熱性けいれんは何歳まで？いつまで続くのか、対処法と再発の不安を解決

お子さんが突然けいれんを起こすと、親御さんは大きな不安に襲われることでしょう。特に「熱性けいれん」は乳幼児期によく見られる症状ですが、「いつまで続くのだろう」「どう対処すればいいのか」といった疑問や心配は尽きないものです。本記事では、熱性けいれんの基本的な知識から、多くの子どもが経験しなくなる年齢の目安、そして万が一の際の適切な対処法まで、親御さんの不安を解決するための情報をお伝えします。

熱性けいれんとは？まずは基本的な知識を知ろう

熱性けいれんは、乳幼児期に発熱に伴って起こるけいれん発作のことで、日本では小児の約5〜8％に見られる比較的頻度の高い症状です。一般的に、生後6ヶ月から5歳くらいまでの子どもに多く見られます。急激な体温の上昇時に起こりやすく、多くの場合、発熱から24時間以内に発生します。子どもの脳はまだ発達途上であるため、急な体温の変化に敏感に反応し、けいれんを引き起こすと考えられています。

• 熱性けいれんの定義と特徴
• 熱性けいれんが起こりやすい年齢

熱性けいれんの定義と特徴

熱性けいれんは、通常38℃以上の発熱時に意識障害とけいれんを引き起こす病気です。ただし、髄膜炎や脳炎などの脳の感染症、先天性代謝異常、低血糖など、他の明らかな原因によるけいれんではないことが条件となります。けいれんの症状はさまざまで、手足を硬く突っ張らせたり、ガクガクと震わせたりすることがあります。また、白目をむいたり、目の焦点が合わなくなったり、唇が紫色になったりすることもあります。

熱性けいれんが起こりやすい年齢

熱性けいれんが最も起こりやすいのは、生後6ヶ月から5歳頃までの乳幼児期です。特に1歳から3歳頃がピークとされています。この年齢層の子どもは、脳の神経細胞がまだ未熟なため、急激な体温の変化に体が対応しきれず、けいれんを起こしやすいと考えられています。6歳を過ぎると発症率は大幅に低下し、ほとんどの子どもは小学校に入学する頃には熱性けいれんを起こさなくなります。

熱性けいれんは何歳まで続く？年齢による変化と終わり方

熱性けいれんを経験した親御さんにとって、最も気になることの一つが「いつまでこの症状が続くのか」という点でしょう。多くの子どもは成長とともに熱性けいれんを起こさなくなりますが、その終わり方や再発のリスクには個人差があります。

• 一般的に熱性けいれんが終わる年齢の目安
• 熱性けいれんが長引くケースと注意点
• 再発しやすい子どもの特徴

一般的に熱性けいれんが終わる年齢の目安

熱性けいれんは、ほとんどの場合、成長とともに自然に起こらなくなります。一般的には、6歳前後でほとんどの子どもが熱性けいれんを卒業すると言われています。これは、脳の発達が進み、体温の変化に対する脳の感受性が変化するためと考えられます。小学校に入学する頃には、熱性けいれんの心配は大きく減るのが一般的です。

熱性けいれんが長引くケースと注意点

ほとんどの子どもは6歳前後で熱性けいれんを起こさなくなりますが、稀に8〜9歳になっても発症するケースもあります。また、熱性けいれんには「単純型」と「複雑型」があり、複雑型熱性けいれんは、けいれんの持続時間が15分以上と長い、体の一部に起こる、一度の発熱で複数回繰り返すなどの特徴があります。複雑型熱性けいれんの場合や、家族にてんかんの既往がある場合、1歳未満で初めて熱性けいれんを起こした場合などは、てんかんへの移行率がやや高くなる可能性も指摘されています。

再発しやすい子どもの特徴

熱性けいれんを一度経験した子どものうち、約30〜50%が再発すると言われています。再発しやすい子どもの特徴としては、以下のような点が挙げられます。

• 初めての熱性けいれんが1歳未満であった場合
• 両親や兄弟に熱性けいれんの経験がある場合（遺伝的要因）
• 発熱してからけいれんするまでの時間が1時間以内と短い場合
• 発作時の体温が38℃以下の比較的低い発熱でけいれんを起こした場合
• 複雑型熱性けいれんの条件を満たす場合

これらの特徴がある場合でも、多くの場合は成長とともに再発しなくなり、後遺症を残すことはほとんどありません。しかし、再発を繰り返す場合は、医師と相談して予防的な対処を検討することも大切です。

熱性けいれんが起きた時の適切な対処法

お子さんが熱性けいれんを起こした際、親御さんは非常に動揺し、パニックになりがちです。しかし、適切な対処をすることで、お子さんの安全を守り、その後の経過を良好に保つことができます。まずは落ち着いて行動することが何よりも重要です。

• 慌てずに落ち着いて行動するためのコツ
• けいれん中の子どもの安全を確保する方法
• 救急車を呼ぶべきケースと判断基準

慌てずに落ち着いて行動するためのコツ

お子さんがけいれんを起こしているのを見ると、誰もが慌ててしまうものです。しかし、熱性けいれんのほとんどは数分で自然に収まり、命に関わることは稀です。まずは深呼吸をして、落ち着くよう努めましょう。けいれんの様子を冷静に観察することが、その後の医療機関での診断に役立ちます。

• けいれんが始まった時間を正確に計る。
• けいれんの様子（全身か、体の一部か、目の動き、顔色など）をよく観察する。
• 可能であれば、スマートフォンなどで動画を撮影することも有効です。

けいれん中の子どもの安全を確保する方法

けいれん中のお子さんの安全を確保するために、以下の点に注意して行動しましょう。

• 体を横向きに寝かせる：吐物による窒息や誤嚥を防ぐため、お子さんの体を横向きに寝かせましょう。特に右側を下にするのがおすすめです。
• 周囲の危険物を取り除く：頭をぶつけたり、体に当たったりする可能性のある硬いものや尖ったもの、熱いものなどを周囲から遠ざけましょう。
• 衣服を緩める：首元や胸元の衣服を緩め、呼吸を楽にしてあげましょう。
• 口の中に物を入れない：舌を噛むことを心配して口に指や箸などを入れるのは危険です。窒息や口の中を傷つける原因となるため、絶対にやめましょう。
• 体を強く揺すらない、押さえつけない：けいれんを止めようとして体を強く揺すったり、押さえつけたりすると、骨折などの怪我につながる可能性があります。

救急車を呼ぶべきケースと判断基準

ほとんどの熱性けいれんは数分で収まりますが、以下のような場合はすぐに救急車を呼ぶか、医療機関を受診する必要があります。

• けいれんが5分以上続く場合：5分以上続くけいれんは「けいれん重積状態」の可能性があり、脳に影響を与えるリスクがあるため、速やかな医療処置が必要です。
• 一度止まったけいれんが短時間で再び起こる場合：24時間以内に複数回けいれんを繰り返す場合は、複雑型熱性けいれんの可能性があります。
• けいれんが止まっても意識が戻らない、呼びかけに反応しない場合：意識の回復に時間がかかる場合は、他の病気の可能性も考慮されます。
• けいれんが左右対称ではなく、体の一部に偏っている場合：部分的なけいれんは、複雑型熱性けいれんの特徴の一つです。
• 生後6ヶ月未満の乳児の場合：乳児期のけいれんは、熱性けいれん以外の重篤な病気が隠れている可能性もあるため、注意が必要です。
• けいれん後に手足の麻痺など、普段と異なる症状が見られる場合：
• 顔色が非常に悪い、呼吸が苦しそうなど、全身状態が悪い場合：

初めての熱性けいれんで親御さんが冷静に行動するのが難しいと感じる場合も、迷わず救急車を呼んでください。

熱性けいれんに関するよくある質問

熱性けいれんに関して、親御さんからよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

• 熱性けいれんはてんかんに移行する？
• 熱性けいれんの予防方法はありますか？
• けいれん後に病院を受診すべきですか？
• 熱性けいれんの診断基準は何ですか？
• 兄弟も熱性けいれんを起こしやすいですか？
• 熱性けいれんの薬はありますか？
• 熱性けいれんと脳波検査は関係ありますか？
• 熱性けいれんは危険な症状ですか？

熱性けいれんはてんかんに移行する？

単純型熱性けいれんが直接てんかんに移行することはほとんどありません。熱性けいれんを経験した子どものうち、将来てんかんを発症する割合は3〜5%程度とされており、これは熱性けいれんがない子どもと比較してわずかに高い程度です。熱性けいれん自体が脳に損傷を与え、てんかんを引き起こすわけではなく、てんかんになりやすい体質の子どもが熱性けいれんも起こしやすいと考えられています。

熱性けいれんの予防方法はありますか？

熱性けいれんを完全に予防することは難しいですが、再発を抑えるための方法として、抗けいれん薬の坐薬（ジアゼパム坐薬、商品名ダイアップなど）を使用することがあります。これは、発熱の初期（37.5〜38℃以上）に予防的に使用することで、けいれんの発作を抑える効果が期待できます。

なお、解熱剤は発熱による不快な症状を和らげる効果はありますが、熱性けいれんの予防効果はないとされています。

けいれん後に病院を受診すべきですか？

初めて熱性けいれんを起こした場合は、けいれんが5分以内に収まり意識が回復していても、必ず医療機関を受診しましょう。これは、熱性けいれん以外の重篤な病気（髄膜炎や脳炎など）ではないことを確認するためです。

熱性けいれんの診断基準は何ですか？

熱性けいれんは、以下の条件を満たす場合に診断されます。

• 生後6ヶ月から5歳までの乳幼児期に発症すること。
• 38℃以上の発熱に伴ってけいれんが起こること。
• 髄膜炎や脳炎など、中枢神経系の感染症によるものではないこと。
• てんかんの既往がないこと。

診断のためには、けいれんの様子や持続時間、発熱の状況、家族歴などを詳しく医師に伝えることが重要です。必要に応じて血液検査、髄液検査、頭部画像検査、脳波検査などが行われることもあります。

兄弟も熱性けいれんを起こしやすいですか？

熱性けいれんには遺伝的な要因が関与していると考えられています。両親のどちらか、または兄弟に熱性けいれんの経験がある場合、その子どもも熱性けいれんを起こす頻度が2〜3倍高くなると言われています。

熱性けいれんの薬はありますか？

熱性けいれんの発作中に使用する薬としては、けいれんを止めるための坐薬（ジアゼパム坐薬など）や、点鼻薬、静脈注射などがあります。これらは主に、けいれんが5分以上続く場合や、救急搬送中に使用されることがあります。

熱性けいれんと脳波検査は関係ありますか？

単純型熱性けいれんの場合、通常はルーチンの脳波検査は必要ありません。しかし、複雑型熱性けいれんの条件を満たす場合（けいれんが15分以上続く、体の一部に起こる、24時間以内に繰り返すなど）や、けいれん後に意識の回復が遅い、麻痺などの神経学的な異常が見られる場合、てんかんへの移行が懸念される場合などには、脳波検査が行われることがあります。

熱性けいれんは危険な症状ですか？

ほとんどの熱性けいれんは「単純型熱性けいれん」であり、数分で自然に収まり、後遺症を残すことはほとんどありません。命に関わることも稀な、予後が良好な病気です。

まとめ

• 熱性けいれんは生後6ヶ月から5歳頃までの乳幼児期に多く見られる発熱に伴うけいれんです。
• 多くの子どもは6歳前後で熱性けいれんを起こさなくなります。
• 急激な体温上昇時に起こりやすく、通常38℃以上の発熱が伴います。
• けいれんのほとんどは2〜3分で自然に収まり、後遺症を残すことは稀です。
• けいれんが起きた際は、落ち着いて子どもの安全を確保することが重要です。
• 体を横向きに寝かせ、周囲の危険物を取り除き、口の中に物を入れないようにしましょう。
• けいれんが5分以上続く、意識が戻らない、繰り返す場合は救急車を呼びましょう。
• 初めての熱性けいれんの場合は、必ず医療機関を受診して他の病気ではないか確認しましょう。
• 熱性けいれんがてんかんに移行する可能性は低いとされています。
• 再発しやすい子どもには、医師の判断で予防薬が処方されることがあります。
• 解熱剤には熱性けいれんの予防効果はありません。
• 熱性けいれんには遺伝的な要因も関与している可能性があります。
• けいれんの様子を観察し、時間や特徴を医師に伝えることが大切です。
• 予防接種は、熱性けいれんを起こした後でも医師と相談の上で可能です。
• 熱性けいれんは、子どもの成長とともに自然と乗り越えられることが多い症状です。