尿酸値が高いと診断され、市販薬で何とかしたいと考えている方も多いのではないでしょうか。しかし、市販薬で尿酸値を直接下げることは難しいのが現状です。本記事では、市販薬でできる尿酸値対策の現実と、効果的なサプリメントの選び方、そして何よりも大切な生活習慣の改善について詳しく解説します。
尿酸値対策の市販薬の現状と効果の限界

尿酸値が高い状態は「高尿酸血症」と呼ばれ、放置すると痛風発作や腎機能障害などのリスクが高まります。市販薬で手軽に解決したいと考える気持ちはよく分かりますが、尿酸値を直接的に下げる医薬品は、ほとんどが医師の処方が必要なものです。市販されている製品は、あくまで補助的な役割を果たすものが中心であることを理解しておくことが大切です。
尿酸値を直接下げる市販薬はほとんどない理由
高尿酸血症は、体内で尿酸が過剰に作られたり、腎臓からの尿酸の排出が滞ったりすることで起こる生活習慣病の一つです。この状態を根本的に改善するには、専門的な診断に基づいた治療が求められます。医療機関で処方される薬は、尿酸の生成を抑えるものや、尿酸の排出を促すものなど、その作用機序が明確に確立されています。
一方、市販薬は、医薬品としての効果・効能が限定されており、尿酸値を劇的に下げるほどの作用は期待できません。そのため、市販薬だけで高尿酸血症を治療しようとすると、かえって病状の進行を見逃してしまうおそれがあります。尿酸値が高い状態が続く場合は、自己判断せずに医療機関を受診することが重要です。
尿酸値対策として注目されるサプリメントや機能性表示食品
尿酸値対策として市販されている製品の多くは、サプリメントや機能性表示食品に分類されます。これらは医薬品とは異なり、特定の保健の目的が期待できる成分を含んでいますが、病気の治療を目的とするものではありません。主な成分としては、以下のようなものが挙げられます。
- アンセリン: 魚肉ペプチドの一種で、尿酸の生成を抑えたり、排出を促したりする働きが報告されています。
- ルテオリン: 菊の花などに含まれるポリフェノールの一種で、尿酸の生成に関わる酵素の働きを阻害する機能が報告されています。
- キトサン: カニやエビの甲羅などに含まれる食物繊維の一種で、プリン体の吸収を抑える働きが期待されています。
- ケルセチン: 玉ねぎなどに含まれるポリフェノールの一種で、尿酸の生成を抑える働きが研究されています。
これらの成分は、健康な方の高めの尿酸値(血清尿酸値5.5~7.0mg/dL)を低下させる機能が報告されているものもありますが、効果には個人差があります。あくまで日々の生活習慣をサポートする補助的なものとして活用し、過度な期待は避けるべきです。
痛風発作時の症状を和らげる市販薬
高尿酸血症が進行し、痛風発作が起きてしまった場合には、激しい痛みを伴います。この痛みを一時的に和らげるために、市販の鎮痛消炎剤(NSAIDs:非ステロイド性抗炎症薬)が使用されることがあります。例えば、ロキソプロフェンやイブプロフェンを主成分とする内服薬や、ジクロフェナクナトリウムなどの外用薬がドラッグストアなどで購入可能です。
ただし、これらの薬は痛風発作による炎症や痛みを抑えるためのものであり、尿酸値を下げる効果はありません。また、アスピリン(アセチルサリチル酸)を含む鎮痛薬は、尿酸値を変動させ、かえって症状を悪化させる可能性があるため、痛風発作時には使用しないように注意が必要です。 痛風発作が起きた場合は、できるだけ早く医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。
尿酸値を効果的に下げるための生活習慣のコツ

尿酸値を正常に保つためには、市販薬やサプリメントに頼るだけでなく、日々の生活習慣を見直すことが最も重要です。食生活、飲酒習慣、運動習慣など、できることから改善に取り組むことで、尿酸値のコントロールにつながります。
食事での尿酸値対策:プリン体を意識した食生活
尿酸は、体内でプリン体が分解される際に生成されます。食事から摂取するプリン体の影響は全体の20〜30%程度ですが、過剰な摂取は尿酸値上昇の一因となるため、意識的に管理することが大切です。
- プリン体を多く含む食品を控える: レバー、魚卵、干物、一部の魚介類(マイワシ、サンマなど)、肉類はプリン体が多い傾向にあります。 これらの食品の過剰な摂取は控えめにしましょう。
- 水分を十分に摂る: 1日に2リットル以上の水を飲むことを目安に、こまめな水分補給を心がけましょう。水分を多く摂ることで、尿酸が尿とともに体外へ排出されやすくなります。 糖分を多く含むジュースや清涼飲料水は、尿酸値を上げる原因となるため避けてください。
- 尿をアルカリ性にする食品を摂る: 尿が酸性に傾くと尿酸が溶けにくくなり、尿路結石のリスクが高まります。野菜、海藻類、きのこ類、乳製品(特に低脂肪乳やヨーグルト)などは尿をアルカリ性にする働きがあり、積極的に摂ることをおすすめします。
- 果糖の摂りすぎに注意: 清涼飲料水や果物に含まれる果糖は、体内で尿酸の生成を促進する作用があるため、摂りすぎには注意が必要です。 バナナは尿酸値を下げる効果が期待できますが、糖分も含むため1日1本程度に留めましょう。
飲酒習慣の見直し:アルコールと尿酸値の関係
アルコールは、プリン体の含有量に関わらず、体内で尿酸の生成を促進し、尿酸の排出を妨げる作用があります。特にビールはプリン体が多く含まれていますが、その他のアルコール飲料も飲みすぎは尿酸値上昇の原因となります。
尿酸値を下げるためには、アルコールの摂取量を控えることが重要です。休肝日を設けたり、飲む量を減らしたりするなど、飲酒習慣を見直しましょう。低プリン体やプリン体ゼロと表示されたアルコール飲料もありますが、アルコール自体に尿酸値を上げる作用があるため、油断は禁物です。
適度な運動と体重管理:肥満解消が尿酸値改善の鍵
肥満、特に内臓脂肪型肥満は、尿酸値を上昇させる大きな要因の一つです。適切な体重を維持することは、尿酸値の改善に直結します。
運動は、肥満解消だけでなく、インスリン抵抗性の改善を通じて尿酸値を下げる効果も期待できます。ウォーキングやジョギング、サイクリングなどの有酸素運動を継続的に行うことがおすすめです。ただし、激しい無酸素運動は一時的に尿酸値を上げてしまう可能性があるため、会話ができる程度の無理のない範囲で行うことが大切です。
市販薬やサプリメントで効果がないと感じたら:医療機関受診の目安

市販薬やサプリメント、生活習慣の改善を試みても尿酸値がなかなか下がらない場合や、痛風発作を繰り返す場合は、医療機関を受診することが強く推奨されます。専門医による適切な診断と治療を受けることで、より効果的に尿酸値をコントロールし、合併症のリスクを減らすことができます。
病院で処方される尿酸値の薬の種類
医療機関では、患者さんの尿酸値や体質、合併症の有無などに応じて、以下のような薬が処方されます。
- 尿酸生成抑制薬: 体内で尿酸が作られるのを抑える薬です。フェブキソスタット(商品名:フェブリクなど)やアロプリノール(商品名:ザイロリックなど)が代表的です。これらの薬は、プリン体から尿酸が生成される過程で働く酵素の働きを阻害することで、尿酸値を低下させます。
- 尿酸排泄促進薬: 腎臓からの尿酸の排出を促す薬です。ベンズブロマロン(商品名:ユリノームなど)やプロベネシドなどがこれに当たります。腎臓での尿酸の再吸収を抑えることで、尿中に排出される尿酸の量を増やします。
- 尿アルカリ化薬: 尿をアルカリ性にすることで、尿酸が溶けやすくなり、尿路結石の予防に役立ちます。尿酸排泄促進薬と併用されることがあります。
これらの薬は、効果が出るまでに時間がかかることがあり、医師の指示に従って継続的に服用することが大切です。自己判断で服用を中止したり、量を変更したりすると、尿酸値が再び上昇したり、痛風発作を誘発したりするおそれがあります。
どのような場合に病院を受診すべきか
以下のような状況に当てはまる場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
- 尿酸値が非常に高い場合: 血清尿酸値が9.0mg/dLを超える場合は、痛風発作や合併症のリスクが非常に高いため、薬物治療が必須となることが多いです。
- 痛風発作を繰り返している場合: 痛風発作は激しい痛みを伴い、放置すると関節の変形などにつながることもあります。
- 合併症がある場合: 高尿酸血症は、高血圧、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病などの生活習慣病と合併しやすいことが知られています。これらの合併症がある場合は、より慎重な管理が必要です。
- 市販薬や生活習慣改善で効果が見られない場合: 数ヶ月間、生活習慣の改善やサプリメントの利用を続けても尿酸値が目標値に達しない場合は、専門医の診察を受けましょう。
高尿酸血症は自覚症状がないまま進行することが多いため、健康診断などで尿酸値が高いと指摘されたら、症状がなくても一度医療機関で相談することをおすすめします。
よくある質問

- 尿酸値が高いとどんなリスクがありますか?
- 尿酸値はどれくらいから注意が必要ですか?
- 尿酸値を下げる飲み物はありますか?
- 尿酸値を下げる食べ物はありますか?
- 痛風発作が起きたらどうすればいいですか?
- 市販のサプリメントは本当に効果がありますか?
- 尿酸値の薬は一生飲み続ける必要がありますか?
尿酸値が高いとどんなリスクがありますか?
尿酸値が高い状態が続くと、痛風発作(激しい関節の痛み)だけでなく、尿酸が腎臓に蓄積して腎機能が低下する痛風腎、尿路に尿酸の結晶ができて激痛を伴う尿路結石などを引き起こすリスクがあります。さらに、高血圧、脂質異常症、糖尿病といった他の生活習慣病を合併しやすく、心臓病や脳卒中などの重篤な病気につながるおそれもあります。
尿酸値はどれくらいから注意が必要ですか?
血液中の尿酸値が7.0mg/dLを超えると「高尿酸血症」と診断され、注意が必要です。症状がなくても、この状態が続くと痛風発作や合併症のリスクが高まります。特に8.0mg/dL以上、9.0mg/dLを超える場合は、積極的に治療を検討すべき数値とされています。
尿酸値を下げる飲み物はありますか?
尿酸値を下げるためには、十分な水分補給が最も重要です。水や麦茶など、糖分を含まない飲み物を1日2リットル以上飲むことを心がけましょう。コーヒーや緑茶も利尿作用がありますが、飲みすぎは脱水につながる可能性もあるため、水との併用がおすすめです。 糖分を多く含む清涼飲料水や果糖の多いジュースは、尿酸値を上げてしまうため避けるべきです。
尿酸値を下げる食べ物はありますか?
尿酸値を下げるのに役立つ食べ物としては、乳製品(特に低脂肪乳やヨーグルト)、野菜、海藻類、きのこ類などが挙げられます。これらは尿をアルカリ性にして尿酸の排出を促したり、プリン体の摂取量を抑えたりする効果が期待できます。また、ビタミンCを多く含む果物(バナナ、チェリー、レモンなど)も尿酸値の低下に寄与すると言われています。
痛風発作が起きたらどうすればいいですか?
痛風発作が起きたら、まずは患部を冷やして安静にすることが大切です。市販の鎮痛消炎剤(ロキソプロフェンやイブプロフェンなど)で一時的に痛みを和らげることは可能ですが、根本的な治療にはなりません。できるだけ早く医療機関を受診し、医師の指示に従って適切な治療薬(コルヒチンやステロイドなど)を処方してもらいましょう。
市販のサプリメントは本当に効果がありますか?
市販のサプリメントや機能性表示食品は、尿酸値の「上昇を抑える」「排出を助ける」といった補助的な役割を果たすことが期待されます。アンセリンやルテオリンなどの成分が、高めの尿酸値を低下させる機能が報告されているものもありますが、医薬品のような治療効果は期待できません。あくまで生活習慣改善のサポートとして利用し、効果には個人差があることを理解しておく必要があります。
尿酸値の薬は一生飲み続ける必要がありますか?
尿酸値を下げる薬は、一度服用を始めると長期的な継続が必要となることが多いですが、必ずしも一生飲み続けるわけではありません。尿酸値が目標値(通常6.0mg/dL以下)で安定し、痛風発作や合併症のリスクが低いと医師が判断した場合、薬の減量や中止が検討されることもあります。しかし、自己判断で中断すると尿酸値が再上昇する可能性が高いため、必ず医師と相談しながら治療を進めることが重要です。
まとめ
- 市販薬で尿酸値を直接下げる医薬品はほとんどありません。
- 市販の尿酸値対策製品はサプリメントや機能性表示食品が中心です。
- アンセリンやルテオリンなどの成分が尿酸値の維持をサポートします。
- 痛風発作時には市販の鎮痛消炎剤で一時的に痛みを和らげられます。
- 痛風発作時の鎮痛剤は尿酸値を下げる効果はありません。
- 尿酸値を下げるには生活習慣の改善が最も重要です。
- プリン体を多く含む食品の過剰摂取は控えましょう。
- 十分な水分補給は尿酸の排出を促します。
- 野菜、海藻、乳製品は尿をアルカリ性にするのに役立ちます。
- アルコールは尿酸値を上げるため、摂取量を控えるべきです。
- 肥満解消と適度な有酸素運動が尿酸値改善の鍵です。
- 尿酸値が改善しない場合や痛風発作時は医療機関を受診しましょう。
- 病院では尿酸生成抑制薬や尿酸排泄促進薬が処方されます。
- 尿酸値の薬は医師の指示に従い、自己判断で中断しないことが大切です。
- 高尿酸血症は放置すると痛風や腎機能障害などのリスクがあります。
