公文書は、私たちの生活や社会活動において非常に重要な役割を果たす書類です。契約書や申請書、履歴書など、その内容は正確かつ長期にわたって保存される必要があります。そのため、公文書に使うボールペン選びは、単なる筆記具の選択以上の意味を持ちます。
「どんなボールペンを選べばいいの?」「消せるボールペンは使っても大丈夫?」といった疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。本記事では、公文書に最適なボールペンを選ぶためのポイントを徹底的に解説し、自信を持って使えるおすすめのモデルをご紹介します。適切なボールペンを選んで、大切な書類を安心して作成しましょう。
公文書に最適なボールペンを選ぶ重要性

公文書は、その性質上、長期にわたる保存や、内容の正確性が求められる重要な書類です。そのため、使用する筆記具選びは非常に重要になります。
なぜ公文書には特定のボールペンが求められるのか
公文書は、一度作成されると、その内容が法的な効力を持ったり、後世にわたって参照されたりすることが少なくありません。例えば、契約書や登記簿、戸籍謄本などは、数十年、あるいはそれ以上の期間にわたって内容が保証される必要があります。このような書類に不適切なボールペンを使用すると、インクが薄れたり、にじんだり、最悪の場合、文字が消えてしまったりする可能性があります。
これは、書類の信頼性を著しく損なうことにつながります。特に、日本工業規格(JIS規格)では、公文書用として特定の品質基準が定められており、この基準を満たす筆記具の使用が推奨されています。
また、公文書は改ざん防止の観点からも、容易に修正できない筆記具が求められます。消せるボールペンなどは、温度変化によってインクが無色になる特殊な性質を持つため、公文書には不適切とされています。
適切なペン選びがもたらすメリット
公文書に適したボールペンを選ぶことは、多くのメリットをもたらします。まず、書類の信頼性が確保されます。耐水性や耐光性、保存性に優れたインクを使用することで、時間の経過や外部環境の変化による文字の劣化を防ぎ、記載された内容を確実に残せます。
次に、業務の効率化にもつながります。インクのにじみやかすれが少ないペンを選ぶことで、書き損じを減らし、スムーズに書類作成を進められます。さらに、適切なペンを使用しているという安心感は、書類作成者の精神的な負担を軽減し、より正確な作業を促すでしょう。万が一、書類に不備があった場合でも、適切な筆記具を使用していれば、その後の対応も円滑に進めやすくなります。
公文書用ボールペン選びのポイント

数あるボールペンの中から、公文書に適したものを選ぶにはいくつかの重要なポイントがあります。これらの点を押さえることで、安心して使える一本を見つけられます。
インクの種類と特性(油性、水性、ゲルインク)
ボールペンのインクは大きく分けて油性、水性、ゲルインクの3種類があり、それぞれ公文書への適性が異なります。
- 油性ボールペン: 昔から使われているタイプで、耐水性、耐光性、速乾性に優れています。筆跡がにじみにくく、長期保存する公文書や契約書に適しています。複写式の伝票など、筆圧をかけて書く場面にも向いています。ただし、インクの粘度が高いため、書き味が重く、かすれることがあるのがデメリットです。最近では、低粘度油性インクの登場により、滑らかな書き味の製品も増えています。
- ゲルインクボールペン: 水性と油性の長所を併せ持つインクです。滑らかな書き心地と鮮やかな発色が特徴で、速乾性、耐水性、耐光性にも優れています。顔料を用いたゲルインクは、露光による描線の退色がほとんどなく、半永久的に視認できるとされています。公文書用として非常に人気があります。
- 水性ボールペン: 軽い筆圧でサラサラと書けるのが魅力で、発色も鮮やかです。しかし、一般的に耐水性や速乾性が低く、水に濡れるとにじみやすい傾向があります。そのため、公文書にはあまり推奨されません。ただし、顔料系の水性インクの中には、耐水性・耐光性に優れ、公文書にも適しているものもあります。
公文書には、耐水性・耐光性に優れた油性またはゲルインクの黒いボールペンがおすすめです。
インクの色は「黒」が基本
公文書に使うボールペンのインクの色は、原則として「黒」を選びましょう。これは、黒インクが最も視認性が高く、コピーやスキャンをした際にも鮮明に読み取れるためです。また、多くの公的機関や企業で、書類は黒インクで記載することがマナーとして定着しています。
青やブルーブラックのインクも、メーカーによっては公文書用として推奨している場合がありますが、一般的には黒が最も無難です。特に指定がない限りは、黒インクのボールペンを使用するのが賢明な選択と言えます。
耐水性・耐光性・速乾性の重要性
公文書の長期保存性を確保するためには、インクの耐水性、耐光性、速乾性が非常に重要です。
- 耐水性: 書類に水滴が落ちたり、湿度の高い場所に保管されたりしても、インクがにじんだり流れたりしない性質です。水に強いインクは、不慮の事故から大切な記録を守ります。
- 耐光性: 紫外線などの光に長時間さらされても、インクが色あせたり薄くなったりしない性質です。窓際や照明の近くに保管される可能性のある書類には、特に耐光性の高いインクが求められます。顔料インクは染料インクよりも耐光性に優れているとされています。
- 速乾性: 書いた直後にインクが素早く乾く性質です。速乾性が高いと、書いた文字が手で擦れて汚れる「こすれ」や、書類の裏面にインクが移る「裏移り」を防げます。特に、急いで書類を扱う場合や、左利きの方にとっては重要なポイントです。
これらの特性を兼ね備えたボールペンを選ぶことで、公文書の信頼性と視認性を高め、安心して長期保存できる書類を作成できます。
ペンの太さと書き心地
ボールペンの太さは、書類の種類や用途、個人の書き癖によって最適なものが異なります。一般的に、公文書では0.5mmから0.7mm程度の太さが推奨されることが多いです。
- 0.5mm: 細かい文字をきれいに書くのに適しており、手帳やノート、履歴書などの限られたスペースに多くの情報を書き込む際に便利です。
- 0.7mm: 視認性が高く、しっかりとした筆跡を残せるため、契約書やサインなど、力強い印象を与えたい場面に適しています。
細すぎる0.3mmや0.38mmは、弱々しい印象を与えたり、文字がつぶれて読みにくくなったりする可能性があるため、公文書にはあまり向かない場合があります。 逆に太すぎる1.0mm以上は、細かい文字が書きにくく、インクの消費も早くなる傾向があります。
また、書き心地は個人の好みによるところが大きいです。実際に試し書きをして、自分の筆圧や持ち方に合った、滑らかで疲れにくい一本を選ぶことが大切です。低粘度油性インクやゲルインクは、比較的軽い筆圧でスムーズに書けるため、長時間の筆記にも適しています。
【厳選】公文書におすすめのボールペンモデル

ここからは、上記の選び方を踏まえ、公文書に自信を持って使えるおすすめのボールペンを具体的にご紹介します。多くの人に選ばれている人気モデルばかりです。
油性ボールペンのおすすめモデル
油性ボールペンは、その優れた耐水性・耐光性から、公文書に最も適した選択肢の一つです。特に、近年登場した低粘度油性インクのモデルは、従来の油性ボールペンの重い書き味を改善し、滑らかで快適な筆記感を実現しています。
- 三菱鉛筆 ジェットストリーム: 「クセになる、なめらかな書き味。」のキャッチフレーズで知られるジェットストリームは、超低摩擦ジェットストリームインクを採用しています。非常に滑らかな書き心地と速乾性、濃くはっきりとした筆跡が特徴で、公文書はもちろん、日常使いにも最適です。耐水性・耐光性にも優れており、長期保存が必要な書類にも安心して使えます。
- パイロット アクロボール: アクロインキを搭載したアクロボールも、低粘度油性インクの代表格です。油性ながらも非常に滑らかな書き味と速乾性を両立しており、濃く鮮やかな筆跡を残せます。グリップ部分も握りやすく、長時間の筆記でも疲れにくい設計が魅力です。
- ゼブラ ブレン: 筆記時の振動を制御する「ブレンシステム」を搭載しており、ブレない安定した書き心地が特徴です。エマルジョンインクを採用しており、油性と水性の良いところを併せ持っています。耐水性・耐光性にも優れているため、公文書にも適しています。
これらの油性ボールペンは、公文書に求められる品質基準を満たしつつ、快適な書き心地も提供してくれるため、幅広いシーンで活躍するでしょう。
ゲルインクボールペンのおすすめモデル
ゲルインクボールペンは、水性インクのような滑らかさと鮮やかな発色、そして油性インクに匹敵する耐水性・耐光性を兼ね備えているため、公文書用としても非常に人気があります。特に顔料インクを使用したモデルは、その保存性の高さから推奨されています。
- 三菱鉛筆 ユニボール シグノ: 顔料インクを使用しており、優れた耐水性・耐光性が特徴です。特に耐光性は半永久的に視認できるとされており、公文書の長期保存に非常に適しています。鮮やかな発色で、細字から太字まで幅広いラインナップがあるため、用途に合わせて選べます。
- ぺんてる エナージェル: なめらかな書き味と速乾性が魅力のゲルインクボールペンです。鮮やかな発色で、書いた直後に触れてもにじみにくい特徴があります。耐水性も高く、公文書にも安心して使用できます。
- ゼブラ サラサクリップ: サラサラとした軽い書き心地が特徴のゲルインクボールペンです。濃く鮮やかな発色で、耐水性・耐光性にも優れています。バインダークリップ付きで、手帳や書類に挟んで持ち運びやすいのもポイントです。
- ゼブラ サラサドライ: サラサシリーズの超速乾タイプです。紙にインクが素早く浸透する新成分を配合しており、書いた直後に触れても汚れないほどの速乾性を誇ります。耐水性・耐光性も備えているため、急いで書類を扱う際にも非常に便利です。
これらのゲルインクボールペンは、書き心地の良さと高い保存性を両立しており、公文書作成の強い味方となるでしょう。
公文書で避けるべきボールペンとは

公文書の信頼性を損なわないためにも、使用を避けるべきボールペンを知っておくことは非常に大切です。誤って使ってしまわないよう注意しましょう。
消せるボールペンはNG
フリクションなどの「消せるボールペン」は、公文書には絶対に使用してはいけません。これらのボールペンは、特殊なインクが摩擦熱によって無色になる仕組みを利用しています。そのため、コピー機の熱や夏の車内など、高温になる場所に置かれると、書いた文字が消えてしまう可能性があります。
公文書は、その内容が永続的に保証されるべきものであり、容易に修正や改ざんが可能な筆記具は不適切とされています。履歴書のような正式な書類でも、消せるボールペンは信頼性のない書類とみなされ、マナー違反と判断されることがあります。 大切な書類を作成する際は、必ず消せないインクのボールペンを選びましょう。
インクが薄い・にじみやすいペン
インクが薄いボールペンや、にじみやすい水性ボールペンなども、公文書には避けるべきです。インクが薄いと、文字の視認性が低下し、コピーやスキャンをした際に読みにくくなることがあります。また、時間の経過とともにさらに薄れてしまう可能性も考えられます。
水性インクのボールペンの中には、耐水性が低いものがあり、水に濡れると文字がにじんで読めなくなるリスクがあります。 公文書は、長期保存と正確な情報伝達が求められるため、濃くはっきりとした筆跡が残り、にじみにくいインクを選ぶことが重要です。特に、顔料インクを使用したボールペンは、にじみにくく、耐水性・耐光性に優れているためおすすめです。
よくある質問

- 公文書にサインペンやフリクションは使えますか?
- 公文書の訂正方法はどうすれば良いですか?
- 長期保存に適したボールペンはありますか?
- 公文書に適したボールペンの太さは?
- 公文書はなぜ黒インクなのですか?
- ボールペンのインクがかすれる場合の対処法は?
公文書にサインペンやフリクションは使えますか?
公文書にサインペンやフリクション(消せるボールペン)は使用できません。サインペンはインクがにじみやすく、長期保存には不向きな場合があります。フリクションは摩擦熱でインクが消えるため、書類の信頼性を損なう可能性があり、改ざん防止の観点からも公文書には不適切とされています。
公文書の訂正方法はどうすれば良いですか?
公文書の誤記や脱字は、原則として書き直すのが望ましいです。しかし、書き直しができない場合は、訂正印を用いた方法があります。間違った部分に二重線を引き、その上に正しい文言を記入し、二重線の上か正しい文言のすぐ横に訂正印を押します。契約書など重要な対外文書では、左か上の余白に「○字訂正」「○字削除」「○字加入」と書き、そこにも訂正印を押すようにします。
訂正印は、その書類に使用した印鑑と同じものを使用するのが正式な方法です。シャチハタ印は公的な文書での使用が認められないことが多いので注意しましょう。
長期保存に適したボールペンはありますか?
長期保存に適したボールペンは、耐水性・耐光性に優れた油性ボールペンや顔料系のゲルインクボールペンです。特に、顔料を用いたゲルインクボールペンは、露光による描線の退色がほとんどなく、半永久的に視認できるとされています。油性ボールペンも通常の保存状態であれば、文字の褪色が少なく長時間保存が可能です。
公文書に適したボールペンの太さは?
公文書に適したボールペンの太さは、一般的に0.5mmから0.7mmがおすすめです。0.5mmは細かい文字をきれいに書くのに適しており、0.7mmは視認性が高く、しっかりとした筆跡を残せます。細すぎる0.3mmや0.38mmは弱々しい印象を与え、太すぎる1.0mm以上は細かい文字が書きにくくなることがあります。
公文書はなぜ黒インクなのですか?
公文書に黒インクが使われるのは、主に以下の理由からです。まず、黒インクは最も視認性が高く、読みやすい色とされています。次に、コピーやスキャンをした際に鮮明に再現されやすいという実用的なメリットがあります。また、多くの公的機関やビジネスシーンで、黒インクの使用が長年の慣習として定着しており、書類の信頼性を高める意味合いもあります。
ボールペンのインクがかすれる場合の対処法は?
ボールペンのインクがかすれる原因は、インクの劣化、ペン先の汚れ、内部への空気混入などが考えられます。対処法としては、ペン先をティッシュなどで優しく拭く、手で温めてインクを柔らかくする、輪ゴムなどで遠心力をかけて空気を抜くといった方法があります。ただし、根本的な解決にはリフィル交換が最も確実です。ペン先を上にして保管すると空気が入りやすくなるため、ペン先を下にして保管するよう心がけましょう。
まとめ
- 公文書には長期保存性と正確性が求められる
- 日本工業規格(JIS規格)の品質基準を満たすペンが推奨される
- 消せるボールペンは公文書に不適切である
- 油性ボールペンは耐水性・耐光性・速乾性に優れる
- ゲルインクボールペンは滑らかで発色が良く、保存性も高い
- インクの色は「黒」が基本であり、視認性が高い
- 耐水性・耐光性・速乾性は書類の劣化防止に不可欠
- ペンの太さは0.5mm〜0.7mmが公文書に適している
- 三菱鉛筆ジェットストリームは滑らかな書き味で人気
- パイロットアクロボールも低粘度油性で書きやすい
- 三菱鉛筆ユニボールシグノは顔料インクで耐光性が高い
- ぺんてるエナージェルは速乾性と発色が魅力
- ゼブラサラサクリップは滑らかな書き心地と耐水性がある
- ゼブラサラサドライは超速乾でこすれに強い
- インクが薄いペンやにじみやすいペンは避けるべきである
- 公文書の訂正は二重線と訂正印が正式な方法
- ボールペンはペン先を下にして保管すると良い