「自分の脈拍が少ない気がする」「これって正常なの?」と不安に感じている方もいるのではないでしょうか。脈拍は私たちの健康状態を示す大切なサインの一つです。しかし、脈拍が少ないからといって、必ずしも病気であるとは限りません。本記事では、脈拍の正常値の範囲から、脈拍が少ない状態である「徐脈」の原因、そして適切な対処法までを徹底的に解説します。
脈拍が少ないのは正常?基準値と注意すべきサイン

脈拍が少ないと感じた時、まず気になるのはそれが正常な範囲内なのかどうかでしょう。ここでは、脈拍の基本的な知識と、どのような場合に注意が必要なのかを詳しく見ていきます。
脈拍の正常値とは?年齢や状況による違い
脈拍は、心臓が血液を全身に送り出す際に動脈に触れる拍動の回数を指します。一般的に、成人の安静時脈拍の正常値は1分間に60回から100回とされていますが、これはあくまで目安であり、個人の年齢、性別、体調、運動習慣などによって変動します。例えば、赤ちゃんや子供は大人よりも脈拍数が多く、高齢者になるとやや少なくなる傾向があります。
また、激しい運動をした後や緊張している時は一時的に脈拍が速くなり、リラックスしている時や睡眠中は遅くなるのが普通です。
自分の脈拍が正常範囲内にあるかを知ることは、健康状態を把握する上でとても大切です。特に、普段から自分の脈拍を意識しておくことで、いつもと違う変化に気づきやすくなります。脈拍を測る際は、手首の親指側にある橈骨動脈(とうこつどうみゃく)に人差し指、中指、薬指の3本を軽く当て、1分間の拍動数を数えるのが一般的な方法です。
正確な数値を把握するためには、安静な状態で複数回測定し、平均値を取ることをおすすめします。
「脈拍が少ない」と感じる具体的な基準
一般的に、成人の安静時脈拍が1分間に60回未満の場合を「徐脈(じょみゃく)」と呼びます。しかし、この基準は一概に当てはまるものではなく、特に症状がない場合は心配ないことも多いです。例えば、日頃から運動習慣のある方、特にマラソン選手のようなアスリートは、心臓が一度に送り出す血液量が多く、少ない拍動数でも全身に十分な血液を供給できるため、安静時脈拍が50回を下回ることも珍しくありません。
これを「スポーツ心臓」と呼び、健康的な状態とされています。
一方で、脈拍が少ないことに加えて、めまい、ふらつき、息切れ、倦怠感、胸の不快感、失神などの症状を伴う場合は注意が必要です。これらの症状は、心臓から全身に十分な血液が送られていない可能性を示唆しており、何らかの病気が隠れている可能性も考えられます。自己判断せずに、医療機関を受診して専門医の診察を受けることが重要です。
自分の脈拍が基準値より少ないと感じたら、まずは症状の有無を確認し、不安な場合は医師に相談しましょう。
脈拍が少ないこと自体が問題ではないケース
脈拍が少ないからといって、必ずしも病気であるとは限りません。前述の「スポーツ心臓」のように、健康な人でも脈拍が少ないケースは多く存在します。例えば、睡眠中は心臓の活動が穏やかになるため、安静時よりも脈拍が少なくなるのが自然な生理現象です。また、リラックスしている時や、特定の薬(高血圧治療薬の一部など)を服用している場合にも、脈拍が一時的に減少することがあります。
特に、普段から体調が良く、特別な症状がない場合は、脈拍が少なくても心配する必要がないことが多いです。しかし、急に脈拍が少なくなった、以前よりも明らかに脈拍が遅くなった、あるいは脈拍が飛ぶような不規則な動きをするなどの変化に気づいた場合は、念のため医療機関で相談することをおすすめします。自分の体の変化に敏感になり、気になることがあれば専門家に尋ねる姿勢が大切です。
脈拍が少ない原因は?病気と生活習慣の可能性

脈拍が少ない状態である徐脈には、さまざまな原因が考えられます。ここでは、心臓の病気から薬剤の影響、さらには生活習慣まで、その可能性を探っていきます。
徐脈を引き起こす主な心臓の病気
脈拍が少ない状態である徐脈は、心臓の電気信号の発生や伝達に異常が生じることで起こることがあります。主な心臓の病気としては、「洞不全症候群(どうふぜんしょうこうぐん)」や「房室ブロック(ぼうしつブロック)」が挙げられます。洞不全症候群は、心臓の拍動リズムを司る「洞結節」という部分の機能が低下し、電気信号がうまく作られなくなる病気です。
これにより、脈拍が極端に遅くなったり、一時的に停止したりすることがあります。
一方、房室ブロックは、洞結節で作られた電気信号が心房から心室へうまく伝わらなくなる病気です。電気信号の伝達が途絶えることで、心室が拍動する回数が減少し、脈拍が遅くなります。これらの病気は、加齢や他の心臓病が原因で発症することが多く、めまいや失神などの症状を伴う場合は、ペースメーカーの植え込みなどの治療が必要になることもあります。
薬剤の影響や甲状腺機能低下症などの病気
徐脈の原因は心臓の病気だけではありません。特定の薬剤の副作用として脈拍が少なくなることがあります。例えば、高血圧や不整脈の治療に使われるβ遮断薬やカルシウム拮抗薬などは、心臓の働きを抑える作用があるため、脈拍を遅くする可能性があります。これらの薬を服用中に脈拍が異常に少ないと感じたら、自己判断で服用を中止せず、必ず医師や薬剤師に相談してください。
また、心臓以外の病気が原因で徐脈になることもあります。代表的なものに「甲状腺機能低下症」があります。甲状腺ホルモンは全身の代謝を活発にする働きがありますが、このホルモンの分泌が低下すると、心臓の働きも鈍くなり、脈拍が遅くなることがあります。その他にも、電解質異常(カリウムやマグネシウムの異常)や、脳圧亢進なども徐脈の原因となることがあります。
これらの病気は、適切な診断と治療によって改善が期待できます。
スポーツ心臓と脈拍の関係
「スポーツ心臓」とは、長期間にわたる激しい運動トレーニングによって、心臓が効率的に血液を送り出せるように適応した状態を指します。具体的には、心臓の筋肉が発達し、心臓の部屋が大きくなることで、一度に送り出せる血液量(一回拍出量)が増加します。これにより、少ない拍動数でも全身に十分な酸素と栄養を供給できるようになるため、安静時の脈拍数が一般の人よりも低くなるのが特徴です。
スポーツ心臓を持つアスリートの安静時脈拍は、40回台や30回台になることも珍しくありません。これは病的な状態ではなく、むしろ心臓が非常に効率的に機能している健康な証拠です。しかし、スポーツ心臓と病的な徐脈を見分けるには専門的な知識が必要です。もし、運動習慣があるにもかかわらず、めまいや息切れなどの症状がある場合は、念のため医療機関で検査を受けることをおすすめします。
ストレスや睡眠不足など生活習慣の影響
意外に思われるかもしれませんが、ストレスや睡眠不足といった生活習慣も、脈拍に影響を与えることがあります。強いストレスを感じると、自律神経のバランスが乱れ、副交感神経が優位になることで脈拍が一時的に遅くなることがあります。また、慢性的な睡眠不足は、心臓に負担をかけ、不整脈の一因となる可能性も指摘されています。
規則正しい生活リズム、十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動は、心臓の健康を保つ上で非常に重要です。ストレスを上手に解消する方法を見つけ、心身ともにリラックスできる時間を作ることも、脈拍の安定につながります。生活習慣の改善は、病気の予防だけでなく、すでに徐脈の傾向がある場合の症状緩和にも役立つことがあります。
脈拍が少ない場合の対処法と受診の目安

脈拍が少ないと感じた時、どのように対処すれば良いのでしょうか。ここでは、自分でできる脈拍の測定方法から、病院を受診する目安、そして治療の進め方までを解説します。
まずは落ち着いて脈拍を正確に測る方法
脈拍が少ないと感じた時、まず大切なのは落ち着いて正確に脈拍を測定することです。手首の親指側の付け根にある動脈(橈骨動脈)に、人差し指、中指、薬指の3本を軽く当てます。秒針のある時計を見ながら、1分間の拍動数を数えましょう。もし1分間測るのが難しい場合は、30秒間の拍動数を数えて2倍にする方法でも構いません。
測定する際は、安静な状態で座るか横になり、リラックスした状態で行うことが重要です。複数回測定し、その平均値を取ることで、より正確な脈拍数を把握できます。また、脈拍の速さだけでなく、リズムが規則的か不規則か、脈の強さはどうかなども確認しておくと、医療機関を受診した際に役立つ情報となります。
病院を受診すべき症状とタイミング
脈拍が少ないこと自体は、必ずしも病気を意味するわけではありませんが、以下のような症状を伴う場合は、速やかに医療機関を受診することが強く推奨されます。めまい、ふらつき、立ちくらみ、息切れ、胸の痛みや不快感、倦怠感、意識が遠のく感じ、失神などの症状がある場合です。これらの症状は、心臓から脳や全身に十分な血液が送られていない可能性を示しており、重篤な病気が隠れていることもあります。
また、特に症状がなくても、健康診断などで指摘された場合や、以前よりも明らかに脈拍が遅くなったと感じる場合、脈拍が不規則であると感じる場合も、一度専門医に相談することをおすすめします。循環器内科を受診するのが一般的ですが、かかりつけ医に相談して紹介状を書いてもらうのも良い方法です。
診断される病気と治療の進め方
医療機関を受診すると、まず問診や身体診察が行われます。その後、心電図検査(ECG)が最も基本的な検査として行われます。心電図は、心臓の電気的な活動を記録し、不整脈の種類や徐脈の原因を特定するのに役立ちます。24時間心電図(ホルター心電図)やイベントレコーダーなど、長時間の心電図を記録する検査が行われることもあります。
徐脈の原因が特定された場合、その原因に応じた治療が進められます。薬剤が原因であれば、薬の変更や減量が検討されます。心臓の病気(洞不全症候群や房室ブロックなど)が原因で、めまいや失神などの症状がある場合は、ペースメーカーの植え込みが検討されることがあります。ペースメーカーは、心臓の拍動が遅くなりすぎないように電気信号を送る医療機器で、植え込むことで症状の改善と生活の質の向上が期待できます。
日常生活でできる脈拍ケア
脈拍が少ないこと自体が病気ではない場合や、治療を受けている場合でも、日常生活でのケアは非常に大切です。まず、規則正しい生活リズムを心がけ、十分な睡眠時間を確保しましょう。睡眠不足は心臓に負担をかけることがあります。
バランスの取れた食事も重要です。特に、カリウムやマグネシウムなどの電解質は心臓の機能に深く関わっているため、これらを豊富に含む野菜や果物を積極的に摂ることをおすすめします。適度な運動は心臓を強くしますが、無理のない範囲で行うことが大切です。また、ストレスは自律神経の乱れを引き起こし、脈拍に影響を与えることがあるため、趣味やリラックスできる時間を作るなどして、ストレスを上手に解消することも脈拍ケアにつながります。
よくある質問

脈拍が少ないとどんな症状が出ますか?
脈拍が少ないこと自体は無症状の場合もありますが、心臓から全身に十分な血液が送られていない場合は、めまい、ふらつき、立ちくらみ、息切れ、倦怠感、胸の不快感、意識が遠のく感じ、失神などの症状が現れることがあります。
運動しているのに脈拍が少ないのはなぜですか?
運動習慣のある方、特にアスリートは「スポーツ心臓」と呼ばれる状態になることがあります。これは、心臓が効率的に血液を送り出せるように適応した結果であり、少ない拍動数でも全身に十分な血液を供給できるため、安静時脈拍が一般の人よりも低くなるのが特徴です。これは健康的な状態とされています。
子供の脈拍が少ないのは大丈夫ですか?
子供の脈拍は大人よりも一般的に速いですが、成長段階や体質、運動習慣によっては安静時に脈拍が少ないこともあります。しかし、めまいや息切れ、顔色が悪いなどの症状を伴う場合は、小児科や循環器科を受診して相談することをおすすめします。
寝ている間に脈拍が少ないのは普通ですか?
はい、寝ている間は体がリラックスし、心臓の活動も穏やかになるため、安静時よりも脈拍が少なくなるのは自然な生理現象です。通常、睡眠中の脈拍は日中よりも10~20回程度少なくなることがあります。
脈拍が少ないと寿命が短くなりますか?
脈拍が少ないこと自体が直ちに寿命を縮めるわけではありません。スポーツ心臓のように健康的な理由で脈拍が少ない場合は心配ありません。しかし、徐脈が心臓の病気(洞不全症候群や房室ブロックなど)によって引き起こされ、めまいや失神などの症状を伴う場合は、適切な治療を受けないと生活の質が低下したり、重篤な合併症につながる可能性もあります。
医師の診断と指示に従うことが大切です。
まとめ
- 成人の安静時脈拍の正常値は1分間に60~100回が目安です。
- 脈拍は年齢、性別、体調、運動習慣で変動します。
- 1分間に60回未満の脈拍は「徐脈」と定義されます。
- スポーツ心臓のアスリートは脈拍が少ないのが一般的です。
- 脈拍が少なくても症状がなければ心配ないことが多いです。
- めまい、息切れ、失神などの症状を伴う徐脈は要注意です。
- 徐脈の原因には心臓病(洞不全症候群、房室ブロック)があります。
- 特定の薬剤の副作用で脈拍が少なくなることがあります。
- 甲状腺機能低下症などの病気も徐脈の原因になります。
- ストレスや睡眠不足も脈拍に影響を与える可能性があります。
- 脈拍を測る際は安静な状態で正確に測定しましょう。
- 症状がある場合は速やかに循環器内科を受診してください。
- 心電図検査で徐脈の原因を特定します。
- 重度の徐脈にはペースメーカー植え込みが検討されます。
- 規則正しい生活やバランスの取れた食事が脈拍ケアに繋がります。
