12月に扶養から外れることになった場合、年末調整でどのような手続きが必要になるのか、不安に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。年収の壁を超えてしまうと、税金や社会保険料の負担が増えるだけでなく、扶養している側の税金にも影響が出ることがあります。
本記事では、12月に扶養から外れる場合の年末調整の進め方や、税金・社会保険への具体的な影響について詳しく解説します。必要な手続きを理解し、安心して年末を迎えられるよう、ぜひ参考にしてください。
12月に扶養から外れるとは?年末調整への影響を理解する

年末が近づく12月に、予期せぬ収入増などで扶養から外れるケースは少なくありません。この状況は、ご自身の税金や社会保険だけでなく、扶養している方の税金にも影響を及ぼすため、正確な理解が求められます。特に、年末調整の時期と重なるため、適切な対応が重要になります。
税法上の扶養と社会保険上の扶養の違い
「扶養」という言葉には、大きく分けて「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2種類があります。これらはそれぞれ異なる基準と影響を持つため、混同しないように注意が必要です。税法上の扶養は、所得税や住民税の計算に関わるもので、扶養控除や配偶者控除などの適用に影響します。扶養親族がいることで、納税者の課税所得が減り、税負担が軽減される仕組みです。
一方、社会保険上の扶養は、健康保険や年金といった社会保険料の負担に関わります。扶養されている人は、自分で保険料を支払うことなく、扶養している人の社会保険に加入できるのが特徴です。この2つの扶養は、判定基準となる収入額や、扶養から外れるタイミングが異なる場合があります。
扶養の収入の壁と12月超過の落とし穴
扶養には、年収に応じていくつかの「壁」が存在します。代表的なものとして、税法上の扶養に関わる「103万円の壁」や「123万円の壁(2025年以降)」、そして社会保険上の扶養に関わる「106万円の壁」や「130万円の壁」などがあります。 これらの壁を超えると、扶養から外れ、ご自身で税金や社会保険料を負担する必要が生じます。
特に12月に収入が確定し、年間収入がこれらの壁を超えてしまうと、年末調整の段階で扶養から外れることになり、追加で税金や社会保険料を納める必要が出てくる可能性があります。 年末に扶養から外れると、1年分の控除の対象外となるため、その年の12月31日時点の状況で判定される税法上の扶養においては、影響が大きくなることがあります。
12月に扶養から外れた場合の年末調整の進め方

12月に扶養から外れることが判明した場合、年末調整の手続きに影響が出ます。既に年末調整が済んでいる場合や、これから手続きを行う場合など、状況に応じた適切な進め方を知っておくことが大切です。慌てずに対応できるよう、具体的な方法を確認しておきましょう。
年末調整の再提出が必要なケース
年末調整は、その年の12月31日時点の状況で扶養親族の有無や人数を判定します。 もし、年末調整の手続きを行った後に、12月の収入によって扶養から外れることが確定した場合は、年末調整のやり直しが必要になることがあります。 具体的には、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の内容を訂正し、勤務先に再提出することになります。
この申告書の訂正は、従業員に源泉徴収票を交付する前、または翌年1月末日までに行うのが一般的です。 扶養親族が減った場合、納税者本人の所得税額が軽減される配偶者(特別)控除や扶養控除が適用されなくなるため、追加徴収が発生する可能性が高いでしょう。
確定申告で対応するケース
年末調整のやり直しが間に合わない場合や、勤務先で年末調整の再調整ができない場合は、ご自身で確定申告を行うことで税額の精算が可能です。 確定申告は、通常、翌年の2月16日から3月15日の間に行われます。扶養から外れたことで控除が適用されなくなり、源泉徴収された税額が不足している場合は、確定申告で追加の税金を納めることになります。
逆に、払いすぎた税金がある場合は、還付を受けることができます。確定申告は、ご自身の所得や控除を正確に申告し、正しい納税額を確定させるための重要な手続きです。
扶養を外れる連絡はいつ、誰にするべきか
扶養から外れることが判明したら、速やかに扶養している側(配偶者や親など)の勤務先、またはご自身が加入している健康保険組合に連絡することが重要です。特に社会保険の扶養は、年収が基準値を超えると見込まれた場合に外れるため、月の途中でも手続きが可能です。 扶養から外れる手続きを怠ると、後になって遡って社会保険料を支払うことになったり、本来負担しなくて済むはずの医療費を全額負担することになったりするデメリットが生じる可能性があります。
勤務先を通じて社会保険に加入する場合は5日以内、国民健康保険・国民年金に加入する場合は14日以内が手続き期限とされています。 適切な時期に連絡し、必要な手続きを進めることで、予期せぬトラブルを避けることができます。
扶養から外れることによる税金・社会保険への具体的な影響

12月に扶養から外れることは、ご自身だけでなく、扶養している側にも税金や社会保険の面で様々な影響を及ぼします。具体的な影響を理解し、今後の家計や働き方を考える上での参考にしてください。
扶養されていた側の税金への影響
扶養から外れると、これまで適用されていた税制上の優遇措置が受けられなくなります。具体的には、ご自身の年間所得が一定額を超えた場合、所得税や住民税を自分で納める必要が生じます。 例えば、給与収入が123万円(2025年以降の「103万円の壁」の改正後)を超えると、所得税の課税対象となり、住民税も年収100万円を超えると課税される自治体が多いです。
これにより、手取り収入が減少する可能性があります。収入が増えたとしても、税金や社会保険料の負担が増えることで、かえって手元に残るお金が減ってしまう「働き損」の状態になることも考えられます。
扶養していた側の税金への影響
扶養されていた方が扶養から外れると、扶養していた側(配偶者や親など)が受けていた扶養控除や配偶者控除、配偶者特別控除などの所得控除が適用されなくなったり、控除額が減額されたりします。 これにより、扶養していた側の課税所得が増え、結果として所得税や住民税の負担が増加することになります。 例えば、配偶者控除は配偶者の年間合計所得金額が58万円以下(給与収入のみの場合123万円以下)の場合に適用されますが、これを超えると配偶者特別控除に切り替わり、さらに所得が増えると控除が受けられなくなります。
扶養是正の通知が税務署から届き、年末調整のやり直しを求められるケースもあります。
社会保険料と健康保険への影響
社会保険上の扶養から外れると、ご自身で社会保険料(健康保険料と年金保険料)を支払う義務が生じます。 勤務先の社会保険に加入できる場合は、その保険料を給与から天引きされることになります。勤務先の社会保険に加入できない場合は、国民健康保険と国民年金に加入し、ご自身で保険料を納める必要があります。 国民年金保険料は毎月一定額を支払う必要があり、国民健康保険料は自治体によって異なりますが、前年の所得に応じて計算されます。
扶養から外れたにもかかわらず、扶養されていた時の健康保険証を使い続けると、後日、医療費の7割分を返還するよう求められる可能性もあるため、注意が必要です。 ただし、社会保険に加入することで、将来受け取れる年金額が増えたり、傷病手当金や出産手当金などの保障が手厚くなったりするメリットもあります。
よくある質問

- 12月に収入が確定しない場合はどうすれば良いですか?
- 扶養から外れたことを会社に伝えなかったらどうなりますか?
- 扶養から外れると国民年金や国民健康保険に加入する必要がありますか?
- 年末調整で扶養を外れた場合、来年の住民税はどうなりますか?
- 扶養から外れた場合、医療費控除は使えますか?
12月に収入が確定しない場合はどうすれば良いですか?
年末調整は、その年の12月31日時点の状況で判断されるため、12月の収入が確定しない場合でも、見込み額で申告する必要があります。もし見込み額と実際の収入に大きな差が生じ、扶養から外れることになった場合は、年末調整のやり直しや確定申告で対応することになります。
扶養から外れたことを会社に伝えなかったらどうなりますか?
扶養から外れたことを会社に伝えなかった場合、年末調整で誤った控除が適用されたままとなり、税務署から「扶養控除等の是正」の通知が届く可能性があります。 その場合、会社は年末調整をやり直す必要があり、ご自身は追加で税金を納めることになるでしょう。また、社会保険の扶養から外れているにもかかわらず、扶養されていた時の健康保険証を使い続けた場合は、医療費の7割分を返還するよう求められることもあります。
扶養から外れると国民年金や国民健康保険に加入する必要がありますか?
社会保険上の扶養から外れた場合、ご自身の勤務先で社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入できない場合は、国民健康保険と国民年金に加入する必要があります。 国民年金は第1号被保険者となり、国民年金保険料を自分で支払うことになります。
年末調整で扶養を外れた場合、来年の住民税はどうなりますか?
年末調整で扶養を外れた場合、その年の所得に基づいて翌年の住民税が計算されます。扶養控除や配偶者控除などが適用されなくなるため、住民税の負担が増加する可能性が高いでしょう。住民税は前年の所得に対して課税されるため、影響は翌年の納税額に反映されます。
扶養から外れた場合、医療費控除は使えますか?
医療費控除は、生計を一にする親族の医療費を合算して申告できる制度です。扶養から外れたとしても、引き続き生計を一にしていれば、医療費控除の対象となる医療費を合算して申告できる可能性があります。ただし、扶養から外れたことで、ご自身の所得が増え、医療費控除の適用条件に影響が出る場合もあるため、個別の状況を確認することが重要です。
まとめ
- 12月に扶養から外れると年末調整に影響が出ます。
- 税法上の扶養と社会保険上の扶養は基準が異なります。
- 税法上の扶養は12月31日時点の状況で判定されます。
- 年収の壁(103万、106万、123万、130万など)を超えると扶養から外れます。
- 扶養から外れると所得税や住民税の負担が生じます。
- 扶養していた側の扶養控除や配偶者控除が減額されます。
- 社会保険上の扶養から外れると社会保険料の支払いが必要です。
- 勤務先で年末調整の再提出が必要な場合があります。
- 年末調整が間に合わない場合は確定申告で対応します。
- 扶養から外れる際は速やかに勤務先や健康保険組合に連絡しましょう。
- 連絡を怠ると遡って税金や保険料を請求される可能性があります。
- 社会保険加入は将来の年金額増加などのメリットもあります。
- 12月の収入が確定しない場合は見込み額で申告し、後で調整します。
- 扶養から外れても生計が同じなら医療費控除を合算できる場合があります。
- 税制改正により年収の壁の金額が変更されることがあります。
