クラシックギターの深みのある音色に魅せられ、いつかは国産の手工ギターを手に入れたいと考えている方も多いのではないでしょうか。一本一本丁寧に作られた手工ギターは、量産品にはない魅力と個性を持ち合わせています。しかし、数あるブランドやモデルの中から自分にぴったりの一本を見つけるのは、なかなか難しいものです。
本記事では、国産手工クラシックギターの選び方から、おすすめの人気ブランドまでを徹底的に解説します。あなたのギター選びが成功するための情報をお届けしますので、ぜひ最後までご覧ください。
国産手工クラシックギターの魅力とは?なぜ選ばれるのか

国産手工クラシックギターは、その卓越した品質と職人の情熱が詰まった逸品として、多くのギタリストから高い評価を受けています。なぜこれほどまでに国産手工ギターが選ばれるのか、その理由を深く掘り下げてみましょう。
職人の技が光る唯一無二の音色
国産手工クラシックギターの最大の魅力は、職人の手によって生み出される唯一無二の音色にあります。熟練の製作家は、長年の経験と知識を活かし、木材の選定から加工、組み上げ、塗装に至るまで、全ての工程に細心の注意を払います。特に、ギターの音色を決定づける表板の厚みや力木(ブレーシング)の配置は、職人の感覚と技術が大きく影響する部分です。
これにより、量産品では味わえない、深みと奥行きのある豊かな響きが生まれます。弾き込むほどに音が成長し、奏者の演奏スタイルに寄り添うように変化していくのも、手工ギターならではの醍醐味と言えるでしょう。
厳選された木材が織りなす豊かな響き
手工ギターでは、厳選された高品質な木材が使用される点も大きな特徴です。表板にはドイツ松(スプルース)やカナダ杉(シダー)といった高級材が用いられ、側板や裏板にはインディアンローズウッド、マダガスカルローズウッド、ハカランダなどが使われます。 これらの木材は、伐採されてから数年から数十年もの間、自然乾燥(シーズニング)させることで、ギター材として最適な状態に仕上げられます。
木材の持つ特性を最大限に引き出すことで、クリアで伸びのある高音、力強く深みのある低音、そして豊かなサステイン(音の伸び)が実現し、演奏に表情豊かな響きをもたらします。
高い演奏性と耐久性で長く愛用できる
国産手工クラシックギターは、音色の美しさだけでなく、高い演奏性と優れた耐久性も兼ね備えています。職人は、ネックの形状やフレットの処理、弦高の調整など、細部にわたってプレイヤーが快適に演奏できるよう工夫を凝らしています。 そのため、長時間の演奏でも疲れにくく、表現の幅を広げることが可能です。
また、厳選された木材と丁寧な製作工程により、湿度や温度の変化にも強く、長年にわたって安定した品質を保ちます。適切なメンテナンスを行えば、親子二代にわたって愛用できるほどの耐久性を持つことも珍しくありません。 一生ものの楽器として、長く付き合っていけるのが国産手工ギターの大きな魅力です。
後悔しない!国産手工クラシックギターの選び方

国産手工クラシックギターを選ぶ際には、いくつかの重要なポイントがあります。高価な買い物だからこそ、後悔しない一本を見つけるために、以下のコツを参考にしてください。
音色の好みで選ぶ:材木の種類と特徴
クラシックギターの音色は、使用されている木材の種類によって大きく変わります。自分の好みに合った音色を見つけるために、主な材木の特徴を知っておきましょう。
表板:スプルースとシダーの違い
クラシックギターの音色に最も影響を与えるのが表板の木材です。主にスプルース(松)とシダー(杉)の2種類が使われます。
- スプルース(松): ドイツ松などが代表的です。弾き始めは硬めの音色ですが、弾き込むほどに音が成長し、クリアで力強い響きを持つようになります。音の立ち上がりが良く、遠達性に優れるため、大きなホールでの演奏にも適しています。
- シダー(杉): カナダ杉などが代表的です。比較的柔らかい材質のため、完成直後から豊かな音量と甘く温かみのある音色を奏でます。繊細なタッチにも反応しやすく、初心者の方にも扱いやすい傾向があります。
どちらの材も魅力がありますが、長期的な音の変化を楽しみたいならスプルース、すぐに豊かな音量と甘い音色を求めるならシダーがおすすめです。
側板・裏板:ローズウッドとマホガニーの個性
側板と裏板の木材も音色に影響を与えます。代表的なのはローズウッドとマホガニーです。
- ローズウッド: インディアンローズウッドやマダガスカルローズウッド、希少なハカランダ(ブラジリアンローズウッド)などがあります。 音の伸びが良く、クリアで低音から高音までバランスの取れた豊かな響きが特徴です。 特にハカランダは非常に硬く密度が高く、抜けの良い高音と力強い低音を持ち、最高級材とされています。
- マホガニー: 暖かく、まろやかな音色が特徴です。ローズウッドに比べて音の分離が良く、軽快な響きを好む方に選ばれます。
深みと広がりを求めるならローズウッド系、軽やかで明るい音色を好むならマホガニーを選ぶと良いでしょう。
試奏の重要性:実際に触れて感じる
ギター選びにおいて、実際に楽器を試奏することは非常に重要です。カタログやインターネットの情報だけでは分からない、弾き心地や音の響きを直接体験することで、自分に合った一本を見つけられます。ネックの握りやすさ、弦高の感触、音量や音色のバランス、サステインの長さなど、五感で感じ取ることが大切です。
複数のギターを弾き比べ、それぞれの個性を比較検討することで、より納得のいく決定ができるでしょう。 専門店では、経験豊富なスタッフが試奏のアドバイスをしてくれることもありますので、積極的に活用してください。
予算と相談:価格帯別の特徴
国産手工クラシックギターは、価格帯によってその特徴が異なります。予算と相談しながら、自分にとって最適な一本を見つけましょう。
- 30万円未満: 小平ギターの入門モデルなど、手工品の技術を取り入れた良質なギターが見つかります。 初めての手工ギターとして、コストパフォーマンスに優れた選択肢となるでしょう。
- 30万円~70万円: 桜井河野の「PROFESSIONAL-J」や横尾俊佑の「PRELUDE」など、中堅製作家の本格的な手工ギターが手に入ります。 厳選された木材と熟練の技術が融合し、豊かな音色と高い演奏性を実感できます。
- 70万円以上: 桜井河野の「Maestro」や茶位ギターの「80号」など、一流製作家による最高級モデルが揃います。 希少な木材が使われ、芸術的な響きと圧倒的な表現力を持つ、まさに一生ものの逸品です。
予算はあくまで目安ですが、価格が高くなるほど、使用される木材の質や製作にかける時間、職人の技術が向上し、より洗練された音色と演奏性を期待できます。
【2025年最新】おすすめ国産手工クラシックギターブランド

日本には世界に誇る素晴らしいクラシックギター製作家が数多く存在します。ここでは、特におすすめの国産手工クラシックギターブランドをいくつかご紹介します。
河野ギター製作所(桜井河野)
河野ギター製作所は、故・河野賢氏が設立した日本のクラシックギター界を代表する工房です。現在は、河野賢氏の甥である桜井正毅氏がその技術と精神を受け継ぎ、「桜井河野」ブランドとして世界中のギタリストから高い評価を得ています。 桜井氏は1988年のパリ国際ギター製作コンクールで第1位を獲得するなど、その実力は国際的にも認められています。
桜井河野のギターは、河野賢氏のデザインを継承しつつ、桜井氏独自の製作技術と最新の振動理論を取り入れ、クリアな高音と力強い低音、そして豊かな響きを両立させています。 特に「Maestro」モデルは、河野ギター製作所が持つ最高級の厳選材を使用し、一本棹方式を採用するなど、妥協のない音作りが特徴です。 バランスの取れた音響特性と甘くきらびやかな音色が魅力で、プロの演奏家からも厚い支持を受けています。
横尾俊佑ギター
横尾俊佑氏は、名匠・河野賢氏に師事し、1972年に独立した著名な製作家です。 横尾ギター工房は、横尾俊佑氏と息子の真人氏の親子二代にわたってクラシックギターの製作を行っている老舗工房として知られています。 横尾ギターの大きな特徴は、カシュー塗装による美しい仕上げと、柔らかく甘い高音、そして深みのある低音です。
カシュー塗装は、メンテナンスがしやすく、経年変化にも強いという利点があります。 エントリーモデルの「PRELUDE」シリーズでも、横尾氏の技術をしっかりと体感できると評判です。 繊細なタッチにも応える表現力豊かな音色は、多くのギタリストを魅了し続けています。
アストリアスギター
アストリアスは、福岡県久留米市に本拠を置く、1962年創業の老舗ギター工房です。クラシックギター製作で培ったノウハウを活かし、高品質なハンドメイドギターを製造しています。 アストリアスギターの評判が高い理由の一つは、全ての木材が長いシーズニングを経た厳選された素材のみを使用している点です。
表板には杉、アラスカスプルース、ドイツ松など、全て単板を使用しています。 音の立ち上がり、倍音、弾き心地のバランスが非常に優れており、価格帯を考慮しても高い品質を誇ります。 初心者から上級者まで幅広いラインナップを展開しており、特に「DOUBLE TOP」シリーズは、クラシックギターの音量不足という課題を克服するために開発された革新的なモデルとして注目されています。
安定した品質と弾きやすさ、そして豊かな音色で、多くのギタリストに愛されています。
小平ギター
小平ギターは、長野県諏訪市に工房を構える、国内生産にこだわり続けるブランドです。 創始者の故・小平栄一氏の職人気質を受け継ぎ、一本一本丹念に製作されています。 小平ギターの一番の特徴は、この価格帯では信じられないほどの信頼度です。 長年の経験と材料のシーズニングにこだわり、最低5年、スプルース材に至っては10年以上乾燥させてから使用しています。
これにより、お客様に渡ってからのトラブルが極めて少ないという実績があります。 学校の指定機材にも選ばれるほど高い人気を誇り、少数精鋭の職人たちによって生み出されるギターは、手頃な価格でありながら、操作性の良さ、洗練されたデザイン、そして何よりもその音色が高級手工ギターに匹敵すると評価されています。 初めてクラシックギターを始める方にも自信を持っておすすめできる、国産量産ギターの最高峰と言えるでしょう。
茶位ギター
茶位ギターは、1959年に茶位幸信氏によって創立された工房で、現在はご子息の茶位幸弘氏がその伝統と技術を受け継いでいます。 茶位幸信氏は、少年時代から父の元で手工ギター製作を学び、1968年からクラシックギターの製作を開始しました。 茶位ギターは、力強く重量感のある低音と、独特の甘さを持った豊かな高音が特徴で、多くのギタリストに愛されています。
芯が太く、倍音は抑えめでありながら遠達性に優れており、ステージでの演奏効果も十分です。 また、「絶対に壊れない」と本人が豪語するほどの妥協のない職人的な工作は、日本人の好みに合致し、クラシック以外のユーザーからも支持を集めました。 製作本数は少ないものの、中古市場でもしばしば見かけることがあり、その品質の高さがうかがえます。
弾き込むほどに磨きがかかる一本として、長く付き合えるギターを探している方におすすめです。
その他注目すべき製作家
上記以外にも、日本には素晴らしい手工クラシックギター製作家が多数存在します。例えば、松岡良治氏、黒澤澄雄氏、杉田健司氏、西野春平氏など、それぞれの製作家が独自の哲学と技術で魅力的なギターを生み出しています。これらの製作家のギターは、専門店や展示会などで出会える機会がありますので、ぜひ積極的に情報を集めてみてください。
国産手工クラシックギターはどこで買うべき?

国産手工クラシックギターは、その性質上、購入する場所も重要な要素となります。後悔のない購入をするために、以下の点を考慮しましょう。
専門店での購入がおすすめな理由
国産手工クラシックギターの購入は、クラシックギター専門店での購入が最もおすすめです。 専門店には、以下のようなメリットがあります。
- 豊富な品揃えと試奏環境: 多くのブランドや製作家の手工ギターが揃っており、実際に手に取って試奏できる環境が整っています。
- 専門知識を持つスタッフ: ギターの知識が豊富なスタッフが常駐しており、あなたのレベルや好みに合わせて的確なアドバイスをしてくれます。 木材の種類や音色の特徴、メンテナンス方法など、疑問に思ったことをすぐに質問できるのは大きな利点です。
- 購入後のサポート: 弦交換や調整、修理など、購入後のメンテナンスサポートも充実している場合が多いです。 長く愛用するためにも、信頼できるお店で購入することが大切です。
東京では、御茶ノ水に多くのクラシックギター専門店が集まっています。 「メディア・カーム」や「ラックギター」、「ギターショップアウラ」などが有名です。
オンラインストア利用の注意点
近年では、オンラインストアでも手工クラシックギターが販売されています。手軽に購入できる反面、いくつかの注意点があります。
- 試奏ができない: 最も大きなデメリットは、実際にギターを試奏できないことです。音色や弾き心地は、実際に触れてみないと分からない部分が大きいため、慎重な検討が必要です。
- 状態の確認が難しい: 中古品の場合、写真だけでは判断しにくい傷やコンディションの差異がある可能性があります。
- 返品・交換ポリシーの確認: 万が一のトラブルに備え、購入前に返品・交換ポリシーをしっかりと確認しておくことが大切です。
オンラインストアを利用する際は、信頼できるショップを選び、詳細な商品説明や高解像度の写真、可能であれば試奏動画などを参考に、慎重に検討しましょう。
よくある質問

- 国産手工クラシックギターは初心者には難しいですか?
- 手工ギターと量産ギターの違いは何ですか?
- クラシックギターのメンテナンスで気をつけることは?
- 中古の国産手工クラシックギターはおすすめですか?
- 手工ギターの寿命はどれくらいですか?
国産手工クラシックギターは初心者には難しいですか?
国産手工クラシックギターは、初心者の方でも十分に楽しめます。 むしろ、質の良い楽器は演奏性が高く、上達を早める助けになることもあります。ただし、手工ギターは奏者の表現に敏感に反応するため、初心者の方にはコントロールが難しいと感じる場合もあるかもしれません。 専門店で試奏し、弾きやすいと感じる一本を選ぶことが大切です。
小平ギターのように、初心者にもおすすめできる手工品に近い品質のギターもあります。
手工ギターと量産ギターの違いは何ですか?
手工ギターと量産ギターの明確な定義はありませんが、一般的に手工ギターは少数の職人が手作業で一本一本丁寧に製作するのに対し、量産ギターは工場で多くの工程を機械化して生産されます。 手工ギターは、木材の選定から細部の調整まで職人のこだわりが詰まっており、唯一無二の音色や高い演奏性、耐久性が特徴です。 量産ギターでも質の良いものはありますが、音の遠達性や表現力、弾きやすさの細かな調整においては手工ギターに軍配が上がることが多いです。
クラシックギターのメンテナンスで気をつけることは?
クラシックギターは木製のため、温度や湿度に非常に敏感です。 適切な湿度(50%前後)を保つことが重要で、乾燥しすぎると木材が割れる原因になります。 演奏後は、乾いたクロスで汗や汚れを拭き取りましょう。 弦は少なくとも半年に一度、できれば3ヶ月に一度は交換することをおすすめします。 長期間弾かない場合は、弦を少し緩めておくことでネックへの負担を軽減できます。
定期的なメンテナンスで、楽器を良い状態に保ち、長く愛用できます。
中古の国産手工クラシックギターはおすすめですか?
中古の国産手工クラシックギターもおすすめです。 質の良い手工ギターは、適切に管理されていれば年数を経るごとに音が成熟し、新品とは異なる深みのある音色を奏でることがあります。 中古市場では、新品では手の届かないような高級モデルがお得な価格で見つかることもあります。 ただし、中古品は個体差が大きいため、購入前に必ず楽器の状態を詳しく確認し、可能であれば試奏することが大切です。
信頼できる専門店で購入し、保証やアフターサービスについても確認しておきましょう。
手工ギターの寿命はどれくらいですか?
手工ギターの寿命は、製作の品質や使用されている木材、そして適切なメンテナンスによって大きく異なりますが、一般的には非常に長いです。丁寧に作られた手工ギターは、適切な環境で保管され、定期的なメンテナンスを行えば、数十年から100年以上も現役で活躍し続けることができます。 むしろ、弾き込むことで木材が振動に馴染み、音がより豊かに成長していく「鳴り」の変化を楽しめるのが手工ギターの魅力の一つです。
まとめ
- 国産手工クラシックギターは職人の技と厳選された木材が魅力です。
- 唯一無二の音色と高い演奏性、耐久性で長く愛用できます。
- 表板はスプルース(松)とシダー(杉)で音色が異なります。
- 側板・裏板はローズウッド系とマホガニーで響きが変わります。
- 購入前には必ず試奏して弾き心地と音色を確認しましょう。
- 予算に応じて最適な価格帯のギターを選ぶことが大切です。
- 河野ギター製作所(桜井河野)は国際的な評価も高いブランドです。
- 横尾俊佑ギターはカシュー塗装と甘く深みのある音色が特徴です。
- アストリアスギターは厳選材と安定した品質で幅広い層に人気です。
- 小平ギターは信頼度が高く、初心者にもおすすめのブランドです。
- 茶位ギターは力強い低音と甘い高音、優れた遠達性が魅力です。
- 専門店での購入は豊富な品揃えと専門スタッフの助けが得られます。
- オンラインストア利用時は試奏不可や状態確認に注意が必要です。
- 初心者でも手工ギターは楽しめ、上達を早める助けになります。
- 手工ギターは適切なメンテナンスで数十年以上愛用可能です。
