「寝ようとすると息が止まる」という経験は、非常に不安で苦しいものです。もしかしたら、あなたは夜中に何度も目が覚めてしまい、熟睡できない日々を送っているかもしれません。この症状は、単なる寝苦しさだけでなく、体の健康に深く関わるサインである可能性もあります。
本記事では、寝ようとすると息が止まる主な原因から、ご自身で今すぐ試せる具体的な対処法、そして専門家への相談を検討すべきケースまで、詳しく解説します。あなたの睡眠の質を高め、安心して眠れる毎日を取り戻すための一助となれば幸いです。
寝ようとすると息が止まるのはなぜ？主な原因を理解しよう
寝ようとすると息が止まる症状には、いくつかの原因が考えられます。原因を正しく理解することが、適切な対処へとつながる第一歩です。ここでは、主な原因について詳しく見ていきましょう。
睡眠時無呼吸症候群（SAS）の可能性
睡眠時無呼吸症候群（SAS）は、睡眠中に10秒以上の呼吸停止や呼吸が弱くなる「低呼吸」が1時間に5回以上繰り返される病気です。この症状の多くは、空気の通り道である上気道が物理的に狭くなったり、塞がったりすることで起こります。これを閉塞性睡眠時無呼吸症候群（OSAS）と呼びます。肥満や扁桃腺・アデノイドの肥大、顎が小さいことなどが原因となる場合が多いです。
また、脳からの呼吸指令に異常がある中枢性睡眠時無呼吸症候群というタイプもあります。SASの患者さんは、大きないびきをかく、日中に強い眠気を感じる、起床時に頭痛がする、夜間に何度も目が覚める、寝汗をかくといった症状を伴うことがあります。
ストレスや不安による呼吸の変化
精神的なストレスや不安も、寝ようとすると息が止まる感覚を引き起こすことがあります。ストレスを感じると自律神経のバランスが乱れ、交感神経が優位になることで、脈拍や血圧が上昇し、呼吸が浅く速くなる傾向があります。 この状態が睡眠中にも現れると、息苦しさや過呼吸のような症状を感じることがあります。特に、環境の変化にうまく順応できない「適応障害」や、不安障害の一種である「パニック障害」でも、夜間に呼吸困難を感じる場合があるため注意が必要です。
鼻や喉の構造的な問題
鼻や喉の構造的な問題も、睡眠中の呼吸を妨げる原因となります。例えば、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎による鼻づまりは、口呼吸を誘発し、気道が狭くなる原因になります。 また、扁桃腺やアデノイドが大きい場合、特に小児において気道を塞ぎやすくなり、睡眠時無呼吸症候群を引き起こすことがあります。 舌の根元が喉の奥に落ち込む「舌根沈下」も、仰向けで寝た際に気道を狭める一因です。
逆流性食道炎などの身体的な要因
逆流性食道炎も、寝ようとすると息苦しさを感じる原因の一つです。胃酸が食道に逆流し、喉や気管を刺激することで、咳や息苦しさを誘発することがあります。特に横になると胃酸が逆流しやすくなるため、就寝中に症状が悪化する傾向が見られます。 その他、心不全や気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患（COPD）などの呼吸器や心臓の病気が原因で、横になると息苦しさを感じる場合もあります。
これらの病気は、放置すると重症化するリスクがあるため、気になる症状があれば早めに医療機関を受診することが大切です。
今すぐ試せる！寝ようとすると息が止まる時の具体的な対処法
寝ようとすると息が止まる症状に悩んでいる場合、まずはご自身でできる対策を試してみましょう。日々の生活習慣や睡眠環境を見直すことで、症状の軽減が期待できます。ここでは、具体的な対処法をご紹介します。
寝姿勢の工夫で呼吸を楽にする
寝姿勢を工夫することは、睡眠中の呼吸を楽にするための大切なコツです。仰向けで寝ると、重力の影響で舌の根元が喉の奥に落ち込み、気道が狭くなることがあります。特に肥満体型の方は、首周りの脂肪が気道を圧迫しやすいため、仰向け寝で息苦しさを感じやすい傾向があります。 そのため、横向きで寝ることを試してみましょう。
横向き寝は、舌根沈下を防ぎ、気道の閉塞を軽減する効果が期待できます。 横向き寝をサポートする抱き枕や、ご自身に合った高さの枕を選ぶことも重要です。枕が高すぎると顎が引かれ、喉が圧迫されて気道が狭くなるため、適切な高さの枕を選びましょう。
睡眠環境を整えるコツ
快適な睡眠環境を整えることも、息苦しさの軽減につながります。寝室の空気の乾燥は、鼻や喉の粘膜を刺激し、鼻づまりや咳の原因となることがあります。加湿器を使用するなどして、適切な湿度（50～60%程度）を保つように心がけましょう。 また、寝室の温度も重要です。夏は涼しく、冬は暖かく保ち、快適な室温で眠れるように調整してください。
光や騒音も睡眠の質を低下させる要因となるため、遮光カーテンを使用したり、耳栓を活用したりするのも良い方法です。
リラックスできる習慣を取り入れる
ストレスや不安が息苦しさの原因となっている場合は、リラックスできる習慣を生活に取り入れることが大切です。就寝前にぬるめのお風呂にゆっくり浸かる、アロマオイルを焚く、軽いストレッチや瞑想を行うなど、心身を落ち着かせる時間を作りましょう。 また、カフェインやアルコールの摂取は、睡眠の質を低下させ、呼吸を不安定にすることがあります。
特に就寝前の飲酒は、喉の筋肉を緩ませ、気道の閉塞を引き起こしやすくなるため、控えるのがおすすめです。 規則正しい生活リズムを心がけ、十分な睡眠時間を確保することも、自律神経のバランスを整える上で重要です。
鼻呼吸を意識したトレーニング
口呼吸が習慣になっていると、睡眠中に気道が狭くなりやすくなります。鼻呼吸を意識したトレーニングを取り入れることで、呼吸の改善が期待できます。鼻呼吸は、鼻毛が空気中の異物を除去し、鼻腔が空気を加湿・加温するため、喉への負担が少なく、より質の良い呼吸が可能です。 日中から意識的に口を閉じ、鼻で呼吸する練習をしましょう。
就寝中に口が開いてしまう場合は、口閉じテープを使用するのも一つの方法です。 また、鼻うがいや鼻腔拡張テープなども、鼻づまりを軽減し、鼻呼吸を促す助けとなります。 口や喉の周りの筋肉を鍛える「口腔咽頭運動」も、気道の閉塞を防ぐのに役立つため、毎日続けることをおすすめします。
専門家への相談を検討すべきケース
ご自身でできる対処法を試しても症状が改善しない場合や、特定の症状が見られる場合は、専門家への相談を検討することが重要です。早期に適切な診断と治療を受けることで、症状の悪化を防ぎ、健康な生活を取り戻すことができます。
どんな症状があれば受診すべきか
以下のような症状が続く場合は、医療機関を受診しましょう。これらの症状は、睡眠時無呼吸症候群やその他の重篤な病気のサインである可能性があります。
- 毎晩のように大きないびきをかく、または家族から呼吸が止まっていると指摘される
- 日中に強い眠気や倦怠感があり、集中力が続かない
- 夜中に何度も目が覚める、または息苦しさで目が覚める
- 起床時に頭痛がする、口が渇いている、熟睡感がない
- 夜間頻尿がある
- 高血圧、糖尿病、心臓病などの持病がある
- 子供の場合、いびき、口呼吸、寝相が悪い、日中の多動や集中力低下が見られる
これらの症状は、睡眠時無呼吸症候群だけでなく、心不全、喘息、逆流性食道炎など、さまざまな病気と関連している可能性があります。 自己判断せずに、専門医の診察を受けることが大切です。
医療機関での検査と治療方法（CPAP療法など）
医療機関では、まず問診や簡易検査が行われます。簡易検査では、自宅で専用の装置を装着し、睡眠中の呼吸状態や酸素飽和度などを記録します。 その結果、さらに詳しい検査が必要と判断された場合は、病院で一泊して行う「ポリソムノグラフィー（PSG）検査」を受け、睡眠の質や無呼吸の回数などを詳細に調べます。
診断された場合の治療方法には、主に以下のものがあります。
- CPAP（シーパップ）療法：持続陽圧呼吸療法とも呼ばれ、鼻に装着したマスクから空気を送り込み、気道を広げて睡眠中の無呼吸を防ぐ方法です。中等症から重症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の標準的な治療法として広く用いられています。
- マウスピース（口腔内装置）療法：睡眠時にマウスピースを装着し、下あごを前方に固定することで空気の通り道を確保します。軽症の睡眠時無呼吸症候群に適した治療法です。
- 外科的手術：気道閉塞の原因が扁桃肥大やアデノイド肥大などの場合、手術によって原因となる組織を取り除くことがあります。 鼻の疾患がCPAPやマウスピース治療を妨げる場合にも、手術が必要となることがあります。
- 生活習慣の改善：肥満の患者さんには減量が有効であり、禁煙や飲酒の制限も症状の改善につながります。
これらの治療は、健康保険が適用される場合が多いです。 専門医と相談し、ご自身に合った治療方法を見つけることが大切です。
よくある質問
寝ようとすると息が止まる症状に関して、多くの方が抱える疑問にお答えします。
寝ようとすると息が止まるのは病気ですか？
寝ようとすると息が止まる症状は、単なる一時的な現象ではなく、睡眠時無呼吸症候群（SAS）をはじめとする病気が原因である可能性があります。 睡眠時無呼吸症候群は、放置すると高血圧、心臓病、脳卒中、糖尿病などの重篤な合併症を引き起こすリスクが高まるため、注意が必要です。 症状が頻繁に起こる、日中の眠気が強い、いびきをかくなどの場合は、一度医療機関を受診して相談することをおすすめします。
子供にも同じような症状は出ますか？
はい、子供にも睡眠時無呼吸症候群は起こり得ます。 成人とは診断基準が異なりますが、子供の場合、扁桃腺やアデノイドの肥大が主な原因となることが多いです。 子供の睡眠時無呼吸症候群の症状としては、大きないびき、呼吸が数秒間止まる、口呼吸、寝汗、寝相が悪い、日中の多動や集中力低下、食欲不振などが挙げられます。
これらの症状が見られる場合は、小児科や耳鼻咽喉科を受診し、専門医に相談することが大切です。
市販薬で改善できますか？
寝ようとすると息が止まる症状の原因が睡眠時無呼吸症候群である場合、市販薬で根本的に改善することは難しいでしょう。睡眠時無呼吸症候群の治療には、CPAP療法やマウスピース療法、場合によっては手術など、専門的な医療介入が必要です。 ただし、鼻づまりが原因で息苦しさを感じている場合は、市販の点鼻薬や鼻腔拡張テープが一時的な症状緩和に役立つこともあります。
しかし、自己判断せずに、まずは医療機関で正確な診断を受けることが重要です。
飲酒は症状に影響しますか？
はい、飲酒は睡眠時無呼吸症候群の症状を悪化させる可能性があります。アルコールには筋肉を弛緩させる作用があり、就寝前に飲酒すると喉の筋肉が緩み、気道が閉塞しやすくなります。 これにより、いびきが大きくなったり、無呼吸の回数が増えたりすることがあります。 症状を軽減するためには、就寝前の飲酒を控えることがおすすめです。
自分でできる予防策はありますか？
自分でできる予防策としては、生活習慣の改善が挙げられます。肥満は睡眠時無呼吸症候群の大きな要因となるため、適正体重を維持するための減量が有効です。 また、禁煙や就寝前の飲酒を控えることも大切です。 寝姿勢を工夫し、横向きで寝るようにする、ご自身に合った枕を使う、鼻呼吸を意識するといったことも、症状の予防や軽減につながります。
ストレスを溜め込まないように、リラックスできる時間を作ることも重要です。
まとめ
- 寝ようとすると息が止まる症状は、睡眠時無呼吸症候群（SAS）やストレス、身体的な問題が原因となる。
- SASは、睡眠中に呼吸が10秒以上止まる状態が繰り返される病気である。
- 肥満、扁桃肥大、顎の構造などがSASの主な原因となる。
- ストレスや不安は自律神経の乱れを引き起こし、呼吸を不安定にすることがある。
- 逆流性食道炎や心臓・呼吸器の病気も息苦しさの原因となる場合がある。
- 横向き寝は舌根沈下を防ぎ、気道の閉塞を軽減するコツである。
- 適切な枕の高さや湿度管理など、睡眠環境を整えることが大切である。
- 就寝前の飲酒やカフェイン摂取は控え、リラックスできる習慣を取り入れる。
- 鼻呼吸を意識し、口呼吸を改善するためのトレーニングも有効である。
- 大きないびき、日中の強い眠気、夜間覚醒などの症状があれば専門医に相談する。
- 医療機関では簡易検査やポリソムノグラフィー検査で診断を行う。
- CPAP療法は中等症から重症SASの標準的な治療法である。
- マウスピース療法や外科的手術も治療の選択肢となる。
- 子供の睡眠時無呼吸症候群は、扁桃腺やアデノイド肥大が主な原因である。
- 市販薬での根本的な改善は難しく、専門的な医療介入が必要である。
