健康診断で目にするヘモグロビン濃度。この数値が何を意味し、あなたの体にどう影響するのか、気になっている方も多いでしょう。本記事では、ヘモグロビン濃度基準値の基本から、数値が低い・高い場合に考えられる原因、そして日々の生活でできる改善策まで、分かりやすく解説します。
ヘモグロビン濃度基準値とは?その重要性を知ろう

ヘモグロビン濃度は、私たちの健康状態を知る上で非常に大切な指標の一つです。この数値が正常範囲内にあることは、体が適切に機能している証拠とも言えます。まずは、ヘモグロビンの基本的な役割と、その基準値について理解を深めましょう。
ヘモグロビンとは?役割と測定の意義
ヘモグロビンは、赤血球の中に含まれる赤い色素を持つタンパク質です。その主な役割は、肺で取り込んだ酸素を全身の細胞や組織に運び、代わりに細胞から出た二酸化炭素を肺まで運んで排出することにあります。
この酸素運搬の働きは、私たちの生命活動を維持するために不可欠です。ヘモグロビンは鉄を含む「ヘム」とタンパク質である「グロビン」が結合してできており、酸素と結合しやすいのはヘムの部分です。
ヘモグロビン濃度を測定することは、体が酸素をどれだけ効率良く運搬できているかを知る上で非常に重要です。この数値に異常が見られる場合、体に何らかの異変が起きている可能性を示唆しています。
男女別・年齢別のヘモグロビン濃度基準値
ヘモグロビン濃度には、性別や年齢によって異なる基準値が設定されています。これは、体の構造や生理機能の違いによるものです。一般的に、成人男性の方が成人女性よりも基準値は高めです。
例えば、成人男性の基準値は13.1~16.3g/dL程度、成人女性は12.1~14.5g/dL程度とされています。
また、妊娠中の女性は血液の液体成分が増えるため、一時的にヘモグロビン濃度が薄くなる傾向があり、基準値も成人女性より低めに設定されることがあります。
小児や高齢者でも基準値は変動することがあり、特に新生児は高め、小児期は成人よりやや低め、高齢者は低めの人が多いという実態が反映されています。
具体的な基準値は検査機関によって多少異なる場合があるため、ご自身の健康診断結果と照らし合わせて確認することが大切です。
以下に一般的なヘモグロビン濃度(Hb)の基準値の目安を示します。
| 対象 | ヘモグロビン濃度(Hb)基準値の目安 |
|---|---|
| 成人男性 | 13.1~16.3 g/dL |
| 成人女性 | 12.1~14.5 g/dL |
| 妊婦 | 10.5~11 g/dL未満を貧血と定義 |
| 80歳以上 | 11 g/dL未満を貧血と定義 |
| 小児 | 年齢によって異なる(成人よりやや低め) |
※これらの数値はあくまで目安であり、医療機関や検査方法によって多少の変動があることを理解しておきましょう。
ヘモグロビン濃度が低い場合(貧血)の原因と症状、改善策

ヘモグロビン濃度が基準値よりも低い状態は「貧血」と呼ばれます。貧血は、全身に十分な酸素が運ばれなくなることで、さまざまな不調を引き起こします。ここでは、貧血の主な原因や現れる症状、そして日々の生活でできる改善策について詳しく見ていきましょう。
貧血の主な原因と種類
貧血の最も一般的な原因は、ヘモグロビンの材料となる鉄分が不足する「鉄欠乏性貧血」です。
これは、月経による出血が多い女性や、無理なダイエット、偏った食事によって鉄分の摂取量が不足している場合に多く見られます。
その他にも、胃潰瘍やがんなど消化管からの慢性的な出血、妊娠・授乳期における鉄分の必要量増加なども原因となります。
鉄欠乏性貧血以外にも、赤血球の生成に必要なビタミンB12や葉酸の不足による「巨赤芽球性貧血(悪性貧血)」、骨髄の機能低下で血液が作られなくなる「再生不良性貧血」、赤血球が早く壊れてしまう「溶血性貧血」、腎臓病による「腎性貧血」など、様々な種類の貧血があります。
それぞれの貧血には異なる原因があり、適切な診断と治療が重要です。
貧血で現れる具体的な症状
ヘモグロビンが不足すると、全身が酸素不足の状態になり、様々な症状が現れます。
初期には「疲れやすい」「体がだるい」といった漠然とした症状が多く、見過ごされがちです。
貧血が進行すると、以下のような具体的な症状が現れることがあります。
- 倦怠感・疲労感:体が酸素不足になるため、エネルギーが十分に作られず、疲れやすくなります。
- 息切れ・動悸:少ない酸素を補うために心臓が過剰に働き、動悸や息切れを感じやすくなります。
- めまい・立ちくらみ:脳への酸素供給が一時的に不足することで起こります。
- 顔色不良(青白い):ヘモグロビンが赤い色素を持つため、不足すると顔色や唇、下まぶたの裏などが青白く見えます。
- 頭痛・集中力低下:脳の酸素不足が原因で、頭痛がしたり、物事に集中しにくくなったりします。
- 爪の異常:爪が薄く割れやすくなったり、スプーンのように反り返る「さじ状爪」が見られることがあります。
- 異食症:氷や土など、通常食べないものを無性に食べたくなることがあります。
これらの症状は、他の病気でも見られることがあるため、自己判断せずに医療機関を受診することが大切です。
貧血を改善するための食事と生活のコツ
鉄欠乏性貧血の場合、食事からの鉄分補給が改善の重要なコツとなります。
鉄分には、肉や魚に含まれる「ヘム鉄」と、野菜や海藻に含まれる「非ヘム鉄」の2種類があります。ヘム鉄の方が体に吸収されやすい特徴があります。
積極的に摂りたい食品は以下の通りです。
- ヘム鉄が豊富な食品:レバー、赤身肉(牛肉、豚肉)、カツオ、マグロ、あさり、しじみなど。
- 非ヘム鉄が豊富な食品:ほうれん草、小松菜、ひじき、大豆製品(納豆、豆腐)、レンズ豆、小豆など。
また、鉄分の吸収を助ける栄養素も一緒に摂ることが大切です。特にビタミンCは非ヘム鉄の吸収率を高める働きがあります。
ビタミンCが豊富な野菜(パプリカ、ブロッコリーなど)や果物(柑橘類、いちごなど)を積極的に摂りましょう。
さらに、ヘモグロビンの合成にはタンパク質も必要不可欠です。肉、魚、卵、乳製品などから良質なタンパク質を摂取しましょう。
赤血球の生成にはビタミンB12や葉酸も重要です。これらはレバー、魚の血合い、緑黄色野菜などに多く含まれています。
食事のコツとしては、鉄分を多く含む食材とビタミンCを組み合わせたメニューを意識することです。例えば、レバニラ炒めや、あさりとほうれん草のパスタなどがおすすめです。
一方で、コーヒーや紅茶に含まれるタンニンは鉄の吸収を妨げる可能性があるため、食前食後の摂取は控えるのが良いでしょう。
食事以外では、十分な休息も貧血改善に役立ちます。睡眠不足は鉄分の吸収を妨げることがあるため、規則正しい生活を心がけましょう。
ヘモグロビン濃度が高い場合の原因と注意点
ヘモグロビン濃度が基準値よりも高い場合も、体に何らかの異常が起きている可能性があります。貧血と同様に、その原因を理解し、適切な対処をすることが大切です。
ヘモグロビン濃度が高い主な原因
ヘモグロビン濃度が高い状態は「多血症(赤血球増加症)」と呼ばれます。
多血症にはいくつかの原因が考えられます。
- 脱水症状:水分摂取量が不足したり、大量の発汗や下痢、嘔吐などによって体内の水分が減少すると、血液が濃縮され、相対的にヘモグロビン濃度が高く見えます。
- 喫煙:喫煙によって体内の酸素が不足すると、体が酸素不足を補おうとしてヘモグロビンを増やそうとします。
- 慢性的な酸素不足:肺疾患(慢性閉塞性肺疾患など)や心臓病、睡眠時無呼吸症候群などにより、慢性的に体内の酸素が不足している場合、ヘモグロビンが増加することがあります。また、高地に住む人も酸素濃度が低いため、ヘモグロビン値が高くなる傾向があります。
- 腎臓病:腎臓から分泌されるエリスロポエチンというホルモンが過剰に分泌されることで、赤血球の生産が促進され、ヘモグロビン濃度が上昇することがあります。
- 真性多血症:骨髄の異常によって赤血球が過剰に作られる病気で、血液がドロドロになりやすい特徴があります。
- 薬剤の影響:エリスロポエチン製剤やテストステロン製剤、一部の利尿薬などがヘモグロビン値を上昇させることがあります。
これらの原因は、それぞれ異なる健康リスクを伴うため、正確な診断が重要です。
高値が示す健康リスクと症状
ヘモグロビン濃度が高い状態が続くと、血液の粘度が増し、様々な健康リスクが高まります。
主なリスクは、血液が固まりやすくなることで、血栓ができやすくなることです。
これにより、以下のような重篤な病気を引き起こす可能性があります。
- 脳梗塞:脳の血管が血栓で詰まる。
- 心筋梗塞:心臓の血管が血栓で詰まる。
- 深部静脈血栓症:足などの静脈に血栓ができる。
- 肺塞栓症:肺の血管が血栓で詰まる。
ヘモグロビン濃度が高い場合に現れる症状としては、以下のようなものがあります。
- 頭痛・めまい:血液の粘度が高まり、血流が悪くなることで起こります。
- 耳鳴り:血流の変化が原因となることがあります。
- 顔面紅潮:顔が赤っぽくなることがあります。
- 手足のしびれ:血流が悪くなることで、手足に酸素や栄養が届きにくくなるためです。
- 疲労感・倦怠感:血液がドロドロになることで、全身の血流が悪くなり、疲れやすさを感じることがあります。
- 皮膚のかゆみ:真性多血症などで見られることがあります。
これらの症状が見られる場合は、放置せずに医療機関を受診し、原因を特定することが重要です。
高値の場合の対処法
ヘモグロビン濃度が高い場合の対処法は、その原因によって異なります。
まず大切なのは、自己判断せずに医療機関を受診し、正確な診断を受けることです。
原因に応じた主な対処法は以下の通りです。
- 脱水が原因の場合:十分な水分補給を心がけましょう。特に夏場や運動後、発熱時などは意識的に水分を摂ることが大切です。
- 喫煙が原因の場合:禁煙が最も効果的な改善策です。喫煙は体内の酸素不足を引き起こし、ヘモグロビン増加の一因となります。
- 基礎疾患がある場合:肺疾患、心臓病、腎臓病、睡眠時無呼吸症候群などが原因の場合は、それぞれの病気の治療を行うことが重要です。
- 真性多血症の場合:血液を抜く「瀉血(しゃけつ)」という治療や、薬物治療が行われることがあります。
- 薬剤が原因の場合:服用している薬が原因である可能性があれば、医師や薬剤師に相談し、必要に応じて薬の変更や調整を検討します。
ヘモグロビン濃度が高い状態は、放置すると脳梗塞や心筋梗塞などの重篤な病気につながるリスクがあるため、早めの対処が求められます。
健康診断で異常値を指摘されたらどうする?

健康診断でヘモグロビン濃度に異常値を指摘された場合、不安に感じるのは当然です。しかし、慌てずに適切なステップを踏むことが、早期の解決につながります。
医療機関での精密検査の重要性
ヘモグロビン濃度が基準値から外れていると指摘されたら、まずは必ず医療機関を受診し、精密検査を受けることが重要です。
健康診断の数値はあくまで目安であり、その数値だけでは具体的な病名を特定することはできません。
医師は、血液検査の他の項目(赤血球数、ヘマトクリット値、MCV、MCH、MCHCなど)や、問診、身体診察などを総合的に判断し、異常値の原因を詳しく調べます。
例えば、貧血の場合でも、鉄欠乏性貧血なのか、それとも他の種類の貧血なのかによって、治療法が大きく異なります。
多血症の場合も、脱水による一時的なものか、あるいは真性多血症のような病気が隠れているのかを区別する必要があります。
自己判断で放置したり、民間療法に頼ったりすることは、症状を悪化させたり、重大な病気の発見を遅らせたりする原因となるため、避けるべきです。
医師との相談で適切な治療へ
精密検査の結果に基づき、医師はあなたのヘモグロビン濃度の異常値の原因を特定し、適切な治療方針を提案してくれます。
治療は、原因となっている病気や状態によって様々です。
- 鉄欠乏性貧血の場合:鉄剤の服用や、食事内容の見直しが中心となります。
- ビタミンB12や葉酸不足による貧血の場合:これらの栄養素を補給する治療が行われます。
- 出血が原因の貧血の場合:出血源を特定し、その治療を行います。
- 多血症で脱水が原因の場合:水分補給や生活習慣の改善が求められます。
- 真性多血症などの病気の場合:瀉血や薬物治療など、専門的な治療が必要になります。
医師との相談を通じて、治療の進め方や日常生活での注意点、今後の見通しなどをしっかりと理解することが大切です。疑問や不安な点があれば、遠慮なく質問し、納得した上で治療を進めましょう。
よくある質問

- ヘモグロビンが低いとどうなりますか?
- ヘモグロビンが高いとどうなりますか?
- ヘモグロビンの正常値はいくつですか?
- ヘモグロビンを増やすにはどうすればいいですか?
- ヘモグロビンが10は低いですか?
- ヘモグロビンが15は高いですか?
- ヘモグロビンはどのくらいで改善しますか?
- ヘモグロビンを上げる食べ物は?
ヘモグロビンが低いとどうなりますか?
ヘモグロビンが低い状態は「貧血」と呼ばれ、全身に十分な酸素が運ばれなくなります。これにより、疲れやすさ、だるさ、息切れ、動悸、めまい、立ちくらみ、頭痛、顔色不良などの症状が現れます。重度になると、心臓に負担がかかり、心不全を起こすリスクもあります。
ヘモグロビンが高いとどうなりますか?
ヘモグロビンが高い状態は「多血症」と呼ばれ、血液の粘度が増してドロドロになります。これにより、血栓ができやすくなり、脳梗塞や心筋梗塞、深部静脈血栓症などの重篤な病気のリスクが高まります。頭痛、めまい、耳鳴り、顔面紅潮、手足のしびれなどの症状が現れることもあります。
ヘモグロビンの正常値はいくつですか?
ヘモグロビンの正常値(基準値)は、性別や年齢によって異なります。一般的な目安として、成人男性は13.1~16.3g/dL、成人女性は12.1~14.5g/dLとされています。ただし、検査機関によって基準値に多少の幅があるため、ご自身の健康診断結果に記載されている基準値を確認することが大切です。
ヘモグロビンを増やすにはどうすればいいですか?
ヘモグロビンを増やすには、主に鉄分を豊富に含む食品を摂ることが重要です。レバー、赤身肉、カツオなどのヘム鉄が豊富な食品や、ほうれん草、小松菜、ひじき、大豆製品などの非ヘム鉄が豊富な食品を積極的に摂りましょう。また、鉄の吸収を助けるビタミンCや、赤血球の生成に必要なビタミンB12、葉酸も一緒に摂るのがコツです。
ヘモグロビンが10は低いですか?
はい、ヘモグロビンが10g/dLは、成人男性(基準値13.1~16.3g/dL)でも成人女性(基準値12.1~14.5g/dL)でも、一般的に低いと判断され、貧血の可能性があります。特に男女ともに10g/dL以下になると、めまいや息切れなどの症状が現れる「中等症から重症の貧血」と診断されることがあります。
ヘモグロビンが15は高いですか?
ヘモグロビンが15g/dLの場合、成人女性(基準値12.1~14.5g/dL)では基準値の上限に近いか、やや高いと判断されることがあります。成人男性(基準値13.1~16.3g/dL)では正常範囲内です。ただし、基準値は検査機関によって異なるため、ご自身の健康診断結果の基準値と照らし合わせて確認し、不安な場合は医師に相談しましょう。
ヘモグロビンはどのくらいで改善しますか?
ヘモグロビンが改善するまでの期間は、貧血の原因や重症度、治療方法によって異なります。鉄欠乏性貧血で鉄剤を服用する場合、数週間で症状の改善が見られ始めることが多いですが、体内の鉄貯蔵量を十分に回復させるためには数ヶ月間の継続的な治療が必要となることもあります。医師の指示に従い、根気強く治療を続けることが大切です。
ヘモグロビンを上げる食べ物は?
ヘモグロビンを上げるためには、鉄分を多く含む食べ物が効果的です。具体的には、レバー、牛肉、豚肉、カツオ、マグロ、あさり、しじみなどの動物性食品(ヘム鉄)や、ほうれん草、小松菜、ひじき、大豆製品(納豆、豆腐)などの植物性食品(非ヘム鉄)が挙げられます。これらをビタミンCが豊富な野菜や果物と一緒に摂ることで、鉄分の吸収率を高めることができます。
まとめ
- ヘモグロビンは赤血球に含まれ、全身に酸素を運ぶ重要な役割を担っています。
- ヘモグロビン濃度は健康状態を示す大切な指標です。
- 基準値は性別や年齢によって異なり、成人男性の方が女性より高めです。
- ヘモグロビンが低い状態は「貧血」と呼ばれ、酸素不足で様々な不調が起こります。
- 貧血の主な原因は鉄分不足(鉄欠乏性貧血)ですが、他にも種類があります。
- 貧血の症状には、倦怠感、息切れ、めまい、頭痛、顔色不良などがあります。
- 貧血改善には、鉄分、ビタミンC、タンパク質、ビタミンB12、葉酸を摂る食事が有効です。
- ヘモグロビンが高い状態は「多血症」と呼ばれ、血液がドロドロになります。
- 多血症の原因は脱水、喫煙、慢性酸素不足、特定の病気などです。
- 多血症は血栓リスクを高め、脳梗塞や心筋梗塞につながる可能性があります。
- 高値の症状には、頭痛、めまい、顔面紅潮、手足のしびれなどがあります。
- 健康診断で異常値を指摘されたら、自己判断せず速やかに医療機関を受診しましょう。
- 医師との相談で、原因に応じた適切な精密検査と治療へ進むことが大切です。
- 生活習慣の見直しも、ヘモグロビン値の改善に繋がる重要なコツです。
- 定期的な健康チェックで、ご自身のヘモグロビン濃度を把握しましょう。
