大切に育てている庭の植物や家庭菜園の野菜に、小さな虫がびっしり…。葉っぱが白っぽくなっていたら、それは「ヨコバイ」の仕業かもしれません。ヨコバイは植物の汁を吸って弱らせるだけでなく、病気を媒介することもある厄介な害虫です。でも、野菜やハーブにはできるだけ農薬を使いたくない、小さなお子さんやペットがいるから心配、そう考える方は多いのではないでしょうか。本記事では、そんなあなたのために、農薬を使わずにヨコバイを駆除し、寄せ付けないための具体的な方法を、プロの視点から分かりやすく解説します。
まずは知っておきたい!厄介なヨコバイの生態と被害

敵を知ることが、対策の第一歩です。まずは、神出鬼没なヨコバイがどのような虫で、植物にどんな影響を与えるのかをしっかり理解しましょう。正しく知ることで、より効果的な対策を立てることができます。
この章では、以下の点について詳しく解説していきます。
- ヨコバイってどんな虫?(特徴、名前の由来)
- ヨコバイの発生時期と好む環境
- 放置は危険!ヨコバイが引き起こす2つの重大な被害
ヨコバイってどんな虫?
ヨコバイは、カメムシ目・ヨコバイ科に分類される昆虫の総称です。 見た目はセミをとても小さくしたような形で、体長は2mmから10mm程度のものがほとんどです。 色は緑色や黄緑色、褐色など様々で、植物の葉や茎に紛れていると見つけにくいかもしれません。
そのユニークな名前は、危険を察知したときに横に這うように移動する習性から「横這い(ヨコバイ)」と名付けられました。 葉の裏などにスッと隠れるように移動するのが特徴的です。幼虫は翅がありませんが、成虫になると翅が生え、広範囲を飛び回って活動範囲を広げます。
ヨコバイの発生時期と好む環境
ヨコバイは、春から秋にかけて長期間活動しますが、特に梅雨明けから夏、そして秋口(8月上旬~10月中旬)にかけて活動が活発になり、大量発生しやすくなります。 温暖で湿度の高い環境を好み、風通しの悪い場所は絶好の住処となります。 植物が密集している場所や、雑草が生い茂っている場所は特に注意が必要です。
また、夜間は照明の光に集まる習性があるため、玄関灯や室内の明かりに引き寄せられて家の中に侵入してくることもあります。
放置は危険!ヨコバイが引き起こす2つの重大な被害
「小さい虫だから」と油断してはいけません。ヨコバイを放置すると、大切な植物に深刻な被害が及ぶ可能性があります。主な被害は以下の2つです。
吸汁による直接的な被害
ヨコバイの最も直接的な被害は、植物の汁を吸うことによるものです。 幼虫も成虫も、植物の葉や茎に針のような口を突き刺して栄養分を吸い取ります。栄養を奪われた植物は生育が悪くなり、葉が白っぽくカスリ状になったり、変色したりします。 被害が深刻になると、葉が枯れて落ちてしまい、最悪の場合は株全体が枯死することもあります。
病原菌の媒介
ヨコバイの被害は吸汁だけではありません。より深刻なのは、ウイルス病などの病原菌を媒介することです。 例えば、イネの「萎縮病」はツマグロヨコバイが媒介することで知られており、一度感染すると収穫に大きな影響が出ます。 ヨコバイが吸汁する際に、病原菌を持った個体が健全な植物に菌をうつしてしまうのです。一度病気にかかると治療は難しく、他の株にも広がる恐れがあるため、非常に厄介です。
【決定版】農薬を使わない!ヨコバイの駆除方法7選

ヨコバイの被害は深刻ですが、できるだけ農薬は使いたくないもの。ご安心ください、家庭にあるものや自然由来の資材を使って、効果的に駆除する方法があります。ここでは、環境にも優しく、安心して試せる無農薬の駆除方法を7つ厳選してご紹介します。
この章で紹介する無農薬駆除法は以下の通りです。
- ①牛乳・木酢液スプレー:身近なもので手軽に駆除
- ②ニームオイル:世界が認める天然の忌避剤
- ③粘着シート(黄色):物理的に捕獲する
- ④水で洗い流す:発生初期に有効な物理的駆除
- ⑤手で取り除く:見つけ次第、地道に駆除
- ⑥天敵を利用する:自然の力を借りる生物的防除
- ⑦剪定して風通しを良くする:発生しにくい環境を作る
①牛乳・木酢液スプレー:身近なもので手軽に駆除
家庭にある牛乳を使った駆除方法は、アブラムシ対策として有名ですが、ヨコバイにも効果が期待できます。 牛乳を水で薄めてスプレーし、乾かすことで膜を作り、ヨコバイを窒息させるという仕組みです。
【牛乳スプレーの作り方と使い方】
- 牛乳と水を1:1の割合で混ぜる。
- スプレーボトルに入れ、ヨコバイが発生している葉の裏表にまんべんなく散布する。
- 散布後は、牛乳が腐敗して臭いやカビの原因になるため、乾いたら水で洗い流すのがおすすめです。
また、木酢液や竹酢液も害虫の忌避剤として利用できます。独特の燻製のような香りでヨコバイを寄せ付けにくくします。製品に記載されている希釈倍率を守って使用しましょう。
②ニームオイル:世界が認める天然の忌避剤
ニームオイルは、インド原産の「ニーム」という樹木の種子から抽出される天然オイルです。 国連が「21世紀の樹」と称するほど、その効果は世界的に認められています。
ニームオイルに含まれる「アザディラクチン」という成分が、昆虫の食欲を減退させたり、脱皮や繁殖を阻害したりする効果を発揮します。 即効性のある殺虫剤とは異なりますが、定期的に散布することで、害虫が住みつきにくい環境を作ることができます。ヨコバイだけでなく、アブラムシやハダニなど200種類以上の害虫に効果があるとされています。
【ニームオイルの使い方】
- 製品の指示に従い、水で希釈します。(一般的に300~500倍程度)
- 展着剤(石鹸や専用のもの)を少量加えると、オイルが葉に付着しやすくなります。
- 週に1~2回程度、葉の裏表にしっかりと散布します。
ニームオイルは人やペット、益虫にはほとんど害がないため、安心して使えるのが大きなメリットです。
③粘着シート(黄色):物理的に捕獲する
ヨコバイなどの多くの害虫は、黄色に誘引される習性があります。この習性を利用したのが、黄色の粘着シートです。
植物の近くに吊るしておくだけで、飛んできたヨコバイの成虫を物理的に捕獲できます。どれくらいのヨコバイが発生しているかのモニタリングにも役立ちます。農薬を使わないので、収穫直前の野菜にも安心して設置できます。ホームセンターや園芸店で手軽に入手可能です。
④水で洗い流す:発生初期に有効な物理的駆除
ヨコバイの数がまだ少ない発生初期であれば、ホースなどで勢いよく水をかけて洗い流すだけでも効果があります。特に葉の裏に潜んでいることが多いので、下から上に向かって水をかけるのがコツです。
ただし、これは一時的な対策であり、根本的な解決にはなりません。また、水の勢いが強すぎると植物を傷めてしまう可能性があるので注意が必要です。他の駆除方法と組み合わせて行うと良いでしょう。
⑤手で取り除く:見つけ次第、地道に駆除
最も原始的ですが、確実な方法です。ヨコバイは動きが素早いですが、見つけたら指で潰したり、ガムテープなどに貼り付けて捕殺したりします。
数が少ないうちならこの方法でも対応できますが、大量発生してしまった場合は現実的ではありません。日々の観察の中で見つけ次第、地道に取り除くことが、大発生を防ぐことに繋がります。
⑥天敵を利用する:自然の力を借りる生物的防除
自然界には、ヨコバイを食べてくれる頼もしい味方がたくさんいます。これらの天敵を味方につけることで、農薬に頼らずにヨコバイの数をコントロールすることができます。
ヨコバイの主な天敵には、クモ、カマキリ、テントウムシ、ヒメコバチなどの寄生蜂、カエル、トカゲなどがいます。 庭の生態系を豊かにし、これらの天敵が住みやすい環境を整えることが、長期的な害虫対策に繋がります。殺虫剤をむやみに使うと、これらの益虫まで殺してしまうので注意が必要です。
⑦剪定して風通しを良くする:発生しにくい環境を作る
ヨコバイは、湿度が高く風通しの悪い場所を好みます。 そこで、枝や葉が密集している部分を剪定し、株全体の風通しと日当たりを良くすることが、非常に効果的な駆除・予防策になります。
風通しが良くなることで、ヨコバイが好む多湿な環境が改善されるだけでなく、天敵であるクモなどが活動しやすくなるというメリットもあります。また、植物が健康に育ち、病害虫への抵抗力が高まる効果も期待できます。
ヨコバイを寄せ付けない!今日からできる無農薬での予防策

ヨコバイの駆除も大切ですが、それ以上に重要なのが「そもそも寄せ付けない」ための予防です。日頃のちょっとした心がけで、ヨコバイが発生しにくい環境を作ることができます。ここでは、農薬を使わずにできる効果的な予防策をご紹介します。
この章で紹介する予防策は以下の通りです。
- 風通しと日当たりを改善する
- 雑草をこまめに除去する
- シルバーマルチや反射テープを活用する
- コンパニオンプランツを植える
風通しと日当たりを改善する
駆除方法でも触れましたが、風通しと日当たりの良い環境は、ヨコバイ予防の基本中の基本です。ヨコバイは湿気が多く、空気がよどんだ場所を好むためです。
定期的に剪定を行い、葉や枝が密集しすぎないように管理しましょう。プランターの場合は、鉢と鉢の間隔を十分に空けることも大切です。これにより、植物が健康に育ち、病害虫に対する抵抗力そのものがアップします。
雑草をこまめに除去する
庭や畑の雑草は、ヨコバイにとって格好の隠れ家や繁殖場所になります。特にイネ科の雑草は、ツマグロヨコバイなどの発生源となることがあります。
栽培している植物の周りの雑草は、こまめに除去することを心がけましょう。これにより、ヨコバイが潜む場所をなくし、発生を初期段階で抑えることができます。
シルバーマルチや反射テープを活用する
ヨコバイなどの害虫は、キラキラと光るものを嫌う性質があります。この性質を利用するのが、シルバーマルチやアルミホイル、反射テープです。
畑の畝(うね)をシルバーマルチで覆ったり、プランターの土の表面にアルミホイルを敷いたり、支柱に反射テープを吊るしたりすることで、ヨコバイが飛来するのを防ぐ効果が期待できます。物理的なバリアとして、非常に有効な予防策です。
コンパニオンプランツを植える
コンパニオンプランツとは、一緒に植えることでお互いによい影響を与え合う植物のことです。害虫を遠ざける効果を持つハーブなどを近くに植えることで、ヨコバイを寄せ付けにくくすることができます。
【ヨコバイ予防におすすめのコンパニオンプランツ】
- マリーゴールド:特有の香りで多くの害虫を遠ざける効果があります。
- ミント類:清涼感のある強い香りを害虫が嫌います。繁殖力が強いので、鉢植えでの管理がおすすめです。
- ニンニク、ネギ類:独特の匂いが害虫忌避に役立ちます。
これらの植物を野菜や花の近くに植えることで、自然の力でヨコバイから大切な植物を守ることができます。
どうしても駆除できない…農薬を使う場合の注意点

無農薬での対策を基本としたいですが、ヨコバイが大量発生してしまい、どうしても手に負えない場合もあるかもしれません。そのような時の最終手段として農薬を使用する際には、正しい知識を持って慎重に使うことが非常に重要です。
無農薬で効果がない場合の最終手段
牛乳スプレーやニームオイルなど、あらゆる無農薬対策を試しても被害が拡大し続ける…。そんな時は、植物を守るために農薬の使用を検討せざるを得ない状況かもしれません。
ただし、農薬はヨコバイだけでなく、天敵となる益虫やミツバチなどにも影響を与えてしまう可能性があります。 使用は必要最小限にとどめ、あくまで最終手段として考えましょう。
農薬選びのポイント
ホームセンターなどには様々な殺虫剤が並んでいますが、「ヨコバイ」に適用があるか、また対象の植物に使えるかを必ず確認してください。
有機リン系やネオニコチノイド系、合成ピレスロイド系の薬剤がヨコバイに効果があるとされていますが、同じ系統の薬剤を連続して使用すると、薬剤抵抗性がついて効きにくくなることがあります。 作用の異なる複数の薬剤をローテーションで使用するのが効果的です。
使用する際の注意点
農薬を使用する際は、製品ラベルに記載されている使用方法、希釈倍率、使用時期、使用回数を必ず守ってください。特に、野菜や果樹など口にする植物に使う場合は、収穫前日数(農薬を使用してから収穫できるまでの期間)を厳守する必要があります。
散布する際は、風のない早朝や夕方に行い、マスクや手袋、保護メガネを着用して、薬剤を吸い込んだり皮膚に付着したりしないように十分注意しましょう。また、近隣の住宅やペット、洗濯物などにもかからないよう、周囲への配慮も忘れないでください。
【FAQ】ヨコバイの無農薬駆除に関するよくある質問

Q. ヨコバイは人を刺しますか?
基本的にヨコバイは植物の汁を吸う昆虫であり、積極的に人を攻撃することはありません。しかし、まれに人の肌を植物と間違えて口吻を刺すことがあるようです。 刺されてもチクッとした軽い痛みを感じる程度で、毒性などはありませんが、大量発生している場所では注意した方が良いでしょう。
Q. 室内に入ってきたヨコバイはどうすればいいですか?
ヨコバイは夜間の光に集まる習性があるため、網戸の隙間などから室内に侵入することがあります。 室内で見つけた場合は、殺虫スプレーを使いたくない方も多いでしょう。その場合は、ティッシュで捕まえたり、掃除機で吸い取ったりするのが手軽です。数が多くなければ、窓を開けて外に逃がしてあげるのも一つの方法です。
Q. 木酢液やニームオイルにデメリットはありますか?
木酢液やニームオイルは天然由来で安全性が高い資材ですが、いくつか注意点があります。木酢液は規定以上に濃い濃度で使用すると、植物に薬害(葉が縮れたり、枯れたりする)が出ることがあります。 また、独特の燻製のような匂いが強いです。ニームオイルも特有の匂いがあり、高温時に使用すると薬害の原因になることがあります。 どちらも使用前には必ず製品の注意書きをよく読み、用法・用量を守って使用することが大切です。
Q. 天敵を増やすにはどうすればいいですか?
天敵を増やすには、彼らが住みやすい環境を作ってあげることが重要です。具体的には、多様な植物を植えて、隠れ家や餌場を提供することです。また、最も大切なのは安易に化学合成農薬を使わないことです。農薬は害虫だけでなく、クモやカマキリ、寄生蜂といった益虫も殺してしまいます。 天敵がいなくなると、かえって害虫が大発生しやすい環境になってしまうのです。
Q. ヨコバイとアブラムシの違いは何ですか?
どちらも植物の汁を吸う小さな害虫ですが、いくつか違いがあります。ヨコバイはセミに似た形で、危険を感じると横に素早く移動したり、飛び跳ねたりします。一方、アブラムシはふっくらとした形で、ほとんど移動せず、コロニー(集団)を作って密集していることが多いです。ヨコバイの被害は葉が白くカスリ状になるのが特徴ですが、アブラムシは排泄物(甘露)によって葉がベタベタになり、「すす病」を誘発する原因となります。
まとめ

- ヨコバイはセミに似た小型の昆虫で横に移動する。
- 春から秋に発生し、特に夏から秋に活発になる。
- 植物の汁を吸い、生育不良や病気の原因を作る。
- 無農薬駆除には牛乳や木酢液のスプレーが手軽。
- ニームオイルは忌避効果が高く、環境に優しい。
- 黄色の粘着シートで物理的に捕獲するのも有効。
- 発生初期なら水で洗い流すだけでも効果がある。
- 天敵(クモ、カマキリ等)はヨコバイの数を抑える味方。
- 予防の基本は剪定による風通しと日当たりの改善。
- 雑草はヨコバイの隠れ家になるためこまめに除去する。
- シルバーマルチの光を嫌う習性を利用して予防できる。
- コンパニオンプランツを植えて自然に忌避する。
- 農薬は益虫にも影響するため最終手段として考える。
- 農薬使用時は用法・用量を守り、周囲に配慮する。
- ヨコバイの生態を理解し、総合的な対策を行うことが重要。