古典文学を読み進める中で、「のたまう」という言葉に出会い、その意味や使い方に疑問を感じたことはありませんか?この古語は、現代語の「おっしゃる」に相当する尊敬語ですが、単なる言い換えでは捉えきれない奥深いニュアンスを持っています。本記事では、「のたまう」の基本的な意味から、古典文学における具体的な使用例、さらには現代語での使われ方まで、分かりやすく解説します。
この言葉を深く理解することで、古典の世界がより鮮やかに見えてくるでしょう。
のたまう古語の基本的な意味と現代語訳を徹底解説

「のたまう」は、古典文学に頻繁に登場する重要な古語の一つです。その意味を正しく理解することは、古文読解の第一歩と言えます。まずは、この言葉が持つ基本的な意味と、現代語に訳す際のポイントを押さえましょう。
「のたまう」は「おっしゃる」の最上級尊敬語
古語の「のたまう」は、現代語の「おっしゃる」に相当する尊敬語です。しかし、単に「言う」の尊敬語というだけでなく、非常に高い敬意を表す言葉として使われていました。主に、天皇や貴族、神仏といった身分の高い人物の発言に対して用いられるのが特徴です。
その語源は、「告る(のる)」と「給ふ(たまふ)」が結びついた「のりたまふ」が音変化したものとされています。神聖なものや天皇が人々に表明する「告る」と、軽い敬意を表す「給ふ」が合わさることで、その言葉に重みと敬意が込められているのです。
現代語における「のたまう」の使われ方と注意点
現代において「のたまう」という言葉を耳にする機会は、古典文学の引用や解説を除けば、あまり多くありません。しかし、もし現代語として使われる場合、そのニュアンスは古語とは大きく異なることがあります。現代では、相手の発言を皮肉やからかい、あるいは軽い侮蔑の気持ちを込めて「言う」という意味で使われることが多いのです。
例えば、「彼はまた大層なことをのたまっている」といった形で、相手の言葉を大げさにもっともらしく言っている、というニュアンスで用いられます。 このように、古語と現代語では意味合いが逆転することもあるため、文脈をよく見て判断することが大切です。
古典文学で役立つ「のたまう」の正しい使い方と具体例
「のたまう」を古典文学で正しく理解するためには、その言葉がどのような状況で、誰が誰に対して使うのかを知ることが不可欠です。ここでは、具体的な使い方と、有名な古典作品からの例文を通して、理解を深めていきましょう。
「のたまう」は誰が誰に対して使う言葉なのか
古典における「のたまう」は、動作主(発言する人)への敬意を表す尊敬語です。 そのため、この言葉の主語は常に敬意を払うべき人物、つまり身分の高い人になります。例えば、天皇、皇后、貴族、あるいは神仏などが「のたまう」の主語となることが多いです。
作者が、これらの高貴な人物の発言を読者に対して敬意を込めて描写する際に用いられます。また、身分の高い人が目下の人や身内の人に、さらに身分の高い人の言ったことを伝える際にも使われることがあります。
「のたまう」の活用形一覧と例文で理解を深める
「のたまう」はハ行四段活用動詞です。古文の動詞は活用形によって形が変わるため、一覧で確認し、例文を通して慣れていきましょう。以下に主な活用形と例文を示します。
- 未然形:のたまは(ず)
- 連用形:のたまひ(て)
- 終止形:のたまう(。)
- 連体形:のたまう(こと)
- 已然形:のたまへ(ば)
- 命令形:のたまへ(!)
例文:
- 帝のたまはく、「いとあはれなり。」(帝がおっしゃるには、「とても趣深いことだ。」)
- 中宮のたまひて、「いかでかさることを。」(中宮がおっしゃって、「どうしてそのようなことがありましょうか。」)
- かの君のたまうこと、まことにやあらむ。(あの方がおっしゃることは、本当であろうか。)
このように、文脈によって活用形が変化しますが、意味合いは「おっしゃる」という尊敬の意で一貫しています。
源氏物語や枕草子に見る「のたまう」の具体的な使用例
「のたまう」は、『源氏物語』や『枕草子』といった平安時代の代表的な古典文学に頻繁に登場します。これらの作品を読むことで、実際の使われ方をより深く理解できます。例えば、『源氏物語』では、光源氏や帝、女君たちの発言を表現する際に「のたまう」が用いられ、登場人物の身分の高さや作者の敬意が示されます。 『枕草子』では、清少納言が仕えた中宮定子(ていし)の発言に対して使われることが多く、中宮への深い敬意が感じられます。
これらの作品を通じて、「のたまう」が単なる言葉ではなく、当時の社会における身分制度や人間関係、そして作者の心情を映し出す鏡であることが分かります。
「のたまう」と似た古語との違いを明確にする

古語には「のたまう」以外にも「言う」の尊敬語や謙譲語が多く存在します。それぞれの言葉が持つニュアンスや敬意の度合いを理解することで、古文読解の精度が格段に向上します。ここでは、特に混同しやすい言葉との違いを明確にしていきましょう。
「仰す(おおす)」との敬意の度合いと使い分け
「仰す(おおす)」も「言う」の尊敬語であり、「おっしゃる」という意味で使われます。しかし、「のたまう」と比べると、「のたまう」の方がより高い敬意を表すとされています。 「仰す」は、天皇や貴族だけでなく、ある程度の身分を持つ人物の発言にも使われることがあります。
一方、「のたまう」は、主に天皇やそれに準ずる最高位の人物の発言に限定して使われる傾向が強いです。したがって、古典を読む際には、どちらの言葉が使われているかによって、発言者の身分や作者が抱く敬意の度合いを推測する手がかりになります。
「宣ふ(のりたまう)」との意味の違いと文脈判断
「宣ふ(のりたまう)」は、「のたまう」の語源となった言葉であり、意味も非常に近いです。元々は「告り給ふ」と書き、「告げなさる」という意味で、神や天皇が人々に告げ知らせる際に使われました。 「のたまう」は「のりたまふ」が音変化したもので、時代が下るにつれて「のたまう」がより一般的に使われるようになりました。
そのため、両者はほぼ同じ意味で使われることが多いですが、「宣ふ」の方がより古風で格式ばった表現として認識されることがあります。文脈によっては、作者が意図的に古い表現を選んで、より厳かな雰囲気を演出している場合もあるため、注意深く読み解くことが重要です。
「言ふ」「申す」との比較で敬語の体系を把握する
「のたまう」が「言う」の尊敬語であるのに対し、「言ふ(いふ)」は一般的な「言う」を意味し、敬意を含まない言葉です。また、「申す(まうす)」は「申し上げる」という意味の謙譲語であり、動作の受け手(聞き手)に対する敬意を表します。 これらの言葉を比較することで、古語の敬語体系がより明確になります。
- 言ふ(いふ):一般的な「言う」。敬意なし。
- のたまう(のたまふ):尊敬語。「おっしゃる」。動作主への敬意。
- 申す(まうす):謙譲語。「申し上げる」。動作の受け手への敬意。
このように、誰が誰に対して敬意を表しているのか、敬意の方向を意識しながら言葉を捉えることが、古文読解の鍵となります。
古語の敬語を深く理解するための学習方法

古語の敬語は、現代語の敬語とは異なる体系を持つため、苦手意識を持つ人も少なくありません。しかし、いくつかのコツを押さえることで、効率的に理解を深め、古文読解力を向上させることが可能です。ここでは、古語の敬語学習に役立つ方法を紹介します。
古文読解力を高めるための敬語の体系的な学習
古文の敬語を学ぶ上で大切なのは、単語一つ一つを覚えるだけでなく、敬語の種類とその体系を理解することです。古文の敬語には、尊敬語、謙譲語、丁寧語の3種類があります。 それぞれが「誰から誰への敬意を表すのか」という敬意の方向を明確に把握することが、読解の土台となります。
例えば、尊敬語は動作をする人(主語)への敬意、謙譲語は動作を受ける人(目的語)への敬意、丁寧語は読み手や聞き手への敬意を表します。 これらの基本をしっかりと頭に入れることで、複雑な古文の文章も構造的に捉えられるようになります。敬語動詞や補助動詞の一覧表を活用し、繰り返し確認する練習を取り入れましょう。
文脈から敬意の方向を正確に読み解く方法
古文では、現代語と異なり主語が省略されることが多いため、敬語が誰から誰への敬意を表しているのかを判断するのが難しい場合があります。 そこで重要になるのが、文脈全体から敬意の方向を読み解く力です。具体的には、以下の点を意識して読み進めましょう。
- 敬語の種類を特定する:まずは、その敬語が尊敬語、謙譲語、丁寧語のどれに当たるのかを判断します。
- 動作主・動作の受け手を特定する:敬語が使われている動詞の動作主は誰か、またその動作の受け手は誰かを文脈から推測します。
- 登場人物の身分関係を把握する:古典常識として、登場人物間の身分関係を理解しておくことも大切です。身分の高い人物が主語になる場合は尊敬語が使われやすい、といった傾向があります。
- 地の文と会話文を区別する:地の文と会話文では敬意の対象が変わることがあります。会話文では、話し手から聞き手への敬意が加わることも考慮しましょう。
これらの方法を組み合わせることで、たとえ主語が省略されていても、敬意の方向を正確に捉え、古文の内容を深く理解できるようになります。
よくある質問

- 「のたまう」はなぜ現代ではあまり使われないのですか?
- 古典文学を読む上で「のたまう」を理解する重要性は何ですか?
- 「のたまう」は皮肉な意味で使われることがありますか?
- 古語の「のたまう」を覚える簡単な方法はありますか?
- 「のたまう」はどのような身分の人が使う言葉ですか?
- 「のたまう」と「言ふ」の決定的な違いは何ですか?
「のたまう」はなぜ現代ではあまり使われないのですか?
「のたまう」が現代で使われなくなった主な理由は、言葉の持つ格式の高さと、現代社会における敬語表現の変化にあります。元々、天皇や貴族といった最高位の人物の発言に限定して使われるほど、非常に強い敬意を表す言葉でした。現代では、そこまで厳格な身分制度が存在しないため、日常会話で用いるには過剰な表現となり、馴染まなくなりました。
また、現代語の「おっしゃる」がより一般的で使いやすい尊敬語として定着したことも、使われなくなった一因です。
古典文学を読む上で「のたまう」を理解する重要性は何ですか?
古典文学を読む上で「のたまう」を理解することは、作品の世界観や登場人物の心情、そして当時の社会構造を深く読み解くために非常に重要です。この言葉が使われている箇所を正確に把握することで、発言者の身分の高さや、作者がその人物に対して抱いている敬意の度合いを推測できます。これにより、単に物語を追うだけでなく、作品に込められた作者の意図や、登場人物間の繊細な人間関係まで感じ取れるようになります。
「のたまう」は皮肉な意味で使われることがありますか?
はい、現代語においては「のたまう」が皮肉やからかい、あるいは軽い侮蔑の気持ちを込めて使われることがあります。 これは、本来高い敬意を表す言葉である「のたまう」を、あえて現代の文脈で用いることで、相手の発言を大げさにもっともらしく言う、といったニュアンスを込めるためです。 古語と現代語で意味合いが逆転しているため、現代の文章でこの言葉を見かけた場合は、文脈からその意図を慎重に判断する必要があります。
古語の「のたまう」を覚える簡単な方法はありますか?
古語の「のたまう」を覚えるには、まず「おっしゃる」という現代語訳と、「身分の高い人が言う」という基本的な使い方をセットで覚えるのがおすすめです。 その上で、源氏物語や枕草子などの有名な古典作品の例文に触れ、実際に使われている場面を何度も読むと良いでしょう。
また、古語辞典を活用して、語源や類語との比較を確認することも、理解を深める助けになります。 繰り返し触れることで、自然と記憶に定着していきます。
「のたまう」はどのような身分の人が使う言葉ですか?
古典において「のたまう」は、天皇、皇后、貴族、神仏など、非常に身分の高い人物の発言に対して使われる尊敬語です。 作者が、これらの高貴な人物の発言を読者に対して敬意を込めて描写する際に用います。 現代語のように皮肉な意味で使われることは、古典の文脈では基本的にありません。
「のたまう」と「言ふ」の決定的な違いは何ですか?
「のたまう」と「言ふ」の決定的な違いは、敬意の有無と対象にあります。「のたまう」は「言う」の最上級尊敬語であり、発言者(主語)への高い敬意を表します。 一方、「言ふ」は単に「言う」という動作を表す一般的な動詞であり、敬意を含みません。
したがって、古典文学では、発言者の身分や作者の敬意の度合いによって、これらの言葉が使い分けられています。
まとめ
- 「のたまう」は古語で「おっしゃる」という意味の尊敬語です。
- 主に天皇や貴族など、身分の高い人物の発言に用いられました。
- 語源は「告る(のる)」と「給ふ(たまふ)」が合わさった「のりたまふ」です。
- 現代語では皮肉やからかいの意味で使われることがあります。
- 古典文学では、発言者の身分や作者の敬意を示す重要な手がかりです。
- 活用形はハ行四段活用で、文脈によって変化します。
- 『源氏物語』や『枕草子』などの古典作品に頻繁に登場します。
- 「仰す(おおす)」よりも高い敬意を表す言葉です。
- 「宣ふ(のりたまう)」は「のたまう」の語源で、より古風な表現です。
- 「言ふ」は敬意を含まない一般的な「言う」です。
- 「申す(まうす)」は動作の受け手への敬意を表す謙譲語です。
- 古語の敬語学習には、体系的な理解と文脈判断が大切です。
- 敬語の種類(尊敬語、謙譲語、丁寧語)と敬意の方向を把握しましょう。
- 古典常識として登場人物の身分関係を知ることも役立ちます。
- 古語辞典や古典作品の例文に触れることが効果的な学習方法です。
- 現代で使われないのは、格式の高さと敬語表現の変化が理由です。
