「ゴキブリの心臓は13個ある」そんな噂を聞いたことはありませんか?あの驚異的な生命力を考えると、あながち嘘ではないかも…と思ってしまいますよね。しかし、その真相は少し違います。本記事では、多くの人が誤解しているゴキブリの心臓の数の真実から、頭がなくても生きられる生命力の秘密、そして意外な弱点まで、プロの視点で徹底的に解説します。この記事を読めば、ゴキブリの生態を深く理解し、効果的な対策を立てられるようになります。
【衝撃の事実】ゴキブリの心臓の数は13個ではない!

多くの人が「ゴキブリの心臓は13個もあるから生命力が強い」と信じていますが、実はこれは正確な情報ではありません。ゴキブリの体の仕組みは、私たち哺乳類とは大きく異なり、その心臓もまた特殊な構造をしています。まずは、その驚くべき心臓の真実に迫ってみましょう。
この章では、以下の点について詳しく解説していきます。
- 正体は「背脈管」という1つの管状心臓
- 13個の「心室」が心臓の役割を果たす
- 人間の心臓との決定的な違い【表で比較】
正体は「背脈管」という1つの管状心臓
ゴキブリの心臓は、私たちのような握りこぶし大の塊ではありません。その正体は、「背脈管(はいみゃくかん)」と呼ばれる、背中側を縦に走る1本の細長い管です。 これは、心臓というよりは、むしろ1本の大動脈に近いイメージかもしれません。
この管状の心臓が、体の後ろから頭部に向かって血液(正しくは血リンパ)を送り出すポンプの役割を担っています。人間のように心房と心室に分かれた複雑な構造ではなく、非常にシンプルな作りになっているのが特徴です。この単純さが、逆に効率的な生命維持を可能にしているのかもしれません。
13個の「心室」が心臓の役割を果たす
では、なぜ「心臓が13個ある」という説が広まったのでしょうか。その理由は、この「背脈管」の構造にあります。背脈管は、ただの管ではなく、12個から13個程度の「心室」と呼ばれる部屋に分かれています。
それぞれの心室には「心門」という弁のついた穴があり、そこから体液を吸い込みます。そして、各心室がリズミカルに収縮することで、血液を前方へ、前方へと送り出していくのです。 この、独立して動く心室が複数ある様子が、「心臓が13個ある」という表現につながったと考えられます。 つまり、1つの管状心臓が、13個のポンプ(心室)を持っている、というのがより正確な理解と言えるでしょう。
人間の心臓との決定的な違い【表で比較】
ゴキブリの心臓と人間の心臓は、その構造も役割も大きく異なります。最も大きな違いは、ゴキブリの血液(血リンパ)は酸素を運ばないという点です。 人間は肺で取り込んだ酸素を血液に乗せて全身に運びますが、ゴキブリは全く別の方法で呼吸しています(詳しくは後述します)。そのため、ゴキブリの心臓の役割は、主に栄養素を全身に行き渡らせることです。
以下に、ゴキブリと人間の心臓の主な違いを表にまとめました。
項目 | ゴキブリの心臓 | 人間の心臓 |
---|---|---|
形状 | 背中にある1本の管(背脈管) | 胸にある握りこぶし大の塊 |
構造 | 複数の心室に分かれている | 2心房2心室 |
血管系 | 開放血管系 | 閉鎖血管系 |
血液の役割 | 栄養素の運搬が主 | 酸素と栄養素の運搬 |
血液の色 | 無色または淡黄色 | 赤色 |
このように、ゴキブリは私たちとは全く異なる循環器システムを持っていることがわかります。そして、この特殊なシステムこそが、彼らの驚異的な生命力の源泉の一つとなっているのです。
なぜ?ゴキブリが頭なしでも生きられる3つの秘密

「ゴキブリは頭を切り落としても1週間は生きる」という、にわかには信じがたい話を聞いたことはありませんか? これは都市伝説ではなく、科学的な根拠のある事実です。なぜそんなことが可能なのでしょうか。その理由は、ゴキブリが持つ3つの特殊な体の仕組みに隠されています。
この章では、ゴキブリの不死身とも思える生命力の謎を解き明かします。
- 秘密①:血管がなくても大丈夫!「開放血管系」の仕組み
- 秘密②:全身で呼吸する!「気門」という呼吸器官
- 秘密③:脳に頼らない!分散した「はしご形神経系」
秘密①:血管がなくても大丈夫!「開放血管系」の仕組み
ゴキブリの生命力の秘密を解く鍵の一つが、先ほども触れた「開放血管系」です。 人間のような閉鎖血管系では、動脈と静脈が毛細血管で繋がっており、血液は常に血管の中を流れています。そのため、大きな怪我で血管が切れれば大出血を起こし、血圧が低下して死に至ります。
しかし、ゴキブリの開放血管系では、心臓から送り出された血液(血リンパ)は、動脈の末端から体内の空間(体腔)に直接流れ出します。 そして、組織や器官をひたひたに満たしながらゆっくりと循環し、再び心臓に戻っていくのです。
この仕組みのおかげで、ゴキブリは頭部を切断されるといった致命的な傷を負っても、人間のように大量出血で即死することがありません。 傷口はすぐに固まり、体液の流出を最小限に食い止められるのです。血圧に頼らない循環システムだからこそ、このような芸当が可能になります。
秘密②:全身で呼吸する!「気門」という呼吸器官
人間は鼻や口で呼吸し、肺で酸素を取り込みます。そのため、頭部がなくなれば呼吸ができず、すぐに死んでしまいます。しかし、ゴキブリは全く違う方法で呼吸しています。
ゴキブリの体には、胸部から腹部にかけての両側面に「気門(きもん)」と呼ばれる小さな呼吸用の穴が複数並んでいます。 この気門から直接空気を取り込み、体内に張り巡らされた気管という管を通して、全身の細胞に直接酸素を供給しているのです。
つまり、ゴキブリは頭がなくても、胴体にある気門で呼吸を続けることができます。 脳からの指令がなくても、呼吸という生命維持に不可欠な活動が独立して行えるのです。これが、頭を失っても数日から1週間も生き続けられる大きな理由の一つです。
秘密③:脳に頼らない!分散した「はしご形神経系」
人間の場合、脳が中枢神経として全身の動きをコントロールしています。脳からの指令がなければ、手足を動かすことも、心臓を動かすこともできません。
一方、ゴキブリの神経系は「はしご形神経系」と呼ばれ、頭部にある脳だけでなく、体の各節に「神経節(しんけいせつ)」という小さな司令塔が分散して配置されています。 これらがはしごのように連なって、全身のネットワークを形成しています。
このため、ゴキブリは頭部の脳を失っても、各所の神経節がその場の状況に応じて脚を動かしたり、刺激に反応したりすることができます。 もちろん、視覚や触覚といった高度な情報処理はできなくなりますが、基本的な生命活動や反射的な動きは維持されるのです。頭がなくても逃げ惑うように動けるのは、この分散した神経システムのおかげなのです。
ゴキブリの生命力を支えるその他の体の仕組み

ゴキブリの驚異的な生命力は、特殊な心臓や呼吸、神経系だけによるものではありません。彼らの体には、過酷な環境を生き抜くためのさらなる秘密が隠されています。ここでは、ゴキブリの生命力を支えるその他の驚くべき体の仕組みについて、さらに深く掘り下げていきましょう。
この章で解説する、さらなる秘密はこちらです。
- 血液の色は何色?酸素を運ばない「血リンパ」
- 何でも食べる!驚異の雑食性と絶食への耐性
- 驚くべき繁殖力と単為生殖
血液の色は何色?酸素を運ばない「血リンパ」
ゴキブリを潰したとき、赤い血が出ないことを不思議に思ったことはありませんか?それは、彼らの血液に、血液を赤く見せる「ヘモグロビン」が含まれていないためです。
ゴキブリの体液は「血リンパ(けつりんぱ)」と呼ばれ、その色は無色透明、または食べたものによって淡い黄色や緑色をしています。 前述の通り、ゴキブリは気門と気管で全身に直接酸素を供給するため、血液が酸素を運ぶ必要がありません。 そのため、酸素と結合して赤くなるヘモグロビンが必要ないのです。血リンパの主な役割は、消化管で吸収した栄養素を全身の細胞に届けることと、老廃物を排出器官に運ぶことです。
何でも食べる!驚異の雑食性と絶食への耐性
ゴキブリの生命力を語る上で欠かせないのが、その驚異的な食性です。彼らは雑食性で、人間の食べ残しはもちろん、髪の毛、ホコリ、本の紙、仲間の死骸や糞まで、ありとあらゆる有機物を餌にします。 この何でも食べる能力が、餌の少ない環境でも生き延びることを可能にしています。
さらに驚くべきは、その絶食への耐性です。クロゴキブリなどの大型種は、水さえあれば1ヶ月以上、水がなくても2週間程度は生き延びることができると言われています。 これは、非常に効率的な代謝システムを持ち、体内に蓄えた脂肪体をエネルギー源として利用できるためです。食べ物がなくても簡単には死なない、まさにサバイバルの達人と言えるでしょう。
驚くべき繁殖力と単為生殖
ゴキブリが絶滅しない最大の理由の一つが、その凄まじい繁殖力です。例えば、日本の家庭でよく見られるクロゴキブリのメスは、一度の交尾で何度も産卵することができ、生涯に15~20個ほどの卵鞘(らんしょう)を産みます。1つの卵鞘には20~30個の卵が入っているため、1匹のメスから数百匹の子孫が生まれる計算になります。
さらに、一部のゴキブリは「単為生殖(たんいせいしょく)」という能力を持っています。これは、メスがオスと交尾しなくても子どもを産める能力のことです。 たとえ1匹のメスが新しい環境に侵入したとしても、単独で子孫を増やし、コロニーを形成することが可能なのです。この驚異的な繁殖戦略が、彼らが世界中に分布を広げ、繁栄し続ける大きな要因となっています。
無敵ではない!ゴキブリの知られざる弱点と対策

ここまでゴキブリの驚異的な生命力について解説してきましたが、「ゴキブリは無敵だ…」と絶望する必要はありません。どんなに強い生物にも必ず弱点は存在します。彼らの生態を正しく理解すれば、効果的に対策を立てることが可能です。ここでは、ゴキブリの意外な弱点と、それに基づいた賢い撃退法をご紹介します。
この章を読めば、あなたもゴキブリ対策マスターになれるはずです。
- 弱点①:寒さと乾燥
- 弱点②:呼吸を妨げるもの(洗剤・アルコール)
- 弱点③:意外な天敵たち
- 生態から考える効果的なゴキブリ対策
弱点①:寒さと乾燥
ゴキブリは、元々熱帯・亜熱帯地域が原産の昆虫です。そのため、高温多湿な環境を好む一方で、寒さと乾燥には非常に弱いという特徴があります。 一般的に、気温が20℃を下回ると活動が鈍くなり、10℃以下では繁殖も活動もほとんどできなくなります。
特に、冬場の屋外で越冬できる種類は限られています。 多くのゴキブリが冬でも暖かい人間の家屋に侵入し、潜んでいるのはこのためです。逆に言えば、家の中の湿度を低く保ち、ゴキブリが隠れそうな場所の風通しを良くすることは、彼らにとって住みにくい環境を作る上で非常に効果的です。
弱点②:呼吸を妨げるもの(洗剤・アルコール)
ゴキブリの生命線である「気門」。この呼吸器官を塞がれることは、彼らにとって致命的です。殺虫剤が手元にない緊急時に、食器用洗剤やアルコールスプレーが有効なのはこのためです。
洗剤に含まれる界面活性剤や、アルコールには、油分を分解し、表面張力を低下させる働きがあります。これらをゴキブリにかけると、体の表面を覆っている油分が取り除かれ、液体が気門に浸透しやすくなります。結果として気門が塞がれ、ゴキブリは窒息してしまいます。殺虫成分を使わずに退治できる、覚えておくと便利な方法です。
弱点③:意外な天敵たち
家の中で遭遇すると悲鳴をあげてしまいがちな生き物の中にも、実はゴキブリを捕食してくれる頼もしい味方がいます。その代表格が、アシダカグモです。
アシダカグモは、巣を張らずに徘徊してゴキブリなどの害虫を捕食する益虫です。 見た目は大きいですが、人間には無害で、家のゴキブリを食べてくれるハンターなのです。もし家で見かけても、むやみに殺さずそっとしておくのも一つの手かもしれません。その他、屋外ではムカデやゲジ、鳥なども天敵となりますが、家の中での最大の天敵はアシダカグモと言えるでしょう。
生態から考える効果的なゴキブリ対策
ゴキブリの生態と弱点を踏まえると、効果的な対策が見えてきます。
- 侵入経路を塞ぐ: わずかな隙間からでも侵入します。 排水溝、換気扇、エアコンのドレンホース、窓の隙間などを徹底的に塞ぎましょう。
- 餌と水を与えない: 生ゴミは密閉容器に、食べ物は放置しない、シンクの水滴は拭き取るなど、ゴキブリが生きるために必要なものを断つことが重要です。
- 隠れ家をなくす: ゴキブリは暗く、暖かく、狭い場所を好みます。 ダンボールや新聞紙を溜め込まず、家具の裏なども定期的に掃除して、隠れ場所をなくしましょう。
- ベイト剤(毒餌)の活用: 食べたゴキブリだけでなく、そのフンや死骸を食べた仲間も駆除できるタイプのベイト剤は、巣ごと退治するのに非常に効果的です。
これらの対策を組み合わせることで、ゴキブリにとって住みにくい環境を作り、遭遇する確率を大幅に減らすことができます。
ゴキブリの心臓に関するよくある質問

ゴキブリの心臓はどこにありますか?
ゴキブリの心臓(背脈管)は、体の背中側、つまり上側に沿って、お尻のほうから頭のほうへ向かって伸びています。 私たち人間のように胸の中心にあるのではなく、背中全体にわたるようなイメージです。この管状の心臓が収縮することで、体液を全身に送り出しています。
ゴキブリを潰すと卵が飛び散るって本当ですか?
「メスのゴキブリを叩き潰すと、お腹の中の卵が飛び散って大繁殖する」という話はよく聞かれますが、これは少し大げさな表現です。 ゴキブリの卵は「卵鞘(らんしょう)」という硬いカプセルのようなものに守られています。 この卵鞘は非常に頑丈で、叩いたくらいでは簡単には壊れません。
ただし、潰した際にメスが持っていた卵鞘が潰れずに残り、それに気づかずに放置してしまうと、後日そこから幼虫が孵化する可能性は十分にあります。 ゴキブリを退治した後は、死骸だけでなく、茶色い小豆のような卵鞘が落ちていないかもしっかり確認し、適切に処分することが重要です。
ゴキブリは痛みを感じるのですか?
昆虫が人間と同じように「痛み」という感情を感じるかどうかは、科学的にまだ完全には解明されていません。人間が痛みを感じるのは、脳がダメージを「痛い」と認識するからです。ゴキブリにも神経系はありますが、人間のような複雑な感情を処理する脳の構造は持っていません。
しかし、体にダメージを受ければそれを危険な刺激として認識し、逃げようとする反射行動は起こします。これを「痛み」と呼ぶかは解釈によりますが、少なくとも生存を脅かす危険な刺激として認識していることは間違いないでしょう。
他の昆虫の心臓もゴキブリと同じですか?
はい、ゴキブリだけでなく、バッタやカマキリ、チョウなど、多くの昆虫がゴキブリと同様の「背脈管」という管状の心臓と「開放血管系」を持っています。 これは昆虫というグループに共通する体の基本的なつくりです。
昆虫が繁栄できた理由の一つに、この効率的な体のシステムがあると考えられています。血管が隅々まで行き渡っていなくても生命を維持できるこの仕組みは、小型化や多様な環境への適応に有利だったのかもしれません。
ゴキブリの寿命はどのくらいですか?
ゴキブリの寿命は種類や環境によって大きく異なります。 例えば、日本の家屋でよく見られるクロゴキブリは、幼虫期間が1年近くあり、成虫になってから数ヶ月生きるため、合計で1年半から2年ほど生きることがあります。 一方、飲食店などで問題になるチャバネゴキブリは発育が早く、卵から成虫まで2ヶ月ほどで、寿命は全体で4ヶ月から8ヶ月程度です。 暖房が効いた暖かい環境では、一年中繁殖を繰り返します。
まとめ

- ゴキブリの心臓は13個ではなく、1本の管状心臓「背脈管」です。
- 背脈管は12~13個の「心室」という部屋に分かれています。
- この複数の心室がポンプの役割を果たし、俗説の元になりました。
- ゴキブリは人間と違う「開放血管系」という循環システムを持ちます。
- 頭を失っても生きられるのは、開放血管系のおかげで失血死しないためです。
- 呼吸は頭ではなく、胴体にある「気門」という穴で行います。
- 脳に頼らない「はしご形神経系」で、頭がなくても体が動きます。
- 血液は「血リンパ」と呼ばれ、無色透明で酸素を運びません。
- 雑食性で、ホコリや髪の毛、仲間の死骸まで何でも食べます。
- 水さえあれば1ヶ月以上生きられるほどの絶食耐性があります。
- メスだけで繁殖できる「単為生殖」を行う種類もいます。
- 弱点は「寒さ」と「乾燥」で、高温多湿を好みます。
- 洗剤やアルコールをかけると気門が塞がり窒息します。
- 家の中の天敵は、ゴキブリを捕食するアシダカグモです。
- 対策の基本は、侵入経路を塞ぎ、餌と水、隠れ家をなくすことです。