乳もテントウムシダマシ対策に使えます。牛乳を水で1:1の割合で薄めたものをスプレーで吹きかけると、乾いたときに牛乳の膜がテントウムシダマシの気門(呼吸するための穴)を塞ぎ、窒息させる効果が期待できると言われています。
この方法は、特に動きの遅い幼虫に効果的です。 ただし、牛乳が腐敗すると悪臭の原因になったり、カビが発生したりする可能性もあるため、散布後は様子を見て、必要であれば水で洗い流すと良いでしょう。また、効果の持続性は高くないため、こまめな散布が求められます。
4. 草木灰やタバスコスプレーも効果あり?
昔ながらの知恵として、草木灰を水に溶いて散布する方法もあります。灰の匂いを嫌って虫が寄り付かなくなると言われています。 また、唐辛子の辛み成分を利用したタバスコスプレー(タバスコを水で薄めたもの)を試す人もいるようです。
これらの方法は、確実な効果が保証されているわけではありませんが、化学薬品を使いたくない場合の選択肢の一つとして試してみる価値はあるかもしれません。ただし、植物によっては刺激が強すぎる場合もあるため、まずは一部で試してから全体に使うようにしましょう。
5. 天敵はいない?人間が最大の天敵
残念ながら、テントウムシダマシには、その数を劇的に減らしてくれるような有力な天敵はほとんどいないとされています。 益虫のテントウムシに擬態しているため、鳥などもあまり捕食しないようです。
つまり、家庭菜園においては、私たち人間が最大の天敵となって、地道に駆除していくことが最も効果的な対策と言えるでしょう。 面倒に感じるかもしれませんが、大切な野菜を守るため、愛情をもって畑のパトロールを続けましょう。
テントウムシダマシの被害と生態

効果的な対策を行うためには、敵の行動パターンを知ることが不可欠です。テントウムシダマシがどのような被害をもたらし、どんな野菜を好み、いつ活動が活発になるのか。その生態を詳しく見ていきましょう。
- 被害の特徴:葉がレース状に食い荒らされる
- 好んで狙う野菜は?ナス科の植物に要注意!
- テントウムシダマシのライフサイクルと活動時期
被害の特徴:葉がレース状に食い荒らされる
テントウムシダマシの食害には、非常に特徴的な跡が残ります。成虫も幼虫も、葉の裏側から表皮を残すようにして、削り取るように食べ進めます。 その結果、葉の葉脈だけが残り、まるでレース編みや網目のように透けた状態になります。
被害が進行すると、葉は光合成ができなくなり、茶色く変色して枯れてしまいます。 ひどい場合には、葉だけでなく、茎や果実まで食害されることもあり、野菜の生育不良や収穫量の減少に直結する深刻な被害をもたらします。
好んで狙う野菜は?ナス科の植物に要注意!
テントウムシダマシは、特にナス科の植物を好んで食べます。家庭菜園で人気の高い以下の野菜は、特に注意が必要です。
- ジャガイモ
- ナス
- トマト、ミニトマト
- ピーマン、ししとう
また、ナス科以外では、キュウリやカボチャなどのウリ科の植物や、インゲンマメなどのマメ科の植物も被害に遭うことがあります。 これらの野菜を育てている場合は、テントウムシダマシの発生を常に警戒しておく必要があります。
テントウムシダマシのライフサイクルと活動時期
テントウムシダマシは、成虫の姿で落ち葉の下や建物の隙間などで越冬します。 そして、春になり気温が上がってくると活動を開始し、4月から10月頃まで発生が見られます。
越冬した成虫は、まず芽吹いたばかりのジャガイモの葉を食べ、そこに産卵することが多いです。 葉の裏に黄色く細長い卵を数十個まとめて産み付け、孵化した幼虫が集団で葉を食害します。 その後、蛹を経て成虫になり、さらに活動範囲を広げていきます。暖かい地域では、年に2〜3回発生を繰り返すため、一度発生すると長期間にわたって被害が続く可能性があります。
発生させないことが一番!効果的な予防策

テントウムシダマシの駆除も大切ですが、それ以上に重要なのが「そもそも発生させない」ための予防です。ここでは、テントウムシダマシを畑に寄せ付けないための、効果的な予防策を4つご紹介します。
- 防虫ネットや寒冷紗で物理的にガード
- コンパニオンプランツを活用する
- 畑の風通しを良くする
- ジャガイモの近くにナス科野菜を植えない
防虫ネットや寒冷紗で物理的にガード
最も確実な予防策の一つが、防虫ネットや寒冷紗(かんれいしゃ)で野菜を覆い、テントウムシダマシの侵入を物理的に防ぐ方法です。 トンネル状に支柱を立ててネットをかけることで、成虫が飛来して葉に卵を産み付けるのを防ぐことができます。
特に、テントウムシダマシの被害に遭いやすいナスやピーマンなどを植え付ける際には、植え付け直後からネットで覆っておくと非常に効果的です。ネットをかける際は、裾に隙間ができないように、しっかりと土で埋めるか、重しを置いて固定することが大切です。
コンパニオンプランツを活用する
コンパニオンプランツとは、一緒に植えることで互いに良い影響を与え合う植物のことです。テントウムシダマシ対策としては、バジルなどの香りの強いハーブ類を、ナスやトマトの近くに植えるのが効果的だと言われています。
強い香りを放つ植物を植えることで、テントウムシダマシが目的の野菜を見つけにくくする効果が期待できます。見た目も華やかになり、料理にも使えるハーブを育てることで、一石二鳥の効果が得られるかもしれません。
畑の風通しを良くする
テントウムシダマシをはじめとする多くの害虫は、湿気が多く風通しの悪い場所を好みます。 株元の葉が茂りすぎていたり、雑草が生い茂っていたりすると、害虫にとって絶好の隠れ家となってしまいます。
定期的に不要な葉を取り除いたり、株周りの雑草をこまめに抜いたりして、畑全体の風通しを良く保つことを心がけましょう。 これにより、病気の予防にも繋がり、野菜が健康に育つ環境を整えることができます。
ジャガイモの近くにナス科野菜を植えない
前述の通り、越冬したテントウムシダマシは、春にまずジャガイモに集まって産卵する習性があります。 そのため、ジャガイモの畑のすぐ隣に、同じく好物であるナスやトマトなどを植えてしまうと、ジャガイモで増えたテントウムシダマシが大移動してきて、被害が拡大してしまいます。
これを防ぐために、ジャガイモと他のナス科野菜は、できるだけ離れた場所で栽培するのが賢明です。もし同じ畑で栽培する場合は、間にキク科のレタスやアブラナ科のキャベツなど、テントウムシダマシが好まない野菜を植えることで、被害の拡大をある程度抑えることができるかもしれません。
よくある質問

テントウムシダマシの駆除に最適な時期はいつですか?
駆除に最適な時期は、成虫が活動を始める春(5月頃)と、卵や幼虫が集中している時期です。 越冬から目覚めた成虫が産卵する前に駆除できれば、その後の大量発生を防ぐことができます。また、卵や孵化直後の幼虫は一か所に固まっているので、この段階で葉ごと取り除けば効率的に駆除できます。
卵や幼虫を見つけたらどうすればいいですか?
葉の裏に黄色い卵のかたまりや、トゲトゲの幼虫を見つけたら、その葉ごとハサミで切り取って処分するのが最も簡単で確実です。 幼虫が分散してしまっている場合は、手で捕殺するか、牛乳スプレーなどを試してみましょう。
木酢液の作り方と使い方を教えてください。
市販の木酢液を使用します。製品によって濃度が異なるため、必ず記載されている希釈倍率を確認してください。一般的には500倍から1000倍に水で薄めます。 例えば、500倍液を1リットル作る場合は、水1リットルに対して木酢液2mlです。これをスプレーボトルに入れ、葉の表と裏にまんべんなく散布します。雨で流れるため、晴れた日が続くタイミングで、週に1〜2回程度散布するのがおすすめです。
牛乳スプレーはどのくらいの頻度で使えばいいですか?
牛乳スプレーは効果の持続性が高くないため、テントウムシダマシの発生が見られる間は、2〜3日に1回程度の頻度で散布するのがおすすめです。ただし、牛乳が腐敗する匂いやカビが気になる場合は、散布の頻度を調整したり、散布後に水で軽く洗い流したりするなどの工夫をすると良いでしょう。
テントウムシダマシに天敵はいますか?
残念ながら、テントウムシダマシを積極的に捕食するような有力な天敵はほとんどいません。 益虫のテントウムシに擬態することで、鳥などの捕食者から逃れていると考えられています。そのため、家庭菜園では人間が地道に駆除することが最も重要な対策となります。
まとめ

- テントウムシダマシは光沢がなく、星が多い害虫。
- 益虫のテントウムシはツヤがあり、星が少ない。
- 無農薬駆除は手での捕殺が最も確実。
- 揺すると落ちる習性を利用して捕獲する。
- 卵や幼虫は葉ごと切り取って処分する。
- 木酢液スプレーは忌避効果が期待できる。
- 牛乳スプレーは幼虫に効果的。
- 被害は葉がレース状になるのが特徴。
- ナス科の野菜(ジャガイモ、ナス、トマト)が特に好物。
- ウリ科の野菜も被害に遭うことがある。
- 予防には防虫ネットが非常に効果的。
- コンパニオンプランツ(バジルなど)も有効。
- 畑の風通しを良く保つことが大切。
- ジャガイモと他のナス科野菜は離して植える。
- 有力な天敵はいないため、人の手による管理が重要。